セクハラ問題:朝日新聞に突き刺さるブーメラン

「ブーメラン」という言葉が、これほどまでにクリーン・ヒットするのも珍しいのではないでしょうか?朝日新聞の社内で上司が女性記者に対してセクハラを行っていたとする報道が、『文春オンライン』に掲載され、これに対する朝日新聞社の対応が、まさに朝日新聞自身が批判してきた財務省の対応とそっくりだったからです。

あらためて「セクハラ事件」を振り返る

以前から当ウェブサイトでは、「もりかけ・セクハラ・日報問題」が、朝日新聞を中心とするマス・メディアと野党議員、そして一部の官僚や与党・自民党関係者を巻き込んだ「倒閣運動」である、との仮説を提示して来ました。

「何が何でも倒閣したい」という欲求が強すぎるためでしょうか、新聞、テレビの報道は「酷い」のヒトコトに尽きる、というのが、最近の私の感想です。というのも、「もりかけ・セクハラ・日報問題」で政権支持率を落とそうとする行動そのものが、どう考えてもジャーナリズムの本分に反する行動だからです。

このなかでも、とくに酷いのが「セクハラ問題」です。これは、4月に発売された『週刊新潮』で、財務省の福田淳一事務次官(※当時。4月24日付の閣議で辞任了承済み)が女性記者に対して性的な嫌がらせ(セクハラ)を行っていたと報じられたものです。

『週刊新潮』が「セクハラの証拠だ」として公表した録音データ自体、肝心の「被害に遭った女性記者」とやらの音声がカットされていて、かつ、複数の音源を切り貼りし、捏造されたものであるとの疑惑も提起されています。

のちにテレビ朝日が「被害女性は当社の記者だ」と発表しましたが、私が知る限り、現時点までにきちんとした全容の調査は行われておらず、うやむやのうちに福田氏の辞表を受理したうえで、減俸処分が下されて、何となく終了してしまいました。

朝日新聞セクハラ社説

疑われた方が無実を証明せよ!

つまり、財務省事務次官によるセクハラ疑惑は、今ひとつ、すっきりしない幕引きとなりました。

セクハラがあったのか、なかったのか。もしあったのだとしたら、福田前事務次官への処分は軽すぎるかもしれませんし、もしなかったのだとしたら、週刊新潮やテレビ朝日は、福田前事務次官から損害賠償を請求されても文句は言えません。

ただ、こうしたすっきりしないなかでも、朝日新聞社の主張は常に明快でした。それは、「セクハラをやったと疑われた方がセクハラをしていないという証明をしなければならない」、というものです。

(社説)福田次官辞任 「女性が輝く」の惨状(2018年4月25日05時00分付 朝日新聞デジタル日本語版より)

4月25日付の朝日新聞社説は、

「(福田氏)本人も財務省も、テレビ朝日の女性社員へのセクハラを認めたわけではない。

「(福田)次官は不自然かつ一貫しない言い訳を繰り返してきた。録音が自分の声かはわからない。いや、全体としてみるとセクハラではない。発覚した当初は省の聴取に「発言の相手が本当に女性記者なのかもまったくわからない」とまで語っていた。財務官僚のトップが、かくも不誠実な態度に終始する。そのことじたいが許されまい。

などと、福田次官を手厳しく批判します。

しかし、何度も指摘しますが、法治国家において、ある人が「有罪だ」と決めるためには、「有罪だ」と疑われている方が「無罪だ」と証明するのではありません。「有罪だ」と疑っている方が、「有罪だ」と証明する義務があるのです。この原理を「推定無罪」と呼びますが、この原理は誰に対しても当てはまります。

つまり、朝日新聞の社説は、「推定無罪」の原理を無視し、福田次官を「かくも不誠実な態度に終始することじたいが許されまい」と断罪しているものです。

被害者保護と調査打ち切りを批判する朝日社説

こうした朝日社説の暴走は、これだけに留まりません。

たとえば、4月29日には「(財務省の)説明は到底納得できるものではない」とする社説を出しています。

(社説)福田次官処分 これでは再生できない(2018年4月29日05時00分付 朝日新聞デジタル日本語版より)

これは、財務省が福田前次官に対し、セクハラについての具体的な事実認定に踏み込まず、「セクハラがあった」ものとして減給処分を下したことを批判する社説です。

余談ですが、私自身も、この財務省による処分は非常に不思議だと思っています。ただ、それは「推定無罪」の原理を財務省も無視しているからであり、「セクハラがあったのか、なかったのか」をきちんと究明せずに幕引きを図ったことは、のちのち、禍根を残しかねないからです。

ただ、朝日新聞の社説の批判点は、そこではありません。

もう一つ見過ごせないのは、財務省が「調査に時間をかけすぎることも被害者保護上問題だ」とコメントした点だ。被害者の人権を踏みにじる言動を重ねた揚げ句に、「被害者保護」を理由に調査の打ち切りを正当化する。あいた口がふさがらないとはこのことだ。

被害者保護を口実に調査を打ち切ったことを、朝日新聞は社説で大々的に批判しているのです。このことは、のちの「伏線」になりますので、しっかりと覚えておいてください。

MeToo運動をけしかけた朝日新聞

一方、「Me Too」運動というものがあります。これは、もともとは「私もセクハラに遭った」と勇気をもって告白するという運動です。

しかし、日本で「Me Too」運動といえば、男性である柚木道義議員(希望の党→立憲民主党)を含め、審議拒否と称して勝手に休暇を取っていた野党の国会議員の連中がパフォーマンスで「#Me Too」のプラカードを掲げて行進していた、あのパフォーマンスのことを思い出す人も多いでしょう。

私に言わせれば、立憲民主党に初鹿明博(はつしか・みょんばく)議員や青山雅幸議員ら、性犯罪者が所属する時点で、彼らが「#Me Too」と言えば、「私もセクハラの犯人です」という意味にしか見えません(笑)。

それはさておき、次の朝日新聞社説は、この「Me Too」を好意的に取り上げたと見られるものです。

(社説)セクハラ 沈黙しているあなたへ(2018年5月1日05時00分付 朝日新聞デジタル日本語版より)

「セクハラに沈黙している被害者」の気持ちに寄り添っているつもりなのかもしれませんが、柚木議員を含めた野党議員の酷いパフォーマンスの印象が鮮烈すぎるためでしょうか、「#Me Too」イコール「国民の税金をドブに捨てる野党議員」のことだと思ってしまいます。

朝日新聞「麻生は辞めろ!」

「セクハラ問題」を巡る朝日社説シリーズの最後は、これです。

(社説)麻生発言 なぜ首相は黙っている(2018年5月9日05時00分付 朝日新聞デジタル日本語版より)

これは、麻生太郎副総理兼財相が「セクハラ罪という罪はない」などと発言したことに噛み付いたもので、朝日新聞は

「(福田)前財務次官のセクハラ問題をめぐる一連の言動をみれば、麻生氏に対して、国民が信頼を寄せられないのは、もはや明らかだ。その氏をかばい続ける。それは、政権そのものがセクハラに寛容であることを、広く国内外に宣言するに等しい。

と、安倍総理に対し、暗に麻生副総理の罷免を求める社説であると考えて良いでしょう。

しかし、「セクハラ罪」などという罪は存在しません。日本には「罪刑法定主義」といって、「法律で決めておかなければ刑事罰を科すことはできない」という考え方があります。法律に存在しない罪を勝手に捏造し、断罪する方が、よっぽど大きな問題です。

ただ、朝日新聞は社説の中で、麻生氏が「前事務次官のセクハラ問題で前次官をかばい続ける」姿勢を示していることを問題視したうえで、「被害者への配慮のかけらもない振る舞いを、平然と重ね」ていると批判。社説を「さて、首相はどうする。」という言葉で締め括っています。余談ですが、

問われているのは前次官が刑法犯にあたるかどうかではない。人間としての規範をどう考え、それを踏みにじる行為があったと疑われたとき、いかなる態度でのぞむかということだ。

の下りに関しては、100回くらい読み返したのですが、まったく意味不明です。疑われたときに無実を証明する義務があるのは、疑われている本人ではありません。本人の有罪を証明する義務は、疑っている側にこそ存在するのです。

おまちかね、盛大なブーメラン!

朝日新聞を打ち砕け、文春砲!

以上、朝日新聞の支離滅裂な一連の社説を読むと、朝日新聞の主張の要諦は、次のとおりです。

  • セクハラが疑われた場合、疑われた方が無実であると証明しなければならない。
  • セクハラ被害者への配慮よりも真相究明の方が優先される。
  • セクハラが疑われた場合は、その上司に任命責任があり、辞任しなければならない。

この3点をしっかりと踏まえたうえで、次の記事を読んでみましょう。

朝日新聞で上司が女性記者にセクハラの疑い(2018/05/23付 週刊文春オンラインより)

これは、『文春オンライン』に掲載された『週刊文春』のダイジェスト版です。これによると、

朝日新聞社で、上司が女性記者にセクハラをした疑いがあることがわかった。週刊文春の取材によれば、3月、経済部の歓送迎会が開かれた。女性記者は幹事の一人で、その後、男性の上司とバーに流れた。朝日新聞の中堅社員が証言する。

とあります。もちろん、これはあくまでも「疑い」の段階です。

しかし、朝日新聞基準に照らせば、セクハラが疑われた場合、疑われた側が「そのような事実はない」という証拠を出さなければなりませんし、被害者への配慮よりも真相究明を優先しなければなりません。さらに、朝日新聞の社長らは、こぞって責任を取り、辞職しなければなりません。

「かくも不誠実な態度に終始」する朝日新聞

では、これについて朝日新聞側は、どう主張しているのでしょうか?文春オンラインによると、

その後、上司は論説委員となり、以前と変わらず働いているという。/女性記者に取材を申し込むと、「ごめんなさい、広報を通していただけますか」。上司の男性は「それは広報に聞いて頂けますか」と回答した。

とあります。

本当に文春がこの「上司」や「女性記者」に取材をしたかどうかは問題ではありません。なぜなら、朝日新聞基準に照らせば、「疑われている方が無実を証明する責任がある」からです。もしこの取材が虚偽であれば、「この取材は行われていない」という点を、朝日新聞側が納得いくように証明しなければなりません。

では、文春オンラインに記載された、朝日新聞広報部の回答は、どのようなものだったのでしょうか?

ご質問いただいた個別の案件につきましては、お答えを控えます。当事者の立場や心情に配慮し、保護を優先する立場から、ご質問にお答えできない場合があることをご理解下さい」。

なんと、当事者の立場や心情に配慮し、保護を優先する、と言い放ったのです。

朝日新聞さん、ご自身が4月29日付の社説で書いたことを覚えていますか?次の文章を、もう1度、じっくりと反芻なさってください。

もう一つ見過ごせないのは、財務省が「調査に時間をかけすぎることも被害者保護上問題だ」とコメントした点だ。被害者の人権を踏みにじる言動を重ねた揚げ句に、「被害者保護」を理由に調査の打ち切りを正当化する。あいた口がふさがらないとはこのことだ。

朝日新聞さん、あいた口がふさがらないのは、読者の方ですよ!

朝日新聞社内にMeToo運動を!

私は以前から、朝日新聞社を含めたマス・メディア業界では、セクハラが常態化している、という話を、複数の知り合いから耳にしています。といっても、確たる情報源を示すことはできませんし、どこでどのようなセクハラが行われているか、それを当ウェブサイトで詳細に記すつもりもありません。

しかし、セクハラがなかば公然と行われているのだとしたら、これは由々しき問題です。ここでは、朝日新聞社のみなさまにこそ、「#MeToo」の声をあげてもらいたいと思います。

朝日新聞に傷つけられた日本国民へ

さて、文春砲により、盛大なブーメランが突き刺さった朝日新聞社が、これからも「知らぬ存ぜぬ」を押し通すのでしょうか?私は、間違いなく「無視」を決め込むと思います。なぜなら、朝日新聞社といえば、自分に甘く、他人に厳しい組織だからです。

財務省セクハラ事件に関する4本の朝日新聞社説と、文春オンラインの記事を比較すれば、そのことは明らかでしょう。ダブル・スタンダード、ここに極まれり、ということです。

ただ、ここまで続いた朝日新聞による虚報、捏造報道の数々も、そろそろ年貢の納め時ではないでしょうか?先ほどの「#MeToo」の社説を、朝日新聞に傷つけられ、沈黙してきた日本国民に置き換えると、非常に共感できる文章に変わるのです。これを記事の末尾に掲げておきましょう。

朝日新聞の虚報で傷つけられて、沈黙してきた日本国民へ。

ウソの報道をされ、我慢して、悔しかったでしょう。悲しかったでしょう。

まだ新聞を信じて読んでいたころを思い出した。読めない漢字も多く、失敗もたくさんしたけれど、新聞を読めるようになった自分が誇らしかった。そこに、捏造報道という「現実」が待っているなんて、想像したこともなかった。

そして、傷つけて黙っている朝日新聞へ。

ペンという権力があれば、何をしてもいい。捏造報道が嫌だなんて、天下の朝日新聞様にひれ伏す目下の日本国民のわがままだ。やばくなったら、「納得のいく説明がない」「疑惑はますます深まった」と反論すればいい――。そんな理屈が許されるなんて思わない方がいい。

日本国民は、朝日新聞社を認めない。許さない。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. めがねのおやじ より:

    < 夕刊の配信ありがとうございます。
    < #Me tooという言葉、春先少し話題になりましたね。でも、なんか日本人には似合わない気がする。『私も被害に遭った』『私もそう』という、主に性被害の事らしいですが、さすが先進国米国(笑)。10年以上前にその概念から具体的行動まであったとか。
    < 日本では女性新聞記者やマスメディアの方に被害が多いようです。勿論一般女性にも可能性はありますが、直接耳に入ってくるのはジャーナリズム周辺の方、芸能人らに集中していると思います。私は性的行動は抑えられますし、もうそんな活力もない(笑)が、気になることです。
    < 私は女性に対する差別、偏見は一切ありませんし、性的に男性が主導権なんて思ってません。但し私の知り得る限り、そういう職種につく人は、男社会にグイグイ入り込む、女性を感じさせない、自分を強く見せている方、行動意見が独りよがりな方が本当に多いですよ。よく知らない男性に、寝顔を見せたくないから、新幹線やバス車内、船内でスカーフで顔を覆っている方を見ます。それはいい事だと思います。
    < 逆にジャーナリズム系の女性でしたが、新聞紙を引いて船内の長椅子に堂々と横たわり、グーグー寝てる猛者を何回か見かけました。周りはドライバーのおっさんと家族連ればかり。皆、席で休んでます。*口頭で注意しました。
    または深夜飲み屋で知人男性と飲み食いしてて呂律も怪しい方々、そりゃ貴女に隙有りですよ。最初は化粧っ気も無く、話もしやすいので近寄る男でも、勘違いヤローは居ます。
    < やはり、態度と行動には慎みがないと。あの朝日新聞社の『エビデンス?ねえよ!』の女性記者や東京新聞社のM氏らは被害を受けたかどうか知らないが、女性らしさゼロですね。寄って来ないでしょうな。いや分かりません(笑)。
    < この#Me tooは韓国でも流行ってますが(笑)、あそこは男尊女卑だし、被害者意識が何よりも勝るのでは?だからでしょう。あ、朝日新聞社も立憲民主党も国民党も犯罪者居ますね。やはり親韓派だわ(嘲笑)。 失礼します。

  2. 黄昏せんべい より:

    永井荷風(1879~1959年)が子供の頃だというから
    まだ19世紀だ、明治も20年頃のことだろうか
    子供たちは新聞を読むことを親から禁じられていたそうだ

    新聞は好んで嘘と醜聞を書く
    それが大人には分かるが、子供には分からない
    故に子供は読んではいけない
    とまあ、そういう事情が世間の常識だったのである
    なに、大人だって分かっているとはかぎらない
    それは昔からそうで、今もこうだから、これからも同じだろう

    だけど禁じられたから子供は不服で
    だからかえって熱心に読むようになったのだとか
    昭和に至っては、受験に出るから、出すから
    むしろ新聞は読め、特に『天声人語』を読めだった
    読むなと言われてかえって読みたかった明治大正
    読めと言われてむしろ読みたくなくなった昭和平成

    さて元号も変わり新しい御代が始まろうとしている昨今
    そんなわけで朝日新聞に提案である
    自ら「朝日を買うな読むな」と宣伝してみてはいかがだろう
    時には袋とじにするもよろしい
    何が書いてあるか
    何とかいてあるか
    隠れて読まねばならぬ文面なのか
    子供には見せられない記事なのかと
    興味がサンサン
    劣情がコンコンと湧いてきて
    あ~ら不思議、販売部数がV字回復するに違いない

  3. マスマスマスごみ より:

    マスコミで務めた経験がありますが男尊女卑がいまだ色濃く残ってます。
    男多すぎて、考えが偏ってますね。
    セクハラ研修もあまり意味がない状況で、特にバブル世代から上の世代
    セクハラしてる自覚がない方多かった。

    同じ環境に長いこといると世間知らずと言うか
    世間の感覚からはズレが生じるようです(しかも身内には甘い体質なので)

    セクハラの非を認めるどころか、された方が悪いという構図が出来上がってます。
    自分の娘が、セクハラされたら訴えるんでしょうね(笑)

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