日本が主導する形で、アジア通貨危機の再発を予防しようとする国際金融協力の枠組みを、「チェンマイ・イニシアティブ」(CMI)と呼びます。このCMIは2014年に多国間協定化(マルチ化)し、「CMIマルチ化協定」(CMIM)として発展的に解消しましたが、木曜日にフィジーで行われたASEAN+3会合で、「ローカル通貨化」で合意されたようです。これについて韓国メディアは「アジア基軸通貨国の地位を確保しようとする中国はさらに歩幅を広げることになった」などと報じているのですが、これは本当でしょうか?

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国家破綻と通貨危機

国債のデフォルト条件は3つある

当ウェブサイト『新宿会計士の政治経済評論』では以前から、「国債であってもデフォルトすることがあり得る」と申し上げて来ました。

この「国債がデフォルトする場合」とは、おおきく次の3つの条件が満たされたときです。

  • ①国内投資家が国債を買ってくれなくなったとき
  • ②海外投資家が国債を買ってくれなくなったとき
  • ③中央銀行が国債を買ってくれなくなったとき

逆に言えば、①~③のどれか1つの条件が満たされていれば、国債のデフォルトは発生しません。

日本の場合でいえば、マスコミが盛んに「国の借金は1000兆円を超えている」などと喧伝していますが、そもそも家計金融資産が1800兆円を超えている状況のなか、国内で資金の行き先がなくなり、機関投資家(銀行等金融機関や保険・年金基金等)は日々の運用先にも事欠く状況です。

つまり、日本国債の場合はそもそも①の条件が満たされることがないため、この現状が続く限り、国債のデフォルトは99.999999%あり得ないと間違いありません。

ただ、万が一、①の条件が満たされたとしても(つまり国内投資家に投資余力がなくなったとしても)、それなりの金利が付けば、海外投資家が日本国債を買ってくれるはずです。

さらに、海外投資家が日本国債を買ってくれなくなったとしても、日本国債の場合は日本円という通貨で発行されているため、財政法第5条の制約さえクリアすれば、中央銀行である日本銀行が直接、国債を買ってくれれば、日本国債の「デフォルト」は発生しないのです。

(※といっても、中央銀行が国債を直接引受すれば、ケースによっては通貨に対する信認がなくなり、ハイパー・インフレ状態となることもありますが、すくなくとも「デフォルト」はしない、という点については間違いありません。)

つまり、私が「現状が続けば日本国債はデフォルトしない」と申し上げている理由は、

  • 国内で家計金融資産などがあり余っていて、日本国債の発行残高の2倍近くに達していること
  • 家計金融商品の8割が現金・預金、保険・年金基金で占められていて、巨額の資金が金融機関や保険・年金基金に流入していること
  • 日本国債自体が日本円という通貨で発行されていて、日本円が国際的な金融市場で米ドル、ユーロと並んで信頼されていること

といった事情があるのです。

外国から外貨を借りている国はNG

ただ、「日本国債がデフォルトしない」という議論は、あくまでも「自国通貨が国際的に通用する通貨であること」、「国内に金融資産があり余っていること」、「国債などの債券が自国通貨で発行されていること」、という3つの条件が満たされているときにしか成り立ちません。

ことに、外国から多額のカネを外貨で借りている国の場合だと、外国がカネを貸してくれなくなった瞬間、国債はデフォルトし、国家は破綻の危機に瀕します。

その典型例が、アルゼンチンでしょう。

アルゼンチンは2001年に米ドルなど外貨建ての国債の債務不履行(デフォルト)を宣言しましたが、これは、アルゼンチンが自国通貨ではなく外国通貨で国債を発行し、かつ、国内投資家も、海外の投資家も同国の国債を買ってくれなくなったことで発生した現象です。

また、2010年以降はギリシャが発行するユーロ建ての過大な国債がたびたび欧州の危機・波乱の要因となってきましたし、ギリシャがドイツなどを相手に「瀬戸際外交」を繰り広げていることは、『ギリシャが対独40兆円賠償要求?ユーロ問題はドイツ問題だ!』などでも紹介したとおりです。

ギリシャが対独40兆円賠償要求?ユーロ問題はドイツ問題だ!

つまり、国家であっても、「①外貨で」、「②外国から」、おカネを借りている場合には、ギリシャやアルゼンチンのようなデフォルトの危機があるのです。

それだけではありません。

国債が外貨建てでなかったとしても、金融機関や国内主要企業が外国から外貨でおカネを借りているような場合には、外国の金融機関が「おカネを引き上げる」と宣言した瞬間、その国には国家破綻の危機が到来します。

卑近な例でいえば、私たちの隣の国・韓国は、少なく見積もっても外国金融機関から3000億ドル(1ドル=110円と仮定して33兆円)のおカネを借りています(図表1)。

図表1 韓国企業・銀行が外国金融機関から借り入れている金額(2018年12月末、金額単位:百万ドル)
相手国最終リスクベース所在地ベースうち1年以内
米国83,27579,04932,589
英国80,77276,51613,238
日本56,26945,28611,439
フランス23,12419,3727,201
ドイツ15,74312,297(不明)
スイス(不明)9,0694,628
台湾8,0517,9361,681
豪州5,3274,9032,299
その他37,65355,38234,054
合計310,214309,810107,129

(【出所】「最終リスクベース国際資金取引統計」(Consolidated Banking Statistics, CBS)の “Consolidated positions on counterparties resident in Korea” より著者作成)

うち、1年以内の借入金は1000億ドルを超えていますが、仮に外国の金融機関(とくに米国の金融機関)が韓国に対する短期融資のロール(借り換え)を拒絶すれば、韓国に少なくない混乱が生じることは想像に難くありません。

どうやって危機を防ぐのか?

資金調達が国際化・複雑化すれば、「外国からたくさんのカネを借りて生産活動をする国」というものが出てくるのも当然のことではありますが、得てして発展著しい国の場合、外貨資金繰り管理ができずに通貨危機を発生させてしまう、ということもままあるのです。

こうした通貨危機を防ぐためには、いったいどうすれば良いのでしょうか?

そのためには、「通貨危機の仕組み」を知ることが必要です。

先ほどの議論で、「①外国から」、「②外貨で」おカネを借りているときには、その外国の金融機関がカネを貸してくれなくなったときには、たとえ国家であっても破綻する、ということは自明のことでしょう。そして、その典型例こそ、アルゼンチンやギリシャです。

(※もっとも、ギリシャの場合はユーロ圏に加盟しているため、厳密に言えば、ユーロは「共通通貨」であって、ギリシャにとっての「外貨」ではありませんが、「自国の中央銀行がその通貨を発行することができない」という意味では「外貨」に準じたものだと考えて差し支えありません。)

ただし、市場がパニックになっているときに、その国が短期債務を借り換えられないような事態を防げれば、通貨危機をある程度は防ぐことができます(※完全に防ぐことはできませんが…)。

そこで、「外貨不足に困った国の政府や通貨当局に対し、短期的に外貨を貸してあげる」という仕組みが考案されました。これが「通貨スワップ」です。また、「相手国の中央銀行を経由して相手国の民間金融機関に外貨を貸してあげる」という仕組みは「為替スワップ」と呼ばれます。

日本の場合は現在、アジア諸国を中心に5つの国と通貨スワップを締結しているほか、8つの国とのあいだで為替スワップを締結しています(図表2図表3)。

図表2 日本が締結している通貨スワップ(相手国の引出部分)
相手国上限引出条件
インドネシア227.6億ドル米ドルか日本円
フィリピン120億ドル米ドルか日本円
シンガポール30億ドル米ドルか日本円
タイ30億ドル米ドルか日本円
インド750億ドル米ドル

(【出所】財務省『アジア諸国との二国間通貨スワップ取極』および日本銀行HPより著者作成)

図表3 日本が締結している為替スワップ
相手国・銀行日本円(上限)相手国通貨(上限)
米国(米ドル)上限なし上限なし
ユーロ圏(ユーロ)上限なし上限なし
英国(英ポンド)上限なし上限なし
スイス(スイス・フラン)上限なし上限なし
カナダ(カナダ・ドル)上限なし上限なし
オーストラリア(豪ドル)1.6兆円200億豪ドル
シンガポール(Sドル)1.1兆円150億Sドル
中国(人民元)3.4兆円2000億元

(【出所】日銀『海外中銀との金融協力』より著者作成)

ただし、ここに示したスワップは、いずれも限られた国とのスワップであり、これら以外の国が通貨危機を発生させた場合には、日本としては助ける手段がない、ということでもあります。

CMIMの改定をどう見るか

もっと多国間で協力を!

こうしたなか、ASEAN諸国を中心に、日中韓などが参加する多国間の通貨スワップ協定のことを、「チェンマイ・イニシアティブ・マルチ化協定」(CMIM)と呼びます。

CMIMの前身は「チェンマイ・イニシアティブ」(CMI)と呼ばれる国際金融協力の枠組みで、もともとは1997年に発生したアジア通貨危機の再来を防ぐために、日本が主導する形で2000年5月、タイ・チェンマイの「ASEAN+3」会合で成立した仕組みのことです。

CMIとは、簡単にいえば、日本とタイ、日本とマレーシア、日本とインドネシア、といった具合に、この仕組みに参加している国同士で網の目のように二国間通貨スワップ(BSA)を締結するという考え方ですが、これには大きな問題がありました。

それは、参加する国が増えれば増えるほど、契約の本数が増えてしまう、という欠点です。

たとえば、参加国が日本とタイとインドネシアの3ヵ国だけであれば、契約本数は

  • 日本とタイ
  • 日本とインドネシア
  • タイとインドネシア

の3本で済みます。ところが、これにマレーシアが加わり、4ヵ国の枠組みとなれば、

  • 日本とタイ
  • 日本とインドネシア
  • 日本とマレーシア
  • タイとインドネシア
  • タイとマレーシア
  • マレーシアとインドネシア

という具合に、契約本数は6本に増えますし、同じく参加国が5ヵ国なら契約本数は10本、6ヵ国なら15本、7ヵ国なら21本、と加速度的に増えて行きます(詳しい計算方法は「組合せ」で検索してください)。

そこで、CMIMは、どんなに契約締結国が増えたとしても、同じ1本の契約書で多国間が参加するという、いわゆる「多国間通貨スワップ」の仕組みなのです(図表4)。

図表4 CMIM
拠出額引出可能額
日本768億ドル384億ドル
中国768億ドル405億ドル
 うち、香港84億ドル63ドル
韓国384億ドル384億ドル
インドネシア、タイ、マレーシア、シンガポール、フィリピン各 91.04億ドル各 227.6億ドル
ベトナム20億ドル100億ドル
カンボジア2.4億ドル12億ドル
ミャンマー1.2億ドル6億ドル
ブルネイ、ラオス各0.6億ドル各3億ドル
合計2400億ドル2400億ドル

(【出所】財務省『CMIM 貢献額、買入乗数、引出可能総額、投票権率』より著者作成。ただし、中国については香港との合算値。また、香港はIMFに加盟していないため、中国の引出可能額に占める「IMFデリンク」の額は他の国と異なる)

上記図表4では、参加している国は14ヵ国(香港を中国と別にカウントした場合)ですので、マルチ化していなかった場合、契約本数は91本(=14×13÷2)にも膨らんでしまいます。やはり、CMIMのかたちで一元的に管理する方がやりやすいのでしょう。

CMIMの悩み

ただし、CMIMの総額は2400億ドルで、たしかに巨額ではあるものの、アジア各国の経済的結び付きが強まる中で、国境を伝播した金融危機には、金額として必ずしも十分とはいえません。

実際、図表4のCMIMは、図表2に示した日本とアジア諸国との通貨スワップ協定と併存していますが、東南アジア諸国が個別に中国、韓国と締結しているスワップはほかにも存在します(図表5)。

図表5 東南アジア諸国が日中韓と締結する二国間通貨スワップ
契約当事国日中韓の提供通貨ASEANの提供通貨
日本/インドネシア227.6億ドルの米ドルか円ルピア(金額不明)
日本/フィリピン120億ドルの米ドルか円ペソ(金額不明)
日本/タイ30億ドルの米ドルか円バーツ(金額不明)
日本/シンガポール(※1)30億ドルの米ドルか円Sドル(金額不明)
日本/シンガポール(※2)1.1兆円150億Sドル
中国/マレーシア1800億元(267億ドル)1100億リンギット(266億ドル)
中国/インドネシア1000億元(148億ドル)ルピア(金額不明)
中国/タイ700億元(104億ドル)3700億バーツ(116億ドル)
中国/シンガポール(※3)3000億元(445億ドル)Sドル(金額不明)
韓国/インドネシア11兆ウォン(94億ドル)115兆ルピア(81億ドル)
韓国/マレーシア5兆ウォン(43億ドル)150億リンギット(36億ドル)

(【出所】日銀および各国中央銀行ウェブサイト等を参考に著者作成。なお、※1は通貨スワップ、※2は為替スワップ。※3については『じつは中星為替スワップが失効?事実なら、「大ニュース」だ』で触れたとおり、失効済みの可能性あり)

これで見ると、日本がASEAN諸国に提供しているスワップがいかに破格の条件であるかがよくわかります。というのも、中国や韓国が提供しているスワップは、金額自体は大きいものの、人民元や韓国ウォンなどを引き出しても、通貨危機の際に役に立たないからです。

いや、それどころか、中国や韓国が通貨危機になった場合には、これらの国が通貨スワップ・為替スワップを通じて中韓両国に通貨を取られたうえで、これらを国際的な市場で売り浴びせられる、という可能性すらあります。

つまり、CMIMを補完するはずの二国間通貨スワップが、むしろASEANを中韓発の通貨危機に巻き込むおそれすらあるのです。

ローカル化は歓迎すべき

こうしたなか、CMIMにローカル通貨建てスワップを並置しようとする試みがあります。

これは、以前、『ASEAN「ローカル通貨」スワップ構想の続報と検討課題』で紹介したとおり、現在は14ヵ国が参加するCMIMの引出可能通貨に、米ドルだけでなく各国の現地通貨を加えようとする構想です。

ASEAN「ローカル通貨」スワップ構想の続報と検討課題

この「ローカル通貨建てCMIM構想」に「続報」が出て来ました。

第22回ASEAN+3(日中韓)財務大臣・中央銀行総裁会議共同声明(2019年5月2日 於:フィジー・ナンディ)(令和元年5月2日付 財務省HPより)

フィジーで開かれた「第22回ASEAN+3」で声明文が公表され、これの第10項~第12項において、CMIMの改定について言及されているのです。

ただし、日本語版のホームページでは「ローカル通貨建てCMIM構想」の詳細について言及がなされていません。困ったことに、英語版のPDFファイルでしか開示されていないのです。

これは、簡単にいえば、「ローカル通貨の使用頻度を高めるために、CMIMの仕組みを使って各国の通貨を引き出せるようにしましょう」という構想のことです。

先ほどの図表4でいえば、たとえば日本が768億ドルを拠出し、384億ドルの引出可能額を持っていますが、この「引出可能額」を米ドルではなく、タイバーツやインドネシアルピアといった相手国の通貨(ローカル通貨)でも受け取れるようにしましょう、というものです。

その狙いについて、先ほどのPDFファイルの6ページにある “Annex General Guidance on Local Currency Contribution to the CMIM” から該当する下りを引っ張ると、次のとおりです。

In the context of growing uncertainty and a challenging external environment, particularly the growing demand for local currency usage in cross-border transactions in the region, increased mutual agreements on initiatives relating to the promotion of local currency usage and a greater role for local currencies as reserve currency, local currency contributions to the CMIM may be one enhancement option. (意訳)外部環境の不確実性などが増すなかで、とくにこの地域のクロスボーダー取引におけるローカル通貨建て取引の需要が増えていることを踏まえ、CMIMの多国間合意においてローカル通貨の使用を促進するとともに、ローカル通貨に決済通貨、準備通貨としての機能を持たせ、もってローカル通貨をCMIMに役立てることが重要である。

きわめて分かり辛い悪文ですが、わかりやすくいえば、これは新しいスワップを創設するという意味ではなく、あくまでも既存のCMIMの機能を強化するという意味であり、具体的には総額2400億ドルのCMIMにローカル通貨引き出し機能を付与する、ということでしょう。

具体的には、タイとマレーシアの企業の取引において、米ドルではなくタイバーツやマレーシアリンギットなどでCMIMから資金を引き出せるようにすることで、ローカル通貨を決済通貨とする動機が広まる、という考え方でしょう。

CMIMとABMIはセット

こうしたなか、あまり注目されていない論点が、債券市場です。

「債券(さいけん)」とは、「債権(さいけん)」と発音は同じですが、似て非なるもので、簡単にいえば、「借金を証券化したもの」のことです。国債も債券の一種ですが、企業が発行すれば「社債」、地方公共団体が発行すれば「地方債」です。

実は、財務省はかなり以前からアジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)を振興していて、アジア諸国にローカル通貨建ての債券市場を発展させようとしているのです。

冒頭で「発展途上国が外国から外貨でカネを借りる」という話題を紹介しましたが、その理由は、発展途上国(中国と韓国も含む)の場合、自国通貨が国際的に通用せず、自国通貨で外国からモノを買うことができないからです。

そして、自国通貨が国際的に通用しない最大の理由は、その国の資本市場が未発達で、その国の通貨を持っていても運用に困るからであり、逆に言えば、機関投資家が運用に使えるような債券市場があれば、その国の通貨が国際化する条件の1つが整うのです。

といっても、その国の通貨が国際化するためには、債券市場を育成しただけではダメで、資本規制を撤廃したり、法制度を整えたりすることも必要です。

余談ですが、国際法に反する判決を平気で下してくるような国の通貨が国際的なハード・カレンシーとなることはあり得ないといえるでしょう。

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人民元と中国

人民元の促進?まさか!

ただし、このCMIMのローカル通貨化を巡り、かなり誤解のある記事を発見しました。

韓経:「アジア金融危機なら人民元・日本円支援」(2019年05月03日10時19分付 中央日報日本語版より)

これは、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に昨日掲載された『韓国経済新聞』(韓経)のもので、このCMIMのローカル通貨化を「アジア地域で通貨危機が発生すれば中国人民元や日本円を通じた支援も可能にする合意」と述べています。そのうえで韓経は

アジア基軸通貨国の地位を確保しようとする中国はさらに歩幅を広げることになった/事実上、人民元を念頭に置いたものと解釈される

としているのですが、はたしてこれは本当なのでしょうか?

先ほどの “Annex” を読む限り、「ローカル通貨建て取引を促進する」という狙いがあると記載されているものの、「人民元の基軸通貨化」などとはヒトコトも書かれていません。いきなり「人民元の基軸通貨化」とは、少々議論が飛躍し過ぎです。

ちなみに、韓国は中国との間で保有していた通貨スワップ協定(3600億元/64兆ウォン)が2017年10月10日に失効していますが、これについては「失効していない」「口頭で契約延長に合意した」と言い張っている状況にあります。

そんな韓国にとっては人民元の国際化(と日本円の凋落)は都合が良いとでも言うのでしょうか?

なんだかよくわからない記事です。

いずれにせよ、CMIMのローカル通貨化という話題については、財務省の情報開示が乏しいものの、周辺情報を調べていくと、単に「米ドルだけではなくローカル通貨での引出を可能にする」というだけのことであり、新しく「円建ての日韓通貨スワップを創設する」、といったものではないことは確かでしょう。

オマケ:AIIBは鳴かず飛ばず、人民元も中途半端に

ちなみに、中国が主導する国際開発銀行である「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)を巡っては、日本国内では、あまり国際金融に詳しくない界隈から、「バスに乗り遅れるな!」「日本も参加すべきだ!」といった感情的な意見が出ていたことも事実です。

ところが、日本は現在に至るまで、この「バス」に乗り込んでいません。

その結果、いったい何が生じたのでしょうか?

これについては、『「バスに乗り遅れた日本」と鳴かず飛ばずのAIIBの現状』でも触れたとおり、AIIB自体が惨憺たる有様であり、結果として「バスに乗り遅れたこと」の弊害は、何1つとして発生していないと考えて良いでしょう。

「バスに乗り遅れた日本」と鳴かず飛ばずのAIIBの現状

ただし、中国の「金融覇権」という野望が潰えたと考えるのは尚早です。『中国の国際金融戦略の現状は鳴かず飛ばずだが、警戒は必要だ』でも報告したとおり、現状、人民元の国際的な通貨としての地位上昇は進んでいませんが、中国は簡単に野望を諦める国でもないからです。

中国の国際金融戦略の現状は鳴かず飛ばずだが、警戒は必要だ

このように考えると、中国は引き続き、あらゆる機会を使って「覇権国」の地位を狙いに来るでしょうし、金融面でも利用できるものは利用しようとするのではないかと思います。

引き続き、警戒は必要でしょう。

※本文は以上です。

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  • 2019/11/28 17:30 【時事|韓国崩壊
    ついに対韓ビール輸出がゼロに!そのインパクトとは? (28コメント)
  • 2019/11/28 11:15 【時事|韓国崩壊
    文喜相氏の「解決策」を絶賛する中央日報社説 (39コメント)
  • 2019/11/28 06:00 【韓国崩壊
    硬派メディア、「安倍総理が文喜相氏の基金案に共感」 (21コメント)
  • 2019/11/28 05:00 【数字で読む日本経済
    貿易統計に見る「意外と貿易依存度が低い日本」の現状 (8コメント)
  • 2019/11/27 18:30 【時事|国内政治
    立民、桜を見る会に対抗しシュレッダーを見る会を開催 (40コメント)
  • 2019/11/27 14:00 【時事|韓国崩壊
    輸出管理の本質は「政策対話から3年半逃げる韓国」 (35コメント)
  • 2019/11/27 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事 2019/11/27(水) (80コメント)
  • 2019/11/27 10:15 【時事|韓国崩壊
    韓国国会議長による自称元徴用工問題「解決」策が判明 (27コメント)
  • 2019/11/27 05:00 【韓国崩壊
    オプション理論から見る米韓関係 (36コメント)
  • 2019/11/26 17:40 【時事|韓国崩壊
    鈴置氏「GSOMIA後の米韓関係」に関する最新論考 (23コメント)
  • 2019/11/26 13:15 【数字で読む日本経済
    「消費税20%」で日本をぶっ壊す!悪の組織・財務省 (22コメント)
  • 2019/11/26 10:45 【時事|韓国崩壊
    韓国メディア「感情対立煽るな、韓日お互い自制せよ」 (49コメント)
  • 2019/11/26 05:00 【韓国崩壊
    韓国「日本が輸出規制を1ヵ月で撤回すると言った!」 (49コメント)
  • 2019/11/26 05:00 【雑感オピニオン
    お詫び:「数字で読む日本経済」シリーズについて (3コメント)
  • 2019/11/25 12:36 【時事|韓国崩壊
    菅官房長官、「政府として韓国に謝罪した事実はない」 (43コメント)
  • 2019/11/25 10:30 【時事|韓国崩壊
    月曜の韓国メディアの反応と「ウソツキ国家への対応」 (50コメント)
  • 2019/11/25 06:00 【韓国崩壊
    GSOMIA後の文在寅氏は「水に落ちた犬」なのか? (26コメント)
  • 2019/11/25 05:00 【数字で読む日本経済
    数字で見る、「在留外国人数」とわが国のグローバル化 (6コメント)
  • 2019/11/24 21:45 【時事|韓国崩壊
    韓国政府、「安倍は良心の呵責はないのか!」と逆ギレ (49コメント)
  • 2019/11/24 13:15 【マスメディア論|時事
    朝日出身者「支持率下がらないのは国民の側にも問題」 (64コメント)
  • 2019/11/24 05:00 【韓国崩壊
    土曜日の鈴置論考とGSOMIA騒動の「本当の教訓」 (75コメント)
  • 2019/11/23 16:00 【読者投稿
    【読者投稿】GSOMIA[事実上の延長」の真否 (45コメント)
  • 2019/11/23 14:00 【読者投稿
    【読者投稿】在韓日本人が見た、韓国の教育の実態 (28コメント)
  • 2019/11/23 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事 2019/11/23(土) (75コメント)
  • 2019/11/23 10:10 【時事|韓国崩壊
    さっそくGSOMIA問題を曲解報道する韓国メディア (55コメント)
  • 2019/11/23 05:00 【韓国崩壊
    韓国の「GSOMIA瀬戸際外交」は日本の勝利だが… (42コメント)
  • 2019/11/22 22:41 【時事|韓国崩壊
    【資料】GSOMIA等を巡る日韓両国政府の発表内容 (40コメント)
  • 2019/11/22 18:38 【時事|韓国崩壊
    韓国政府の「GSOMIA条件付き延長」をどう見るか (84コメント)
  • 2019/11/22 17:15 【時事|韓国崩壊
    韓国政府、GSOMIA破棄を「条件付き撤回通告」? (49コメント)
  • 2019/11/22 16:15 【時事|韓国崩壊
    【速報】韓国「GSOMIAパッケージディール」提案 (18コメント)
  • 2019/11/22 14:30 【時事|韓国崩壊
    GSOMIA特集 「困ったら逆ギレ」の黄金パターン (22コメント)
  • 2019/11/22 11:22 【時事|韓国崩壊
    中央日報「韓日両国首脳が目を覚ますことを望む」 (28コメント)
  • 2019/11/22 09:45 【時事|韓国崩壊
    米国防総省、「朝鮮日報は米軍一部撤収報道の撤回を」 (20コメント)
  • 2019/11/22 05:00 【数字で読む日本経済
    数字で見る、「日本人はどこの国に居住しているのか」 (10コメント)
  • 2019/11/21 17:40 【時事|韓国崩壊
    GSOMIA終了前提?聯合ニュース、続々記事配信中 (35コメント)
  • 2019/11/21 12:00 【時事|韓国崩壊|金融
    「GSOMIA後」、大量格下げと金融不安も焦点に (41コメント)
  • 2019/11/21 10:00 【時事|韓国崩壊
    中央日報「安倍総理が徴用工財団案評価」、本当? (27コメント)
  • 2019/11/21 06:00 【経済全般
    訪日旅客減少はむしろ観光客の中韓依存を是正する好機 (21コメント)
  • 2019/11/21 05:00 【数字で読む日本経済
    数字で見る、「中韓は日本経済にとって不可欠」の真相 (8コメント)
  • 2019/11/20 12:22 【時事|国内政治
    「裏取りを軽視」?ここまで来ると怪文書の類いでは? (28コメント)
  • 2019/11/20 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事 2019/11/20(水) (97コメント)
  • 2019/11/20 10:00 【時事|韓国崩壊
    文在寅氏「GSOMIA巡り最後の瞬間まで努力する」 (48コメント)
  • 2019/11/20 06:00 【韓国崩壊
    土曜日以降の焦点はGSOMIA破棄より米韓同盟消滅 (41コメント)
  • 2019/11/20 05:00 【数字で読む日本経済
    外貨準備と通貨スワップ 通貨危機を防ぐための仕組み (13コメント)
  • 2019/11/19 18:30 【時事|外交
    安倍総理を「度量が狭い」と決めつける人物が知日派? (42コメント)
  • 2019/11/19 14:00 【時事|国内政治
    史上最長の安倍政権、次なる焦点は「来年8月24日」 (22コメント)
  • 2019/11/19 11:45 【時事|韓国崩壊
    韓国「韓日が水面下で協議」、「米国が対日圧力」 (28コメント)
  • 2019/11/19 05:00 【韓国崩壊
    米韓同盟消滅、「大きく変わるときはあっけないもの」 (50コメント)
  • 2019/11/19 05:00 【数字で読む日本経済
    「国際収支のトリレンマ」に逆らった国・スイスの末路 (13コメント)
  • 2019/11/18 15:30 【マスメディア論|時事
    NHKの肥大化を巡る東洋経済の特集記事に対する雑感 (25コメント)
  • 2019/11/18 12:00 【時事|韓国崩壊
    GSOMIA終了まであと4日半:ご都合主義的な主張 (41コメント)
  • 2019/11/18 06:00 【韓国崩壊
    GSOMIA消滅目前で韓国メディアから悲鳴が上がる (52コメント)
  • 2019/11/18 05:00 【数字で読む日本経済
    欠陥通貨・ユーロとギリシャ問題を日本に当てはめるな (15コメント)
  • 2019/11/17 13:45 【時事|国内政治
    「アベの陰謀、許すまじ!」 著名人逮捕もアベのせい (46コメント)
  • 2019/11/17 06:00 【韓国崩壊|国内政治
    GSOMIA問題は「省益の抑え込み」に成功した好例 (46コメント)
  • 2019/11/17 05:00 【数字で読む日本経済
    通貨の機能と外貨準備統計から見た日本円の実力とは? (4コメント)
  • 2019/11/16 12:00 【読者のページ
    読者雑談専用記事 2019/11/16(土) (135コメント)
  • 2019/11/16 06:00 【時事|韓国崩壊
    そもそもなぜ、米国は「韓国にだけ」圧力を掛けたのか (99コメント)
  • 2019/11/16 05:00 【数字で読む日本経済
    日本は世界最大の債権国だが、手放しに喜べない理由も (13コメント)
  • 2019/11/15 17:15 【時事|外交
    マイケル・グリーン氏、「日本が譲歩すべき」の無責任 (38コメント)

  • 著者のコンタクト先:info@shinjukuacc.com

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