【読者投稿】武漢肺炎、なぜ日本で感染爆発しないのか

昨年の『お知らせ:読者投稿を常設化します』でもお知らせしたとおり、当ウェブサイトでは読者投稿を歓迎しておりますが、例のコロナ騒動を受けて、さまざまな専門家の方々によるコロナ関連の読者投稿記事が順調に増えております。こうしたなか、嬉しいことに本日、執筆陣にあらたなメンバーが加わりました。ときどき当ウェブサイトに「伊江太」様というハンドル名でコメントを下さる元微生物関係研究室勤務者の方が、新たな視点で論考を寄せて下さったからです。

読者投稿

コロナ関連・読者投稿のマトメ

昨年の『お知らせ:読者投稿を常設化します』でもお知らせしたとおり、当ウェブサイトでは読者投稿を歓迎しております。投稿要領や過去の読者投稿一覧につきましては『読者投稿要領と過去の読者投稿一覧(コロナ騒動等)』にまとめておりますので、ぜひ、ご参照ください。

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さて、例のコロナウィルス騒動を受けて、最近はコロナに関連する記事が増えています。

このうち①、②、⑥、⑩が「りょうちん」様という現役のお医者様、③、④、⑦、⑨が「ケロお」様という理系研究者、⑤が「イーシャ」様という工学研究者、⑧が「とある福岡市民」様という現役のお医者様からのご投稿であり、いずれも客観的事実をもとに積み上げた非常に良質な論考です。

また、当ウェブサイトへの読者投稿の「常連さん」である韓国在住日本人様による次の投稿も、広い意味ではコロナウィルス騒動に関連する記事だといえるかもしれません。

元微生物関係研究室勤務者からの新規投稿

こうしたなか、本日は当ウェブサイトに「伊江太」様というハンドルネームでコメントを寄せてくださる方が、なかなか興味深い論考を寄せてくださいました。

記事タイトル案には『日本の武漢肺炎流行に関する考察』、とあります。

伊江太様は6年前まで某国立大学医学部の微生物関係の研究室に勤務されていて、ウイルスを扱っていたそうです。伊江太様は「感染症の専門家ではない」「扱っていたウイルスもコロナとは無関係である」、などとおっしゃるのですが、ただ、論考からは専門的な知見が随所に顔を覗かせます。

(※ここから先が伊江太様からの投稿です。)

日本の武漢肺炎流行に関する考察

当サイトをウォッチするようになってかれこれ1年、半年前くらいから「伊江太」のHNでコメントを寄せている者です。

わたしには不案内な経済、金融方面の問題を、確かなデータに基づいて明確な論旨で解説されている新宿会計士さんと、常連コメンテーター連の知識の豊富さと発想の面白さを日々楽しんでいるところですが、最近はやや畑違いとも思われる「武漢肺炎ウイルス」に話題が集中するようになってきています。

実は、わたしは6年前まで某国立大学医学部の微生物関係の研究室に勤務しておりました。

扱っていたのはウイルスそのもので、その感染症が対象ではありませんし、材料もコロナウイルスとは縁もゆかりもないウイルスでした。ですから専門家というには「?」が付く人間ですが、やはり人一倍この感染症には関心があります。

ここに書いたのは毎日更新されている厚生労働省の新型コロナウイルス感染症のページを見ながら考えた、下手をすれば机上の空論となっているかも知れない代物ですが、幸いにして読者投稿に採用され皆様のお目に触れるならば、知的好奇心喚起の一助としてお読みいただければと思います。

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さて、武漢からのチャーター機による邦人避難、クルーズ船ダイヤモンドプリンセス号の乗客・乗員の大量感染など、緊急事態への対処に追われた2月をなんとか乗り越え、3月に入り、ようやく「武漢肺炎」に対して平時の感染症への対策が本格的にとられるようになってきました。

あえて「平時」という言葉を使ったのは、この全く新しい感染症の侵入に対して、従前から国内に整備されていた医療、検査体制が破綻することなく有効に機能していることを強調したかったからです。

そして、これが功を奏して、一頃パニックに近い論調だったマスコミ報道も、このところすっかり落ち着いたトーンに変化してきているようです。

しかしこれは流行拡大のスピードがきわめて遅いという、北半球温帯以北の主要な国々(ロシアを除く)の中では、おそらく日本だけが享受しているまれに見るほどに恵まれた、しかしどうも実体がよく分からない条件のおかげであると言って過言ではないと思います。

不思議な日本の流行像

厚生労働省の新型コロナウイルス感染症のページに掲げられているデータによると、3月4日から18日の間に検出されたPCR陽性症例は1日に44人のペースでほぼ「直線的」といっていいペースで増加しています。

予備知識のない方はそう聞いても、「ああそうか」くらいにしか受け取られないでしょうが、これは実は途方もないほど既存の常識に合わない現象です。

流行性の疾患が免疫を全くもたない集団に侵入した場合、それに感染する個体の累積数は、初めは倍々のペースで加速度的に増えていくが、やがて感染者の周囲に回復して免疫をもった個体が増加していき、次第に感染拡大のペースが鈍っていく、シグモイド曲線の形になるのが普通です。

【参考】シグモイド曲線のイメージ

(【出所】国立研究開発法人科学技術振興機構の資料より新宿会計士が引用)

3月4日時点の累積PCR陽性者数254というのは、本来なら日々の増加が誰の目にも明らかになり、感染爆発の様相を呈し始める、そういう時期に至っていることを意味するはずなのです。

日本の流行の特異性が一目で分かるグラフが、あるまとめサイト(※)に転載されています。

(※新宿会計士注:画像自体の出所は次のツイッターと思われますので、伊江太様の原文にあったウェブサイト名とリンクについては削除し、代わりにツイートそのものを埋め込んでおきます。)

このグラフは、中国、韓国、イタリア、イラン、日本、ドイツ、フランス、スペイン、USA、英国、スイスという多数の武漢肺炎患者が発生している国の感染者累積数の推移を示したものです。

このグラフで工夫されているところは、各国で報告された患者数が200に達した時点を基準(0日)として、その前後のデータをグラフ上に配しているところです。グラフを見れば一目瞭然、日本の流行拡大がいかに他国と異なったゆっくりしたものであるかが直感的に見て取れます。

注意していただきたいのは、グラフの横軸に示される時間経過は実数表示、つまりわれわれの時間感覚と同じ比率で表されているのに対して、縦軸の累積感染者数の方は対数表示になっており、グラフの上方向に行くにつれ実際の数の増加が縮小されて表されるという点です。

つまり1→10、10→100、100→1000・・・という数の増加がグラフ上では同じ縦軸方向の距離として表されることになります。

他の10カ国の累積感染者数は直線的に増加しているのではなく、理論通りのシグモイド曲線を描いて、短期間に感染爆発の名を冠するべき状態に移行しているのに対して、日本がそうした状況に直面するのはまだ当分先という風に読み取れるのです。

日本以外の国のグラフがほぼ重なっているのが、武漢ウイルス本来のヒト-ヒト間の伝播効率を意味しているのであれば、日本ではそれが異様なまでに抑制されていることになるわけです。

したがって、国内外の識者が日本のデータの出方に何かトリックがあるのではないかと疑問を呈するのは、必ずしもイチャンモンとばかりは言えないところもあるのです。

日本の発生報告は過少申告なのか?

ここで、「日本で感染者数がこれほど増えてこないのは、(わざと)PCR検査を絞っているからだ」という、(検査数だけが自慢のどこかの国からの)言いがかりを否定しておきましょう。

日本のPCR検査の基本方針は、武漢肺炎の感染が疑われる症例が発見されたら、その真偽を判定すること。そして感染陽性が確定したら濃厚接触者を探しだして、さらにあらたな感染が発生していないか調べるというものです。これは別に日本に独特のやり方ではありません。

某国にしたところで、ある新興宗教教団に感染クラスターが発生したことを掴んで、数が膨大な上全国に散らばってしまった信徒の行き先(逃亡先?)を追跡し、またその濃厚接触者を検査するという形で、やたらに検査数が増えてしまったというのが実相の半分以上でしょう。

揶揄の的となっている例のドライブスルー検査にしたところで、日本のように地域の病院、診療所からこれは怪しいという症例がきちんと上がってくるという信頼感があったならば、あそこまで無駄な検査はやる必要はなかったはずです。

余談ですが、無駄に検査数を増やしたばかりにカノ国で医療崩壊を招いてしまったとする見方も的を射ているとは思えません。あれは検査のやり過ぎが問題だったのではなく、トリアージという考えが決定的に不足していたのが原因だと思います。

日本にしたところで、PCR検査実施数は、3月17日までに約35,000件(※退院前にウイルスの陰性化を確かめる目的でおこなったものを除く)、そのうち陽性と判定されたものが824件。42件中41件は空振りなのです。打率はカノ国より多少はマシかも知れませんが…。

日本の感染報告数の少なさが検査数の制限によって生じる見かけ上のもので、実は他国並の流行が起こっているのだと仮定してみましょう。

そうすると現在の日本の累積感染者数はどう少なめに見積もっても1万人を超えているはずです。その1~2割は肺炎発症に至るでしょうし、その発生頻度は全国一律ではなく、北海道、東京、愛知、大阪といった地域でことに高いでしょう。

この疾患は画像診断で実際に肺炎所見が確認される前に、

  • 37.5℃を超える発熱が1週間ほど続く
  • その間尋常でないだるさを覚え、気道への痰などの分泌物の少ない空咳をする
  • 抗生物質が効かない

…といった、普通の肺炎ではあまり見ない症状が出ます。こんな特徴をもった患者がPCR検査未受診の集団に続出したら、日本の医師がこれを見落とすでしょうか。

まずあり得ないはなしです。日本医師会の会長が「もっとPCR検査を」と要望したということもありましたが、地域からそういう声が上がっているというより、一部にうるさいことをいう会員がいるから、とりあえずいうだけは言っときますくらいのことだったと思います。その後さらに政府をせっついた気配はありません。

日本では感染爆発という事象は起こっていない。それはなぜ?

日々44人の新しい感染者が生じているが、その数は一定で増えていく兆しが見えないなら、それは何を意味するのでしょうか。

「集団に含まれる44人の既に感染している個体が翌日までに一人の人にウイルスを感染させるが、伝染させる機会はそれっきりだ」

という仮説が成り立ちます。

これを「88人の感染者が2日の間に1回」、「176人の感染者が4日の間に1回」、などと言い換えても構わないのですが、肝心なのは、「感染者一人が病気をうつせる機会は1回限り、相手は1人だけ」という点であり、その条件を崩すと、遅かれ早かれ感染爆発の発生は避けられません。

これはいかにも馬鹿げた想定に見えますが、少なくとも日本の流行の見かけはそういうものなのです。

この問題をどうに解釈しているかを書く前に、日本においては武漢肺炎のウイルスが伝播する効率が諸外国に比べて圧倒的に低いのでなければ、どんな説明もまず不可能であることについてはご同意いただけるとして、その原因を考えてみたいと思います。これには、

  • ①日本人はこのウイルスに対する感受性(感染しやすさ)が非常に低い
  • ②日本ではこのウイルスの感染機会が非常に少ない

という2つの可能性が考えられそうです。

①については、これを直接否定できる材料はありませんが、最近ヨーロッパ帰りの日本人の感染が目立ってきていることなどから見て、まずそれはないだろうと考えます。そうなると、残るのは②の可能性です。

日本社会や生活習慣を考えるとき、感染機会として真っ先に頭に浮かぶのが、あの殺人的とも言える大都市圏の通勤電車の混雑です。

ここまで事例が蓄積した中で、通勤電車中での感染連鎖を疑わせるケースが出てこないのは、このウイルスの伝播が飛沫感染によっては(ほとんど)起こらないことの強い証拠であるとわたしは考えます。

だとすると感染は接触感染によって起きるのでしょうか?

接触といっても皮膚を通して直接体内に侵入してくることはないでしょうから、具体的には口から入ってくる、「経口感染」です。これなら日本で感染機会が少ないことも説明は可能かと思います。ざっと挙げると、

  • (A)身体(とくに口付近)の直接接触の習慣が(恋人同士のような場合でも)希薄
  • (B)食事習慣(個別の配膳、出来ない場合も直箸は嫌うなど)
  • (C)手洗い、手指消毒(とくに公共施設の入り口で)の遵守
  • (D)マスク装着への抵抗感が低い(手指が口付近に触れるのを防止する意味で)
  • (E)トイレの清潔度、
  • (F)(ひょっとすると)風呂好き

なんてのも関係しているかも知れません。

厚生労働省は国内で生じた15の感染クラスターを公表しています。このリストを眺めていると、とくに感染リスクが高い要因がなんとなく見えてくるような気がします。

まず濃密な身体接触(病院、介護施設、保育所など)、次に座が乱れがちな飲食(宴会、キャバクラ、ライブバーなど)、そして発汗(スポーツジム、スポーツイベント、ライブハウスなど)。汗は手指の汚れを器具等に付着させやすいでしょうから。

諸外国に比べて日本でのウイルス伝播効率が顕著に低いというのを前提として、これをさらに低下させてウイルス散布者と被感染者の比を事実上1にさせるには、その背景に次のようなメカニズムがはたらく必要があると考えます。

  • ⅰ 感染者集団の中に発症する個体が現われれば、直ちに発見され、潜伏期間に散布したウイルスに感染させられた濃厚接触者を含めて、一定期間のうちに隔離・入院措置によって集団から排除される。
  • ⅱ 未発症の感染者はウイルスの散布を継続するが、その一部はやがて発症することによって監視機構に発見される。
  • ⅲ 現在の日本においては、PCR検査による発見=感染者集団からの排除は平均44人/日の速度で起きている。一方、目に見えないところで生じている感染者数の拡大も同じく40~50人/日程度の速度であり、そのバランスによって感染者集団はほぼ一定のサイズを保っている。

教科書的に言えば相当常識離れしたモデルなのは自分でも分かっていますが、そうとでも考えないと説明できないほど、現在の日本の感染者の発生状況は奇妙なものなのです。

このモデルで感染者数を安定させておくには、ⅰを保証する機構の潜在的能力がⅱによって生じる新規の感染を十分に上回っていなければならないはずです。

医療へのアクセスの容易さや、(検査至上主義者の主張に反して)既存の検査態勢が質的量的に充実しているなど、日本社会に備わった恵まれた条件が加わって、初めてこのモデルが示すような状態が実現可能になると考えます。

以上の議論を元にわたしが考えている日本の感染状況というのは次のようなものです。

ひとり発症者が出れば芋づる式に周辺の感染者が捕捉できる感染クラスターの数は、厚労省が把握している「15」だけということはないにしても、せいぜいその数倍。潜在的なウイルス散布可能個体の数は3桁前半程度の数字。

PCR検査の感度が十分でないため、クラスターが把握されても常に取り残しが出ているものの、毎日30~60人程度を散布者集団中に発見し入院・隔離措置を執っている現状で、その集団サイズは大きくなってはいかない。

そんなところです。

これって皆様の抱いておられるイメージとは相当違っているのではないですか?しかし、それくらいの状態に留めておくのに失敗したら、もうおとなしく収ってはいないのがウイルス感染症というものだと思います。

外的条件が変化したらどうなるか?

日本の感染者数の現状であると想定した定常的状態は、自然の帰結として法則的に実現するものではないでしょう。攻撃方(ウイルス)と防御方(防疫システム)のさまざまな要因によって変動しうる偽平衡状態にあると考えています。

早い話が、海外から流入してくるウイルスが今以上に増え続けたとしたら、国内感染者の増加速度は防疫システムによる排除速度の限界を上回り、たちまち感染爆発へと至ることでしょう。

その意味で、日本国政府が早い時期から中国の一部地域に、後にはその他の国々をも対象に課してきた入国制限措置は、不十分との批判を浴びつつも、結果としては妥当なものだったと言えると思います。

一方、政府は感染拡大が不可避と判断して、大規模イベントの自粛や全国の学校の休校を要請したのですが、これについては何らかの効果があったのか検証できるとすればこれからでしょう。

PCR検査で陽性とされた症例数が3月15日を境にやや減少してきた(47.5/日→32.5/日)かのようにも見えるのですが、この傾向が今後も続くのかはしばらく様子を見なければ分かりませんし、またそうであっても政府の執った対策との因果関係を証拠立てるのは難しいかも知れません。

わたしが感染者の増加速度との関係でより注目しているのは気温との問題です。中国からの入国について、日本と同程度に緩やかな措置を執ってきたタイでは日本とほぼ同時期に感染者が出始めましたが、その後の増加はずっと目立たないものでした。

しかし最近になって感染者数の増加は明らかにピッチが速まってきたように見受けられます(もちろん、イタリアを初めとするヨーロッパ諸国に比べれば、はるかに緩やかなものですが…)。

タイの感染者数はシグモイド曲線を他国に当てはまるものより時間軸に沿ってずっと右方に引き延ばしたような形になると予想します。今の状況は感染爆発の様相を呈するそのやっととば口に立ったところでしょうか。

これほどウイルスの拡散速度が遅い理由が、日本よりも素早く効率的に発症者を見つけ、濃厚接触者の検査を行っているからだというのは、失礼ながらちょっと考えがたい。

タイの環境下ではウイルスの伝播効率が日本や欧米諸国に比べて相当低いはずだとして、その原因を高温の気候に求めるのは自然に浮かぶアイデアではないでしょうか。

経口的に感染する場合、ウイルスは飛沫感染より長く外気に触れていることが多いでしょうから、酸化作用に強くなければ急速に感染性を失うはずです。

それでも化学反応の常として酸化も高温になるほど進行が速いでしょうから、高温環境でウイルスの伝播力が低くなるというのはうなずける説明ではないかと思います。

これが当たっているなら、これから気温が上がってくるにつれ、日本でもウイルスの伝播効率が漸減して、日々のPCR陽性症例数も低下していくかも知れませんし、実は内心大いに期待もしています。

本当はとても危険な武漢ウイルス

ここまでのところはなんだか「日本人に生まれて良かった」的な話になっているのですが、今までのやり方を続けていればOKとなるかと言えば、どうもそうでもなさそうな気がします。

厚労省のデータから計算すると、3月4日~3月19日の間に要入院とされた患者の数は1日平均42人のペースで増加し、退院(9.7人/日)と死亡(1.6人/日)の減少分を差し引いて、入院者の数は毎日ほぼ30人の割合で増えています。

武漢肺炎は指定感染症になっており、法的には感染症指定病院に収容する必要があります。

クルーズ船という突発的事態で短期間に672人という入院患者が発生した影響は、6週間以上を経過してその8割以上がすでに退院したことによって軽減されていますが、今その空いた病床を国内感染の患者が埋めていっているのが実情と言えましょう。

このペースが続けば、それほど遠くない将来に病床の余裕は尽きてしまうことになると思います。専門家会議が軽症患者は自宅待機にと提言しているのはこうした事情を反映したものでしょう。この疾患のもっとも厄介なところは退院までに要する期間の長さで、その平均期間は1ヵ月近いのではないでしょうか。

もうひとつ厄介な問題は、一旦ICU治療、人工呼吸器が必要なほど症状が悪化してしまうと、改善するのが非常に困難であることでしょう。

治療現場のことを知るわけではありませんが、やはり厚労省のデータで見る限り、入院患者の中からこうした重篤な状態に陥るのは1日当たり平均4.5人、症状が改善するケースが1.1人/日であるのに対して、死亡するのが1.6人/日で、結局1.7人/日のペースで重篤患者が増えているのが現状です。

現場で治療に当たっている医師団の努力によって、軽中等度の症状が重篤化していくのは低いレベルに留められているのは確かだとは思います。しかし一旦ICUへの収容が必要な段階に至れば、あとは回復するより死に至る可能性が高いのが、残念ながら現実のようです。

この疾患に関して中国から、気づくのが遅れて医療崩壊状況に陥ってしまった武漢・湖北省地域を除けば、その危険度は持病をもつ高齢者の死亡率がインフルエンザよりやや高い程度のものといった情報が伝わってきていました。

しかし日本でも患者が蓄積していく中で、武漢肺炎について中国がおそらく意図的に流した情報は決して実態を正しく捉えたものではないことが次第に明らかになってきていると思います。

ほとんどが今から1ヵ月も前のまだ累積発症者数がそれほど多くなかった頃に感染した方がすでに30人以上も亡くなっているのです。日本で感染しうる感染症の中で危険度では最悪クラスの疾患であるのは間違いないところでしょう。一日も早く有効性のより高い治療法、治療薬が開発されることを願います。<了>

読後感

…。

いかがでしょうか。

本文中に某まとめサイトの『【朗報】日本、主要国で唯一コロナのコントロールに成功』という記事が紹介されている箇所がありました。

本稿では敢えて、そのリンクを削除しました。というのも、同リンク先記事は出所も示さずに図表を貼り付けただけの代物であり、読む価値はないからです(実際、伊江太様もこの記事タイトルについてはいかがなものかと苦言を呈されています)。

これに対し、今回の伊江太様の記事は、やや専門的な記述もあり、また、数字もたくさん示されているため、某まとめサイトの記事と比べると、本稿はレベルがまったく異なります(※そもそも比べてはならないと思いますが…)。

また、いかにも研究者の方らしく、仮説をいくつか提示したうえで、「もしこの仮説が正しければ、現実にこうなっていることの説明がつかない」、「したがって、こう考える方が自然だ」、「もしそれが正しければ、いういう条件が破られた場合に注意が必要だ」、といった書き方にも、好感が持てます。

いずれにせよ、伊江太様には貴重な論考をご投稿下さったことに深く感謝申し上げたいと思います。

また、改めて「コロナシリーズ」をまとめておきましょう。

引き続き当ウェブサイトのご愛読とお気軽なコメントを賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。また、当ウェブサイトでは読者投稿をお待ちしております(※読者投稿要領につきましては『読者投稿要領と過去の読者投稿一覧(コロナ騒動等)』などを、ご参照ください)。

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