久しぶりに、「金融評論家」らしく、通貨と金融についての専門的な議論を掲載したいと思います。ただし、正確さを心がけつつも、どなたにでも気軽に読んで頂けるよう、できるだけ難しいことばを使わないようにしています。面白いと思っていただければ幸いです。

※本文はお知らせの後に続きます。

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誰かの借金は誰かの資産

とても貴重なコメント

一昨日、『【夕刊】たかが100億フランに韓国が「狂喜乱舞」する理由』という記事を配信しました。

これは、簡単にいえば、韓国がスイスとの間で最大で100億フラン(約108億米ドル)の現金を、韓国ウォンと交換することができる、という通貨スワップ(BSA)を締結したことを、韓国メディアがそれこそ喜々として報じた、というものです。

ちなみに、100億フランと引き換えにスイスに提供しなければならない通貨は11.2兆ウォンで、2月20日時点の為替相場(1スイス・フラン=1,148.41韓国ウォン)よりは少ない金額です。これでよくスイス当局が韓国とのBSAに応じたものだと感心します。

それはさておき、この記事に対し、読者の方からこんなコメントを頂きました。

素人なんで素朴に思うのだが、国ってどうしてこんなにお金が必要なのかと。たかが100億フランですが、日本円に換えて現金で持っていたらうちの田舎の家は床がたぶん抜けます。日本の外貨準備高はだいたい100兆円くらいだそうですが、見当がつきません。韓国が外国から借りているお金も20兆円ぐらいのようですが、よくも借りたものです。なんか中国もにたような状態のようですが、中国がお金が用立てられなくてIMFに泣き付いても経済規模がでかすぎて救済できないんじゃないでしょうか。ちょっと5兆ドルほど借りれないかとIMFに言っても無理なんじゃないかな。

思うのだけど、国家ってどこも結構お金が厳しいかんじ。日本は国家が借金でいっぱい。中国は地方政府が借金でいっぱい。韓国は家計や公企業が借金でいっぱい。ドイツはどうもドイツ銀行が不良債権だらけ。完全に健全ですってところはEUの田舎の国ぐらいで、それは国際経済に影響がほとんどなし。なんか、借金が世界中でやたらめったら多いのだけど、これが通常運行なのか?と思う。

非常に鋭い視点です。

コメント主様は「素人の素朴な疑問」と仰いますが、こうした「気付き」は非常に大切であり、また、本質的なところを深く突いています。まさに、ウェブ評論活動を行っていて、本当に良かったと思う瞬間です。

私自身は「金融評論家」を自称しているため、当ウェブサイトでもしばしば、国家債務について議論してきました(たとえば『国の滅亡と国家のデフォルト』や『またぞろ復活!日韓スワップ再開論に要注意』などをご参照ください)。ただ、冷静に考えてみると、「借金そのもの」について議論したことはありません。

たとえば、「国の借金は1000兆円を超えているが大丈夫か?」といった議論と、その前提となる「そもそも論」を提供することについては、「金融専門の会計士」として、私が社会に貢献できる領域の1つだからです。

そこで本日は改めて「そもそも論」に立ち返り、議論の前半として、「借金そのものの本質」について考えてみたいと思います。

「借金」は「悪いこと」?

「借金」、という言葉があります。

これは小学生でも知っている単語ですが、わかりやすく言えば、「おカネを借りていて、いつかはそれを返さなければならない状態」のことです。

日本語の「借りを作る」という表現もあるとおり(反対語は「貸しを作る」)、この「借」という漢字には、「何か良くないこと」というニュアンスが含まれている節があります。

また、プロ野球の世界では、「借金」は「負け越し」という意味でも使われているようですが、この場合の「借金を返す」とは、試合に勝って負け越しの状態を解消することを指すそうです。逆に「勝ち越し」を「貯金」と呼ぶこともあります(※といっても、私は野球にはそれほど詳しくないので、厳密な「貯金」「借金」の数え方について深く知りたい方は、他のウェブサイトを検索してください)。

つまり、「借金」とは「何か悪いこと、やましいこと、負い目を負っている状態」のことであり、「貯金」とはその反対語、というわけです。

また、日本人には「借金は悪徳」「貯金は美徳」、という考え方を持っている人も多いと聞くことがあります。

「日本語の『借金』という言葉に悪いニュアンスがある」といえば、読者の皆様の間でも、「あぁ、そうだね。」と思う方は多いのではないでしょうか?

「国の借金」という意味不明の概念

そして、この「借金」という俗語を使った問題表現が1つあります。

それは、「国の借金」です。

「国の借金が1000兆円を超えた」と聞くと、「国民1人あたり850万円もの借金を抱えているのと同じだ」、「日本はいつか財政破綻するに違いない」、「だから、消費が落ち込んでも良いから、今すぐにでも消費税率を引き上げなければならない」という短絡的な議論に繋がりがちです。

この「国の借金」という議論、「天下の日経新聞様」が堂々と使っています。

「国の借金」9月末で1080兆円 国民1人あたり852万円(2017/11/10 18:03付 日本経済新聞電子版より)

私たちにとって、852万円という金額は巨額です。

いや、中には「そんなカネ、大したことない」と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、少なくとも私にとっては、852万円を今すぐ返せ、と言われたら、困ってしまいます。

しかも、これは「国民1人あたり」です。私のように家族がいれば、たとえば3人家族ならば2556万円、4人家族ならば3408万円の「借金」を抱えている、というロジックでしょうか。

この「国の借金」、「国民1人あたり」という報道、いい加減にやめてもらいたいところです。なぜなら、「国の借金」なる概念など、この世に存在しないからです。

正確な概念は、「中央政府の金融負債」です。

そして、「国民1人あたり」で割ってもまったく意味がありません。なぜなら、中央政府自体、経済主体としては日本国民とは全く別に存在していて、国民には第一義的にこれを返す責任など存在しないからです。

財務官僚がこの記事を読めば、

そんなことはない!国の借金は将来の日本国民が負担しなければならないものだから、1人あたりいくらの負担をしなければならないかという数字には大きな意味がある!

というウソを平気で言い放つと思いますが、この手のウソに騙されてはなりません。

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そもそも論:金融資産と金融負債とは?

金融資産と金融負債は表裏一体の関係

その前に、本日は「そもそも論」として、「金融資産」と「金融負債」について論じておきましょう。

昨年末に出版した拙著からの引用で恐縮ですが、金融商品会計では、金融商品、金融資産、金融負債は一般的に、次のように定義されます。

  • 金融商品とは:金融資産と金融負債のこと。
  • 金融資産とは:現金と将来の現金収入を発生させる契約上の権利のこと。
  • 金融負債とは:将来の現金支出を発生させる契約上の義務のこと。

ここで、「将来の現金支出を発生させる契約上の義務」と書いていますが、要するに、いつかおカネを払わなければならない状態のことであり、「借金」よりも広くて正確な概念です 1)厳密に言えば、金融負債は金銭債権と株式・出資金に大別され、株式・出資金は元本を返済する義務がないので、金融商品会計的には「金融負債」ではありません。しかし、ここでは経済学の議論をするつもりなので、この点については割愛します。なお、詳しく知りたい方は、会社法や企業会計の入門書・専門書などを読んで下さい。

そして、金融資産と金融負債は、いわば、表裏一体の関係にあります。

たとえば、私たち個人が銀行から借りている「住宅ローン」は「銀行に対する金融負債」ですが、銀行側から見れば「個人に対する住宅ローン」です。また、企業が銀行からおカネ(運転資金や設備資金)を借りていれば、それも同様に「銀行に対する金融負債」ですが、銀行から見れば「事業法人に対する金融資産」です。

あるいは、企業が社債を発行すれば、その社債は、企業から見れば「社債権者に対する金融負債」、社債権者から見れば「その企業に対する金融資産」です。

さらにいえば、私たちのサイフに入っている「日本銀行券」とは、「日本銀行に対する金融資産」であり、日銀から見れば「現金保有者に対する金融負債」です(もっとも、現金自体は日銀から見ると無利子の永久債と同じであり、上記の「金融負債」の定義からは若干外れます。これについてはもし余裕があれば、「後編」を執筆する際にでも説明したいと思います)。

つまり、金融資産と金融負債は表裏一体の関係にあり、常に「誰かの金融資産は誰かの金融負債である」という関係が成り立っているのです。

ということは、個人から見た貯金(正確には「現金預金」)とは、中央銀行や金融機関から見た負債(俗語でいう「借金」)です。あるいは俗語で言い換えれば、

誰かが貯金をするということは、誰かが借金をしている

ということです。その意味で、「借金は悪」「貯金は善」という思い込みは、前提から誤っているのです。

金融負債のレバレッジ効果

もちろん、おカネを借りて返せなくなる事態は非常に困ります。

たとえば、中小企業だと、銀行からおカネを借りて、従業員に給料を払ったり、仕入先に仕入代金を支払ったりしていますが、売上先が倒産して売上代金が入金されなくなった瞬間、銀行からの借入金が返せなくなって連鎖倒産してしまうことがあります。

しかし、その一方で、十分な収入があって、債務の元利金を十分に返している状態であれば、「借金」をすることは何も問題がありません。それどころか、利益率を高めるという効果が得られます。

  • ①売上高=総資産×資産回転率
  • ②総資産=負債+資本
  • ③利益=売上高-資本コスト
  • ④資本コスト=負債×利子率×+資本×株主還元率

という4つの計算式が成り立っていたとします。

このとき、この会社は、総資産の額が多ければ多いほど、売上高を増やすことができます。

たとえば、資本金1億円を投資して資産回転率が100%の業界に参入すれば、①式から、1億円の売上高が期待できます。そして、株主還元率が50%だったとすれば、④式と③式から、利益は5000万円と計算できます(1億円-1億円×50%=5000万円)。

ところで、普通の個人だと、自己資本だけではどうも十分に事業を展開することができません。

そこで、銀行などの金融機関からおカネを1億円借りれば、売上高を一挙に2億円に増やすことができます(①式と②式)。そして、この負債の利子率が20%だったとすれば、④式と③式から、利益を一気に1.3億円にまで増やすことができます(2億円-1億円×50%-1億円×20%=1.3億円)。

いかがでしょうか?

  • ⑤おカネをまったく借りないで事業を営んだ時の利益は、5000万円
  • ⑥おカネを1億円借りて事業を営んだ時の利益は、1.3億円

⑤と⑥を比べると、総資産の違いは2倍ですが、利益は2.6倍に増えます。つまり、利益は2倍以上になっています。これを一般に「レバレッジ効果」と呼びます(本当は負債コストに税効果を勘案したり、営業経費を勘案したりする必要もありますが、ここでは省略しています)。

このように考えると、

  • ⑦おカネを2億円借りて事業を営んだ時の利益は、2.1億円
  • ⑧おカネを3億円借りて事業を営んだ時の利益は、2.9億円

と、どんどんと利益水準を高めることができます。

逆に言えば、「負債利子率を事業利益率が上回っている場合」には、その状態が続いている限りは、ドンドンとおカネを借りて事業を拡大すべきなのです。

事業にはリスクがある、個人には寿命がある

ただし、民間企業が行う事業には、常にリスクが伴います。

たとえば、「儲かる」と思って事業を始めたものの、競合他社が新規参入してしまったことで利益率が下がり、思ったほど儲からなかった、というようなケースです。

また、個人で事業を営んだり、住宅を買ったりしておカネを借りた場合には、一般に死ぬまでにおカネを返す必要があります(ただし日本の住宅ローンの場合は団体信用生命保険が存在するため、住宅ローンを返す前に亡くなった場合には保険金が下ります)。

だからこそ、「借り過ぎ」はダメです。

こうした「企業財務分析」は、私たち公認会計士の専門領域の1つですが、たとえば「デット・エクイティ・レシオ」や「レバレッジ・レシオ」などの指標を使って企業経営の健全性や成長性を見るのは、企業財務分析の基本中の基本です。

また、銀行員の皆さんは、個人事業者や中小企業におカネを貸す場合、その経営者の資質を見極めることも重要ですが、その前にスコアリングを行い、経営の健全性を検討しなければなりません。

いずれにせよ、「借金だから自動的に悪」「貯金だから自動的に善」という考え方は、経済の鉄則からして間違っています。

  • 「おカネを借りるなら、返せる範囲で借りること」。
  • 「おカネを貸す方は、返ってくるかどうかを見極めること」。

これが、事業融資の世界の鉄則です。

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国家の金融負債の特徴

国家は通貨発行権限を持っている

では、おカネを借りる主体が企業や個人ではなく、国家だった場合には、どうなるでしょうか?

もちろん、国家であったとしても、おカネを借りたら、きちんと返さなければなりませんし、おカネを踏み倒せば、たとえ相手が国家であったとしても、誰も貸してくれなくなります(といっても、戦争などの混乱期を除きます)。

しかし、国家には、企業や個人にはない、1つの大きな特徴があります。

それは、「国家は貨幣を発行する権限を持っている」、という点です。

もちろん、日本や米国、英国などの場合は、通貨発行権限を持っているのは「政府」ではありません。「中央銀行」です。ですが、これらの国の場合であっても、議会で法律を通せば、通貨発行権限を中央政府に移すこともできます(もちろん、そんなことは絶対にやらないと思いますが…)。

また、中国の場合だと、いちおう、中国政府と中国人民銀行と人民解放軍は別組織ですが、最終的には中国共産党という「絶対権力を持つ独裁者」の支配下にありますので、習近平(しゅう・きんぺい)国家主席の「ツルの一声」で、いくらでも紙幣を刷ることができてしまうのではないでしょうか?

いずれにせよ、中央政府はいくら「借金」を重ねても、自国通貨でおカネを借りている限りは、「絶対に」デフォルトしません。

※米国で議会が債務上限を緩和する法律を通さなかったために、米国ではたびたび、政府の「シャットダウン」が発生していますが、これも結局は議会が承認すれば済む話であり、「おカネを借り過ぎて返せなくなる現象(=デフォルト)」ではありません。

国家が「デフォルトする」例とは?

ただし、この「国家は絶対にデフォルトしない」という鉄則には、1つの重要な前提条件があります。

それは、自国通貨建ての債務であること、すなわちその国が「自国通貨(みずからが発行権限を持っている通貨)でおカネを借りていること」、です。

日本の例で考えてみれば分かりやすいのですが、日本政府は基本的に円建てで債券(国債、財融債、国庫短期証券)を発行しています。私が知る限り、財務省が公表する「国債金利情報」のデータが存在する1974年以降、一部の政府関係機関を除けば、外貨建てで債券を発行した事例はありません。

しかし、世界に目を転じてみると、実際に国債を「返すことができなくなった」(正確に言えば「ロールできなくなった」)例は、枚挙にいとまがありません(図表1)。

図表1 国家の危機
時期 概要
1945年 ドイツ、日本 日本の場合は戦時中に急膨張した債務の支払が不可能な状況となり、1946年の預金封鎖による新円切り替えにより、円建ての旧国内債務は事実上デフォルトした(ただし、日本の対外債務についてはデフォルトしておらず、このことは現在に至る日本国債に対する高い信認の維持に寄与している)
1997年後半 タイ、インドネシア、韓国 いわゆる「アジア通貨危機」。タイ・バーツのドルペッグ破綻を契機に危機が伝播し、なかでもインドネシアと韓国は国際通貨基金(IMF)や日本の支援を余儀なくされた
1998年8月 ロシア アジア通貨危機による金融市場の混乱と世界経済減速を遠因として、外貨建の債務がデフォルトし、通貨・ルーブルも暴落した
2001年12月 アルゼンチン 国内政治の不安定さやドルペッグの崩壊などを反映し、アルゼンチン政府は対外債務の利払を放棄し、デフォルト(2014年にも再度デフォルト)
2008年10月 アイスランド リーマン・ブラザーズの経営破綻を契機とした為替相場の変動により、英国などの市民から多額のおカネを集めていたアイスランドの3大銀行が相次いで経営破綻した危機。ちなみにアイスランドの人口はわずか30万人程度だった
2012年3月 ギリシャ 共通通貨・ユーロで調達したギリシャ国債が事実上デフォルトした事件。欧州連合(EU)、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)の三者はこれを「秩序あるデフォルト」とうそぶく
2013年3月 キプロス危機 ロシアの富裕層などから巨額の預金をかき集めていた国内の金融機関が経営危機に陥り、預金封鎖され、1人10万ユーロを超える預金については銀行の株式と強制交換する措置が取られた
2014年7月 アルゼンチン 2001年に「デフォルト」したアルゼンチンのドル建国債について、債務交換に応じなかった米国のヘッジファンドが米国の地裁に起こした訴訟に敗れ、2014年7月に「第二次デフォルト」に陥った

(【出所】著者作成)

近年の例でいえば、ギリシャは2012年に、アルゼンチンは2014年に、それぞれデフォルトを発生させていますし、国債のデフォルトではありませんが、地中海の美しい島国・キプロスは2013年に銀行危機を発生させています。

しかし、図表1の例を見ていただいて、わかることが1つ、あります。それは、戦争などの異常事態を除けば、これらの事例はいずれも外貨建てや共通通貨建てで借りたおカネを返すことができなくなったというものばかりであり、平時に自国通貨建てで発行された国債をデフォルトさせた事例は1つもない、ということです。

実は、日本も1990年代後半から2000年代前半にかけて、金融機関が相次いで経営危機に陥りました(いわゆる不良債権問題)。しかし、日本の場合は結局、IMFなどの助けを借りず、自力でこの危機を乗り切りました。

しかし、「デフォルトの常連さん」である、ギリシャやロシア、アルゼンチン、はたまた韓国といった国々は、いずれも共通している特徴があります。それは、自国通貨ではなく、外国通貨でおカネを借りている、という点です。

ということは、逆に言えば、外貨建て・共通通貨建てで巨額の債務を調達している国は、財政破綻、金融破綻、通貨危機に陥りやすい、ということです。

国家破綻の潜在的予備軍

国債がデフォルトするということになれば、その国が対外的な信用を失いますし、国民生活にも深刻な影響が生じることがあります。

また、図表1の事例を見ていただければ、国家が危機に陥るのは、なにも国家がおカネを借りているときには限られません。アイスランド、キプロス、韓国などのように、民間の銀行・金融機関が巨額の外貨借入を行っている場合にも、通貨危機が発生する可能性があるのです。

とくに、銀行などの金融機関がおカネを借りるのと、一般事業会社がおカネを借りるのとでは、大きな違いがあります。銀行が経営破綻すれば、アイスランドやキプロスのように、国民生活が混乱に陥る可能性もあるからです。

ただし、自国通貨建てであっても、政府がおカネを借り過ぎると良くない場合もあります。

たとえば、国内で資金需要が逼迫しているときに政府がおカネを借りれば、金利が上昇し過ぎて産業や雇用に悪影響が生じますし(専門用語で「クラウディング・アウト」と呼びます)、政府の放漫財政を支えるために中央銀行が国債を買い入れれば、悪性インフレが生じる可能性もあるからです。

(※ただし、日本の場合はこうしたケースに該当していませんが、この点については「後編」で説明したいと思います。)

――↓本文は以下に続きます↓――

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ダメな借金、危険な借金

ここで、敢えて「借金」という言葉を遣い、「ダメな借金」、「危険な借金」の例をまとめておきましょう。

図表2 ダメな借金、危険な借金
債務者 借り方 その理由
個人 収入に比べて過大な借金を背負う(住宅ローンや消費者ローンなど) 働けなくなったり、市中金利が上昇したりすれば、生活が破綻し、返せなくなるかもしれないから
事業会社 事業の収益率や利益率が落ちているのに無理やり借入を増やして事業を拡大する 事業収益率が低下したら金利負担や元本弁済キャッシュ・アウト・フローに耐えられなくなるかもしれないから
銀行 外貨や共通通貨で借り入れる 銀行がデフォルトすれば、一国の金融システム全体が揺らぎ、国民生活や産業に間接的な悪影響が生じるから
国家 外貨や共通通貨で借り入れる 国家がデフォルトすれば、国のあらゆるレベルで悪影響が生じるから
国家 資金需要が逼迫しているときに、自国通貨で多額の資金を借り入れる 金利が上昇して産業や雇用に悪影響が及び(クラウディング・アウト)、悪性インフレが生じかねないから

(【出所】著者作成)

つまり、問題は「借金そのもの」なのではありません。おカネを借りるときの「借り方」こそが、問題となるのです。

では、日本の財政は危機的状況にあるのでしょうか?

答えは、「まったく危機的状況にない」、です。

いや、もっと正確に言えば、「日本はもっと国債を発行し、積極的に財政出動しても、まったく問題ない」、です。

財務省やその「ポチ」である日経新聞様が主張するのと真逆の結論になるのですが、その理由について述べると議論が長くなります。

当ウェブサイトにしては珍しいのですが、この問題については、「後編」を近いうちに配信したいと思いますので、どうかご期待ください。

※ただし、私には「前編」だけ執筆してそれっきりになってしまったという「前科」があります(『2017年の日韓観光統計を読む(前編)』がそれです…)。忘れないようにするためには、できるだけ早く「後編」の執筆に取り掛かる必要がありそうですが、もし忘れそうになっていたら、コメント欄で督促してください。

※本文は以上です。

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  • 2018/08/08 10:00 【マスメディア論|時事
    「安倍叩きネタ」が切れた途端に上昇する内閣支持率の不思議 (2コメント)
  • 2018/08/08 05:00 【時事|韓国崩壊
    堂々と「ツートラック外交」を主張する韓国メディアの不見識 (6コメント)
  • 2018/08/07 16:00 【時事|国内政治
    朝日の調査ですら、8割の人が野党には期待しないという事実 (5コメント)
  • 2018/08/07 10:00 【政治
    自由と繁栄の弧:ASEAN外交で米国に先行する日本の活躍 (5コメント)
  • 2018/08/07 05:00 【マスメディア論|時事
    なぜか新宿会計士の政治経済評論が政治部門でPV数1位に (5コメント)
  • 2018/08/06 14:00 【RMB|時事|韓国崩壊
    ラオスのダム決壊、遅まきながら事故調査委が立ち上がるか? (6コメント)
  • 2018/08/06 10:20 【時事|韓国崩壊|外交
    韓国に対する「セカンダリー制裁」が現実味を帯びてきた (2コメント)
  • 2018/08/06 05:00 【時事|外交
    米国の戦争犯罪、なぜ原爆は広島市に投下されたのか? (8コメント)
  • 2018/08/05 10:00 【日韓スワップ|金融
    数字で見る外貨準備 韓国の外貨準備高の8割はウソなのか? (2コメント)
  • 2018/08/05 05:00 【政治
    ラオスのダム決壊事故の続報はなぜ出てこない? (16コメント)
  • 2018/08/04 10:00 【時事|外交
    ユネスコ世界遺産登録は、今からでも謹んで返上した方が良い (5コメント)
  • 2018/08/04 05:00 【時事|国内政治
    安倍3選は確実としても、それで問題が解決するわけではない (3コメント)
  • 2018/08/03 16:00 【マスメディア論|時事
    フェイク・ニュース「韓国がダム決壊を鹿島建設に責任転嫁」 (2コメント)
  • 2018/08/03 10:00 【韓国崩壊
    北朝鮮から経済支援を強要される韓国政府の自業自得 (4コメント)
  • 2018/08/03 05:00 【政治
    立憲民主党に杉田水脈氏のことを責める資格はない (2コメント)
  • 2018/08/02 16:00 【日韓スワップ|金融
    韓国メディアの報道は通貨危機の危険度を知るバロメーター (2コメント)
  • 2018/08/02 10:00 【時事|国内政治
    野党連携から国民民主党が外れたことに希望を感じる理由
  • 2018/08/02 05:00 【時事|韓国崩壊
    ラオスのダム決壊が日本のせい?「韓国の世論操作」説 (10コメント)
  • 2018/08/01 16:00 【時事|外交
    サンフランシスコ市の慰安婦像問題と戦う吉村市長を支持する (4コメント)
  • 2018/08/01 10:00 【時事|韓国崩壊|金融
    「家計債務は破綻寸前」?数字で見る韓国経済破綻の危機 (3コメント)
  • 2018/08/01 05:00 【マスメディア論
    インターネットに完敗する新聞、視聴者が高齢者に偏るテレビ (4コメント)
  • 2018/07/31 17:10 【マスメディア論|時事
    「国民の敵」同士が結託して、審議拒否に見苦しい言い訳 (2コメント)
  • 2018/07/31 10:00 【時事|国内政治
    国民民主党、「もりかけ国会」の異常さにいまさら気付く? (7コメント)
  • 2018/07/31 05:00 【時事|国内政治
    事実確認のの大切さ、議論することの大切さ(自戒を込めて) (13コメント)
  • 2018/07/30 16:45 【時事|雑感オピニオン
    海外で本物の日本料理を探す冒険を楽しむのもまた人生
  • 2018/07/30 10:00 【マスメディア論|時事
    原文を読んだうえで、それでも杉田水脈氏の不見識を批判する (24コメント)
  • 2018/07/30 05:00 【時事|外交
    ラオスのダム決壊事故は、「セウォル号事件」の再来なのか? (10コメント)
  • 2018/07/29 05:00 【時事|国内政治
    杉田水脈議員の「LGBTは子供を作らない」発言の不見識 (16コメント)
  • 2018/07/28 00:00 【政治
    有権者よ野党議員の「バカッター」を読もう、そして考えよう (2コメント)
  • 2018/07/27 16:30 【時事|外交
    共同通信が報道した「日韓新共同宣言」構想、その背景は? (11コメント)
  • 2018/07/27 10:00 【時事|国内政治
    今度は「文部科学省の現役高官が飲食容疑で逮捕」の不自然さ (1コメント)
  • 2018/07/27 05:00 【マスメディア論|時事
    CNN記者のホワイトハウス締め出し事件とメディアの異常さ (5コメント)
  • 2018/07/26 10:00 【マスメディア論|時事
    日本共産党と朝日新聞社の主張は究極的にはまったく同じ (9コメント)
  • 2018/07/26 05:00 【時事|韓国崩壊
    韓国企業が関わるラオスのダム決壊事故に見る中央日報の報道 (7コメント)
  • 2018/07/25 10:45 【時事|韓国崩壊
    日韓慰安婦合意の蒸し返しと韓国政府にとっての不都合な事実 (10コメント)
  • 2018/07/25 05:00 【マスメディア論|外交
    北朝鮮の日本人拉致犯罪に対する、共同通信の筋違いな分析 (3コメント)
  • 2018/07/24 16:15 【時事|国内政治
    内閣官房長官、「パチンコのギャンブル性をなくす」と明言 (5コメント)
  • 2018/07/24 10:00 【マスメディア論|時事
    中央日報日本語版を読んで、メディア・リテラシーを磨こう! (7コメント)
  • 2018/07/24 07:00 【日韓スワップ|韓国崩壊
    文在寅さん、支持率100%に向けて是非頑張ってください
  • 2018/07/24 00:00 【時事|お知らせ
    お知らせ:記事配信スタイル変更につきまして (6コメント)
  • 2018/07/23 16:00 【マスメディア論|時事
    【朝日新聞批評】民主主義を根腐れさせるのはむしろ朝日新聞 (4コメント)
  • 2018/07/23 10:00 【マスメディア論|時事
    新聞・テレビを鵜呑みにしていると内閣不支持となるのは当然? (7コメント)
  • 2018/07/23 07:00 【マスメディア論|国内政治
    モリカケで弁護士が「賄賂なくても大問題」と支離滅裂な主張 (7コメント)
  • 2018/07/23 00:00 【時事
    立憲民主党、「政策よりも選挙が大事だ」とつい認めてしまう (3コメント)
  • 2018/07/22 00:00 【マスメディア論|時事
    故・松本龍元復興相の言動を、きちんと振り返り記録すべきだ (5コメント)
  • 2018/07/21 10:00 【マスメディア論|時事
    アカウントBAN運動は言論封殺であり、天に唾する愚行だ! (7コメント)
  • 2018/07/21 00:00 【雑感オピニオン
    3年目の御礼:インターネットの無限の可能性と直接民主主義 (4コメント)
  • 2018/07/20 16:00 【金融
    ドイツと韓国:輸出依存度が高い国が共通して抱える問題点 (1コメント)
  • 2018/07/20 11:00 【マスメディア論|時事
    (朝日新聞社説批判)君が代判決巡り新しい屁理屈表現を開発 (7コメント)
  • 2018/07/20 07:00 【雑感オピニオン
    私たちが思うほど単純ではない「LGBT」とセクハラの議論 (11コメント)
  • 2018/07/20 00:00 【マスメディア論|時事
    災害報道の共同通信の新人記者は被害者ではなく立派な加害者 (5コメント)
  • 2018/07/19 16:00 【マスメディア論|時事
    BANされた翌日に急上昇1位!痛快極まりないユーチューバー (4コメント)
  • 2018/07/19 11:00 【時事|外交
    「日本が1兆円の北朝鮮支援」と勝手に決めつける韓国メディア (7コメント)
  • 2018/07/19 07:00 【韓国崩壊
    予想通り、韓国では朴槿恵政権時代に戒厳令が検討されていた
  • 2018/07/19 00:00 【時事|韓国崩壊
    韓国の主張は北朝鮮そっくり。日韓の「特別な関係」は終了へ (3コメント)
  • 2018/07/18 16:00 【マスメディア論|時事
    言論に「言論弾圧」という手段で対抗する極左勢力の愚劣さ (2コメント)
  • 2018/07/18 09:50 【マスメディア論|時事
    (朝日新聞社説批判)朝日新聞の責任、加計・森友を忘れるな (4コメント)
  • 2018/07/18 07:00 【国内政治
    ギャンブル依存症とパチンコ問題の「現実的な」解決策とは? (11コメント)
  • 2018/07/18 00:00 【時事|国内政治
    安倍晋三総理大臣に対する菅直人元首相の「危機管理批判」 (2コメント)

  • 著者のコンタクト先:info@shinjukuacc.com

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    1. 厳密に言えば、金融負債は金銭債権と株式・出資金に大別され、株式・出資金は元本を返済する義務がないので、金融商品会計的には「金融負債」ではありません。しかし、ここでは経済学の議論をするつもりなので、この点については割愛します。なお、詳しく知りたい方は、会社法や企業会計の入門書・専門書などを読んで下さい。