【朝刊】日韓関係:「言外のメッセージ」を読む

読者の方々から頂いたコメントを読んでいると、いろいろと着想が出て来ます。昨日、コメントを読んでいて思うところがいろいろありましたので、当ウェブサイトの「人気コンテンツ」である日韓関係を巡って、その視点を取りまとめておきたいと思います。

読者に教えていただく時代

コメント自由の原則

当ウェブサイトでは、読者の方からのコメントを自由に設定しています。

その趣旨は、「民主主義社会を支えるのは、知的好奇心を刺激する自由闊達な議論だ」とする私自身の考え方があるからです。このため、当ウェブサイトの記事の内容に沿っていれば、たとえ当ウェブサイトの意見に対する反論ないし批判などであっても、自由にコメントを打ち込んでいただくことができます。

実際、このウェブサイトは私が1人で執筆しているため、どんなに気を付けていても、どうしても議論が独り善がりになりがちですし、誤字・脱字、誤植など、文章の校正が甘い部分が出てきてしまいます。その意味で、叱咤激励は非常に助かります。

なにより、読者の方同士でも議論が起こることがありますし、私自身が気付かなかった点を読者コメントで気付かせていただくという側面もあります。世の中のオピニオン・サイト、ブログ・サイト等を閲覧していると、自分を批判するコメントは排除する、という考えの人もいるようですが、これはもったいない話です。

ただし、当ウェブサイトでは「コメント自由」と述べていますが、単なる広告リンク、ウィルスサイトへの誘導コメント、当ウェブサイトと関係のないコンテンツ、犯罪予告、わいせつ、その他公序良俗に反するものなどは、スパム判定ソフトで排除していますし、万が一すり抜けたとしても事後的に削除します。

あくまでも「記事の内容に即したコメント」をお願いしたいと思います。

こんな鋭いコメントが読めるなんて!

こうしたなか、私が頂いたコメントを読んで、「そういえばそうだな」と改めて気付くことがあります。その典型例が、火曜日に当ウェブサイトに掲載したコンテンツ『【昼刊】鈴置さん、韓国はお嫌いですか?』に頂いた、「めがねのおやじ」様と「りょうちん」様からのコメントです。

まず、「めがねのおやじ」様のコメントには、次のようなくだりが含まれています。

北は茶番の何か核施設に関する破棄のジェスチャーをしたようですが、そんなものに米国は騙されていません。

次に、「りょうちん」様のコメントには、次のような指摘があります。

外交の場では、北朝鮮の様な直接的な非難は三流のすることで、実際のホンネはノンバーバルコミュニケーションにあるというのが実際

私はこの2つのコメントを拝読し、改めて気付かされたのですが、とくに政治や外交に関する情報を読み解く際には、ジェスチャー、あるいは「ノンバーバル(言外の)コミュニケーション」、すなわち「言外のメッセージ」に注目することが必要だ、という点です。

マス・メディアの報道を眺めていると、その場のテーマを追いかけている記事が非常に多いように思います。しかし、ウェブ評論家であれば、ニュースの速報性でマス・メディアに勝つことはできませんが、「連綿とした線として流れを追いかける」という点で、十分にマス・メディアに勝つことができるはずです。

とくに、さまざまなニュースをただ流し読みするだけでなく、いくつかのテーマをつなげてあげることで、「実際のところはどうなのか」という点を探るのは、ジャーナリストではなく、私のようなウェブ評論家であっても十分に可能な仕事です。

そのことに気付かせていただいたという点で、「めがねのおやじ」様、「りょうちん」様には深く感謝申し上げたいと思います。

外交を読むポイント

北朝鮮の立場を代弁する朝日新聞

さて、せっかくなので、本日は北朝鮮問題について、少しだけ振り返っておきたいと思います。なぜなら、「北朝鮮問題」とは、結局、日本国内の問題だからです。これについて参考になるのは、次の朝日新聞の社説でしょう。

(社説)ミサイル防衛 陸上イージスは再考を(2018年6月27日05時00分付 朝日新聞デジタル日本語版より)

ひと昔前の朝日新聞と言えば、「クオリティ・ペーパー」を自称していて、大学教授をはじめとするインテリ層に「朝日新聞ファン」が多かったように思えます(いや、今でもそうかもしれませんが…)。しかし、インターネットが普及したことで、朝日新聞の報道が信頼できないと思う人は急増しているのではないでしょうか?

実際、リンク先の朝日新聞の社説を読んでいただければ、この新聞が北朝鮮や中国などの国益に沿った主張をしているのではないかとの疑いを抱くのに十分です。いや、もっと酷い言い方をすれば、朝日新聞は、あたかも北朝鮮の手先であるかのごときです。

なぜなら、朝日新聞は、日本が山口県などに配備を予定している陸上イージス(いわゆるイージス・アショア)を巡り、「米朝両国は対話ムードに入り、緊張は緩和される方向になった」などと決めつけ、「北朝鮮の脅威は低下している」から「配備を見直せ」などと主張しているからです。

しかし、先週末に米国のマイク・ポンペオ国務長官が北朝鮮を訪問し、北朝鮮との間で核放棄のプロセスを詰めましたが、北朝鮮はポンペオ長官が去った直後に米国を強く批判する声明を発表しました(『ポンペオ長官訪日の詳細を読む』参照)。

このことは、北朝鮮との緊張が緩和されたとはいえないという証拠でしょう。

日本は引き続き「日米韓3ヵ国」で緊密に連携し、北朝鮮に核放棄を迫る方針を堅持しています。

米韓の間を取り持つ日本

さて、ここでポイントになるのが、先ほど引用した読者コメントです。「りょうちん」様は、

今回ポンペオ国務長官がソウルを素通りしたのとか、引用記事の「ポンペオ米国務長官と河野太郎外相、康京和韓国外相」の三者の記念写真をわざわざ河野太郎外相が腕を交差させて握手するというのは、交錯する米韓関係をなんとかつなぎ止めてるのは日本だよという状態を表しているというのはうがち過ぎでしょうか。

と述べていますが、私は「うがち過ぎ」ではないと思います。

米国が韓国に対し、相当の不信感を抱いているという点については、今さら指摘するまでもないでしょう。

朴槿恵(ぼく・きんけい)前大統領は米中二股外交を大胆に推進し、あの温厚なバラク・オバマ前大統領も韓国には激怒していたとされますし、現在の文在寅(ぶん・ざいいん)大統領は北朝鮮の手先として働いています。これで米国が激怒しないわけはありません。

ちなみに、先ほどのコメントにあった「ノンバーバル(言外の)コミュニケーション」という指摘は、米韓関係を眺めていると、痛いほど伝わって来ます。

たとえば2015年10月に当時の朴槿恵大統領が訪米した際、当時のオバマ大統領は朴槿恵氏との面会時間を30分程度しか設けず、また、オバマ大統領自身が主催する晩餐会ではなく、バイデン副大統領が主宰する午餐会で接しました。オバマ大統領がいかに朴槿恵大統領に怒っていたかの証拠です。

また、それから2年後の2017年11月にドナルド・J・トランプ大統領が訪韓し、米軍基地を慰問した際、文在寅大統領は「サプライズ」で米軍基地に登場。怒ったトランプ氏は、昼食会でわざと文在寅氏と1人置いて座り、隣り合わせにならないようにしました。

つまり、米韓関係の悪化は、すでに韓国側は朴槿恵、文在寅の両政権時代を通じて、米国側はバラク・オバマ、ドナルド・トランプの両政権時代を通じて醸成されているものであり、私たち日本にとってはいかんともしがたいものです。

しかし、安倍晋三総理大臣は、ことあるごとに「日米韓3ヵ国連携」と提唱し、米国と韓国を強引に結び付けようとしてきました。その理由は非常に簡単で、現在の日本には「日本国憲法第9条第2項」という制約があり、事実上、日本が主体となった自衛戦争ができないからです。

北朝鮮の脅威を封じ込めるためには日本単独で対処できず、やむなく米国と「在韓米軍」との連携が必要です。だからこそ、「日米韓3ヵ国連携」が、安倍総理のキーワードとなっているのです。

日韓関係は別問題

日本は韓国をどう思っているのか?

ところで、米国が韓国を疎ましく思っているらしいという点は何となくわかるのですが、では、日本は韓国をどう思っているのでしょうか?ここに、2つのキーワードが隠れていると思います。それが、「日米韓3ヵ国連携」と「マネージ」です。

現状、安倍総理は「日米韓3ヵ国連携」が必要だと主張し続けていますが、必要なのはあくまでも「日米韓3ヵ国連携」であって、「日韓2ヵ国連携」ではありません。実際、ここ半年の安倍総理の発言を読んでも、「日韓2ヵ国連携」という言葉は出て来ません。出てくるのは「日米韓3ヵ国連携」です。

一方、日韓2ヵ国間の関係を巡って、安倍総理、河野太郎外相の共通する発言が、「マネージ」です。これは、

日韓両国関係には困難な問題があるが、これを適切にマネージしつつ、日韓関係を未来志向で前に進めていけるよう、協力していく」(2017年12月19日付の河野太郎外相の発言より)

といった文脈で用いられるものですが、早い話が「これ以上悪化しないように管理する」、という意味です。

安倍総理「韓国とは価値を共有しない」』、『【昼刊】外務省、遅まきながらも韓国を「単なる隣国」に格下げ』でも触れましたが、いまや日本政府は韓国を「基本的価値」どころか「戦略的利益」すら共有していない国だとみなしています。

ケーキ外交の匠

また、安倍総理は5月に日中韓3ヵ国サミットで訪日した文在寅氏に、「大統領就任1周年記念」と称したサプライズのケーキを贈呈しましたが、このケーキが非常に雑なつくりです(図表)。

図表 まことに雑なケーキ

(【出所】韓国大統領府HP)※クリックで拡大

生クリームで真っ白なスポンジケーキの上にイチゴが17個乗っけられ、ホワイト板チョコの上に就任1周年を祝う韓国語のメッセージが手書きで書かれているのですが、それと同時に、非常に興味深い考察の対象でもあります。

まず、スポンジケーキ自体、非常にきれいに塗られています。これは生クリームで塗ったのでしょうか?そうだとしたら、相当に高い技術力です。また、イチゴにもコーティング処理が施されているようにも見えますし、真っ白にイチゴの赤が映えます。白地に赤といえば日本国旗や旭日旗を思い起こしますね。

しかし、よく見ると、イチゴの大きさも形も設置されている場所もてんでバラバラで、この手のケーキにありがちなホイップクリームなども乗っていません。つまり、相当に高い技術力を使い、わざと雑に作ったのがバレバレです。

実は、このケーキに日本政府の韓国に対する見方が凝縮されているように思うのです。というよりも、かなり高い技術力で、イチゴをわざとデタラメに配置したケーキを作成し、相手に提供したということ自体、日本が韓国を大切にしているのか、そうではないのかが一目でわかります。

言外のメッセージを読むべき

このように、「そういえばあの話はこうだった」と思い出していくと、実は、日本政府・安倍総理・河野外相から、けっこうたくさんのメッセージが出ていることに気付きます。

あくまでも私自身の理解に基づけば、安倍政権が考える現在の日韓関係とは、「仕方なくお付き合いしている単なる隣国」です。しかも、「放っておけばさらに関係が悪化する可能性があるからこそ『マネージ』しつつ、日韓2ヵ国間ではなく米国を引き入れて『日米韓3ヵ国協力』とする」というのが基本方針でしょう。

つまり、流れとして明示すると、次のとおりです。

  • 政権発足時は「基本的価値と利益を共有する最も重要な隣国」とみなしていた
  • 朴槿恵政権が日本を敵視し続けていたが、それでも安倍政権は粘り強く対話を呼びかけた
  • 2015年ごろに安倍総理の米議会演説や世界遺産登録などを公然と妨害したのも我慢した
  • 2015年12月には日韓慰安婦合意で韓国に大幅に譲歩した
  • 2016年には日韓関係は好転したかに見えたが、朴槿恵政権が「ろうそくデモ」で倒れた
  • 文在寅政権が発足し、日本と米国の北朝鮮非核化戦略を公然と妨害し始めた
  • 日本としては今すぐ在韓米軍が撤退するのは困る
  • 米国はすでに文在寅政権を見限ろうとしているが、それを引き留め、「日米韓3ヵ国協力」を提唱している

もしこの理解が正しければ、日韓関係を巡る今後の展開を読むのも非常に簡単です。

おそらく、日韓関係は当面、このままで行くのだと思います。具体的には、「日本が憲法改正に成功し、自力で国防できる国になるまで」続きます。しかし、逆に改憲が実現すれば、日韓関係をマネージする必要も、日米韓3ヵ国連携にこだわる必要もなくなる、ということです。

安倍総理は現時点で「日韓断交をする」とはヒトコトも述べていませんが、安倍政権関係者の言外のメッセージをつなぎ合わせていけば、どうも安倍総理には日韓関係を無条件に継続する意思があるのかと言われれば、それもまた疑問だというのが、私の率直な感想なのです。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 非国民 より:

    マネージには困難な状況でもなんとかやりくりするという意味があるから、河野外相はその意味で使ったのではないかな。韓国は疲れる相手だよね。台風の進路のように純粋に科学技術的なことでも日本側に針路をとるなんて発表しておいて、最後には直撃だから、もうどうしようもないよね。

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