敗れつつある韓国の観光戦略と平昌五輪

本日も少し、「時事ネタ」から離れて、「韓国観光統計」をじっくりと眺めてみたいと思います。平昌冬季五輪という「ビッグ・イベント」があったにも関わらず、中国人や日本人の韓国入国者数は、まったく増えていないことがわかったからです。

日中韓新時代という「幻想」

昨日、「マス・メディアは部分を切り取ってその場の印象で報道をするのではないか?」という仮説を提示申し上げましたが、考えてみれば、この特徴についてもインターネットのウェブサイトとの大きな違いといえるかもしれません。

それはさておき、「独立系ビジネス評論サイト」であるということは、特定組織・個人との利害関係なく、出てくるデータをそのまま分析し、紹介することができます。そして、同じテーマで、定期的に記事を執筆し、公表することができるということでもあります。

こうした中、私自身の以前からの関心事は、「アジア各国の往来」です。大学生時代の私は、学内に中国、韓国からの留学生が多数、在籍していたという事情もあり、「21世紀はアジアの時代だ!」と真剣に信じてたのです(これについては『日中韓友好という、1990年代の不思議な熱気』をご参照ください)。

その後、自分なりにいろいろと調べ、研究するうちに、中国や韓国と無条件に「共に手を取り合い未来に向けて発展する」ということは難しいということに気付くようになりました。しかし、「客観的なデータとして」、日本、中国、韓国の人的・物的往来を研究するということは続けています。

こうした研究をするうえで、一番重要な基礎データは、日中韓それぞれの「観光統計」です。

たとえば、日本の観光統計からは「中国人と韓国人の日本への入国者数」を、中国の観光統計からは「日本人と韓国人の中国への入国者数」を、韓国の観光統計からは「日本人と中国人の韓国入国者数」を、それぞれ調べることができます。

ところが、中国の「国家観光局」は、どうやら2016年2月を最後に、観光統計の公表をやめてしまったようなのです。このため、「中国に入国した日本人数」「中国に入国した韓国人数」を、公式統計から知ることはできなくなってしまいました。よって、私たちが利用可能なデータは、次のとおりです(図表1)。

図表1 日中韓3ヵ国の往来
データの種別情報源データ
  • 日本に入国した中国人の人数
  • 日本に入国した韓国人の人数
日本政府観光局2003年1月以降
  • 韓国に入国した日本人の人数
  • 韓国に入国した中国人の人数
韓国観光公社月次データは1998年以降
  • 中国に入国した日本人の人数
  • 中国に入国した韓国人の人数
中国国家観光局2000年1月~2016年2月

(出所)著者作成

というわけで、「東アジア3ヵ国の往来に関する最新統計の分析」をしようと思えば、日本に入国した中国人・韓国人、韓国に入国した日本人・中国人という4つのデータしか入手できない状況になってしまっているのです。

共産主義・軍事独裁国家は、自分の都合でデータの公表すら、やめてしまうことができるのでしょう。余談ですが、日本国内で「安倍(晋三総理大臣)の独裁が問題だ!」と叫んでいる連中は、なぜ中国の独裁を批判したりしないのでしょうか?本当に不思議です。

韓国観光統計

観光統計の癖:「毎月の分析」が難しい理由

さて、中国が観光統計を公表していない以上、当ウェブサイトでできる分析は、日本、韓国両国の観光統計の分析に留まります。これについては、当ウェブサイトでは半年に1度程度、分析記事を掲載しようと考えています。

ちなみに、2017年12月までの最新統計を利用した記事は前後編に分け、『2017年の日韓観光統計を読む(前編)』と『違法民泊問題アップデート:「日韓観光統計後編」に代えて』に掲載していますので、是非、ご参照ください。

ただ、観光統計自体は毎月公表される代物ですが、入国者数には季節変動が非常に大きく、「前月と比べて増えた(減った)」といった分析をしても、あまり大きな傾向は掴めないからです(図表2)。

図表2 観光統計は毎月の変動が大きい

(【出所】韓国観光統計より著者作成)

もちろん、「前年同月比」で分析するという手法(図表3)や、「12ヵ月連続値」(その月までの12ヵ月間の累計値)を比較するという手法(図表4)などを使えば、いちおう、毎月の数値の分析もできます。

図表3 前年同月比グラフの例(2月の数値だけで比較)

(【出所】韓国観光統計より著者作成)

図表4 12ヵ月連続値のグラフの例(その月までの12ヵ月間累計値で比較)

(【出所】韓国観光統計より著者作成)

このため、私は一応、日韓両国の観光統計を毎月、入手しているものの、分析記事自体は年1回か、せいぜい年2~3回程度しか執筆していないのです。

「平昌五輪で韓国入国者数が激増」?

ただし、先月(つまり2月)の韓国入国統計については、見ておく価値があります。なぜなら、先月は韓国で平昌(へいしょう)冬季五輪が開催されたからです。今のところあまり日本のメディアはあまり取り上げていないようですが、先週、2月の韓国観光統計が出て来ました。

韓国観光統計(2018/03/22付 韓国観光公社ウェブサイトより【韓国語】)

どうして唐突にこれを取り上げたのかといえば、これに2018年2月の統計が含まれているからです。では、2018年2月、平昌五輪の開催にあわせて、外国人の韓国への入国者数は果たして激増したのでしょうか?(図表5

図表5 出身国別・韓国への入国者数
出身国2018年2月2017年2月増減
中国345,341590,790-245,449
日本168,241185,032-16,791
入国者(日中以外)700,074661,29038,784
合計1,045,4151,252,080-206,665

(【出所】韓国観光統計より著者作成)

どうでしょうか?韓国への入国者数で1位と2位を占める中国人と日本人の、韓国への入国者数は、むしろ前年同月比で減少していることがわかります。とくに、中国人入国者は約60万人から30万人台にまで激減していて、日本人の入国者数も前年同月比で微減、といったところです。

日本と中国の両国を除けば、韓国への入国者数は約70万人で、これは前年同月(約66万人)と比べて、少しだけ増加しています。しかし、どう見ても、「平昌冬季五輪を観戦するために、多くの外国人が韓国を訪れた」、という感じではありません。

米国が北朝鮮攻撃に踏み切るかもしれないという地政学的リスク、雪質も悪く、交通やホテルの便などに難があるとのうわさ、あるいはさまざまな悪い風評のために、外国人観光客が思ったよりも伸びなかったということなのでしょうか?

日中観光客の急減

ところで、韓国を訪れる中国人観光客については、急減が続いています。先ほど挙げた図表4を、再掲しておきましょう(図表6)。

図表6 日中両国の韓国入国者数の推移(12ヵ月累計値)

(【出所】 韓国観光統計より著者作成)

この図表は、比較しやすくするために、「12ヵ月間の累計値」を示したものです。たとえば、「2018年2月」のところに示されている数値は、「2017年3月から2018年2月までの12ヵ月間の累計値である」、ということです。

2015年6月ごろから韓国への入国者数が急激に落ち込んでいるのは、中東呼吸器症候群(MERS)が流行したためと考えられます。

(※余談ですが、当時の尹炳世(いん・へいせい)韓国外交部長官(外相に相当)は、国内のMERSを放置して、日本の世界遺産登録を阻止するために、世界中で日本の悪口を言って回っていたことは、記録しておいて良いでしょう(『韓国の朴槿恵政権の迷走と日本』参照))。

また、日本人入国者数については、2012年9月以降、急減し始めます。先日逮捕された李明博(り・めいはく)元大統領が現職大統領だったころの2012年8月に、竹島に不法上陸したり、天皇陛下を侮辱したりしたことで、日本人観光客が韓国を忌避したためでしょうか?

こうした観光統計を眺めていると、入国外国人数の急減の裏にも、さまざまな事情があるのではないかと推察できて、なかなか興味深いところです。

統計に隠れる欺瞞

トランジット需要と韓国観光統計

さて、以前から私は、韓国が入国者数について「水増し」しているのではないかとの疑いを抱いています。その代表的な例が、「トランジットの不正カウント」です。「トランジット」とは日本語で「乗り継ぎ」などと呼ばれているもので、直行便が飛んでいないAとBという2つの地点の間を往復する際に、よく行われます。

たとえば、私は以前、アルゼンチンの首都・ブエノスアイレスに出掛けたことがあるのですが、東京からブエノスアイレスへの直行便は飛んでいません。この場合、東京とブエノスアイレスの両方に直行便を飛ばしている空港を利用することが一般的です。

私の場合はニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港(JFK)を利用しましたが、当時の乗り換え案内によれば、ほかにオーストラリアのシドニーを経由するルートやパリのシャルル・ドゴール空港(CDG)を利用するルートなどがあったようです。

この場合、JFKなりシドニーなりCDGなりの空港は、あくまでも単なる「乗継空港」です。JFKの場合は保安上の理由により、いったん米国への入国手続きが必要ですが、私の記憶では、シドニーやCDGの場合、オーストラリアないしフランスへの入国手続きは不要です。

「入国手続きを行わずに次の目的地に向かう」ために、多くの国際的な乗継空港では、「トランジット・エリア」が設けられています。私は英国のヒースロー空港や香港国際空港、シンガポールのチャンギ空港なども利用したことがあるのですが、いずれもゆったりとしていて、快適に時間を過ごすことができました。

ただ、ここで1つ、疑問に思う点があります。それは、トランジット・エリアを利用している場合、その国に入国した扱いになるのかどうか、です。

一般に、トランジット・エリアに留まっている旅客は、その国に入国したという扱いになりません。ところが、韓国の場合、いくつかの報道ベースに眺めてみると、どうもトランジット客を入国者にカウントしていたのではないかとの疑いを抱かざるを得ないのです。

(※なお、これについては一昨年11月に、『韓国は統計をごまかしているのか?』と題した記事でも取り上げていますので、ご興味があればぜひご覧ください。)

中国人入国者数の「日韓逆転」は2年目に

さて、一時は中国人入国者数で韓国が日本に大きくリードを取っていました(図表7)。

図表7 中国人旅客の行き先・日韓比較

(【出所】JNTOデータおよび韓国観光統計より著者作成)

これについて、韓国が観光統計を誤魔化しているのかどうかは、正直なところ、よくわかりません。

ただ、仮に「韓国が単なるトランジット客を入国者にカウントしている」というのが事実だったとしても、中国人の韓国入国者については、あまり誤魔化す余地はありません。なぜなら、中国人の韓国入国者は、純然たる韓国入国目的であると考えられるからです。

実際、韓国政府は中国人に対し、渡航先が済州島(さいしゅうとう)である場合などに限定して、ではありますが、韓国への入国ビザを免除しています。「中国人に対するビザ免除措置」としては、わが国が導入している「沖縄・東北3県数次ビザ」などと比べても、要件が緩いと考えられます。

このため、私はこの図表6の結果についても、ある程度、信頼して良いのではないかと考えています。

実際、2017年3月以降は、「日本に入国した中国人」の人数が「韓国に入国した中国人」の人数を上回り始め、いまや、中国人の人気渡航先としては、「ダブルスコア」で日本の方が韓国を上回っている状況にあります。

この状況は、中国による「THAAD報復」という要因で、ほぼ説明が付きますし、また、関連する韓国国内の報道と比べても、それほどの違和感はありません。

もっとも、韓国の仁川(じんせん)国際空港を日本などへの「トランジット」として利用している中国人が皆無だと申し上げるつもりはありませんし、上記統計にこうした中国人が含まれている可能性は否定できませんが、これについてはもう少し時間が経過し、十分なデータを集めてから判断したいと思います。

「メイン顧客の囲い込み」に失敗したら…?

いずれにせよ、韓国を訪問する中国人観光客の数が、ここ1年、激減していることは間違いなさそうです。ただ、これについては、単純に「中国が韓国に対して嫌がらせをしている」、「日中両国が雪解けムードになってきた」、といった要因だけで説明できるとも思えません。

私が考えている仮説とは、「日本への旅行をやってみて、思っていた以上に気に入ったため、日本ファンになり、リピーターとなった中国人観光客が相当程度、増えている」、というものです。

もちろん、これについては、現状では単なる仮説に過ぎず、私自身の今後の研究も必要です。しかし、私が居住する街・新宿でも、中国人観光客と思しき人々の数は、明らかに増えている気がします。これについて、「リピート率」、「観光地別訪問者数」などのデータが手に入るのかどうかはわかりませんが、いずれ、何らかの形で検証してみたいと考えています。

これに対して、韓国への中国人観光客数が激減している理由と思しきものも、よくわかりません。私は「多くの中国人観光客が、済州島に一度だけ行って、飽きた」といった仮説を持っているのですが、これについては韓国のビザ免除プログラムをよく調べれば、何となく検証ができそうな気がします。

ただ、いずれにせよ、統計的事実として、平昌冬季五輪という「ビッグ・イベント」が行われたにも関わらず、韓国に対する最大の入国者数を誇っている中国と日本という2ヵ国からの入国者は前年と比べて減っており、また、韓国への中国人入国者数自体、2017年3月以降、激減していることは確かです。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

私自身、小規模ながらも会社経営者ですが、「メイン顧客」、「自社のファンとなってくれるユーザー」を囲い込むことを、常に意識しています。そのためには、結局、当社のファンとなってくださるお客様を見つけ、そのお客様を満足させ続けるしかないと思います。

私自身、ここ20年ほどは韓国旅行に行ったことがないため、韓国という国が中国人と日本人という「最大の顧客」を満足させ続けているものなのかどうか、私にはよくわかりません。ただ、仮に韓国が「顧客の囲い込み」に失敗しているのだとしたら、そのこと自体、企業経営者としては非常に興味深い現象です。

これについては、もう少し調べてみる価値があるでしょう。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. めがねのおやじ より:

     < 本日も更新ありがとうございます。2月の韓国は平昌五輪もあるのに、惨憺たる数字ですが、韓国内報道では『うまくやった』『大韓民国を世界に知らしめる事ができた』と一人ご機嫌です。2月の韓国への入国者が日本からは168,241人で約9.1%の減、中国に至っては345,341人で58.5%の減。普通の感覚なら責任問題ですね。報道を見る限り開閉会式や人気種目でも観客席はガラガラ、又は前列のみサクラを呼んで、2階席3階席はゼロというのもありました。チケットが売れず、各自治体・企業に割り当てたものの、カネだけ払って行かなかった、或いはハナから売上確保のみで来る客ではなかったといえそうです。
     < そもそも論ですが、どうしても日本のやった事は『ウリもやるニダ』の国ですので、札幌、長野と2度やった日本に対し、ムリクリ平昌という最悪の場所を認定したIOC五輪委員会のバッハ会長はじめ最高幹部にも大きく責任はあります。雪質が悪く、まず寒いものの雪が積もらない事が分かっていた、交通インフラが全く整備されておらず全部新規で作らねばならなかった、宿舎ホテルも全く不足していた。最後に国民が望んでいなかった。---こんな状況でよく決定したものです。
     < 日本から韓国への観光は70年代から盛んになり、中国へは80年代から、妓生パーティや中国なら三峡下りなど人気でしたが、今や旅行会社のパンフでも他にスペース取られて見ることが稀です。『一度行けば十分』『不潔、食べ物も日本人の口に合わない』『土産物屋でぼったくりされる。特に日本人は』と評判は最悪。よくあんな所に高い金出して行っていたものです。
     < 中国が2016年2月を最後に国家観光局が統計の公表を止めてしまった。よほど都合の悪い事(観光客数の減少等)があるのでしょう。便利ですね、一党独裁国家は。いずれにしても、日本への観光客増は韓国、中国だけでなく、アジア(意外にインドは少なく欧州では英国が多い)豪州からの訪日者は増えるでしょう。ただ、隣国のように邪な考えを持つ方が、流入するのは困りもの。隣国のビザ免除プログラム短縮、数を追いかけるのではなく、(2020年4000万人なんてとんでもない)共生共感できる人たちの訪日を望みます。失礼します。

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