本日は久しぶりに、憲法について取り上げます。というのも、米大手メディアWSJに、「日本国憲法は日本にとって危険だ」とするオピニオンが掲載されているからです。本日は、憲法第9条に絞って、その問題点を改めてまとめておきたいと思います。

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    ここからが本文です。

    近況と今後の方針

    早いもので今日から6月です。

    この「独立系ビジネス評論サイト」で取り上げたい話題はたくさんあるのですが、4月下旬以来のほぼ1ヵ月間、子育てと専門書の執筆に忙殺されました。このため、私の頭の片隅には、「当ウェブサイトで深く議論してみたいテーマ」がいくつかあるものの、どうしても執筆する時間が取れませんでした。

    しかし、専門書を脱稿したのに加え、妻も少しずつ動けるようになり、さらには子供が昼夜を問わず泣き続ける状況も収まってきたので、これから少しずつ「平常モード」に戻って行こうと思います。私自身の会社では、溜まった外出のアポイントを6月以降、順次こなしていくつもりですし、当ウェブサイトでも、遅れていた議論を少しずつ再開していこうと思います。

    日本国憲法の議論

    「安倍改憲論」と憲法の問題点

    私は憲法記念日の5月3日に、『70年間放置されてきた欠陥憲法』と題する記事を公表しました。この題名だけで、私自身が日本国憲法をどのように考えているかについてはご推察頂けると思いますが、いちおう、私の主張を繰り返しておきましょう。

    私の主張の要点は、日本国憲法については良い部分もあるものの、それと同時に時代にそぐわない欠陥も多数放置されているので、現行憲法の良い部分を残しつつ、欠陥を是正すべきだ、とするものです。

    私は、どこかの右翼と違って、「日本国憲法はアメリカの陰謀で日本を弱体化させるために押し付けられたものであり、無効だ」などと主張するつもりはありませんし、どこかの左翼と違って、「第9条を含め、日本国憲法は絶対に守るべきだ」などと主張するつもりもありません。

    確かに日本国憲法の制定過程にはさまざまな問題があったことは事実です。日本国憲法は、形の上では大日本帝国憲法の手続に従い、帝国議会の承認を得て「憲法改正」として導入されたものですが、実質的にはGHQが憲法の内容に深く介入したことは歴史的事実です。そして、戦勝国が敗戦国の憲法を変えることは、ハーグ陸戦条約に明確に違反しています。国際法的には「日本国憲法自体は無効だ」と言えなくもありません。

    しかし、日本国憲法は戦後70年以上にわたり、良い意味でも悪い意味でも日本という国の根幹をなしてきたものであり、これを「無効だ」と宣言することは、「法治主義の否定」でもあります。国民の大多数は日本国憲法下で成立した現在の日本政府を信頼していますし、今上陛下も「日本国憲法下での天皇の役割」を強調されていますので、いまさら日本国憲法の無効と大日本帝国憲法の復活を宣言するのは非現実的です。だいいち、大日本帝国憲法も「不磨の大典」などと称しながら、憲法に内閣の規定を欠くなど、欠陥だらけでした。

    その意味で、日本国憲法を破棄して大日本帝国憲法に戻すべきだという主張は、あきらかに非現実的ですし、また、愚かな話でもあります。

    憲法第9条の起源

    一方で、世の中の「護憲派」と呼ばれる勢力の主張は、「憲法第9条」に集約されているように思います。

    いうまでもなく「憲法第9条」は「非戦条項」と呼ばれるものであり、その源流は「不戦条約」(ケロッグ・ブリアン条約)にあります。その解説文書は米国務省広報局歴史部ウェブサイトにあり、また、その原文はイェール大学が公表しています。

    The Kellogg-Briand Pact, 1928(U.S. Office of the Historian=米国務省広報局歴史部ウェブサイトより)
    Kellogg-Briand Pact 1928(Yale Law School ウェブサイトより)

    この条約は3条からなるものですが、このうちの第1条と第2条には次のような規定が設けられています(下の和文は私が作成した仮訳です)。

    Article I

    The High Contracting Parties solemly declare in the names of their respective peoples that they condemn recourse to war for the solution of international controversies, and renounce it, as an instrument of national policy in their relations with one another.

    第1条

    この条約締結国は各々の人民の名において、国際的な紛争の解決手段として戦争に頼ることを糾弾するとともに、国際的な相互関係における政策手段として、戦争を放棄することを厳粛に宣言する。

    Article II

    The High Contracting Parties agree that the settlement or solution of all disputes or conflicts of whatever nature or of whatever origin they may be, which may arise among them, shall never be sought except by pacific means.

    第2条

    この条約締結国は、締結国間に生じる、いかなる性質、いかなる原因に基づくかを問わず、全ての論争や対立の和解や解決については、平和的解決以外の手段によりなされることを検討してはならない。

    この条文を踏まえて、改めて「日本国憲法第9条第1項」を引用しておきましょう。

    日本国憲法第9条第1項

    日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

    この憲法第9条第1項については、ケロッグ・ブリアン条約の条項を参考にしていると考えて良いでしょう。とくに、「戦争の放棄」とは、同条約第1条にある “condemn recourse to war for the solution of international controversies, and renounce it” に源泉があることは明らかです。

    ただ、私は憲法第9条のうち、第1項については、敢えて政治的な危険を冒してまで除去する必要はないと思います。なぜなら、この条約自体、(現実はともかくとして)理念としては、それなりに多くの国から支持されたものでもありますし、現在でも似たような不戦条項を保持している国もあるからです。早い話が、「放置していても実害がない」ということです。

    憲法第9条第2項は「殺人条項」だ!

    しかし、憲法第9条第2項については、明らかに問題があります。

    憲法第9条第2項

    前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

    まず、前段では、「戦力の不保持」が明記されています。ご丁寧なことに「陸軍」「海軍」「空軍」が不保持の対象として列挙されており、さらに「その他の戦力」なる文言もあります。つまり、「宇宙軍」「ロボット軍」などを持つこともできない、ということです。

    自衛隊は、誰がどう見ても軍隊です。自衛隊の存在自体がこの条文に違反していることは明白でしょう。

    いや、もっと正確にいえば、自衛のための軍隊を持つことは、自然法・国際法に照らし、明らかに正当な権利です。ということは、憲法第9条第2項の方が、むしろ自然法・国際法に違反している(つまり憲法違反である!)といえます。

    後段にはもっと大きな問題があります。

    「国の交戦権は、これを認めない」、すなわち、日本が外国から侵略されても、侵略軍を撃退してはならないとする規定であり、これは日本が国家であることを放棄する条文です。私はこれを、「非戦条項」ではなく、むしろ「殺人条項」と呼びたいと思います。

    現在の日本政府は、「自衛隊を持つことは国際法上も許されるから、憲法第9条第2項にギリギリで違反しない」と無理くりの解釈をしていますが、後段の「国の交戦権は、これを認めない」とする文言が存在するために、日本は「軍法」を持つこともできません。ということは、事実上、法的に戦争を遂行することが極めて難しい、ということです。

    ここで重要なことは、

    • 現在の自衛隊は日本国憲法第9条第2項に違反している
    • 日本国憲法第9条第2項の不戦条項があるために、軍法も制定できない状況にある

    ということです。

    もちろん、「日本国憲法第9条第2項自体が自然法・国際法に違反しているため無効だ」とする解釈も成り立たないわけではありませんが、そうだとしたら、私たちの国の基本法である「憲法」に、「無効な条文」を無理やり残しているということになります。

    ということは、この状態を解消するためには、自衛隊を廃止するか、憲法第9条第2項を廃止するか、そのいずれかしかあり得ないのです。

    もっとも、廃止すべきはどちらであるかは自明だと思いますが…。

    「憲法第9条を守れば戦争がなくなる」のウソ

    もちろん、世の中には「憲法第9条第2項を守っていれば外国から攻め込まれない」と、本気で主張している人たちもいます。こういう人たちは、

    • ①日本を滅ぼそうとしている「確信犯」であるか、
    • ②中国、北朝鮮、韓国、ロシアなどの工作員であるか、
    • ③それとも単純に頭が悪いか、

    のいずれかだと思います。このうち、①②については説得することは不可能ですが、③の人たちには、『【過去コンテンツ再録】犯罪をなくす画期的な憲法私案・ほか』をお贈りしたいと思います。

    現状と理想の乖離をどう埋めるか?

    ただ、私は憲法第9条第2項に大きな問題点があることを承知していますが、その撤廃にはハードルが高いことも承知しています。現在、連立与党(自民党と公明党)に「改憲に積極的」とされる「日本維新の会」などをあわせれば、衆参両院で3分の2を超える勢力を有していることは事実です。しかし、連立与党内の公明党が改憲に反対の立場を取っており、また、民進党は安倍政権の「足を引っ張る」ことだけを目的に、憲法改正議論自体に応じない姿勢を崩していないからです。

    もちろん、安倍総理が指導力を発揮し、このふざけた憲法第9条第2項の撤廃を実現してくれるならば、それは非常に素晴らしいことです。しかし、現実はそこまで甘くありません。

    そうなれば、やはり憲法第9条第2項という「悪魔の殺人条項」を保持したまま、何とか日本は自力で国防体制を構築しなければならないことを、覚悟せねばなりません。さらに、憲法第9条第2項の撤廃ができなければ、

    • 対韓外交では、慰安婦問題の再三・再四にわたる蒸し返しに応じなければならないかもしれない。
    • 対北朝鮮外交では、拉致された日本人を1人も取り返すことができず、日朝国交正常化と賠償金支払いに応じなければならないかもしれない。
    • 対中外交では、尖閣諸島の領有権を譲渡さなければならないかもしれない。
    • 対ロシア外交では、北方領土が返ってこないことを前提に日露平和条約を締結しなければならないかもしれない。

    ということを、日本国民が覚悟することも必要でしょう。

    私は自分のことを「リアリスト」だと思っています。個人の感情としては、中国も韓国もロシアも大嫌いですが、現実には憲法第9条第2項の制約により、日本がこれらの国を、同時に敵に回すことはできません。全ての問題は根っ子で繋がっています。

    憲法第9条第2項を撤廃するのか、しないのか。

    最終的には日本国民の意思が問われているのです。

    米国メディアがそれを主張するか!?

    ところで、米国の大手メディア・WSJに先月、こんな社説が掲載されました。

    Japan’s Constitutional Gamble(米国時間2017/05/08(月) 19:23付=日本時間2017/05/09(火) 08:23付 WSJオンラインより)

    私の文責で内容を簡単に要約しますと、記事の主張は次の通りです。

    • 安倍晋三(日本国総理)は70回目の憲法記念日に、2020年までに改憲するという野心を示したが、その政治的なコストは高くつくだろう
    • 占領時代に日本の憲法の草案を書いたのはダグラス・マッカーサー総帥の部下だが、とくに憲法第9条は日本を非武装状態にするためのものだ
    • しかし、日本は責任ある民主主義国家となったが、この憲法第9条自体が米国の日本防衛を必須のものとなっている
    • 中国や北朝鮮の軍事的脅威が高まる中、憲法第9条は日本にとって危険なものとなっている
    • 安倍(総理)の改憲の野心に対し、世論はちょうど二分され、これに対して中国だけでなく南朝鮮(※韓国のこと)も抗議している

    つまり、憲法第9条が日本にとって「危険だ」と指摘しているのですが、それを米国メディアが主張することに、私は強い違和感を抱かずにいられません。というのも、日本を非武装化したのは、日本が深刻な軍事的脅威だと感じた米国の意思だからです。そして、米国のアジア太平洋政策が終始一貫していないことにより、日本は大きな迷惑を蒙っているのです。

    ただ、私は日本国憲法がGHQ(というよりも米国)に押し付けられたものであることは承知していますが、だからといって、憲法第9条第2項の撤廃もできないのも米国の陰謀だ、などと無責任な言説を申し上げるつもりはありません。日本は成熟した立派な民主主義国家であり、日本国民の意思さえあれば、このふざけた憲法第9条第2項を撤廃することは可能です。

    私たち日本人は、勇気と英知と努力により、この条項を撤廃しようではありませんか。

    私はあらためて、そう主張したいと思います。

    ※本文は以上です。

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  • 2017/06/23 21:00 【マスメディア論|時事
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  • 2017/06/23 00:00 【マスメディア論
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  • 2017/06/20 00:00 【韓国崩壊
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  • 2017/06/19 12:45 【マスメディア論|時事
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  • 2017/06/19 00:00 【RMB|金融
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  • 2017/06/18 18:30 【時事
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  • 2017/06/17 00:00 【マスメディア論
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  • 2017/06/10 00:00 【雑感オピニオン
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  • 2017/06/02 08:45 【時事
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    著者のコンタクト先:info@shinjukuacc.com

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