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    「保守」とは?

    「保守」とは「右翼」ではない!

    若い頃の私は、「保守」という言葉に対し、決して良い印象を抱いていませんでした。街宣車で大音量の軍歌を流しながら「天皇陛下万歳」などと叫ぶ、あの迷惑な「右翼団体」のイメージです。「国を愛する」ということ自体に対し、何やら「いかがわしい行為」であるというイメージを持っていたのも、こうした右翼団体のせいかもしれません。つまり、私が嫌悪感を抱いている思想とは、「日本は無条件に良い国だ」「日本と対立する国は全て悪い国だ」と一方的に決めつける勢力のことでしょう。私は便宜上、これを「右翼」とでも呼びたいと思います。

    一方、私自身は日本が「無条件に良い国だ」などと申し上げるつもりはありません。たとえば、戦前の大日本帝国憲法には様々な欠陥がありましたし(例えば大日本帝国憲法には「内閣」という単語が定義されていませんでした)、権限があいまいな部分も多々ありました。日本が第二次世界大戦に巻き込まれた最大の要因は、軍部が暴走したからであり、近衛文麿をはじめとする戦前の首相が無能だったからでもあります。私は、日本が将来こうした過ちを決して繰り返さないために、歴史を虚心坦懐に振り返り、徹底的に研究することが必要だと考えています。

    そして、私自身が考える「日本の保守」とは、日本人が日本のことを考え、日本のために行動することです。決して「日本は素晴らしい」などと「礼賛」することではありません。「俺たち日本は凄い国だ!」などと自惚れ、周辺国を見下すことは、決して誉められた態度ではありません。私はむしろそのような姿勢を軽蔑します。

    つまり、「右翼」と「保守」は似て非なるものなのです。

    「反戦」の子供時代

    以前も少し書いたことがあるのですが、私は若い頃、むしろ「左翼」に近い政治思想を持っていました。

    母親(故人)が在日韓国人二世であったという事情に加え、比較的「開明的な」(?)街である神戸で生まれ育ち、外国人(とりわけ多くの在日韓国・朝鮮人)と接しながら育ってきたという要因もあるでしょう(ただし、母親は生前に日本に帰化しています)。

    また、大音量の軍歌を流しながら街中を走り回る迷惑な右翼団体の街宣車には嫌悪感を抱いていました。そして、私の幼少期といえば、まだ戦後30年程度であり、神戸にも空襲経験者が大量に生存していましたし、神戸といえば公教育における日教組の力が強い街でもあります。小学校の教員の中にも「軍国主義が日本を破滅に導いた」、「戦争反対」、「憲法第9条は素晴らしいものだ」という思想を持つ者が多数いましたし、小学校の図書室には「米軍占領下の沖縄の悲惨な生活」、「広島・長崎の原爆」、「東京大空襲」など、反戦的な書籍が大量に設置されていました。

    当然、音楽の教科書の最終ページ(国歌が掲載されているページ)にはプリントを糊付けさせられましたし、日本国憲法の前文を暗唱させられた記憶もあります。自然と「日本は悪い国だ」と刷り込まれてきました。

    ただ、その一方で、父方の祖母(明治期の神戸生まれ)は、天皇陛下のことを深く尊敬していました。子供心に「天皇が戦争を起こしたのに、なぜおばあちゃんは天皇を好きなのかな?」と不思議に感じていたのですが、戦後30~40年頃の神戸では、こうした「反日教育」と「戦前世代」が同居している空間でもあったのです。

    「祖国のために死ぬこと」とは?

    私は大学時代、東京都内の某私大に入学しました。そして、大学3年生になってから選択したゼミが「政治思想史」でした。

    大学時代に政治思想の勉強をし、名だたる西欧政治思想家に加え、日本の左派思想家・政治学者(丸山正男や大塚久雄など)らの著書も多数読み込みました。こうした中で出てきた表現が、

    「祖国のために死ぬこと」

    です。この言葉は、次のラテン語の詩に含まれているものです。

    Dulce et decorum est pro patria mori(ドゥルケ・エト・デコルム・エスト・プロ・パトリア・モリ、すなわち「祖国のために死ぬことは甘美で名誉なことだ」)

    ただ、そもそも「祖国」という概念自体が、西欧では近年になって芽生えて来たものであり、その言葉自体が変質している、という考え方もあります。とくに、現代のような「グローバル化」が進む中で、こうした「祖国愛」に違和感を持つ人も多いはずです。たとえば、

    • アメリカ人がアメリカ合衆国のために死ぬこと
    • ドイツ人がドイツ連邦共和国のために死ぬこと
    • フランス人がフランス共和国のために死ぬこと

    と言えば、「そんなことはご免だ!」と思うアメリカ人、ドイツ人、フランス人もいるはずです。なぜなら、アメリカもドイツもフランスも、グローバル化の恩恵を受けている国であり、いずれの国も移民労働者を大量に受け入れているからです。ドイツの場合はトルコをはじめとする中近東諸国から安価な労働力を大量に受け入れていますし、フランスは世界中に植民地を持っていて、旧植民地から大量の移民を受け入れています。さらに、アメリカ合衆国はそれ自体が「移民国家」です。

    ドイツとオーストリアの欺瞞

    ちなみに余談ですが、私にとってドイツとオーストリアとは、非常に興味深い国です。

    今日のドイツとは「ドイツ連邦共和国(Bundesrepublik Deutschland)」のことをさしますが、「ドイツ語を話す人々」はもっと広い範囲に暮らしています。その典型例がオーストリアでしょう。

    歴史的な経緯もあって、オーストリアはドイツと別の国でした。しかし、第一次世界大戦後に成立した「ヴァイマール共和国」ではナチス党(正式名称は「国家社会主義ドイツ労働者党」Nationalsozialistische Deutsche Arbeiterpartei)が政権を握り、やがてナチス・ドイツはオーストリアを併合して欧州全土を戦争に巻き込んでいきます。

    このナチス・ドイツがユダヤ人をはじめとする他民族に対する迫害を行ったことは有名ですが、私の目から見て、ドイツとオーストリアがこの歴史に正面から向き合っている形跡はありません。酷い言い方をすれば、ドイツとオーストリアは自分たちが「ナチスの被害者・犠牲者」であるかのように考えているのではないでしょうか?

    ナチス・ドイツを作り上げた独裁者のアドルフ・ヒトラーは、実はオーストリア出身者です。その意味で、オーストリアが自分たちを「ナチス・ドイツの犠牲者」であるかのように考えるのは、大いなる欺瞞です。さらに、ドイツは過去のユダヤ人らに対する迫害や戦争などの全責任をナチス党に押し付けています。

    つまり、ドイツは「過去の歴史」を「民族の記憶」として共有している訳ではないのです。オーストリアに至っては、ナチス・ドイツと自分たちの国が全く関係ないかのように振る舞っています。

    その意味で、この両国こそが近代西欧政治思想における「欺瞞」が最も凝縮されているのです。

    翻って日本を愛するようになる

    本筋に戻りましょう。

    外国(とくにヨーロッパ)では、「祖国のために死ぬ」こととは、究極的には「全体主義」であり、「国家社会主義」の代名詞として受け止められていることは事実でしょう。そして、欧州をはじめとする世界では、国家・国境自体がその時々の勢力・政治情勢に応じて変動することは常識です。つまり、西欧政治思想史における「祖国」とは、極めて人工的で人為的なものであり、「祖国」という「形のないもの」のために死ぬことは、ナンセンスというほかない、という結論になりがちです。

    ただ、こうした考え方を、そのままわが国に適用することは、妥当ではありません。西洋人が考える「祖国のために死ぬこと」と、日本人が考える「祖国のために死ぬこと」とは、似て非なるものだからです。

    日本という国は、「日本民族」が「日本語」を使って「日本列島」に暮らす国です(※もっとも、日本国内にもアイヌ民族のような少数民族がいますし、厳密には「単一民族国家」ではありませんが…)。そして、日本人はおいそれと外国に引っ越すようなことはできません(※もちろん、海外に移住している人はいますが…)。

    私は、大学時代の勉強の結果、日本のことを「盲目的に愛する」ような行為に対して嫌悪感を抱いたのも事実です。ただ、大学時代に学んだ西欧政治思想史を咀嚼し、その後、様々な現実に接することで、

    「日本人が日本人であることから逃れられない以上、日本人は日本のことを真剣に考えるべきだ」

    という思想に辿り着いたのです。

    つまり、私は「右翼」ではありません。「日本人だから無条件に日本のことを礼賛すべきだ」などとは一切考えていないのです。

    廃憲論の愚かしさ

    ところで、世の中には「日本国憲法とはGHQに押し付けられたものであり、こんな憲法は無効であると宣言し、大日本帝国憲法に戻すべきだ」とする主張をする人が、(ごく一部ながらも)存在します。

    つい先日も『民主主義を信じる―9条の欺瞞に気付く日本国民』で紹介したとおり、参議院議員の青山繁晴さんが、ある大学生からの質問に対して激怒した動画が、動画サイトに公表されています。

    この大学生の質問(というか主張)は、「今の日本国憲法を無効にし、大日本帝国憲法に戻すべきだ(いわゆる廃憲)」、「民意が廃憲に反対であっても、帝国憲法に戻すべきだ」とするものです。私が言いたいことは青山さんが代弁して下さいましたし、先日の記事でも記載しましたので、ここでは繰り返しません。

    重要なことは、「昔の日本は(無条件に)素晴らしかった」などと無批判に考えること自体が間違いだ、という点です。それだと、知性のレベルとしては、「パヨク」と呼ばれる劣化した左翼勢力と全く同じでしょう。

    真の「保守」であれば、日本の悪いところは悪いところとして、そのまま直視し、それをどのように「良くしていく」かを議論すべきなのです。

    国家の概念が勝つのか?

    欧州連合(EU)vs主権国家

    私がこのような考え方を掲載したのには、理由があります。それは、今週日曜日に行われるフランス大統領選です。

    欧州連合(EU)とは、その前身は小規模なエネルギー連合(EEC)ですが、いまや(離脱を表明している英国を含めて)28カ国が加盟する、一種の「国家連合」のようなものになっています。そして、EU自体はその成立経緯から考えても「経済同盟」のようなものであり、実際にユーロ(2017年4月1日時点で19カ国)の導入が一種の「究極目標」のようになっています。

    ただ、選挙で選ばれたわけでもないEU官僚らが跋扈する欧州連合の在り方に対しては、批判が根強いのも事実です。そして、EU自体が「経済同盟」である以上、不法移民もいったんEU圏内に入ってしまえば、EU内部で自由に移動できます(※ただし、厳密にはEU内部での自由な移動を認めているのはEUではなく「シェンゲン協定」であり、EU加盟国と「シェンゲン協定」加盟国の範囲にはズレがあります)。

    そして、経済移民の増加に不満を抱くEU加盟国が、EUに対して「NO」を突きつけるのかどうかの試金石が、フランス大統領選でしょう。さすがに「極右」(とのレッテルを張られている)候補者である国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首がフランス大統領に当選するかどうかは微妙ですが、ルペン党首の得票次第では、EUにも大きな波乱が予想されます。

    欧州では国家≠祖国

    ただ、もう一つ重要な論点があります。それは、特に欧州では、「国家」と「祖国」はイコールではない、ということです。

    たとえば、ドイツ人がドイツという祖国のために死ぬほどの愛国心を抱くかといわれれば、必ずしもそうとはいえません。現実には第二次世界大戦前後に多くのドイツ人がアメリカに亡命していますし、また、現代のドイツ人は「ドイツ連邦共和国(Bundesrepublik Deutschland)の国民」に過ぎず、「ドイツ語を話す人々の共同体」という概念は成り立ちません。

    しかし、日本人は日本という国を捨てて外国に逃げることはできません。日独両国は1945年に「連合国」に対して敗戦しましたが、ドイツ人は全ての責任をアドルフ・ヒトラーという個人と「ナチス党」に押し付けて逃げました。同じドイツ語圏で、ヒトラーの出身国であり、いわば「ナチス・ドイツ」の生みの親でもあるオーストリアに至っては、あたかも自分たちが「ドイツに併合された被害者」であるかのように装っていますが、実際には、オーストリアはナチス・ドイツの戦争犯罪に対しては「知らんぷり」をしているのです。

    知性を欠く日本のパヨク

    あくまでも私の見方ですが、昔の「左翼論壇」にはそれなりの熱気がありました。私自身も、現在の考え方は結果的に「保守」に極めて近いものですが、左翼的な思想については随分と研究したものです。

    私自身は社会人になって以降、「金融専門の公認会計士」として金融規制の実務に携わってきましたが、その一方で、大学時代に勉強した政治思想については今でも自分自身の血肉となっているように思います。

    ところで、最近目にすることが多い「パヨク」という単語は、「劣化した左翼知識人・活動家」のことを指すようです。「パヨク」の典型的な例は、日本共産党の別働隊である学生団体「SEALDs」や外国人が主催する「のりこえネット」、あるいは朝日新聞社や毎日新聞社、沖縄タイムスや琉球新報のような組織ですが、彼らの思想・活動には共通して、根本的に欠落しているものがあります。それが「知性」です。

    「憲法第9条第2項を守っていれば日本は戦争に巻き込まれない」などと考え、思考停止に陥るのが「パヨク」の特徴です。

    最近、私の「独立系ビジネス評論サイト」は「保守系のウェブサイト」として少しずつ浸透してきたように思いますが、実は、私自身の知識的な背景には、意外なことに「左翼論壇の思想史」も入っているのです。

    その意味で、知的に劣化した「パヨク」は、「右翼」と同様、論破すること自体はそれほど難しい仕事ではないのかもしれません。

    ※本文は以上です。

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