私は現在でこそ中小零細企業の経営者という立場にありますが、10年以上前は、監査法人に所属する公認会計士として、会計監査に従事していました。そんな私にとって、「同業他社」だった「中央青山監査法人」という会社が数多くの不祥事を発生させ、最後は自主廃業に追い込まれる姿は、まさに衝撃的でした。

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    「とどめを刺す」という感覚

    私は現在でこそ中小零細企業の経営者という立場にありますが、10年以上前は、監査法人に所属する公認会計士として、会計監査に従事していました。そんな私にとって、「同業他社」だった「中央青山監査法人」という会社が数多くの不祥事を発生させ、最後は自主廃業に追い込まれる姿は、まさに衝撃的でした。その後、さまざまな会社を眺めてきましたが、「一つ一つは小さくても、不祥事が積もりに積もればボディブローのように組織に打撃を与える」、「組織が弱っているときに『とどめの一撃』があれば、どんな組織もあえなく滅びる」という理論は、実は社会、国家、あるいは外交関係など、様々な場面に応用が利く考え方ではないかと思うようになったのです。

    中央青山監査法人という社会的教訓

    かつて、日本に「中央青山監査法人」という会社が存在していました。

    監査法人とは、複数の公認会計士が集まって共同で設立する公認会計士法上の法人です。「監査法人制度」は、監査を受ける企業が大規模化するに従い、企業の監査を行う側も「組織的に監査を行う」必要があるため、公認会計士が「組織的な会計監査を行う」という目的で創設された制度です。

    弁護士や司法書士、税理士などの、公認会計士以外の「サムライ業」の法人化が認められたのは今世紀に入ってからですが、公認会計士の世界では、既に1960年代には監査制度の法人化が始まっていたのです。

    ところで、ペンネームにも示している通り、私自身も公認会計士です(ただし、財務会計等に関する知識は怪しいものですが…笑)。そして、私のような40代の公認会計士であれば、「カネボウ粉飾決算事件」や「日興コーディアル粉飾決算事件」は、一種の「強烈な記憶」です。

    それらの会計監査を担当していた監査法人が、「中央青山監査法人」です。

    今になってわかることですが、当時の中央青山監査法人は、「組織的監査」が全くできておらず、同社の監査先で大型の企業破綻が相次いだこと、さらには大型の粉飾決算を相次いで見逃していたことなどで社会的信頼を失ったため、「あらた監査法人」と「みすず監査法人」に分裂し、このうちの「みすず監査法人」側は、「追い討ち」のように発生した粉飾決算事件の不祥事により社会的信頼を失い、監査クライアントが離れ、自主廃業に追い込まれました。

    カネボウ粉飾決算事件

    中央青山監査法人が会計監査を担当していた先の中で、経営破綻か、それに準じる状態に陥った会社は多いのですが、これらの中でもとくに深刻だったのが、「カネボウ株式会社」の粉飾決算事件でした。中央青山監査法人は、カネボウの1999年3月期から2003年3月期決算までの5年分の有価証券報告書に添付される財務諸表について、「虚偽記載があったにも関わらず、関与社員が故意に虚偽記載を見逃した」として、金融庁により2006年5月10日時点で「懲戒処分」を受けています。

    監査法人及び公認会計士の懲戒処分について(2006年5月10日付 金融庁ウェブサイトより)

    懲戒処分の内容は、当時としては異例に厳しいもので、法人に対して

    • 2006年7月1日~8月31日の2か月間の業務停止処分
    • 審査・教育体制、業務管理体制を含む監査法人運営の不備に対する対応策の策定

    などの厳しい処分が下されたほか、カネボウの監査に関与した社員らには公認会計士としての登録抹消などを含めた制裁が下されました。

    いわば、監督官庁から受けた処分としては、まさに「業界始まって以来」の厳しいものです。ただ、私に言わせれば、公認会計士・監査業界に対する社会的信頼を失墜させたのですから、これらの処分は妥当でしょう。

    ところで、公認会計士業界には「ヨコのつながり」が多く、私自身は中央青山監査法人ではない監査法人に勤務していましたが、当然、中央青山監査法人に所属する公認会計士の知り合いはいました。

    今になって思い出してみると、当時の「弛緩し切った公認会計士・会計士補」には、中央青山監査法人と、あともう一つ(※)に所属する人が、際立って多かった気がします。

    (※)「もう一つ」とは、現在も実在する、最近も大型粉飾決算疑惑で世間を賑わせている某監査法人のことですが、実名表記は勘弁してください(笑)

    日興コーディアル事件

    中央青山監査法人は、旧「中央監査法人」と、外資系であるPwCの日本法人としての性格が強かった「青山監査法人」が合併してできた会社でした。この「カネボウ」事件を発生させたのは、どうやら「中央監査法人」系のチームだったらしくPwC系列の公認会計士らが「中央青山監査法人」から分離して「あらた監査法人」を設立(※こちらについては現存する会社であるため、具体的なコメント・言及は控えます)。残りの部隊が「みすず監査法人」に組織変更しました。

    しかし、今度はこれに「追い討ち」をかける形で、「株式会社日興コーディアルグループ(日興コーディアル)粉飾決算事件」が発生しました。

    この事件は、日興コーディアルが2005年3月期決算において、連結会計上、重要な子会社を連結除外したうえで、その子会社との取引で計上された評価益を連結相殺消去しないという、極めて初歩的かつ杜撰な粉飾決算を行っていたことが判明したものです。

    株式会社日興コーディアルグループに係る発行登録追補書類の虚偽記載に係る課徴金納付命令の勧告について(2006年12月18日付 証券取引等監視委員会ウェブサイトより)

    しかも、この事件が発覚したのは、「みすず監査法人」が成立した直後のことであり、これが「追い討ち」となりました。

    結果的に、発足したばかりの「みすず監査法人」はクライアントから監査契約を切られまくって、翌2007年2月頃には「自主廃業」という、前代未聞の椿事が発生しました。

    中央青山という「負の遺産」を抱える会計士業界

    ここから先は、完全に私の意見です。

    「中央青山監査法人」は、「会計士試験なんて受かってしまえばこっちのものだ」といった、弛緩し切った会計士が多かったのではないでしょうか?(※あくまでも私の主観です。)そうでなければ、あそこまで「大型粉飾決算事件」が単独の監査法人に集中して発生する理由がわかりません。

    昔から、「類は友を呼ぶ」といいます。私は、20年前の公認会計士受験時代や、その後の自分自身のビジネスライフを通じて、「ダメな人はダメな人同士群れる」という法則を発見したのですが、やはり当時の中央青山監査法人には弛緩し切った人が多かったのかもしれません。

    そのうえ、恐ろしいことに、2001年からの3年間、中央青山監査法人の理事長経験もある奥山章雄氏が日本公認会計士協会の会長を務めていました。これに加えて、中央青山監査法人の事実上の後継組織である「みすず監査法人」からは、某大手監査法人に大量の人材の移籍が行われていたという話もあります。つまり、「中央青山監査法人」「みすず監査法人」の弛緩し切ったマイナスの企業文化という「負の遺産」は、事実上、監査業界全体にばら撒かれているのです。

    私自身は監査業界を離れて10年以上が経過するので、単なる憶測で物をいうのも不適切かもしれませんが、昨今、某大手監査法人が大型粉飾決算事件で揺れている理由に、こうした「弛緩し切った監査法人」出身者が紛れていたという可能性はないのでしょうか?

    ※なお、ここまでに記した内容は、いずれも過去の事件であり、かつ、金融庁をはじめとする当局のウェブサイトなどに公表されている事実ですので、企業の実名を含めてこちらに記載することに全く問題がありません。

    ただし、現在でも存在している会社・組織などについては、原則として、当ウェブサイトで言及することは控えたいと思います(ただし、強引なIFRS推進で日本の国益を破壊した山崎彰三氏や西川郁生氏を筆頭に、日本公認会計士協会会長やASBJ委員長、あるいはその経験者などの「権力者」、およびそれらに類する者については、今後も実名入りで容赦なく批判させていただきます)。

    ボディブローと「とどめ」

    企業不祥事の実例を学ぶ

    以上、唐突に監査法人の話を紹介したのには、理由があります。それは、不祥事を連発する企業は、その不祥事の一つ一つは小さなものであっても、じわじわと「ボディブロー」のように、しかし確実に企業を蝕(むしば)むからです。私はそのことを、「中央青山事件」で学びました。

    「中央青山監査法人」が分裂して「みすず監査法人」が成立し、半年余りで解体されたのは2006年から2007年頃にかけての時期でした。この時期、私はすでに監査業界を離れ、某一般事業会社に転職していたのですが(実はこの会社こそ、私が2015年9月までお世話になっていた会社です)、それでも当時はまだ監査業界内にも知り合いが多く、中央青山監査法人の分裂と、みすず監査法人の自主廃業を、リアルタイムで眺めていました。

    さらに、みすず監査法人には知り合いも多く在籍していましたし、みすず監査法人が廃業した直後には、同社から当時私が勤務していた一般事業会社に転職してきた公認会計士/会計士補も5~6名いました。ただし、彼らは一般事業会社の張り詰めた企業文化になじめなかったらしく、2年以内に全員退職しています。私も彼らと話をしたことがあるのですが、「企業会計の専門家」を名乗りつつも、プライドばかり高くて規律も弛緩し切ったような人材ばかりだったのに驚いた記憶があります。

    組織を維持させるもの

    私は、企業という組織も、人間社会も、究極的には「人と人とのつながり」という意味では全く同じだと考えています。ということは、「過去にダメになった組織」のことをしっかりと研究すれば、「国として大事なこと」が自然に見えてくると考えています。

    私は、組織を維持させるためには、組織の構成員一人ひとりが「しっかりと自覚を持つ」ことが必要だと考えています。たとえば、監査法人であれば、監査法人の社員・職員の一人ひとりが「粉飾決算を見逃さない」という「専門家としての使命感と職業倫理」を持っているべきですし、「営利社団法人」である株式会社であれば、株主への利益配当、顧客満足の上昇、納税を通じた国家・社会への貢献が大切です。

    そして、私たちは「日本国民」です。

    日本国民である以上は、「日本という国」に「経済的な豊かさ」と「軍事的な安全」がなければ、日本という国自体が機能しないということを、しっかりと自覚すべきでしょう。

    外交でも全く同じ?

    ところで、私は今週金曜日に、『「ボディブローととどめ理論」を外交に応用する』という議論を提示しました。これは私の「ライフワーク」の一つである、「日韓関係」について議論した記事ですが、「一つ一つは小さなものであっても、反日行為が相次ぐならば、それはボディブローのように日韓関係を揺るがす」という意味では、本日申し上げた「ボディブロー理論」が全く同様に適合するのです。

    また、「韓国政府・韓国国民による国を挙げた反日行為」というボディブローにより弱った日韓関係に、何か「とどめの一撃」となるような打撃が加えられれば、日韓関係は脆くも崩れ去ってしまうでしょう。

    本日提示した「ボディブローととどめ理論」は、企業不祥事、国家、あるいは外交関係など、実に幅広い局面に応用が利くのではないかと思うのです。その意味で、政治家の皆さんも、経営学の知見を持っておいて損はないのではないでしょうか?

    ※本文は以上です。

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    著者のコンタクト先:info@shinjukuacc.com

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