本稿では久しぶりに、「通貨」について深く考えてみたいと思います。国際決済銀行(BIS)統計によれば、わが国の通貨・日本円は世界で3番目の取引高を誇り、また、国際通貨基金(IMF)の統計によれば、外貨準備に組み入れられている通貨としても上位3番目に位置付けられているのですが、本稿のメインテーマはそちらではありません。むしろ「ハード・カレンシー入り」を目指す中国・人民元と北朝鮮経済との関連性、そして米国が人民元に対して何を仕掛けようとしているのかについて、やや根拠が不十分な点もありますが、じっくりと考えてみたいと思います。

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2019/12/17 10:00 追記

本文中に計算間違いがありましたので修正しております。りょうちん様、ご指摘大変ありがとうございました。

通貨論

ハード・カレンシーの定義

ときどき当ウェブサイトで使用する単語のひとつに、「ハード・カレンシー」というものがあります。

当ウェブサイトの定義で恐縮ですが、「ハード・カレンシー」とは、

その通貨の発行国・発行地域に留まらず、国際的な商取引・資本取引等において広く利用されている通貨であり、為替取引等においても法的・時間的制約が少ないもの

のことをさします。

逆に、「ソフト・カレンシー」とは、

主にその通貨の発行国においてのみ利用されている通貨であり、決済機能面や通貨の安定性等の観点から国際的な商取引・資本取引には馴染まないもの

です。

この「ハード・カレンシー」と「ソフト・カレンシー」の違いは明確に線引きできるものではありませんが、市場参加者の感覚などに照らせば、「ハード・カレンシー」とはおもに先進国の通貨を指すことが多いと考えて良いでしょう。

世界の通貨の数

ところで、この「ハード・カレンシー」、世界にはいったいいくつくらいあるのでしょうか。

それを知る以前に、現在の世界にはおよそ160~170の通貨が存在している(らしい)、という点について説明しておきましょう。

外務省のウェブサイト『世界と日本のデータを見る』によると、世界には日本が承認しているだけで196の国が存在しており(※日本を含む)、これに日本が国家承認していない台湾や北朝鮮などを含めれば、現代の世界には事実上、約200前後の国が存在する計算です。

これらの国のうち、ユーロやCFAフランのように複数国が同一通貨を使用している場合もありますし、単一国で複数の通貨を使用しているパターンもあります(中国の人民元、香港ドル、マカオ・パタカという3種類の通貨、フランスの本国と海外領の通貨など)。

さらには、後述するとおり、英国の場合は英本国のポンド、スコットランドのポンド、ジブラルタルのポンド、北アイルランドのポンドなど、「法的には等価だが事実上は分断されている通貨」というものも存在しています。

これについて分類すると、図表1のとおりです。

図表1 世界に通貨はいくつあるのか
区分国・通貨の数備考
①世界の国の数200ヵ国前後日本が承認していない国も含む
②同一通貨を使用する国の数33ヵ国ユーロ(19ヵ国)、CFAフラン(14ヵ国)
③独自通貨を発行していない国約10ヵ国米ドル使用国(東ティモール、パラオ、マーシャル諸島等)、ユーロ使用国(バチカン、サンマリノ、アンドラ、モナコ等)
④単一国で複数通貨を使用している国3~6通貨?フランス海外領(CFPフラン)、中国特別行政区(香港ドル、マカオ)、英国(スコットランド・ポンド、ジブラルタル・ポンドなど)
⑤世界の通貨の数約160~170通貨①-②+2-③+④

(【出所】著者作成)

つまり、「通貨の種類」をどう定義するかにもよりますが、世界にはおよそ160~170の通貨が存在していると思われます。

ハード・カレンシーには先進国通貨が多い

しかし、この約160~170の通貨のすべてが「ハード・カレンシー」と呼ばれているわけではありません。「ハード・カレンシー」と名乗るためには、資本移動に制限がないこと、決済などで便利であることなど、いくつかの条件を満たすことが必要です。

もちろん、「ハード・カレンシー」自体に具体的な定義、範囲があるわけではありませんが、いちおう、「何となくの基準」を例示しておくと、次のように分類されると思います。

ハード・カレンシーの具体例範囲
  • ①世界の基軸通貨である米ドル(USD)、「準基軸通貨」であるユーロ(EUR)、日本円(JPY)、英ポンド(GBP)、スイスフラン(CHF)を加えた「5大通貨」をハード・カレンシーと呼ぶ
  • ②「5大通貨」に豪ドル(AUD)とカナダドル(CAD)を加えた「7大通貨」をハード・カレンシーと呼ぶ
  • ③「7大通貨」にアジア・太平洋地域では香港ドル(HKD)、シンガポール・ドル(SGD)、ニュージーランド・ドル(NZD)、欧州では北欧のデンマーク・クローネ(DKK)、スウェーデン・クローナ(SEK)、ノルウェー・クローネ(NOK)、アフリカの南アフリカランド(ZAR)などを加えた通貨群をハード・カレンシーと呼ぶ
  • ④上記③で示した通貨と法的に等価とされる通貨、たとえばシンガポール・ドルと等価とされるブルネイ・ドル(BND)や英ポンドと等価とされるジブラルタル・ポンド、スコットランド・ポンド、北アイルランド・ポンドなど
  • ⑤上記③で示した通貨と事実上等価として通用している通貨、たとえばマカオ内では香港ドルとほぼ等価で用いられているマカオ・パタカ(MOP)など

変わった通貨もありまして…

もっとも、「市場関係者の誰に聞いても、間違いなくハード・カレンシーだといえる通貨」は、②か、せいぜい③まででしょう(※③のなかにも若干怪しいものがありますが…)。

そして、④や⑤については、発行体の国・地域がしっかりしていて、通貨自体もきちんとした法律などを裏付にして価値が保証されているものの、その国・地域の外に出てしまえばほとんど両替ができないという、非常に特殊な通貨です。

アジアの産油国であるブルネイの通貨であるブルネイ・ドルは、シンガポール・ドルと法的に等価と定められており、シンガポールでブルネイ・ドルを使うことができるとされる一方、ブルネイでもシンガポール・ドルが普通に通用しているそうです。

また、マカオ域内で使用されている通貨・パタカは、マカオ域内では香港ドルとほぼ等価として流通しています(※厳密には微妙に等価ではありませんが…)。というよりも、マカオでは香港ドルがそのまま支払いに使用できますが、逆にマカオ・パタカを香港で使うことはできません。

一方でスコットランドは法的には英国の一地方ですが、いくつかの民間銀行が「スコットランド・ポンド」を発行していて、法的には英ポンド(スターリング・ポンド)と等価らしく、スコットランド内では普通に流通しているそうですが、スコットランド外(ロンドンなど)では使用できません。

英国の海外領であるジブラルタルで発行されているジブラルタル・ポンドも、スターリング・ポンドと法的には等価とされているものの、英本国では使えないそうです。

ちなみに本国と海外領で異なる通貨が使われているという事例はほかにもあり、代表的なものがフランスの海外領であるCFPフラン(太平洋フラン)です。いちおう、ユーロとの固定相場制を採用しているのだそうですが、外国での両替は困難とみて良いでしょう。

通貨の基本統計

上位4通貨で外為市場取引の75%

以上、通貨にはたくさんの種類があることはわかるのですが、銀行間外為市場(いわゆる「OTC市場」)で取引されている通貨を数えてみると、上位4通貨で全体の75%を占めていることもまた事実です。

これは『デジタル人民元と犯罪資金、そして最新BIS統計』でも紹介した、国際決済銀行(BIS)が3年に1回公表している次の統計から明らかになるものです。

Triennial Central Bank Survey of Foreign Exchange and Over-the-counter (OTC) Derivatives Markets in 2019(2019/12/08付 BISウェブサイトより)

この調査によれば、2019年4月における外為市場の取引高の1日平均値に関する「通貨ペア」の構成については、上位4通貨(米ドル、ユーロ、日本円、英ポンド)だけで外為市場のざっと75%を占めていることがわかります(図表2)。

図表2 OTC外為市場通貨ペア比率(単位:%)
通貨2013年2016年2019年
米ドル87.0487.5888.30
ユーロ33.4131.3932.28
日本円23.0521.6216.81
英ポンド11.8212.8012.79
豪ドル8.646.886.77
加ドル4.565.145.03
スイスフラン5.164.804.96
人民元2.233.994.32
香港ドル1.451.733.53
NZドル1.962.052.07
スウェーデン・クローネ1.762.222.03
韓国ウォン1.201.652.00
シンガポールドル1.401.811.81
ノルウェー・クローネ1.441.671.80
メキシコ・ペソ2.531.921.72
インド・ルピー.991.141.72
その他11.3811.6012.04
合計200.00200.00200.00

(【出所】BIS “Triennial Central Bank Survey of Foreign Exchange and Over-the-counter (OTC) Derivatives Markets in 2019 (Data revised on 8 December 2019)” の “Foreign exchange turnover” より著者作成。なお、「通貨ペア」が集計されているため、合計すると100%ではなく200%となる)

ちなみに日本円のシェアが高い理由は、おそらく、巨額の資金を保有している日本の機関投資家による取引フローが、スポット取引だけではなく、先物外国為替取引・為替スワップや通貨スワップなどといったオフバランスシート取引(OBT)が全体のボリュームを押し上げているためだと考えられます。

上位4通貨で外貨準備の9割超

ついでに、「通貨の地位」を推し量るうえで、もうひとつの興味深い統計についても紹介しておきましょう。

外貨準備とは、各国の政府ないし中央銀行が、自国からの資金流出などに備えて保有している外貨のことであり、普段は現金・預金に加えて格付の高い国の国債などの有価証券で運用されています。

そして、この外貨準備高の通貨別構成を知るための統計が、国際通貨基金(IMF)が公表する『公式外貨準備統計』(Currency Composition of Official Foreign Exchange Reserves, COFER)という統計です。

これは、世界各国からの報告を受けて、外貨準備高の通貨構成別割合を明らかにした統計ですが、2019年6月末時点において、「4大通貨」(米ドル、ユーロ、日本円、英ポンド)の割合が全体の9割を超えていることがわかります(図表3、ただし「内訳判明分」のみ)。

図表3 COFERに見る外貨準備の通貨別構成(2019年6月末時点)
区分米ドル換算額(十億ドル)Aに対する比率
外貨準備合計11,733
内訳判明分(A)11,021100.00%
 うち、米ドル6,79261.63%
 うち、ユーロ2,24320.35%
 うち、日本円5975.41%
 うち、英ポンド4894.43%
 うち、人民元2181.97%
 うち、加ドル2111.92%
 うち、豪ドル1881.70%
 うち、スイスフラン160.14%
 その他の通貨2692.44%
内訳不明分711

(【出所】IMFのCOFERより著者作成)

2016年10月にIMFの特別引出権(SDR)の構成通貨入りした中国・人民元の外貨準備に占める割合がジリジリと上昇し続けていることは気になる点ですが、それでも「4大通貨」がいかに大きな地位を占めているかという点については、抑えておいてよいポイントでしょう。

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人民元と北朝鮮制裁

怪しい通貨・人民元

さて、先ほどの定義のなかで、「ソフト・カレンシー」とは「決済機能面や通貨の安定性等の観点から国際的な商取引・資本取引には馴染まない通貨だ」という説明が出て来ましたが、この説明は「ハード・カレンシー」の定義の裏返しでもあります。

アジア、あるいは日本の近隣国の「ソフト・カレンシー」としては、中国人民元(CNY)、オフショア人民元(CNH)、韓国ウォン(KRW)、北朝鮮ウォン(KPW)、新台湾ドル(TWD)、ロシア・ルーブル(RUB)などがあります。

また、ASEAN諸国の通貨であるタイ・バーツ(THB)、マレーシア・リンギット(MYR)、ベトナム・ドン(VND)、インドネシア・ルピア(IDR)などもソフト・カレンシーですが、要するにアジア通貨は日本円などを除くと大部分がソフト・カレンシーだと考えて良いでしょう。

ただ、これらの「ソフト・カレンシー」についても、内情はさまざまです。というのも、「ハード・カレンシーほどではないにせよ、そこそこ通用している通貨」もあれば、「自国内ですらまったく信頼されていない通貨」もあるからです。

実際、先ほどの図表2によれば、当ウェブサイトが「ソフト・カレンシー」と位置付けている人民元や韓国ウォン、メキシコ・ペソやインド・ルピーのように、経済・貿易の規模などが大きいといった理由により、取引ボリューム自体では「OTC外為市場ランキング」に掲載されてくるケースもあります。

そのなかでもとくに近年、地位が上昇しているのが中国の通貨・人民元で、2016年10月には国際通貨基金(IMF)から「自由利用可能通貨」(Freely-Usable Currency)に指定され、特別引出権(SDR)の構成通貨に組み込まれたほどです。

もっとも、人民元は法的・経済的な実情に照らすと、とうてい「自由に利用可能」とは言い難い状況であり、中国本土で債券を発行したり、債券で投資したりするのには、いまだに厳しい制約も存在しています(このあたりの事情については『危険なパンダ債と「日中為替スワップ構想」』あたりをご参照ください)。

(※余談ですが、人民元のような怪しい通貨をSDRに組み込んだときの責任者であるクリスティーヌ・ラガルドの罪は重いと言わざるを得ませんし、そのような者を総裁に任命した欧州中央銀行(ECB)という組織も腐敗し切っていると思います。)

北朝鮮では物価は顕著に上昇していない

とくに、人民元の場合は、中国国内だけでなく、周辺国(ミャンマー、パキスタン、カンボジア、ラオスなど)でも部分的に使用されているという話はよく耳にします(※といっても、これらの国で人民元の決済比率がどのくらいかについて信頼できる統計は見当たりませんが…)。

こうしたなか、あくまでも「数字をもとに議論すること」を重視する当ウェブサイトらしからぬ表現で申し訳ないのですが、「なぜ、北朝鮮で物価が上昇していないのか」という現象を、この人民元との関係から説明することができると考えています。

以前、当ウェブサイトでは『米朝首脳会談と「今、北朝鮮制裁を解除すべきではない理由」』のなかで、『Yahoo!ニュース』とウォール・ストリート・ジャーナル(日本版)に掲載された2つの記事を紹介し、「どうも北朝鮮では物価が安定しているらしい」という話題を取り上げました。

米朝首脳会談と「今、北朝鮮制裁を解除すべきではない理由」

該当する記事2本のリンクを再掲しておきましょう。

北朝鮮経済、制裁にどう耐えているのか(2019 年 2 月 26 日 15:47 JST付 WSJ日本版より)
北朝鮮内部の「肉声」を聞く――制裁は特権層を直撃 揺れる金正恩政権(2019/2/23 8:44 付 Yahoo!ニュースより)

どちらの記事も共通しているのが、北朝鮮では国連安保理制裁以降も、物価も為替相場(対人民元)も顕著に上昇していない、という指摘です。

「(国連制裁の強化はエリート層などの外貨収入を奪うことで)北朝鮮にある程度の打撃を与えた。しかしそれ以外の面では、北朝鮮経済は持ちこたえているように見える。コメの価格は安定しており、制裁強化後に上昇していたガソリン価格は2017年秋の高値から大幅に低下した。北朝鮮の通貨ウォンの対ドル相場も安定している。首都平壌(ピョンヤン)では建設プロジェクトが続いている。また脱北者や北朝鮮を最近訪れた人々によれば、制裁強化前には目立っていた中国製加工食品など外国製品の多くは、国内工場の生産拡大を受けて国産品に置き換えられている。」(WSJ)

中国元の交換レートは安定を続け、ガソリン、軽油の価格が乱高下した以外に、大きな物価上昇はなかった。食糧、日用品の価格の値上がりは20~30%の範囲内だ。/2017年末に経済制裁の強化が始まった時、筆者はインフレの発生を予測した。外貨不足は必至なので、北朝鮮ウォンが下落すると考えたのだ。ジンバブエやベネズエラのように数十万%に及ぶハイパーインフレが発生すれば経済は大混乱だ」(Yahoo!ニュース)

物価とは「カネの値段」

はて、これは非常に不思議な話題ですね。

おそらく、WSJと『Yahoo!ニュース』という、お互いに無関係なメディアが独自に取材をした結果、同じような結論に達しているため、少なくとも今年2月の時点で、「北朝鮮では顕著な物価上昇が観測されていない」というのは、ある程度は信頼できる情報だと考えて良いでしょう。

一般に、モノ不足の国では物価が急騰します(終戦直後の日本がその典型例ですね)。なぜなら、モノ不足ということは、生活や生産活動などに必要なモノの供給が圧倒的に不足している状況だからであり、かたやカネが余っている状況だと、カネを持っている人とモノを持っている人のバランスが崩れるからです。

ただ、「物価上昇」というと「モノの値段が上がること」だと考えるとわかりやすいのですが、これを経済学的にはもう少し正確に定義してあげる必要があります。

「物価」とは、「モノをカネと交換するときのレート」のことです。たとえば、1ドルを日本円に交換するときに、「コンチネンタルターム」では「1ドル=110円」などと表現しますが、これは「ニューヨークターム」で「1円≒0.0091ドル」と表現し直すことができます。

物価もこれとまったく同じで、「コメ5キロ=1580円」、「白菜1玉=398円」、などと表現することが一般的ですが、じつは、「100円≒コメ0.316キロ」「100円≒白菜0.251玉」、と表現し直すことができるのです(とってもわかり辛いですが…)。

このように考えると、「インフレ」とは「モノの値段が上がること」であると同時に、「カネの値段が下がること」でもあります。たとえば、「米5キロが1580円から2180円に値上がりした」という現象は、「100円で買えるコメの量が0.316キロから0.229キロに減った」と表現し直すことができます。

北朝鮮に人民元が入って来なくなっていたとしたら…?

以上を踏まえてたうえで、北朝鮮でなぜインフレになっていないのかを考えてみると、可能性はふたつあります。

  • ①モノの供給が意外と十分になされているから
  • ②そもそもカネ自体の供給が不十分だから

先ほど紹介した「北朝鮮では物価が上昇していないらしい」という話題は、いずれも「北朝鮮の経済は思ったほど打撃を受けていないようだ」、という文脈で用いられているのですが、果たしてこれは本当なのでしょうか。

じつは、「北朝鮮ではモノ不足も深刻だが、そもそもカネ自体が十分に供給されていない」、という可能性もあるのです。そこで参考になるのが、先ほどの「ソフト・カレンシー」の説明で出てきた、「自国通貨の信頼が崩壊した」という事例です。つまり、

  • 北朝鮮では、すでに貨幣経済が崩壊していて、自国通貨である北朝鮮ウォン(KPW)自体が通貨として信頼されていない

という仮説を立てることができます。

つまり、北朝鮮では自国通貨が信頼されておらず、事実上、中国人民元などの外貨が通貨として流通している、という可能性ですね。このように考えれば、

  • 北朝鮮では自国通貨・北朝鮮ウォンではなく人民元などが通貨として通用している
  • しかし、中国からモノを輸入するのに人民元が使われてしまう結果、通貨が国外に出てしまう
  • 一方で中国へのモノの輸出が滞っており、新たな人民元が北朝鮮国内に入って来ない
  • したがって、北朝鮮国内で流通する通貨(人民元)が不足し、モノの値段が上がっていない

という流れが出来上がるのです。

要するに、「モノの値段が安定している」のではなく、「単純にカネ不足になっている」、というわけですね。つまり、この仮説が正しければ、もはや北朝鮮経済は実質破綻状態にあるのです。

私自身がこのアイデアを初めて知ったきっかけは、あくまでも記憶ベースですが、今年の春先に経済評論家の上念司さんがどこかのインターネット番組で話していた内容だったと思います。

北朝鮮といえば米ドルなどの外貨を偽造している国として有名ですが、北朝鮮国内で毛沢東の人民元紙幣を偽造している形跡がない理由は、さすがに人民元まで偽造すると「宗主国」である中国を敵に回すことになるからなのでしょうか。

親ガメこければ何とやら

さて、本稿は「ハード・カレンシー」だの「BIS統計」だの、少し難しい話を掲載してしまいましたが、当ウェブサイトで経済・金融の話題を好むのには理由があります。それは、こうした前提条件を抑えていなければ、北朝鮮制裁などについて正確に理解することが難しいからです。

当ウェブサイトの読者コメント欄などによれば、韓国観察者の鈴置高史氏は13日(金)のBSフジ『プライムニュース』に出演され、「親ガメ(=中国)に2匹の子ガメが乗っかっていて、(アメリカは)親ごとひっくり返そうとしている」などと述べたのだそうです。

あいかわらず軽妙洒脱でわかりやすいたとえ話だと思います。

なぜならば、経済面から見れば、韓国も北朝鮮も、「中国におんぶに抱っこ」であるのは明らかだからです。

また、人民元自体、近年市場での存在感が増していることは事実ですが、それと同時に「今ならまだ潰せる」(?)という状況にあります。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

現在、ドナルド・J・トランプ米大統領が中国に対して貿易戦争などを仕掛けている理由は、結局のところ、「共産党一党軍事独裁体制」を維持しながら、自由主義に関するWTOルールを守らず、それどころか自由主義経済にタダ乗りして経済発展しようとしてきたからではないでしょうか。

そして、数日前の『デジタル人民元と犯罪資金、そして最新BIS統計』でも報告したとおり、人民元の取引高は徐々に伸長しているのに加え、中国共産党は「デジタル人民元」を推進しようとしており、「世界をカネの面から支配する」という野心を抱いているフシがあります(※それができるかどうかは別として)。

だからこそ、人民元の地位がまだ「7大通貨」を凌駕しないうちに、いずれ米国は金融封鎖などを通じ、人民元を封殺しにかかるのではないでしょうか(それがいつ、どのような形で始まるかについては、現時点では予測できませんが…)。

来年以降の隠れたテーマは、米中「貿易」戦争が米中「通貨」戦争に発展するかどうかだ、という言い方もできるのかもしれませんね。

※本文は以上です。

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  • 2020/01/16 05:00 【RMB|外交|金融
    人民元の台頭の本当のリスクは米国の金融制裁の無効化 (8コメント)
  • 2020/01/15 16:00 【時事|韓国崩壊
    韓国の主張をそのままなぞった東京新聞社説は反面教師 (18コメント)
  • 2020/01/15 11:00 【マスメディア論
    佐藤優氏「紙は3次元、必要な場所がすぐにわかる」 (41コメント)
  • 2020/01/15 08:00 【読者投稿
    【読者投稿】「姉妹都市提携解消」を議論する (11コメント)
  • 2020/01/15 05:00 【韓国崩壊
    年頭会見に見る「文在寅政権がもたらす日韓関係破綻」 (26コメント)
  • 2020/01/14 16:30 【時事|韓国崩壊
    文在寅氏「強制徴用問題、日本が解決法を提示すべき」 (46コメント)
  • 2020/01/14 12:05 【時事|外交
    日本政府にとっての台湾と韓国の地位が逆転? (29コメント)
  • 2020/01/14 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事 2020/01/14(火) (88コメント)
  • 2020/01/14 06:00 【時事|韓国崩壊
    韓国副首相「日本は2月までに輸出規制を元に戻せ」 (23コメント)
  • 2020/01/14 05:00 【韓国崩壊|外交
    北朝鮮が韓国を痛罵するのは経済制裁が効いている証拠 (12コメント)
  • 2020/01/13 08:00 【時事|外交
    北朝鮮を制裁したらイランのミサイル開発が遅延した? (16コメント)
  • 2020/01/13 06:00 【時事|韓国崩壊
    日経の最新調査、「韓国は日本人が3番目に嫌いな国」 (42コメント)
  • 2020/01/13 05:00 【マスメディア論|国内政治
    マスコミさん、「桜を見る会」での倒閣に失敗か? (17コメント)
  • 2020/01/12 16:40 【マスメディア論|時事
    「科学とファクト無視するな」 旭日旗ヘイトを考える (36コメント)
  • 2020/01/12 08:00 【時事|外交
    米国のソレイマニ殺害は両国合意の「出来レース」? (37コメント)
  • 2020/01/12 05:00 【外交
    民主国家・台湾こそ日本の同盟国にふさわしい (34コメント)
  • 2020/01/11 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事 2020/01/11(土) (94コメント)
  • 2020/01/11 11:11 【時事|雑感オピニオン
    「ビアンカ・フローラ」問題巡る最新の研究結果とは? (25コメント)
  • 2020/01/11 05:00 【韓国崩壊
    韓国に対するフッ化水素の輸出許可は「譲歩」ではない (30コメント)
  • 2020/01/10 17:25 【時事|国内政治
    解散総選挙を仕掛けるタイミングは今でしょ! (8コメント)
  • 2020/01/10 12:15 【時事|韓国崩壊
    世銀が「日本の輸出規制が世界経済を脅かす」、本当? (8コメント)
  • 2020/01/10 10:30 【時事|韓国崩壊
    韓国と日韓議連と二階幹事長が日韓関係改善に積極姿勢 (18コメント)
  • 2020/01/10 05:00 【韓国崩壊
    鈴置論考に見る「ひとつの国が民主主義を捨てるとき」 (34コメント)
  • 2020/01/09 16:00 【時事|韓国崩壊
    韓国外相「日本の態度次第ではGSOMIA終了」 (29コメント)
  • 2020/01/09 11:00 【時事|金融
    米・イラン緊張に見る、軍事制裁と経済制裁の関係 (24コメント)
  • 2020/01/09 08:00 【読者投稿
    【読者投稿】韓国はダヤニ一族への賠償問題を解決せよ (12コメント)
  • 2020/01/09 05:00 【韓国崩壊
    韓国政府の「日本と協議」 発想自体が大きな間違い (13コメント)
  • 2020/01/08 17:30 【時事|韓国崩壊
    釜山と日本各地を結ぶ航路、乗客「7割減」の衝撃 (31コメント)
  • 2020/01/08 13:25 【時事|外交
    イランのミサイル発射・続報とウクライナの航空機墜落 (19コメント)
  • 2020/01/08 12:25 【日韓スワップ|韓国崩壊|金融
    韓国の外貨準備における不整合と「本質的な問題点」 (17コメント)
  • 2020/01/08 09:23 【時事|外交
    イランが米軍施設にミサイル発射 (15コメント)
  • 2020/01/08 05:00 【韓国崩壊
    対韓輸出が急減しているのは「低価格フッ化水素」か? (24コメント)
  • 2020/01/07 12:10 【日韓スワップ|時事|韓国崩壊
    日韓スワップは欲しいがプライドが許さないという韓国 (40コメント)
  • 2020/01/07 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事 2020/01/07(火) (38コメント)
  • 2020/01/07 10:45 【時事|韓国崩壊
    金正恩の斬首作戦は「韓国が困るからやめてほしい」 (13コメント)
  • 2020/01/07 06:00 【時事|韓国崩壊
    日韓市民団体、「真の問題解決のために協議体設立を」 (21コメント)
  • 2020/01/07 05:00 【韓国崩壊
    韓国が欲しがったのはフッ酸よりも「容器」だった? (30コメント)
  • 2020/01/06 14:30 【時事|外交
    米軍の「斬首作戦」に金正恩が怯えて「活動萎縮」も? (19コメント)
  • 2020/01/06 10:45 【時事|韓国崩壊|金融
    イランの核開発再開宣言と対韓輸出管理の関連性を疑う (16コメント)
  • 2020/01/06 07:00 【時事|金融
    ゴーンの身柄確保には「カネの流れ」の利用も有効か? (8コメント)
  • 2020/01/06 06:00 【時事|国内政治
    自称活動家の「権力者に圧力」、北京と平壌で主張せよ (16コメント)
  • 2020/01/06 05:00 【時事|外交
    イラン司令官殺害:トランプは対イラン開戦を望むのか (29コメント)
  • 2020/01/05 10:00 【マスメディア論
    「新聞業界の部数水増し」を最新データで検証してみた (21コメント)
  • 2020/01/05 05:00 【時事|韓国崩壊
    WSJの「ベトナムで米国が脱北者保護」をどう読むか (29コメント)
  • 2020/01/04 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事 2020/01/04(土) (105コメント)
  • 2020/01/04 10:00 【韓国崩壊
    日韓関係はまだ「最悪期」に非ず(2)日韓断交論 (48コメント)
  • 2020/01/04 05:00 【韓国崩壊
    日韓関係はまだ「最悪期」に非ず(1)経済制裁論 (19コメント)
  • 2020/01/03 10:00 【マスメディア論
    オールドメディアはムーになる! (38コメント)
  • 2020/01/03 05:00 【韓国崩壊
    韓国の2019年の「貿易黒字4割減少」のインパクト (26コメント)
  • 2020/01/02 11:11 【読者投稿
    【読者投稿】在韓日本人が見た「韓国の盆と正月」 (17コメント)
  • 2020/01/02 06:00 【時事|経済全般|外交
    ゴーン逃亡、レバノンへの経済制裁・断交も躊躇するな (71コメント)
  • 2020/01/02 05:00 【時事|経済全般
    年賀状をやめてみて、なにか不都合はあったのか? (9コメント)
  • 2020/01/01 11:11 【時事|韓国崩壊
    韓国政府「日本の輸出規制撤回まで徹底対処」 (22コメント)
  • 2020/01/01 05:00 【マスメディア論
    新聞の終焉 (30コメント)
  • 2019/12/31 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事 2019/12/31(火) (127コメント)
  • 2019/12/31 10:00 【時事|経済全般
    今年の重要未解決問題を振り返る (8コメント)
  • 2019/12/31 05:00 【韓国崩壊
    韓国に対する経済制裁を議論する (40コメント)
  • 2019/12/30 12:15 【時事|韓国崩壊
    日韓葛藤の解消のためには、韓国が変わらねばならない (45コメント)
  • 2019/12/30 10:30 【時事|外交
    北朝鮮の経済制裁は「物価」だけでは測定できない (36コメント)
  • 2019/12/30 06:00 【時事|国内政治
    名は体を表す 新党名は「ともに民主党」でいかが? (37コメント)
  • 2019/12/30 05:00 【韓国崩壊
    訪韓日本人と訪日韓国人の逆転と「大停滞時代」の予感 (15コメント)

  • 著者のコンタクト先:info@shinjukuacc.com

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