【夕刊】平昌閉幕と「海洋対大陸」の綱引き

本日2本目の配信は、「五輪史上最悪の大会」である平昌(へいしょう)冬季五輪の閉幕式を巡る、米国と北朝鮮の綱引きについて、です。

閉会式もひと波乱か?

平昌五輪、一段落

韓国・平昌(へいしょう)で行われている冬季五輪が、本日、閉会式を迎えます。

「史上最悪の五輪になるだろう」といわれた事前予想にたがわず、悪条件のなかで開催された大会であったにも関わらず、日本勢は4個の金メダルを含め、過去最多となる13個のメダルを獲得。懸念されていた選手の怪我等もめだったものはなく、無事、帰って来てくれるようです。

もっとも、少数ですが、日本人選手が絡む不祥事や事故未遂はありました。

まず、スピードスケート・ショートトラック男子の斎藤慧選手が抜き打ちのドーピング検査に引っかかった、という事件です。

平昌五輪ドーピング陽性「斎藤慧選手」うっかり服用か、誰かに盛られたか?(2018/2/14 13:33付 J-CASTニュースより)

事実であれば厳正な処分が求められますが、その一方で、この選手は、1月末の長野での合宿中にはドーピング検査をクリアしていたとのことであり、また、ドーピングを行うインセンティブもありません。どう考えても不自然な事件です。

次に、スピードスケートで北朝鮮選手が意図的に日本選手を巻き添えにしようと転倒した事件も生じています。

スピードスケートで北朝鮮が妨害行為。日本を巻き添えにするつもりだったのかと非難の声。(2018/02/21 09:26付 ニコニコニュースより)

ニコニコニュースによれば、20日に行われた男子ショートトラック500mで、スタート直後に北朝鮮の選手が転倒。「転びながら手を伸ばし、渡邊啓太選手のブレードを掴む」という、明らかな妨害行為を行いました。

これらについては事実の解明と厳正な処分を期待したいところですが、腐敗に塗れたIOCにそれを期待するのも難しいのが実情かもしれません。

いずれにせよ、平昌五輪という「史上最悪」レベルの大会で、日本勢はよく頑張ったと思います。私は日本勢に最大限の賛辞を送りたいと思います。

金英哲の訪韓と日米の対応

平昌五輪自体、運営も非常に稚拙で、まさに「冬季五輪史上最悪」の記録を塗り替えたのではないかと思いますが、それを「政治利用」しようとする勢力もいます。言うまでもありません、韓国の文在寅(ぶん・ざいいん)大統領です。

【社説】韓国内に葛藤をもたらす金英哲氏、平昌での言動に注意を(2018年02月24日14時15分付 中央日報日本語版より)

韓国メディア『中央日報』(日本語版)によると、閉会式に合わせて北朝鮮からやって来る金英哲(きん・えいてつ)という人物は、「元偵察総局長であり韓国哨戒艦「天安」爆沈、延坪島砲撃事件を主導した人物」であるとともに、「韓国と米国を含む31ヵ国の同時制裁対象」です。

そのような人間の入国を許可したこと自体、いかに文在寅政権が北朝鮮に取り込まれてしまっているかという証拠でしょう。また、「保守政党」とされる「自由韓国党」は、「金英哲は我々の地に一歩も足を踏み入れることができない」と猛反発しているそうです。

ちなみに米国政府はドナルド・トランプ米大統領の長女で大統領補佐官を務めるイヴァンカ・マリー・トランプ氏を23日から3泊4日の日程で韓国に派遣していますが、これに対して日本政府側は閉会式に高官を派遣するつもりはないようです。

平昌閉会式、高官派遣せず 日本政府(2018/2/22 18:00付 日本経済新聞電子版より)

安倍総理が訪韓した際に、文在寅氏が「安倍訪韓」を徹底的に政治利用しようとして失敗したことは記憶に新しい点ですが、閉会式に高官すら派遣しないという点で、現在の日本政府の韓国に対する姿勢がぶれていない点については素直に評価して良いでしょう。

イヴァンカ氏の派遣目的は「効果」から予測する

ところで、米国がイヴァンカ氏を派遣した理由は何でしょうか?

世間では「米国が今すぐにでも北朝鮮を攻撃するに違いない」といった論考をされている方も見掛けますが、私はそうは思いません。なぜなら、米国が開会式にマイク・ペンス副大統領を、閉会式にイヴァンカ氏を派遣したことによって、おそらくは韓国、北朝鮮双方に何らかのメッセージを与えているからです。

まず、韓国に対しては、「お前たち韓国が『運転席』に座ることは許さない」という意思表示でしょう。開会式では文在寅氏がペンス副大統領を金永南(きん・えいなん)最高人民会議常任委員長ら北朝鮮の代表団と同席させようとしたのに、ペンス副大統領がそれを無視したことは、その大きな証拠です。

次に、五輪の開会式、閉会式という「華やかな表向きの舞台」で日米両国が北朝鮮を無視したことは、そのこと自体、北朝鮮に対して「表向きの交渉には応じないぞ」というメッセージでしょう。もちろん、外交の常識として、おそらく、米朝両国、あるいは日朝両国は、水面下での接触を続けているはずでしょうが…。

つまり、あくまでも「結果論」ですが、安倍・ペンス両氏の訪韓は、韓国の文在寅氏のメンツを徹底的に潰すことで、韓国にも北朝鮮にも強く牽制するという効果が得られました。イヴァンカ氏の訪韓も、おそらくは韓国に対する揺さぶり(とくに文在寅氏の北朝鮮訪問を牽制する目的)の訪問でしょう。

イヴァンカ氏は「大統領の長女」という側面が注目されていますが、職制上はあくまでもただの「大統領補佐官」です。閣僚級ではありません。そのように考えていけば、日本政府が高官を一切派遣しないこととも整合していて、「伝えるべきことは開会式ですでに伝えた」からだ、ということではないかと思います。

次はパラリンピック

パラリンピック前後の2つの事項

ただ、五輪が閉幕しても、次にパラリンピックが始まります。ということは、常識的に考えて、パラリンピックが閉幕する3月18日までは、米国による北朝鮮攻撃の可能性は極めて低い、ということです。年明け以降の2ヵ月弱の間で、北朝鮮はミサイル発射能力を随分と高めたことでしょう。それだけではありません。まだ1ヵ月弱、開発の猶予期間が残っている、ということなのです。

そのように考えていけば、朝鮮半島情勢を巡る緊迫は、むしろその後に高まることは間違いありません。

では、首相官邸や外務省とコネクションがない私たちのような一般人が、水面下の交渉を知るためには、どうすれば良いのでしょうか?

ここでは、次の2点を挙げておきたいと思います。

  • パラリンピック終了後までに文在寅氏が北朝鮮を訪問するかどうか
  • パラリンピック終了後速やかに米韓合同軍事演習が開催されるか

この2つの動きを軸にして朝鮮半島情勢を眺めていけば、「綱引きの綱」がどちらに引き寄せられているのか、おおよそのめどを付けることができるからです。

大陸と海洋の「綱引き」とは?

ここでいう「綱引き」とは、海洋勢力側からは日米ですが、大陸側からは北朝鮮であり、さらに北朝鮮のバックには中国やロシアがいます。綱引きの綱が大陸側に行けば、韓国は良くても中国の属国、下手をすれば赤化統一後の高麗連邦共和国の一地方に成り下がります。

一方で、綱引きの綱が海洋側に行けば、韓国は今までどおり、米韓同盟のもとで在韓米軍に安全を守ってもらいつつ、日本からの金融・経済協力を得つつ、適当に反日を煽りながら、ちっぽけなプライドを満たして生きていくことになるのでしょう。

実際、現在の韓国国内では、文在寅政権による行き過ぎた赤化路線に拒絶反応も出ており、一部の保守政党を中心に、文在寅氏や北朝鮮を厳しく糾弾する動きが始まっているとの報道もあります。このため、韓国がこのまま素直に「大陸側」に行ってしまうのかといわれれば、そこも微妙です。

しかし、私自身の歴史観は、「綱引きの綱が海洋側に行ったとしても、それは一時的なものにすぎない」というものです。なぜなら、朝鮮半島は半万年、中国の属領みたいなものだったからであり、日米の支配下にあった1910年以来の100年弱の方が、朝鮮半島の歴史では例外だからです。

もちろん、いますぐ韓国が「大陸側」に行ってしまえば、わが国の安全保障にも甚大な影響が生じます。そのことを承知の上で、私自身、心の底ではどこかで「綱引きの綱が大陸側に行ってくれないか」と思う気持ちがないといえばウソになります。なぜなら、「無能な味方は有能な敵よりも大きな脅威」だからです。

そのように考えていけば、朝鮮半島がこれからどこに行くのかを見極めることこそが、ウェブ評論家としての新宿会計士の使命ではないか、と思えるのです。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. めがねのおやじ より:

    < 夕刊の配信ありがとうございます。
    < 韓国が海洋側に残ってくれて、今まで通り国防の点では米国の庇護を受け、経済的人的な交流が日本と続くのも悪くないかなー、毎度毎度反日、つまらん見下し目線を受け続けても、我慢出来るか。とも、一瞬は頭をよぎりましたが、やはり無理です。どうせ韓国は裏切る。それに精神的にも中国側。千年、二千年単位でそれでやって来ました。大陸はシナが一番上、半島は下、海洋側など蛮国、アタマ下げるのも嫌でしょう。
    < この状態が少なくとも1965年の(厳密に言えば1945年8月15日からだが)日韓基本条約以後、擦り寄り、タカリ、恫喝が続いているわけです。少なくとも65年まで、韓国は日本に偉そうな態度は取ってません。もう、恐ろしく貧国、とても相手にして貰えなかった相手。しかし、日本の援助で国力が付き、上手い具合に朝日新聞が嘘のネタ、日本を卑下し強請るカードが出来た。その後何枚も対日カードが日本のミスで手に入った。
    < 戦後10年以上経ってから生まれた私でさえ、全然知らない昔のこと、それを未だにというか年々強烈に反日の波を高くする韓国とは、友達でも親戚でも気の置けないお隣さんでもない。雨戸があるなら一日中締め、サッシをロックし、厚いカーテンを引き、最後にレースまで引いておき、物音立てず、その部屋には近づかないようにしますね。
    < 朴前政権と文政権の失礼な振る舞いで、いよいよ日本人も『韓国人は友達ではない』『いい感情はない』との認識が半数を遥か超えました。
    < もし、海洋側に残っても日本人への堪え難い嫌がらせは続きます。あと50年したら私達の年代だけでなく、昭和生まれは殆ど鬼籍に入るか80代以上になります。ということは今の平成生まれの方々が日韓問題、特に慰安婦合意履行や強制労働徴用工の捏造問題に対して異常なシツコさの韓国人と解決を図るのは、是非とも避けたい。そんな事があってはならない。
    < それこそ1世紀前の事で嘘を言い放たれて、それに対応するなど馬鹿げている。日本に原爆2個落とされて、未だ米国を恨んでいる人が何人いますか。ごく少数の考えが偏った人は、そうかもしれないが、少なくとも、日本の一部の世論としてでさえ、現れない。みんな73年前に悔しいが、受け止めてますよ。いちいちその後、復興の援助をしてくれた国を表面上は怨んだりはしない。
    < 繰り返しますが大陸チームに行けばいい!韓国は。北朝鮮と赤化しようが、どうせ中国の属国になる。中国もいつまで一党独裁が続くか知りませんが、日本は海洋側で、自由主義国の盟主としてアジアの主導権を握ります。どうぞ、大陸は大陸でやって下さいな。ごく普通(以下の)隣国としてだけ付き合います。大陸とは民族的に相容れない。但し、善隣ではないので、日本も防衛力は付けます。不埒な民族が嫌がらせできないように。あ、空母も作るよ。大陸を攻める為じゃない。尖閣、沖縄、東シナ海を守る為です。潜水艦とセットでシーレーンを巡回する。日本海が最前線になるが、竹島を占領して対馬に前線基地、米軍も岩国、長崎、小松、沖縄あたりに転進してくるでしょう。
    < 失礼しました。

  2. a4 より:

    日本はアメリカに「NO」と言えません。
    韓国はTPP,スワップ協定(再延長なんて言ってますが)に意欲を見せて居ると言う記事が有りました。
    大して役にも立たない韓国を大陸側に留めておく為、日本が損な役割を演じるのは勘弁して欲しいです。
    アメリカが韓国をこの先どの様に見て行くかだと思います、兎に角北と話が決着付くまで取り敢えずこちら側で一緒に圧力を掛けろと、後はモォルゲッソヨなら解りますが、韓国この先中国牽制の為結構使えるんじゃね?なんて事に成ったら最悪です。
    アメリカも韓国疲れが激しい様なので、扱いは手荒に成るでしょうね

    1. a4 より:

      海洋側ですね、間違えました訂正いたします
      韓国を大陸側に留めておく為 → 韓国を海洋側に留めておく為

  3. 非国民 より:

    中国だって韓国を引き取りたくないだろう。維持費がかなりかかりそう。欲しがるのは北朝鮮。北朝鮮が韓国を引き取る。韓国のめぼしい財産は北朝鮮のもの。韓国民は全員3等国民として炭鉱とかで働かせる。使い潰してもよいから韓国民を石炭生産に仕向ければ少々の経済制裁も問題なかろう。韓国人が日本に難民としてきても北朝鮮に引き取らせる。それですべてうまくまとまる。米軍は韓国から撤退。

  4. 歴史好きの軍国主義者 より:

    いつも知的好奇心を刺激する記事の配信ありがとうございます。

    >「元偵察総局長であり韓国哨戒艦「天安」爆沈、延坪島砲撃事件を主導した人物」
    北朝鮮はインテリジェンスのプロを連れてきましたか。

    アメリカのイヴァンカ氏はどうとるか難しいですね。
    まず前回同様、下位レベルのアクセスはあっても表面上は動線の接触無しで終わるでしょう。
    確実に言える事は閉会式での公式接触にて文大統領の手柄になるような
    「看板同士による平昌での半島問題の決着宣言は無い」
    事は確実でしょう。しばし様子見ですかね。

    マスゴミはこの後どうすべきでしょうか?本来なら北京、ストックホルム
    、ロンドン、ジュネーブ位は米朝双方の動静を見るべきでしょうが・・・。

    きっと見ないでしょうね。

    マスゴミは自らを、何もせずに餌をもらえる雛鳥と思っているかもしれません。
    まあ、わが国の国益を考えれば情報を何も考えず表に出してしまって、
    交渉自体をぶち壊すよりはましなのでしょうが。

  5. とある東京都民 より:

    たしかに、今…、韓国はコチラ側に踏みとどまれるでしょう…、仮に…。

    でも、ムンぽっぽ政権末期と、次期大統領の時は、ワカラン…。
    少しは踏み止まってられるか。もしくは、一気にアチラ側に、勢い良く、自ら進んで邁進していくか?

    わしは、自ら進んで邁進していくゆう公算が、『大』だと考えているが…。

    トホホ、トコトンダメな連中じゃの~、サウスコリアの連中は…。

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