以前から私のウェブサイトでは、朝鮮半島の未来を巡っては「7つのシナリオがある」と申し上げて来ました。しかし、最近になってさまざまな情勢が動いていることなどを踏まえるならば、このシナリオについては再編し、書き換える必要があります。そこで、本日はこの「朝鮮半島の未来」というシナリオを更新してみたいと思います。具体的には、韓国が中国の「属国」となってしまう確率が70%、北朝鮮に吸収されてしまう確率が20%、現状維持の確率が10%と見ています。

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    そろそろ「シナリオ」を更新します

    従来の「7つのシナリオ」

    以前から私は、朝鮮半島の未来を巡っては、7つのシナリオがあると申し上げて来ました(図表1)。

    図表1 朝鮮半島情勢を巡る7つのシナリオ
    区分 パターン  具体的な内容
    (1)南北統一シナリオ ①北朝鮮主導の赤化統一 北朝鮮がミサイル開発危機を生き延び、韓国で親北派大統領が誕生し、朝鮮半島は北朝鮮主導で赤化統一される
    ②米国主導の吸収統一 米国が北朝鮮を軍事攻撃し、これにより北朝鮮が崩壊し、韓国が米国の命令により北朝鮮を吸収する
    ③中国主導の吸収統一 米中密約により中国が北朝鮮の体制を崩壊させ、韓国から米軍が撤退し、韓国が中国の後ろ盾を得て北朝鮮を吸収する
    (2)南北分断継続シナリオ ④中華属国化 南北朝鮮が同時に中国の「属国」と化す
    ⑤南北朝鮮の「クロス承認」 韓国は中国の属国となり、日米両国と断交する一方、北朝鮮は日本と米国が国家承認し、中国と断交する
    ⑥軍事クーデター 韓国で軍事独裁政権が成立し、民政を停止し、韓国の赤化統一や中華属国化を防ぐ
    ⑦現状維持・膠着 周辺の大国(とくに米中日露4ヵ国)の都合で、朝鮮半島の現状が維持される

    この7つのシナリオは、私がウェブ評論活動を開始して半年ほど経過した、昨年冬に提示したものがたたき台となっています。これには大きく分けて、(1)南北朝鮮が統一された場合のシナリオ(①~③)、(2)南北朝鮮の分断が継続した場合のシナリオ(④~⑦)があります。

    このうち、(1)に示した「南北統一シナリオ」については、①韓国社会が左傾化するあまり、北朝鮮主導で赤化統一されてしまうのか、それとも米国か中国が北朝鮮処分に踏み切ることで、②米国、③中国、それぞれが主導で統一されてしまうのか、という違いがあります。ただし、いずれも共通点があるとしたら、韓国が自分で朝鮮半島の未来を決めることはできない、という点にあります。

    一方、(2)に示した「南北分断継続シナリオ」については、④と⑤は「韓国社会が中華属国化する」という点では同じであり、唯一、シナリオ⑥(グンジクーデター)だけが、韓国が自分で自分の将来を決めることができる選択肢です。また、先月私は「⑦現状維持シナリオ」を追加しました。

    「7つのシナリオ」のアップデート

    ただ、この「7つのシナリオ」、急速過ぎる朝鮮半島情勢の変化を受けて、もはやそのままでは実情にそぐわない部分もあり、修正する必要が出て来てしまいました。

    というのも、とくにこの半年で、韓国で軍事クーデターが発生する可能性は極めて低くなってしまいましたし、米国が北朝鮮の体制を変革するような攻撃を単独で加える可能性も、ほぼゼロに近付いていると考えているからです。

    そこで、本日の記事では、米国が北朝鮮の非核化のために取り得る作戦が3つあること、米国の軍事行動には4つのパターンがあることを説明し、そのうえで、「新・6シナリオ」を提示する形とします。

    新シナリオの前提

    解決のための作戦は3つ

    日本のメディアの報道を見ていると、この期に及んで「北朝鮮の核問題を対話によって解決すべきだ」とする主張も散見されます。しかし、私の考えによれば、北朝鮮の核危機を完全に解決するには、すでに対話による核放棄を迫るという局面は過ぎています。

    ということは、この局面を打開するためには、具体的には、3つの作戦しかありえません。その作戦とは、①斬首作戦、②サージカル・アタック、③金正恩(きん・しょうおん)の亡命(無血開城)、です。

    ①斬首作戦とその難点

    1つ目の作戦として考えられるのは、「斬首作戦」です。これは、北朝鮮に攻め込み、金正恩の身柄を拘束(あるいは殺害)することで、北朝鮮の体制そのものを変革してしまうというものです。

    この作戦がうまく成功すれば、恐るべき狂気の独裁者が排除され、朝鮮半島の非核化も確実に達成できそうです。しかし、この作戦には難点がいくつもあります。

    まず、実際に「金正恩の斬首」を目的として北朝鮮に攻め込むとしても、米国やその同盟国(日英豪など)だけの判断でできる話ではありません。当然、中国とロシアの許可が必要でしょうし、「金正恩体制後」の北朝鮮の在り方について、中国・ロシア両国との合意をきちんと取っておかねばなりません。

    また、実際に米国が中露の合意を得て、北朝鮮に攻め込んだとしても、それこそ北朝鮮は死にもの狂いで抵抗することが懸念されます。というのも、北朝鮮の人民は金正恩に絶対忠誠を誓うように洗脳されており、金正恩の所在地は地下要塞化されていて、しかも金正恩には影武者が何人も存在するからです。このため、金正恩本人の所在の特定は難しいのが実情でしょう。

    さらに、うまく金正恩の所在を特定し、その身柄の拘束や殺害などに成功したとしても、混乱する北朝鮮の新秩序を速やかに打ち立てなければならないという意味で、「戦後処理」も非常に困難です。

    このため、この「斬首作戦」については、かなりハードルが高いと見るべきなのです。

    ②サージカル・アタックの長所と短所

    そこで注目される2つ目の作戦とは、「サージカル・アタック」、つまりミサイル発射基地などを特定し、局所的に攻撃を加える、というものです。この場合、北朝鮮の体制崩壊を招かずに、ピンポイントでICBMの発射基地を破壊するというものであり、うまくやれば、北朝鮮の核危機を「当面は」先延ばしにすることができる作戦です。

    しかも、この「サージカル・アタック」(つまり限定的な爆撃)の場合は、すでに中国政府の了解も取れていると考えるべきであり(詳しくは『トランプのディナー歓待に見る日越中韓の違い』の中の『「成果は全くなかった」のか?』あたりをご参照ください)、極端な話、米国(とその同盟国である日本や英国、豪州など)だけの判断で実施することができます。

    ただし、この作戦を採用し、成功した場合であっても、北朝鮮に核放棄をさせることはできません。下手をすれば、北朝鮮の体制自体、いつまでも続くことにもつながります。このため、この作戦だと、本質的な解決にはつながらないのです。

    ③本当の理想は「米中露3ヵ国会談」と無血開城

    ところで、「ウルトラC」として考えられるのは、3番目の作戦です。これは、戦闘ではなく、金正恩が自らの判断で第三国(たとえばロシアやスイスなど)に亡命し、平和裏に北朝鮮という国を明け渡す(つまり「無血開城」)、というものです。これには戦闘が発生しないというメリットもあり、また、確実に核放棄も実現できるため、理想的なパターンです。

    ただし、この作戦を成功させるためには、それこそ米中露3ヵ国がしっかりと打ち合わせを行い、かつ、北朝鮮側の了解を取らねばなりません。

    これを「難易度順」にまとめると、次のとおりです(図表2)。

    図表2 北朝鮮核問題の解決3パターン
    パターン 作戦の特徴 作戦の難易度
    サージカル・アタック 対症療法的な作戦であり、北朝鮮核危機の一時的な先送りに過ぎない 作戦の難易度は最も低い(中国が中立を維持するならば、米国とその同盟国だけの決断で実施できるため)
    斬首作戦 金正恩を物理的に排除するため、北朝鮮の核問題を直接、解決することにつながる 作戦の難易度は高い(米中露3ヵ国が協力する必要があるため)
    無血開城 金正恩自身協力を得ることになるため、核開発を含めたあらゆる問題を完全に解決することができる 作戦の難易度は極めて高い(米中露3ヵ国だけでなく、北朝鮮自身も同意する必要があるため)

    現状では、後述する理由により、とくに米国とロシアの協力が成立し辛いため、この3つの作戦のうち、もっとも実現する可能性が高いのは「サージカル・アタック」ではないかと、私は見ています。

    北朝鮮攻撃の「4つのパターン」と微妙な立ち位置の韓国

    ただし、これらの実現可能性を読むうえでは、米国と中露の「協力パターン」を仮定することが必要です。これについて私は、次の4つのパターンがあると考えています。

    • ①中露が一切絡まない、米軍とその同盟国による北朝鮮攻撃
    • ②米中両国が共同で実施する北朝鮮攻撃
    • ③米中露3ヵ国が共同で実施する北朝鮮処分
    • ④トランプ大統領が失脚するなどの、米国内の混乱

    です。これらについては、以下にパターン①~④として詳述していきたいと思うのですが、その前に、議論しておかなければならない論点が、もう1つあります。

    それは、微妙な立ち位置の国・韓国のことです。

    実は、今回の北朝鮮危機において、私は、韓国が米国の軍事作戦に協力しない可能性が極めて高いと見ています。それには2つの理由があります。

    1つ目の理由は、韓国はもはや、精神的にはすっかり中国の「属国」になってしまったことです。先月、韓国は中国に対し「三不」(MDに参加しない、THAADを追加配備しない、日米韓軍事同盟を結ばない)を宣誓させられました(『「三不協定」の衝撃:米韓同盟崩壊が視野に入った』参照)。この「三不」により、韓国は「日米韓3ヵ国協力」の枠組みから、自主的に抜け出してしまったのです。

    そして、2つ目の理由は、韓国の「病的」ともいえる反日感情です。つまり、北朝鮮処分を行う際、日本が共同作戦の主要メンバーに入っている限り、韓国はそれには参加しないことが予想されるのです(※これに関しては残念ながら、私たち日本にとって、できることはもう何もありません)。

    いずれにせよ、この2つの理由があるため、米中両国が北朝鮮攻撃で明らかに合意した場合を除けば、韓国が米国の軍事作戦にすんなりと協力する可能性は低いと見るべきでしょう。

    以上を踏まえて、いよいよ本題の、「具体的に考えられる米中露協力の4つのパターン」を眺めておきましょう。

    パターン①中露が一切絡まない攻撃

    最初に考えられるパターンとは、中国とロシアが一切絡まない軍事作戦であり、具体的には、米軍による単独攻撃か、あるいは米国とその同盟国(日英豪など)の共同軍事作戦による北朝鮮攻撃です。

    ただし、このパターンの場合は、中国におもねる韓国が軍事作戦に協力しないと考えられ、必然的に、「38度線をまたいで地上から北朝鮮を攻撃する」という戦法が使えません。このため、おもに日本海に展開する日米英などの軍艦から、ミサイルや爆撃機を用いて北朝鮮を攻撃するという形態にならざるを得ません。

    そして、このパターンの場合、金正恩個人の所在を特定し、そこに特殊部隊を送り込む、といった作戦を遂行することは、極めて困難です。ということは、このパターンでは、上記の3作戦のうち、「サージカル・アタック」しか採用できません。

    さらに、このパターンにおいて最も懸念されるのは、中国からの妨害に遭う可能性です。

    いちおう、『「成果は全くなかった」のか?』でも触れたとおり、「限定的な空爆であれば」、中国は米国による攻撃には介入しないことを確約していると考えて良さそうです。しかし、仮に米国による北朝鮮攻撃が、北朝鮮の体制変革を伴う危険があると見れば、中国が介入してくる可能性があります。

    北朝鮮は中国と長い国境を接しており、必然的に、中国は北朝鮮の安定に大きな利害を持ちます。そして、北朝鮮が米国の支配下に入ることを、中国は何よりも嫌がるでしょうし、米国の北朝鮮攻撃に伴い、北朝鮮からの難民が押し寄せることを警戒しているはずです。

    ということは、このパターン①の場合であったとしても、中国の了解を取っておく必要はあります。

    ただ、「サージカル・アタック」の場合、ロシアの了解が取れなくても大きな問題はありません。というのも、ロシアは北朝鮮に重大な利権を所持しているものの、接している国境自体はそれほど長くなく、北朝鮮の体制が崩壊しない程度の攻撃であれば、基本的に難民の問題は発生しないからです。

    もちろん、北朝鮮が米国の支配下に入ることを嫌がるという意味では、ロシアも中国と事情は同じです。このため、パターン①だと、中国・ロシアとの関係という面からも、北朝鮮の体制変革を伴うような攻撃など不可能でしょう。

    パターン②米中による協調介入

    次に考えられるのが、米中が協調介入する可能性です。

    習近平(しゅう・きんぺい)中国国家主席自身、10月の共産党大会で権力基盤を固めたと報じられていますが、もしそれが事実であれば、この「協調介入パターン」も現実味を帯びて来ます。もっといえば、今月のトランプ氏の訪中で、トランプ氏は習近平氏との間で、「事実上の米中共同軍事作戦」で合意していた可能性もあるでしょう。

    具体的には、米国が38度線を南側から北侵し、中国が中朝国境を警備し(場合によっては南侵し)、北朝鮮を「挟み撃ち」にする作戦です。

    このパターンの場合、北朝鮮を軍事攻撃することを巡って、中国の了解が得られていますので、韓国を共同軍事作戦に参加させることが可能です(といっても、韓国軍は事実上、使い物にならないので、米軍が在韓米軍基地を使い、38度線を陸上から北侵することができるというだけの話ですが…)。

    それでも、パターン①と比べると、取れる作戦の幅が、はるかに広がります。具体的には、サージカル・アタックはもちろん、米軍が斬首作戦に踏み切る可能性も出て来ます。

    ただし、斬首作戦を取るのであれば、ここで障害になって来るのがロシアの存在です。ロシアは北朝鮮に大きな利害を所持しているからです。ということは、米中が協調して北朝鮮の体制変革を行おうとするならば、今度はロシアがその作戦を妨害しに来るでしょう。

    場合によっては、北朝鮮に対する武器供与、金正恩の身柄の保護などを通じて、米中の共同作戦を擾乱する可能性だってあります。

    たとえば、米中が共同して「斬首作戦」を遂行しようとすれば、ロシアが速やかに金正恩をロシア領に退避させ、北朝鮮国内に金正恩の影武者を残して擾乱する形となれば、それこそ収拾がつきません。

    やはり、「斬首作戦」を確実に遂行しようとすれば、ロシアを作戦に招き入れるしかないのです。

    パターン③米中露3ヵ国談合

    そこで出てくる「理想的な協力パターン」とは、北朝鮮処分を巡る米中露3ヵ国談合です。

    北朝鮮に多大な利害を有しているロシアがこの「談合」に乗って来る可能性は低いという問題はさておき、仮に米中露3ヵ国が何らかの形で金正恩の除去に合意したとすれば、俄然、話は速くなります。

    ただし、このパターンが実現した場合、結果的に「斬首作戦」は遂行されないと見るべきでしょう。というのも、米中露3ヵ国が談合した時点で、北朝鮮には一切勝ち目がなくなりますから、金正恩はその時点で白旗を上げるに違いないからです。

    この場合、金正恩一族は身柄の安全を保障されることと引き換えに、どこか第三国(たとえばスイスあたり)に亡命することで合意し、実際に戦争を行うことなく、平壌を「米中露連合軍」に明け渡すのです。

    つまり、米中両国がロシアを引き込むことに成功すれば、上で見た「3つの作戦」のうち、一番難易度が高い「無血開城」を実現させることができるのです。そして、このパターンが実現すれば、結果的に多くの人命を犠牲にすることなしに、北朝鮮の核開発を完全に放棄させることができるため、まさに「理想の作戦」です。

    ただし、このパターンを実現させるためには、北朝鮮処分を巡り、中国とロシアのそれぞれにとって、何らかの「旨味」がなければなりません。とくにロシアに対しては、米国が何らかの「果実」(たとえばウクライナ問題を巡る制裁を解除する、シリアにおけるロシア軍の駐留を容認する、ロシアをG7会合に再び参加させる、など)が必要でしょう。とくに米国がウクライナ問題を巡る制裁を解除した場合、欧州連合(EU)、とりわけドイツのメルケル首相が米国を厳しく非難するであろうことは、想像に難くありません。

    「ロシア・スキャンダル」で政治的危機に直面しているだけでなく、国際的な指導力にも疑義がある現状のトランプ政権に、果たしてそこまでのことができるのか、非常に疑問です。

    パターン④トランプ失脚と北朝鮮の現状維持

    以上、①米国(とその同盟国)が単独で北朝鮮をピンポイント攻撃するパターン、②米中が談合して北朝鮮を攻撃するパターン、③米中露3ヵ国が協調して北朝鮮を処分するパターン、の3つを眺めてみました。

    これらについてはのちほど、もう少し深く議論するとして、「パターン」としてあり得るのは、果たしてこの3つだけでしょうか?

    実は、私自身が「可能性が高い」と考えているパターンが、もう1つあります。それは、米国の国内事情により、北朝鮮攻撃が遅れ、結果的に北朝鮮が現状を維持してしまうパターンです。

    具体的には、ドナルド・トランプ米大統領自身が、現在、米国で弾劾の危機に瀕していることです。その材料が「ロシア・スキャンダル」、つまり2016年の大統領選で、ロシアがトランプ陣営に有利になるように、何らかの工作を行ったとされる疑惑です。

    私はこの「ロシア・スキャンダル」、米国メディアによる「フェイク・ニュース」である可能性が極めて高いと見ているものの、だからといって楽観視して良いというものではありません。

    (※余談ですが、わが国でも「もりかけ疑惑」という「フェイク・ニュース」でマス・メディアが安倍政権の倒閣を図った事件が発生していますが、マス・メディア産業の腐敗は、先進国では共通の悩みなのかもしれません。)

    そして、万が一、「ロシア・スキャンダル」によりトランプ氏が失脚するか、あるいは弾劾手続に入ってしまうだけでも、米軍は動きが取れず、北朝鮮攻撃に踏み切れなくなります。その結局、北朝鮮の現体制は温存されてしまうのです。

    もちろん、現在の日本は一生懸命に頑張って、北朝鮮に対する国際的圧力を高めるように努力していますが、単独で軍事的オプションを行使できない日本だけでは、自ずから限界もあります。したがって、米軍を主体とした攻撃が実施されない場合には、北朝鮮が結局、現状のまま生き延びてしまうのです。

    改めて問う、朝鮮半島の未来

    韓国の中華属国化が7割、北朝鮮化が2割

    以上のパターンから、私は以前から提唱していた「朝鮮半島の未来をめぐる7つのシナリオ」については、本日以降、次のように修正したいと思います(図表3)。

    図表3 新・6シナリオ
    シナリオ名 パターン 可能性
    ①赤化統一 韓国(南朝鮮)が北朝鮮により赤化統一されてしまう 20%
    ②韓国だけの中華属国化 韓国が中国の属国となるほかは、現状がほぼ維持される 30%
    ③クロス承認 韓国が中国の属国となり、北朝鮮を日米などが国家承認する 10%
    ④半島全体の中華属国化 南北朝鮮が統一され、そろって中国の属国となる 10%
    ⑤北朝鮮分割 北朝鮮をロシアと中国が分割占領し、韓国は中国の属国となる 20%
    ⑥現状維持 南北朝鮮はそのまま存続する 10%

    これを韓国から見たら、①が北朝鮮化、②~⑤が中国の属国化です。ということは、韓国が中華属国化する確率が7割、北朝鮮化する確率が2割ということでもあります。

    それでは次に、この「6つのシナリオ」の趣旨について、少し解説したいと思います。

    なぜ「軍事クーデター」のシナリオが落ちたのか?

    ここでは、以前の「7つのシナリオ」にあった、「米国主導での朝鮮半島統一」と、「韓国で軍事クーデターが発生」という2つのシナリオを抜き、その代わり、「北朝鮮分割」を選択肢に含めました。

    このうち、とくに「軍事クーデター・シナリオ」を抜いた理由は、この1年間で、韓国の国家としての存続意思が、明らかに弱くなったからです。

    現在の韓国は、明らかに民主主義が「衆愚政治」と化しており、このままでいけば、韓国は早晩、中国の属国として呑まれるか、北朝鮮に赤化統一されてしまうか、そのいずれかの未来は避けられません。

    それを避けるためには、何が何でも米国や日本との関係を再構築しなければなりません。

    しかし、米国との関係を巡っては、「対中三不」により、もはやその亀裂は決定的なものとなりましたし、日本との関係を巡っても、事実上、韓国が一方的に「慰安婦合意」を破棄した状態となっており、もはや文在寅政権下での関係修復は不可能でしょう。

    そこで、韓国がこの苦境を脱するための「最終手段」とは、韓国で心ある軍人が立ち上がり、極左活動家でもある文在寅(ぶん・ざいいん)大統領の身柄を拘束し、民政を停止して軍事独裁政権を立ち上げる、というシナリオくらいしか考えられないのです。

    ところが、現在の韓国国内では、残念なことに文在寅氏に対する支持率は極めて高く、また、韓国メディアの報道ぶりも、すっかり「反日・反米」が定着してしまっています。こうした環境で、わざわざ民意を敵に回してまで、韓国の未来のためにリスクを取るという軍人がいるとも思えません(いないわけではないと思いますが…)。

    そこで、今回のシナリオ・アップデートにあわせて、この「軍事クーデター・シナリオ」については、ついに削除してしまうことにしたのです。

    北朝鮮分割とは?

    一方で、今回からシナリオに加えたのが、「北朝鮮分割」です。

    これは、北朝鮮が消滅したと仮定した時に、その北朝鮮を、たとえば東半分がロシア、西半分が中国の管轄となる、というようなシナリオです。

    このシナリオについては、最近、一部の有識者らが議論を始めていて、インターネット上でもいくつかの憶測が飛び交っています。そして、北朝鮮を分割するとしても、これにはさまざまな分割パターンがあります。

    オーソドックスなものは、現在の北朝鮮の領域について、東半分をロシア領、西半分を中国領とし、南朝鮮(つまり韓国)はそのまま存続するというものです。

    しかし、中には、米国が朝鮮半島南部を占領し、ソウル周辺のみが「緩衝地帯」である「大韓民国」として存続し、さらに北部は西半分が中国の、東半分がロシアの占領下に入る、といった地図も出回っているようです。

    もちろん、この「北朝鮮分割」シナリオは、ロシアが朝鮮半島処分を巡って米国と協調できるということを前提としたものなので、私自身は、実現可能性はさほど高くないと見ていますが、それでもシナリオとして「あり得ない」わけではないため、今回のアップデートで新たに付け加えた次第です。

    シナリオのレビュー

    というわけで、6つのシナリオ、あらためて1つずつ確認しておきましょう。

    ①赤化統一(確率20%)

    まず「①赤化統一」については、北朝鮮が何らかの理由で今回の核危機を乗り切り、国家としてそのまま存続したという仮定を置いたシナリオです。具体的には、韓国社会の左傾転覆がさらに進行し、ついには北朝鮮により吸収されてしまう、というものです。

    その際、おそらくは金日成(きん・にっせい)が唱えた「高麗連邦構想」が実現することでしょう。これは、具体的には北朝鮮と韓国が「対等な国家」として連邦国家を形成し、外交、軍事などはこの「高麗連邦」に移る、というシナリオです。そして、南北双方は当面、現在の体制を維持する形になりますが、事実上、韓国が北朝鮮の支配下に入ることと同義です。

    なぜなら、北朝鮮は核兵器を保有しており、また、独裁国家でもあるため、未熟な民主主義国家である韓国が北朝鮮によって完全に支配されてしまうことは明白だからです。

    いわば、北朝鮮としては「戦わずに南朝鮮に勝つ」というシナリオですが、このシナリオ自体、私は決して荒唐無稽ではなく、相応に実現可能性があると考えており、図表中も「20%」としています。

    だいいち、盧武鉉(ろ・ぶげん)元大統領(故人)の盟友である文在寅氏が韓国大統領に就任してしまったという時点で、韓国社会の左傾化・親北化がかなり進んでいるという証拠です。私は口が悪いので、文在寅氏の当選が確定した瞬間、思わず

    韓国国民としては、北朝鮮に吸収してもらうことを望んだのか?

    と呟いてしまいましたが、文在寅政権が実現してしまった以上、主体性のない韓国が北朝鮮に吸収されてしまったとしても、私は全然驚きません。

    ②韓国だけの中華属国化(確率30%)

    ただ、これ以外の②~⑤のシナリオは、すべて、韓国が中国の属国になる、というシナリオです。

    このうち、「②韓国だけの中華属国化」とは、北朝鮮が国家として存続しているというシナリオですが、韓国は北朝鮮に吸収されるのではなく、中国の属国となってしまう、というシナリオです。私はこのシナリオについて、実現可能性が30%、つまり全体のシナリオ群の中でもっとも高いと見ていますが、その理由は、米国が北朝鮮に対して「サージカル・アタック」を仕掛けることにより、北朝鮮が弱体化し、その結果、赤化統一が避けられる、という見立てに基づいているものです。

    ただし、北朝鮮による吸収統一を避けたとしても、すでに韓国は「自力で生きること」をやめてしまった国でもあります。北朝鮮が弱ったところで、仕える先が北朝鮮ではなく中国になるだけの話です。

    ところで、韓国政府は先月、中国政府に対して「三不」の約束を果たしました。これは、韓国がすでに中国の属国の一里塚を通ったという証拠であり、私はこの事実を持って、この②のシナリオが実現する確率は30%と評価しています。

    ③クロス承認(確率10%)

    一方、可能性は低いものの、いちおう、今回のシナリオでも残したのが、「③クロス承認」のシナリオです。

    これは、北朝鮮の体制自体を米国や日本が承認し、北朝鮮が中国と断交。韓国が中国の属国となることにより、日米と断交し、「北朝鮮を日米が、韓国を中国が、それぞれ保護国とする」という「ねじれ」が生じる、とするものです。

    実は、このシナリオの実現可能性は、ゼロではありません。というのも、米国でトランプ政権が失脚するなどした場合に、北朝鮮が核を所持することを前提に、米国が北朝鮮との交渉に応じる可能性があるからです。

    もちろん、現在の日本としては絶対に容認できないシナリオであり、絶対に避けたいシナリオですが、リスク・シナリオの1つとして、検討しておくことは必要でしょう。

    ④半島全体の中華属国化(確率10%)

    ③と同じく実現可能性は低いものの、いちおう、今回の「6つのシナリオ」に残したものが、「④半島全体の中華属国化」です。

    具体的には、朝鮮半島が中国主導で南北統一されるというもので、この場合、北朝鮮という国家は消滅しますが、韓国自身が旧北朝鮮の領域も含めて管理することになるとともに、丸ごと、中国の属国になってしまうというシナリオです。

    ただし、北朝鮮を含めた半島全体の中華属国化が実現しようとした場合には、ロシアがこれを邪魔しようとして来ると考えられるため、このシナリオがすんなりと実現する可能性は高くありません。

    なお、以前の「7つのシナリオ」では、「米国主導の南北統一」というシナリオも入れていたのですが、すでに米韓関係が破綻に近い状態にあることを踏まえるならば、「中露を介入させずに米国が斬首作戦を実施する」という可能性は極めて低いため、今回以降、没としました。

    ⑤北朝鮮分割(確率20%)

    「没」にした2シナリオに代わって、今回、新たに導入したシナリオが、「⑤北朝鮮分割」です。

    これは、米中露3ヵ国が「談合」に成功する、という前提ですが、北朝鮮を処分し、そのあとを何らかの形で分割する、というものです。なお、詳細は先ほど述べたとおりですので割愛します。

    ⑥現状維持(確率10%)

    最後に、いちおう、「⑥現状維持」シナリオも残しています。

    これも、米国が北朝鮮攻撃に踏み切らないなど、関係国がダラダラと現状維持を決め込んだ場合のシナリオですが、実は、ある意味でこれが最大のリスク・シナリオです。

    というのも、現状が維持されればされるほど、北朝鮮は核・大量破壊兵器の開発を進展させるからです。

    さらに、北朝鮮が核の小型化に成功すれば、そのことは小型核がテロリストらの手に渡る可能性が飛躍的に高まるということであり、将来的には北京・中南海やモスクワ・クレムリンで小型核が炸裂するかもしれません。

    私は、米国も中国もロシアも、現状維持(つまり問題の先送り)をするほど愚かだとは思いたくないのですが、これこそがまさに朝鮮半島情勢を巡る最大のリスク要因なのです。

    どうなっても日本は日本の身を守れ!

    以上、朝鮮半島が近い将来、どうなるかについての暫定的なシナリオを更新してみました。

    自分でもこのシナリオを描いていて、暗澹たる気分になります。というのも、日本は地理的に見ても朝鮮半島に近いにも関わらず、朝鮮半島情勢を巡って主体的に関わることができないばかりか、北朝鮮に拉致された人々を救い出すために自衛隊を派遣するということすらできないからです。

    ただ、日本も長い戦後のくびきから逃れ、ようやく、「自国民の命は守る」という、「普通の国」、いや「当たり前の国」へと脱皮を始めました。早ければ2020年にも、国を守ってくれる自衛隊と自衛のための戦争が合憲化されるという希望が出てきたのです。

    もちろん、それだと急激に動く北朝鮮情勢には間に合わないかもしれませんが、それでも「ないよりはマシ」です。

    また、日本が朝鮮半島とどのように関わっていくかについては、それこそ日本国内では左派、右派を問わず、「韓国とは仲良くしていくべきだ」、「韓国とは断交すべきだ」、など、さまざまな意見が存在していることも事実ですし、私自身もこれについては言いたいことがたくさんあります。

    しかし、どのような立場を取るのであっても、「日本という国を守るのは日本である」という点については変わらないはずです。

    いずれにせよ、どのような事態になったとしても、私たちは私たちの国をしっかりと守るという覚悟を持つことが大事であることは、いうまでもありません。

    そこで、当ウェブサイトでは近いうちに、「韓国がどうなるかわからない状態で、日本は韓国とどう付き合うべきか」という観点から、当ウェブサイトの人気シリーズでもある「日韓関係の6類型」に関する記事をアップデートしたいと思います。

    そして、当ウェブサイトは急激に動く情勢をしっかり見極め、独立系オピニオン・サイトとして、皆様方に意見を問いかけていきたいと思いますので、どうか引き続き、この議論にお付き合いくださいますと幸いです。

    ※本文は以上です。

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