【夕刊】祝・レアアース発見!自前資源と脱中国を考える

本日は「夕方」でもないのに「夕刊」を配信します。本日の話題は、少し嬉しい自前資源に関するものです。

久しぶりに嬉しいニュース

レアアースの効率的な採集

すでにいくつかのメディアに取り上げられていますが、日本領である南鳥島周辺の排他的経済水域(EEZ)付近で、大量のレアアースが発見されたそうです。

世界需要の数百年分のレアアース、南鳥島周辺-資源戦略に追い風(2018年4月11日 14:11 JST付 Bloombergより)

メディアによっては「全世界の需要の数百年分」と派手に報じており、これは非常に明るいニュースです。もっとも、南鳥島周辺に大量のレアアースが眠っているであろうことは、すでにかなり以前から、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が指摘しています。

海洋鉱物資源の概要/レアアース泥(JOGMECウェブサイトより)

ただし、JOGMECによると、これらのレアアースについては、どうやって環境を汚さずに海の中から泥を集め、引き揚げるかという技術的な問題が未解決だそうです。しかし、日本の技術が「日進月歩」であることを踏まえるならば、技術の確立は時間の問題だと信じたいところです。

何より、日本のEEZや領海などで、レアアースだけでなく、さまざまな資源が発見されていることは、良い兆候です。青山繁晴参議院議員が主張する「メタンハイドレード」などと並び、自前資源が豊富に開発できれば、日本の安全保障上も間違いなくカードとして機能するからです。

湯水のごとく労働力を投入する中国

ところで、この手の記事を読んで誤解してしまいがちな論点があります。それは、レアアース自体、別に「レアなもの」ではない、という点です。というよりも、私などは、「レアアース」と聞くと、菅直人政権時代の中国による報復を思い出してしまいます。

これは、2010年9月に発生した、中国漁船の尖閣諸島不法上陸事件に対する菅直人政権の対応をめぐり、中国政府側が対日制裁として、レアアースの禁輸を打ち出した事件です。私の記憶ベースですが、レアアースの産出量では、品目によっては中国が世界シェアの9割を占めていたほどです。

ただ、中国が世界シェアの9割を握った理由は、別にレアアースの9割が中国に分布していたから、ではありません。中国が安い労働力を湯水のごとく投入した結果、他国から見てコスト競争力が失われ、結果的に市場に出回るレアアースが中国産品で占められるようになっただけのことです。

たしかにレアアースは採掘にカネが掛かりますが、逆に言えば、カネさえ掛ければ中国以外の国・地域で産出することができます。実際、中国が輸出制限を掛けたことをきっかけに、中国以外の国・地域でのレアアース産出が再開されることになりました。

それだけではありません。日本企業はレアアースの再利用を促進し、さらに技術革新により使用量そのものを減らしました。その結果、いったいなにが起きたのでしょうか?

2010年のレアアース禁輸措置から約2年後の2012年10月24日付で共同通信が配信した『中国、レアアース輸出大幅減』という記事(※リンク切れ)によれば、日本企業は中国産レアアースの使用量を激減させ、その結果、中国がレアアースのシェアを失ってしまったのです。

中国がこの禁輸措置を打ち出した理由は、日本政府を揺さぶるために、まずは日本企業に打撃を与え、日本企業から日本政府に対する圧力という形で、尖閣諸島の領有権を放棄させるという流れだったと考えられます。

しかし、実際には日本企業の多くが「中国リスク」を強く認識し、中国産のレアアースからのシフトを進め、中国への資源依存度を落とすることで、結果的に中国がコストを掛けて産出したレアアースが売れなくなってしまったのです。要するに中国は自分で自分の首を絞めてしまったのです。

「大人の対応」の間違い

ところで、2010年9月の「尖閣諸島不法上陸事件」のときに、さまざまな報道を見ていて痛感したことが1つあります。それは、「尖閣問題で中国を刺激しすぎてはならない」「日本が大人の対応を取るべきだ」といったトンチンカンな論説が多すぎることです。

中国という国は、自国の都合を優先するあまり、世界のルールを捻じ曲げ、外国に対しても平気で牙を剥く国であるということは、私たちが認識しなければならない事実です。

レアアース禁輸事件だけではありません。2005年や2012年には中国全土で「反日デモ」の嵐が吹き荒れましたし、フィリピンに対しては南シナ海の島嶼部の領有権争いをめぐってバナナの輸入禁止措置を導入するなど、周辺国に対しても威圧的に接する国です。

そして、「大人の対応」(というより中国に屈服する態度)を取る日本企業は、中国に生殺与奪の権を握られている証拠でしょう。余談ですが、1990年代から2000年代にかけ、中国投資を煽った日本経済新聞の罪深さは、いまさら指摘するまでもありません。

脱中国の動き

最近、TPPイレブン(米国を除く11ヵ国が加盟する環太平洋パートナーシップ)の発足に関する話題を見掛けることが増えて来ました。これは、「きちんと国際的な商業ルールを守る国同士、関税を下げ、経済交流を活発化させましょう」、という協定だと理解すれば良いでしょう。

中国(や韓国)がTPPに参加するためには、まずは国際的なルールを無視する姿勢を改めなければなりません。とくに中国の場合、問題となるのは、安価な労働力を無理やり投入し、ときとして人権や環境を無視してまで、格安でさまざまな製品を生産するという姿勢です。

しかし、日本企業の多くが「中国リスク」を痛感したという意味では、TPP発足に先駆けて、すでに2010年のレアアース禁輸事件が大きな転換点だったことは間違いないでしょう。実際、近年ではタイやベトナムなど、「中国ではない国」に進出する企業が増えてきた、という話題を聞くこともあります。

ただし、「脱中国」という流れについては、いずれ、きちんとしたデータをもとに、最新状況について議論したいと思います。よって、引き続き当ウェブサイトのご愛読とお気軽なコメントを賜りますと幸いです。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

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読者コメント一覧

  1. めがねのおやじ より:

     < 夕刊の配信ありがとうございます。
     < 南鳥島の日本のEEZ内の海底からレアアースが大量に埋蔵されているというニュース、とても嬉しいです。世界の780年分?とかの埋蔵量があるそうですね。8年前の中国の対日レアアース輸出禁止では、日本が逆手を取って、あまり使わなくてもできるよう、また再利用等で中国を屈服させました。『日本の技術は素晴らしい!』と当時快哉を叫んだものです。また今回のレアアース発見によって隣国が羨ましそうにコチラを見てますが、無視ですね。
     < 中国は大国とはいえ、やる事が(仕返し等)子供染みている。大人げないんです、いっつも。自己中です。それぞれの局面で『大人の対応』といって日本は堪忍袋のヒモを緩めてますが、主張はするべき。ああいう国は自分たちは偉大だと、どこかで勘違いしてますので、正直、海洋国家の日本人とは合わないです。中国から脱中国へ更に日本企業、他国企業もシフトを更に進めるべき。紛争や戦争を簡単にすることはできないですが、TPPにしても中韓は入れず、もし将来入れるにしても最大限の譲歩を得るべきです。シナに対しては用心深く接するに限りますね。また、共産党一党独裁が崩壊しても、あの国をまとめる、分割統治でも大変。いずれにせよ日本とは相性悪いと存じます。
     < 失礼します。

  2. オールドプログラマ より:

    中国のレアアース輸出禁止は日本側の勝利で終わりましたが、あの時ベトナムやインドネシアでは日本の弱みにつけ込み、レアアースを中国から易く買い、日本に高く売って儲けていました。彼等には何の罪悪感もありません。ビジネスはビジネスだと。
    また、最近の米中貿易戦争で中国が大豆の輸入に関税を掛けて報復すると報道されましたが、実際に発動された場合、上記レアアースと同じようにベトナムやインドネシア、オーストラリア、ブラジル島が米国から安く買って中国に高く売るのは必然だと思います。米国の輸出は相手が違うだけで問題ばく、中国が一方的に損をすることになると思います。歴史は繰り返すですから。
    まあ、中国人は米国をマスターと思っていますから大幅な譲歩をすると思いますが。

  3. 歴史好きの軍国主義者 より:

    いつも知的好奇心を刺激する記事の配信有り難うございます。

    当方はあまのじゃく故に、レアアースを始めとする各種鉱床が小笠原近海にある事は「無いよりはましですが、めでたさは中くらい」かと思っています。

    割引の一つ目は多くの場合、天然資源の存在はそこの住民にとり外から不条理な災いや戦争を呼び込むモノだからです。
    アメリカ西部のネイティブアメリカンや南アフリカにあったトランスヴァール共和国やオレンジ自由国。今現在のアフリカ各地。

    強者の欲望とそれに伴う弱者の悲劇は今も絶える事はありません。

    割引の二つ目で最大の点は天然資源が有るのが小笠原諸島である事です。

    小笠原諸島は江戸時代に一度実効支配を失った前列が有ります。

    中国にとっては歴史書等を通じて南シナ海の九段線よりよっぽど現実的な根拠に基づいて領有を主張出来ると思います。

    したがって日本人は自国の安全保障に関してより意識を高める必要が有ります。
    まあ普通の国ならこんなこと懸念不要ですが、この国では普通の国で当たり前の事を軍国的行動と見なす売国奴共が自称クオリティペーパーであると詐称していますので。

    あ~あ、旭日旗新聞早く潰れてくれないかな(笑)

    以上です。長文失礼しました。

    1. 歴史好きの軍国主義者 より:

      当方の中くらいの喜びをさらに減らす残念なお知らせを見てしまいました。

      中国、日本のEEZ内でレアアースなど採取

      https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180414-00050037-yom-int

      -以下引用(「」付けは当方)-

      日本の排他的経済水域(EEZ)内で、中国が日本政府の同意を得ずに海底調査し、
      豊富な資源を含む「海底熱水鉱床」やレアアース(希土類)、
      希少な深海生物などの海底資源類を採取していたことが明らかになった。
      (中略)
      中国の海洋調査船がEEZ内に進入し、日本の同意なしに調査を繰り返してきたことは
      「海上保安庁などが確認していた」が、具体的な調査内容は明らかになっていなかった。
      中国側は調査内容を論文にすることで、学問上の優先権(先取権)を得ることや
      、大陸棚に関する自国の主張を補強して海洋権益を拡大することを、狙っているとみられる。

      -引用終わり-

      え、「海上保安庁などが確認していた」????

      当方は呆然です・・・。
      警告は?
      退去への実力行使は?
      抗議は?
      経済制裁は?
      軍事制裁は?
      海上保安庁も害務省も一切上記の行動無し?
      論文という結果を多数出された?

      これって・・・。

      調査された場所はもう「日本のEEZで無い」でしょう。
      進入されたEEZの根拠となる土地は「中国の領土」でしょう・
      つまり中国が無断で統治行為を積み重ねた南西諸島や小笠原諸島は
      中国の実効支配に置かれる日が一歩近づいたわけです。

      外交・統治は前例の積み重ねです。
      前例・慣習を破る行為には全力で抗議して撤回させないといけません。
      前例を破られた挙句、結果まで出されたら、其れが新たな前例になります。

      上記の記事の場合、中国は日本EEZ内での資源開発を「自国のEEZで開発するのだから問題ない」と今後見解します。
      今まで積み重ねてきた行為を証拠として。

      日本政府は他国によるプロパガンダ放置を傍観して国益を損なった愚を学習していないのでしょうか。
      愚か過ぎます。

      南西諸島と小笠原諸島を押さえられたら日本のシーレーンは中国に完全に押さえられます。
      良くて中国の属国。最悪中国に併合でしょう。

      どちらの場合も日本人男性(併合住民)を使って中国の対外侵略戦争が発生します。
      中国の歴史を見れば明らかです。国共内戦の国民党残党は朝鮮戦争に赴きました。
      文化大革命の残党はベトナムのジャングルで死ぬためにへ行かされました。
      自国民でこれです。
      東南アジアかインドか中東か分かりませんが日本人男性は中国の侵略の尖兵として、
      また義勇軍として「前線で銃弾に倒れるまでの戦い」に赴くことになります。

      「戦争を嫌った結果、必然として戦争が行われる。」

      かつて欧州で発生しましたが、今度は日本人が道化を演じそうです。

      駄文は以上です。書いていて当方も気分が重くなりました。
      皆様の気分を害し申し訳ありませんでした。

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