【夕刊】米韓同盟終焉を見据え、国防予算増だけで済ますな

日本では先月、自民党の政調が防衛計画の大綱見直しなどを安倍総理に提言しています。しかし、防衛予算の増大はもちろん大事ですが、それと並んで日本にとって重要なことは、米韓同盟が消滅し、対馬海峡が「最前線」となる覚悟を決め、「国内のゴミ掃除」をすることではないでしょうか?

日本の防衛予算増大に関心持つ韓国

先月末の自民党政調提言

すでに報じられているとおり、自民党の政務調査会は先月、防衛計画の大綱見直しなどを安倍総理に提案しました。

新たな防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画の策定に向けた提言/~「多次元横断(クロス・ドメイン)防衛構想」の実現に向けて~(2018年5月29日付 自由民主党HPより)

これは、「北朝鮮の核開発や中国の軍事予算の急拡大、ロシアの北方領土における軍備増強等、わが国の周辺情勢が大きく変化していることを受け、日米同盟の深化・拡大、友好国との協力を図りつつ、新たな防衛大綱を策定することが必要だ」、とする提言です。

自民党の政調は、「①脅威に応じた防衛力の強化」、「②同盟・友好国との連携と安全保障協力の強化」、「③必要かつ十分な予算、基盤の確保」を主張していますが、「同盟国」とは米国、「友好国」とは豪州、インド、英国、フランスですが、ここに韓国は含まれていません。

豪印英仏の4ヵ国は、いずれも民主主義国でもありますし、さらに豪・英・仏の3ヵ国は、日本が「外相・防衛相会合(2+2会合)」を開催している相手国でもあります。いわば、中国・ロシア・北朝鮮という「共通の脅威」に対し、「インド・太平洋・西側諸国」と連携しようとする姿勢を示したものだといえます。

私は、この自民党の政調の提言には深く同意しますし、国防費については十分な予算が確保されるように努めなければならないという指摘についても、まったくそのとおりだと思います。

なぜそれを韓国が注目するのか?

ところで、本日の韓国メディア『中央日報』日本語版に、こんな記事が掲載されていました。

日本、国防費2倍で自衛隊の攻撃能力高める(1)(2018年06月27日13時04分付 中央日報日本語版より)
日本、国防費2倍で自衛隊の攻撃能力高める(2)(2018年06月27日13時05分付 中央日報日本語版より)

無駄に長文ですが、途中までは自民党政調の提言をそのまま解説する内容ですので、あまり読む価値はありません。それよりも重要なのは、2ページ目の後半にある、次の記述でしょう。

今回の自民党の防衛大綱見直しに対する提言は対北朝鮮抑止力向上レベルなど前向きな側面もあるが、日本の敵基地攻撃能力保有と多用途空母運用などは域内の軍備競争を刺激するマイナス要因を内包しているため、北朝鮮脅威論に基づいた戦力増加論理が日本でも新たな争点になるとみられる。」(※下線部は引用者による加工)

この下りを読むと、日本が敵基地攻撃能力などを保有すれば「域内の軍拡競争を刺激する」ことになるとしていますが、この記載ひとつとってみても、少なくとも中央日報(あるいは韓国社会)が日本の国防力増強を「マイナス要因だ」「脅威だ」などと見ている証拠にしか見えません。

しかし、末尾にはこのような記載もあります。

「(中略)日本の対応が注目される。韓国の立場もこれと無関係でない。国防改革など安保懸案を解決していくためには米国との同盟を軸とする韓日安保協力が北朝鮮の非核化と域内の安定を同時に推進できるよう国民的な共感と共に「他山の石」の知恵を集める努力がいつよりも重要だ。」(※下線部は引用者による加工)

この中央日報の文章は支離滅裂で、何が言いたいのか、ちょっとよくわかりません。ただ、下線部に注目すると、「韓国は米国との同盟を軸に、日本との安保協力を進めるべき」と言おうとしているようにも思えます。いったい中央日報は、日本との安保協力を進めたいのか、進めたくないのか、どちらなのでしょうか?

韓国は実質的に「同盟国」ではないのだが…

ここでは、日本の側に立って、韓国との「安保協力」をどう進めるべきなのか(あるいは進めるべきではないのか)について、少しだけ考えてみましょう。

韓国は自由・民主主義国家であり、最高権力者である大統領は国民の直接選挙で選ばれますし、議会(定数300、一院制)も直接選挙で選ばれています。また、三権分立の仕組みも確立しており、見た目は法治主義国です。

しかし、それと同時に、韓国は日本に対し、国民レベルで悪感情を抱いている国でもあります。以前、『【昼刊】民間団体調査で日韓好感度逆転の衝撃』でも紹介しましたが、韓国では日本に対して好感を持っている人の割合が30%弱に過ぎません。

(※もっとも、日本の側で韓国に対して好感を持っている人の割合は22.9%で、好感度で「日韓逆転」が生じている点については、いちおう、付言しておく必要があると思いますが…)。

韓国が国民レベルで日本のことを信頼していないという点については、左派、右派を問わず、同意してもらえるでしょう。常識的に考えて、「国民レベルで信頼していない相手国」との間で同盟関係などが成り立つのでしょうか?

仮に日本の側に、韓国との間で防衛協力を進める意思があったとしても、韓国側にその意思が欠落していれば、そもそも同盟関係など成立しません。

現在の安倍政権は「北朝鮮の核開発などの脅威に対処するために、日米韓3ヵ国での連携が必要だ」と主張していますが、これはあくまでも「北朝鮮の脅威」に限定した話であって、中国やロシアと対決する際に韓国と協力する、という話ではありません。

さらに、北朝鮮の脅威に対処するために、韓国との連携が果たして必要なのかと疑問を持つ日本国民も増えて来ているのではないでしょうか?少なくとも私には、韓国との関係をこれ以上強化する必要性があるようには思えないのです。

米韓同盟終焉論

NBOの大人気シリーズ

さて、日経ビジネスオンライン(NBO)の大人気連載シリーズといえば、日本経済新聞社の元編集委員でもある「韓国観察者」の鈴置高史氏が執筆する『早読み深読み朝鮮半島』です。その最新版が、昨日、NBOに掲載されています。

米朝会談で崩壊した韓国の親米保守/演習中止は在韓米軍撤収、同盟廃棄を呼ぶ(2018年6月26日付 日経ビジネスオンラインより)

鈴置氏は長年、米韓同盟がいずれ消滅すると予言してきた人物です。もし米韓同盟が消滅し、韓国が「大陸チーム」(あるいは「レッドチーム」)に移籍てしまえば、対馬海峡が「最前線」になってしまうことを、私たち日本国民は覚悟しなければなりません。

鈴置氏は今回、「米韓軍事演習中止」を巡り、いずれ「米韓同盟の廃棄を招くものである」という視点から解説を加えているのですが、非常に残念ながら、私の目には鈴置氏の長年の「予言」が成就に向けて歩みを進めているように思えてならないのです。

「鈴置論」の詳細については、NBOで直接お読みください。日経IDを取得するなどの手間が必要ですが、こうした手間を掛けてでも読む価値があります。ただし、ここでは私が強く共感した下りを、1箇所だけ引用しておきたいと思います。

米韓合同軍事演習の中止が、直ちに米韓同盟の終焉を意味するものではありません。しかし、これについて鈴置氏は、

民間企業は実戦の毎日。だから演習の重要性にピンとこない人が多い。しかし毎日、実戦するわけではない軍には演習が必須です。ことに米韓という異なる国の軍が共同作戦に備える場合は、合同演習が欠かせません。/逆に言えば米軍は、合同演習もしない韓国軍と肩を並べて戦いたくはない。準備なしでの戦争は多大の損害をもたらすからです。」(※下線部は引用者による加工)

と述べ、米韓合同軍事演習の中止が継続すれば、米韓同盟終焉を予想させるものであることを示唆しています。だいいち、冷静に考えてみたら、北朝鮮が核廃棄の具体的な工程を約束したわけではないにも関わらず、いきなり米韓合同軍事演習を中止するのは、明らかに「何か別の狙い」があります。

それは、ずばり米国側の「韓国切り捨て」ではないでしょうか?

トランプ氏「韓国はカネを掛けて守るに値しない」

6月12日の米朝首脳会談と、それ以降のドナルド・J・トランプ米大統領の言動を巡っては、不可解な点もいくつかありますが、こと米韓軍事協力に関する限りは、米国側の動きは一貫しています。それは、ずばり米韓同盟の終焉に向けて動いている、ということです。

Holding back the “war games” during the negotiations was my request because they are VERY EXPENSIVE and set a bad light during a good faith negotiation. Also, quite provocative. Can start up immediately if talks break down, which I hope will not happen!(2018年6月17日 21:48付 ツイッターより)

ここでいくつかのメディアは “war games” を「戦争ゲーム」と訳していますが、ここは「朝鮮半島における米韓合同軍事演習」のことを指していると見て良いでしょう。以上を踏まえてトランプ氏のツイートを意訳すると、次のようなニュアンスでしょうか。

軍事演習の中断を指示したのは私自身の決断だ。なぜならとてもカネが掛かるからだし、せっかく交渉がうまくいく兆候があるのに、それに水を差すからだし、挑発的だからだ。交渉が決裂すればすぐに再開できる。もっとも、そうならないことを祈りたい。

実に示唆に富んでいますね。

「北朝鮮と関係が改善し、脅威が減った」、「そもそも米韓合同軍事演習にはカネが掛かる」、という2つの理屈付けですが、北朝鮮との関連については単なる後講釈ですし、後半については、「韓国という国はカネを掛けて守るに値しない国だ」、と言っているのと同じだからです。

韓国はこれまで、米韓同盟をさんざん裏切ってきました。朴槿恵(ぼく・きんけい)政権の米中二股外交、金大中(きん・だいちゅう)、盧武鉉(ろ・ぶげん)両政権の「太陽政策」、いずれも米国の意思に反し、韓国が中国や北朝鮮と勝手に関係改善を試みてきたものです。

米国でトランプ政権が成立したことで、米国もこうした韓国の態度に「キレた」のかもしれません。

いずれにせよ、トランプ氏が「韓国はカネを掛けて守るに値しない」と言ったのと等しいことを踏まえるならば、米韓同盟の終焉が実現する確率はかなり高いと見てよいでしょう。私たち日本国民としても、そろそろ本気で覚悟を決め、国内のゴミ掃除をしなければならない時が到来しているのかもしれません。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. めがねのおやじ より:

    < 毎日の更新ありがとうございます。
    < まったく理論的な文章を書くのが生来苦手な国民なのか、または頭の中を整理出来ずに火病を起こしているだけなのか、この韓国 中央日報の記事で2点、ツッコミを入れたいと思います。
    < まず、日本の防衛費が1976年頃から増えているとして、敵軍にあたる中国の軍備強化を事細かに挙げています。空母や潜水艦、はたまたJ-20第5世代戦闘機(殲型の事か?アレが日米欧の第5世代とイーブンとは片腹痛い。その発言だけでも赤チームだ)がどうしたとか書いてます。そんな一つ一つの状況より、『中国は脅威的な軍事力を持つに至り、我が韓国軍は(在韓米軍抜きなら)奇襲であろうが編成整ったあとだろうが、24時間持ち堪えられない』と身近な事実を言うべきでしょう。
    < 他人事みたいなギャラリーじゃないんだから、その辺が根本的に愚民と言われる所以であり、いつも数字はええ加減、山や森を見ず、葉っぱばかり見て、特に日本絡み探して興奮している(笑)。
    < もう1点は記事中、『米国との同盟を軸とする韓日安保同盟〜他山の石として〜』との文は、まず他山の石なんてそんな時に使う言葉ではないし、また韓日同盟なんてのもありえない。単に日本語訳がマズイのかな(笑)。
    < 韓国は度重なる【裏切り】で、切られたんだよッ!低級なオバマなら出来なかった事だが、トランプ大統領は出来た。前の大統領は『初の黒人としては良くやった』という程度、アレが白人大統領なら、もっと非難を浴びていたはずです(人種差別しているのでは無い事、このサイトに来られる方なら理解していただけると思います)。
    < さて米韓同盟破棄→米韓演習縮小〜演習一切無し→日韓同盟元から無し→韓国は赤チーム→半島全部敵性国→対馬が最前線→日本海緊張となるのは明瞭です。日本の国防予算が5兆1千億だろうが10兆円だろうが、必要なら出すべき。日本は正面装備は立派でも、それ以外はとても貧相です。だから若い人でも良い人材が集まらない。医学部以外、防大の世間評価が低いのも、曹士候補の若者でも将来像が見えないので(40歳代後半で退役、予備役編入で警備会社他肉体労働の斡旋を受ける)、優秀な人材ほど行きません。この辺を改善すれば、今の人数でも質の改善は出来ます。
    < いずれにせよ、韓国が例え言い寄って来ても日本は肘鉄、関与するとロクな事が無い。『もう遅い!向こう行けッ』が正解ですし、安倍政権はそうすると思います。
    < 以上失礼します。

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