ユーロ圏とは実に迷惑な地域です。ユーロという通貨自体、非常に根本的な欠陥を孕んだ通貨ですが、イタリアの組閣失敗からユーロ危機再燃が意識され、リスク資産が売られるという展開が生じています。組閣に失敗しただけでこのような混乱が生じるくらいですから、金融市場の「トラウマ」は相当のものといえるかもしれません。なお、本記事の末尾でちょっとした「予言」をしておりますので、よろしければあわせてご参照ください。

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    ユーロ圏懸念は解消していない

    イタリアのユーロ離脱という警戒

    本日の非常に重要な速報です。

    昨日の金融市場では、ユーロ危機の再燃という懸念から、リスク資産が売られ、安全資産が買われるという展開になっているようです。

    Italy Sparks Global Fear of Fresh Euro Crisis(米国夏時間2018/05/29(火) 18:18付=日本時間2018/05/30(水) 07:18付 WSJより)

    そのきっかけを作ったのは、イタリアの次期首相候補のジュゼッペ・コンテ氏が27日、組閣を断念したことにあります。米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の報道から抜粋すると、

    The Dow Jones Industrial Average dropped nearly 400 points and U.S. Treasury yields posted their largest daily decline in nearly two years as investors around the globe retreated from risk following signs of political upheaval in Italy.(イタリアの政治不安の兆候を受け、世界的なリスク回避の動きが生じたことから、ダウ工業平均は400ポイント以上下落し、米国債利回りは2年ぶりの大幅な低下となった。)

    ということです。これの一体何が問題なのでしょうか?

    “Italian President Sergio Mattarella decided Sunday to block the formation of a euroskeptic government” (イタリアのセルジオ・マッタレッラ大統領はユーロ懐疑主義者の組閣を阻止した)

    とありますが、いわば、あの「ユーロ圏危機」の再燃が強く意識された、というものです。

    PIIGSとIFRS:欧州の深い闇

    といっても、ユーロ懸念の再燃、というよりは、「再々々々々々々々々燃」、でしょうか?

    私の記憶では、2008年9月に、まず米大手投資銀行のリーマン・ブラザーズが経営破綻しました。これがいわゆる「グローバル金融危機」です(日本国内では「リーマン・ショック」と呼ばれています)。不思議なことに、金融危機の「震源地」だった米国よりも、大きな打撃を受けたのが、欧州金融システムでした。

    欧州の銀行がトレーディング勘定などで巨額の投資を行っていたクレジット関連資産がいっせいに不良資産化し、国際会計基準審議会(IASB)は金融商品会計基準を歪め、時価会計を実質的に停止したのもこの時期です。

    (※余談ですが、私は最近話題になっている「国際財務報告基準」(IFRS)こそが金融危機を長引かせてる原因の1つであると考えており、少なくとも日本の金融庁はIFRSを非合法化すべきだと思います。)

    それはともかく、この欧州金融危機は、やがて、欧州債務危機に飛び火します。その発端となったのがギリシャでした。同国は国債GDP比率が100%を超えていて、そもそもユーロ圏に加盟する資格がなかったのではないかとの疑いすら出て来ます。

    また、ギリシャ以外にも、ポルトガル、アイルランド、イタリア、スペインなどが財政破綻の危機に陥りましたが、この5ヵ国の英語の頭文字を取って、「PIIGS」と呼ばれるようにもなりました。

    アイルランドの場合は国内の金融機関を救済するために国際社会の支援を受けたものですが、それ以外の国は、いずれも国債GDP比率が高く、国債利回りが高止まりしていたという共通点があります(ECBによるマイナス金利政策などの影響もあり、現在の利回りはある程度落ち着いています)。

    ユーロの根本的問題点

    では、どうして国債GDP比率が高いのが問題なのでしょうか?

    その本質的問題点は、ユーロ圏加盟国には共通の財務省が存在しない、という点にあります。あらゆる国において、財政政策と金融政策は車の両輪です。地域格差が生じる場合、財政政策によって調整する必要があります。

    たとえば、日本の場合、日本銀行は日本全国に一律で金融政策を適用します。東京の経済が好調で、地方の経済が不調だったとしても、中央政府である日本政府が東京の税金を地方に分配することで、国全体としての経済を調整する機能があります。

    しかし、ユーロ圏の場合は、ドイツなど経済が好調な国であっても、ギリシャなど経済が破綻の危機に瀕している国であっても、適用される金融政策は一律ですし、「ユーロ圏財務省」がドイツから税金を取り、それをPIIGS諸国に配る、という機能もありません。

    このため、ユーロ圏は発足当時から解体する危険性を孕んでいたのです。ユーロ圏がこのような問題を解消するための方策は、2つしかありません。

    • ユーロ圏の国家統合を進め、共通の財務省を創設するか、
    • 主権国家の枠組みに従い、ユーロ圏を解体するか、

    そのいずれかです。

    主権国家の枠組みを残したままで共通通貨を採用する。財政の統合は行わない。

    こういうドイツ流のご都合主義がいつまでも通用すると見るべきではありません。

    ――↓本文は以下に続きます↓――

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    世界への影響

    危機だと買われる日本円

    ところで、冒頭のWSJ記事によれば、「何か市場に不安があった時の安全資産」として真っ先に挙げられているのは、

    • 米国債(U.S. Treasury)
    • 米ドル(U.S. dollar)
    • 日本円(Japanese yen)

    の3種類です。

    ここで「?」と思ってしまいます。なぜなら、日本の財務省やマス・メディアの説明だと、「日本は国の借金(笑)が1000兆円を超えていて、今すぐ財政破綻しても不思議ではない」はずだからです。その意味で日本円は、「金融市場のショック」があれば、真っ先に「売られる」べき資産であるはずです。

    それなのに、真っ先に買われて「急騰する」(rallied sharply)というのも、非常に不思議ですね(笑)いわば、こういう記事を読むと、市場参加者は日本の財務省や日本経済新聞などの垂れ流す「増税プロパガンダ」のウソを見抜いているということを、さりげなく知ることができます。

    新興市場諸国(EM)への影響

    これに対して、危機に際し真っ先に売られるのは、新興市場諸国の資産(通貨、株式等)です。

    たとえば、日本の隣国である中国や韓国あたりでは、2011年の欧州債務危機の際に、資金流出リスクが強く意識されていました。

    今回に関しては、現在のところ、中国本土の人民元(CNY)、香港人民元(CNH)、韓国ウォン(KRW)については「急落」という状況にはありませんが、いざユーロ圏不安が再々々々々々々々々燃したときには、中韓からの資金流出を警戒する必要があるでしょう。

    おそらく、一両日中に、韓国メディア『中央日報』あたりが、「危機に備えて日本との通貨スワップが必要だ」といった社説を掲載するのではないでしょうか?(笑)

    ※本文は以上です。

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  • 著者のコンタクト先:info@shinjukuacc.com

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