米政府が中東への兵力増派を示唆

日本時間の昨日、米WSJが「トランプ政権が中東に米軍部隊を最大1.4万人増派する」と報じました。この報道を巡っては、米国防総省が「具体的な人数」について否定するツイートを発しているものの、それと同時にジョン・ルード米国防次官は上院で増派の可能性に言及しており、中東・イラン情勢が一段と緊迫している状況にあります。ただ、米国の目が中東に向かえば、北朝鮮が米国の耳目を引こうとして、例の瀬戸際外交に出てくるかもしれませんし、緊迫する香港情勢で中国が武力鎮圧に踏み切る事態もあり得ます。そうなれば、私たち日本国民にとっても無関心でいられません。いずれにせよ、これから年末にかけてのアジア・中東情勢が気になるところです。

最大1.4万人の増派も?

米国時間水曜日夜(日本時間の昨日昼過ぎ)、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)にこんな記事が掲載されました。

Trump Administration Considers 14,000 More Troops for Mideast(米国時間2019/12/04(水) 22:09付=日本時間2019/12/05(木) 12:09付 WSJより)

これによると、トランプ政権は最大で1.4万人の中東への部隊増派を決定する方針であることを「米政府高官が」明らかにした、とするものです。米国は今年5月以降、中東に1.4万人を派遣しているため、この情報が事実なら、米国は部隊を倍増する計算です。

WSJはこの決定が今月中にも行われるなどとしつつ、米政府高官がこのような検討をしている理由として、イラン情勢に対抗するためとしており、あわせて軍艦や軍用装備品などについても増強する構えだとしています。

来年の改選を控えたトランプ氏は、これまで外国から軍隊を撤収する方針を強く進めて来ただけに、この報道にはやや唐突感もあります。しかし、WSJはこの高官が、「トランプ氏はイランがもたらす脅威に対抗する必要性を確信している」と述べたのだそうです。

もっとも、米国防総省(ペンタゴン)のアリサ・ファラー報道官は日本時間の本日早朝に、このWSJの報道を否定する内容をツイッターに投稿しています。

SecDef @EsperDoD  spoke to Chairman Inhofe this morning and reaffirmed that we are not considering sending 14,000 additional troops to the Middle East at this time.
―――2019/12/6 3:57付 ツイッターより

このため、米政府の一応の見解としては、WSJが報じた1.4万人という具体的な人数については「根拠がない」ということです。

米政府高官、可能性自体は認める

しかし、それと同時に、米国防総省のジョン・ルード国防次官(政策担当)は木曜日の上院軍事委員会で発言し、米軍が今年に入ってすでに1.4万人を中東地域に派兵しているとしつつ、場合によってはさらに増派する可能性があると述べたのだとか。

Top Pentagon Official Tells Senators More Troops Might Be Sent to Mideast(米国時間2019/12/05(木) 15:34付=日本時間2019/12/06(金) 05:34付 WSJより)

ルード氏の発言では具体的な増派人数については触れられていませんでしたが、マーシャ・ブラックバーン議員(共和党、テネシー)の質問に答える形で、

我々はまだ決定を行っていないが、観察の結果、イランの野心を抑止する必要があると判断する場合には、我々の部隊展開を調整する必要があるだろう

と述べたというものです。

1.4万人云々の信憑性はともかく、米・イラン関係が緊迫するなかで、年末にかけて米軍の動きが気になるところです(もっとも、WSJによると、中東・アフガン地域には今年5月に派遣された1.4万人だけでなく、軍艦などのローテーション活動により常時6~8万人の部隊が展開されているるそうです)。

キナ臭さ増す中東・アジア

ただし、ここで気になってくるのは、米国が潜在的に関与している紛争の多さです。

米国にとって「最も厄介」なのが中東(とくにイラン、イエメン、アフガン、シリアなど)であることは言うまでもありませんが、潜在的には南米(とくにベネズエラ)、アジア(香港、ウイグル、北朝鮮、台湾)、ロシアなど、米国の利益に関わる地域は多いといえます。

私たち日本にとって気になるのは、今年5月以降、北朝鮮がしきりに短距離弾道ミサイルなどの発射を繰り返し、国際社会を挑発していることですが、これもおそらくは来年以降、北朝鮮人労働者の強制送還条項が発動することを控え、北朝鮮がかなりの焦りを抱いている証拠でしょう。

当然、今朝の『「日本は韓国に譲歩するべきである」論の盛大な勘違い』でも触れたとおり、韓国国内の親北派などを通じた北朝鮮からの揺さぶりは、今以上に強くなるでしょう。

「日本は韓国に譲歩するべきである」論の盛大な勘違い

さらに、『香港人権民主主義法の本質は「対中輸出管理の強化」?』でも触れましたが、米国は現在、全世界(とくにイランと北朝鮮)に対する軍事物資の横流しにかなり神経をとがらせている状況にあります。

香港人権民主主義法の本質は「対中輸出管理の強化」?

もし中東増派が実現した場合、北朝鮮は「米国としては朝鮮半島情勢には手が出せまい」などと浅知恵で考えて、さらに地域の緊張を高める行動に出てくるかもしれませんし、香港情勢で焦りを感じた中国が武力鎮圧に出る可能性も否定できません。

いずれにせよ、年末にかけて、中東、アジアが一段とキナ臭くなっていることは間違いないでしょう。

読者コメント一覧

  1. G より:

    石油の純輸出国になりつつあるアメリカにとって中東の重要性は下がってるのかなと素人考えしてました。

    よくわからないですけど、世界的に対決ムードなのかなと。

    朝鮮半島情勢ですが、駐留費交渉はアメリカは一切まける気無さそう。北朝鮮は勝手に年末を控えていきり立ってます。
    両者の共通点は韓国北朝鮮は瀬戸際に立たされて苦しくて早く結論が欲しい。アメリカは一切それがなくてのんびり放置でかまわない。

    なんか日韓関係と同じだなぁと。日本は韓国のいちゃもん絡みつきに困ってはいますが今のところ静観でいい。困ってもいないのに下手に妥協するのが明らかに下策。

    まあ、チキンゲームはチキンゲームなのかな。ただ日米にとって崖ははるか彼方だし、こっちはのんびり走れるのに対し、南北朝鮮にとっては崖は間近でかつ全速力を強いられる。

    様子を見ましょ。

  2. 引きこもり中年 より:

     独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。

     英仏独が、イランが核搭載可能なミサイルを開発していると、懸念を抱
    いています。だとすると、イランのミサイル開発と北朝鮮との関わりに、
    イスラエルも懸念を抱いて行動する恐れがあります。また、ウラン濃縮に
    使用されるフッ化水素についても、注目を集める可能性もあります。
     どうやら、中東と東アジアは地理的には距離がありますが、裏の話なら
    距離はないのかも、しれません。

     駄文にて失礼しました。

  3. 農民 より:

    当記事で取り上げられましたように中東がこの情勢、アメリカは中南米でも問題を抱えています。常に不安定な地域ではあり、外交・軍事に無関心な日本人の多勢にはニュースバリューが低いとはいえるかもしれませんが…

    常日頃、集団的自衛権や安保の話になるとやれ「日本と無関係なアメリカの戦争に地球の裏側まで駆り出される!!」などと吹いてまわる人々まで無関心のダンマリなのがなんとも。実際興味無いんでしょうけど。危機が可視化する今こそああいった論理をふりかざすチャンスなのですがね。
    遠いから実感が無いのかもしれませんが、極近場の朝鮮半島だって自衛隊・米軍の各首脳部が開戦も意識したとのコメントがありましたし、世界中で日本にも影響する「戦争」が起きそうに…実際に起きたりしているのですが。

    硬派な我々が愚民を導くのだ!などとやっている旭日新聞様は、こういう時こそ事実を報道して日本人の危機意識を啓発してほしいものです。

    …政府が「現実的な対応」をするとまず社風に背くから絶対にしないのは承知で言っておりますが。

  4. めがねのおやじ より:

    更新ありがとうございます。

    日本にとって今、現在の敵は北朝鮮、韓国、中国、ロシアですが、その中でも北と南はいろいろ挑発し、瀬戸際外交を含めて、神経戦が多いです。間違っても実弾発射はほとんど無い(海自哨戒機は実弾発射よりもヤバイレベルですが)。

    それに比べて米国は争い事の敵国がハンパ無く多い。特に中東・イラン、中南米ベネズエラ、対中貿易戦争、対北朝鮮と韓半島、、。

    どうしても対北朝鮮は後回しになります。WSJの言う通り1.4万人の部隊を中東に追加派遣したら、いくら後方部隊から集めたとはいえ、他所が手抜きになる。

    そこを逆に金正恩が突いて来る可能性はあります。交渉で有利に立とうとしているのに、相手の米国が舞台から降りそうだなんて、許せないでしょう。

    「コッチも見ろ!」とばかり、飛翔体を連発、南朝鮮の沿岸部にも打ち込んで来るかもしれない。

    米国としては、ややこしいプラス利益にならない半島は可能な限り日本に任せ、中東や香港問題に集中したいのがホンネでしょうネ。

    さて、日本はどうするか。やはり正式な戦える軍隊が無いと話になりません。改憲を是非とも急ぐべきです。

  5. 福岡在住者 より:

    サウジやUAEを含めこの地域での 存在感を保持することは重要なんです。
    この地域から米国への原油輸入は無くなりましたが、原油取引の「ドル決算」が、、、。原油先物でイニシアチブを取っているのはNY市場です。ドバイとか誤解している知人が過去にはいましたが、、、。
    持てる者と持たざる者(北朝鮮)の違いです。だから いつも後回しされ続けました。 でしょうか最近、金やニッケル、ウラン他レアメタルの宝庫とか誇張するコメンテイター(辺真一さんやそれらの在日韓国人)が多発していますが、だけど後回しすです(笑い) 何故なら金額が違い過ぎ。 そもそも費用対効果で北朝鮮の鉱物が有効かも疑わしい。有効なら中国が更にこの部分に投資(現在鉄鉱石とかの権利取得済です)しているはずです。
    「北朝鮮は豊富な地下資源がある」と発言する人はリトマス試験紙対象です(笑)

  6. 山田内膳 より:

    シェールガス革命が起こったとしてもアメリカにとって中東の石油は重要なのでしょう。価格にも影響します。
    また、イスラエルの存在も考えると放置できないのでしょう。

    日本も中東に石油を依存している事から無関心ではいられません。ホルムズ海峡危機は日本にも影響します。自衛隊派遣も検討されていますが、あくまで日本単独で行動するのがベストです。有志連合に加わると、なし崩し的に武力行使に移った際に抜け出せなくなります。単独であれば武力行使の際に再度検討する機会が得られます。イギリスも同様に考えているからこそ単独で活動するのでしょう。

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