日本人一人ひとりに覚悟が求められる局面が到来しています。安倍総理は駐韓大使の「一時帰国措置」を「無期限待機」に切り替えると決断したと、産経系のウェブサイトが報じています。また、インターネット上では、これに対して喝采(かっさい)を叫ぶ意見も見られます。しかし、日本が対韓外交を、将来的に「どうするのか」について決定していない現状のままで、日本国民がこうした措置を「歓迎」するのは性急に過ぎます。ただ、大使一時帰国問題は日韓関係を考え直す良いきっかけでもあります。そこで、安倍総理に日韓関係に関する全責任を押し付けるのではなく、私たち日本人一人ひとりが、この問題について改めてじっくり考えてみませんか?

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    ここからが本文です。

    釜山慰安婦像問題、大使は「無期限待機」か?

    韓国第二の都市・釜山(ふざん)の日本総領事館前における「慰安婦像設置騒動」が発生してから、明日で1か月が経過します。また、日本政府が「対抗措置」として、駐韓大使と駐釜山総領事の一時帰国措置や日韓スワップ協議の中断などを打ち出してから、本日でちょうど3週間です。

    日本側による一連の「対抗措置」のうち、特に「駐韓大使の一時帰国措置」については、解除される目途が立っていませんが、これについて、真偽のほどはともかくとして、興味深い報道を発見しました。

    【ドキュメント永田町】スクープ!慰安婦像問題で安倍首相、駐韓大使「無期限待機」決断 「こちらから動く必要ない」外務省と温度差のウラ(2017.01.25付 ZAKZAKより、全3ページ)

    リンク先記事は、産経系のウェブメディア「ZAKZAK」に、ジャーナリストの山口敬之(やまぐち・のりゆき)さんが寄稿したもので、私の文責でごく簡単に要約すると、概要は次の通りです。

    • 安倍晋三総理大臣は、一時帰国中の長嶺安政駐韓大使を「無期限待機」させる方針を固めた
    • ただし、同様に一時帰国中の森本康敬・駐釜山総領事については、韓国の政情の不安定さと反日感情が収まらない現状に鑑み、長嶺氏とは切り離して帰任時期を検討する
    • 今回の「一時帰国措置」も安倍総理が自ら決断したものだ
    • 大使帰任の条件として安倍総理が最も重視しているのは、「大使として仕事ができる環境」(交渉責任者を明確にし、国際法に基づいて二国間の交渉や合意結果を順守すると信じるに足る体制を韓国側が構築すること)である

    また、この記事以外にも、最近、「安倍総理が慰安婦像設置事件を契機に、韓国に対する怒りを爆発させた」、といった指摘や評論を見かけることも増えてきました。どうやら安倍総理自身が、「慰安婦問題」そのものを巡って、韓国に対し、相当深い不信感を抱いている可能性は高そうです。

    「日韓関係改善」に関する菅官房長官の発言

    これを裏付けるのが、政府高官の「生の声」です。

    日本の場合、内閣官房長官が、毎日2回、記者会見に応じていて、そのやりとりが首相官邸ウェブサイト「官房長官記者会見」で公表されており、国民は誰でも視聴することができます。そして、つい最近も、実に興味深いやり取りがなされていました。

    内閣官房長官記者会見 平成29年1月25日(水)午後

    リンク先動画(2:00あたりから)で「NHKのタカハシ」と名乗る者が、

    釜山に少女像が新たに設置されて以降、韓国との関係が停滞している訳ですが、こうした状況を打開するためには何が必要だとお考えでしょうか?

    と尋ねたところ、菅官房長官が

    そこは韓国が考えることじゃないでしょうか?

    と一刀両断。いわば、ボールは完全に韓国側にある、ということを示した格好となっています。私としては、この菅官房長官の姿勢を全面的に支持せざるを得ません。

    ZAKZAK記事と整合する毎日報道

    ところで、冒頭のZAKZAKの記事には、こんなくだりがあります。

    首相官邸と外務省には温度差があった。外務省は駐韓大使らを一時帰国させた段階で、韓国側の対応にかかわらず、2人の日本滞在1週間となる16日前後に韓国に戻す心づもりだったのだ。/そこに、オーストラリアや東南アジア歴訪中の安倍首相が待ったをかけた。

    私は、この下りには非常に信憑性があると考えています。『大使帰任巡る「毎日誤報」のインパクト』でも指摘したとおり、駐韓大使ら2人が日本に帰国した日(1月9日)の5日後にあたる1月13日(金)時点で、毎日新聞がこんな観測報道(というか明確な誤報)を流しているからです。

    駐韓大使/来週にも帰任(毎日新聞2017年1月13日 23時38分付 毎日新聞デジタルより)

    この報道によると、

    • 複数の政府・与党関係者が明らかにしたところによると、政府は本日(=13日)、長嶺大使と森本釜山総領事を、来週にも帰任させる方針を固めた
    • 外国訪問中の安倍晋三首相が17日に帰国するのを待って最終的に判断する
    • 日本側は当初から「召還」ではなく「一時帰国」と位置付け、帰任時期を探っていた
    • 自民幹部は「早めに帰して韓国側と交渉した方がいい」との認識を示した

    としています。この記事そのものが、ZAKZAKの記事に出てくる、「外務省は2人の日本滞在1週間となる16日前後に(2人を)韓国に帰任させるつもりだった」という下りの信憑性を裏付ける証拠と見るべきでしょう。

    そして、朝日新聞や毎日新聞などの左翼メディアが日本にとって不利な主張ばかり流していることは間違いないにせよ、外務省や自民党内の「親韓派」が情報を流している可能性が高い、ということです。それが事実であれば、安倍政権にとっての「敵」は、韓国政府ではありません。日本のマス・メディア(特に朝日新聞や毎日新聞)だけでなく、さらには与党・自民党の内部や、日本政府・外務省の内部にも、日本の国益を害するような勢力が潜んでいると考えて良さそうです。

    日韓関係を巡る6類型

    では、具体的に外務省や朝日新聞は、日韓関係をどのように考えているのでしょうか?

    外務省と朝日新聞の考える「日韓関係」とは?

    以前、『「問題書」が投げかける、日韓関係巡る思考実験』の中でも触れましたが、現在の日本国内の報道やインターネット上で交わされている意見などを集約すると、「これからの日韓関係」については、おおむね次の6つの類型があると考えています(図表)。

    図表 日韓関係を巡る6類型
    カテゴリ 分類 概要
    日韓友好推進派 ①対等な日韓関係 日本は韓国と、価値を共有する対等な主権国家同士として、友誼を深め、ともに手を取り合って未来に向けて発展していくことを目指す考え方
    ②対韓配慮型関係 日本は過去の歴史問題などに多少は配慮し、謝るべきところは謝り、賠償するところは賠償するなどしつつも、韓国と対等な関係構築を目指す
    ③対韓追従型関係 韓国が求める「正しい歴史認識」を全面的に受け入れ、韓国が「もう良い」と言うまで全面的に謝り続ける
    日韓友好非推進派 ④韓国放置論 韓国が日本に対して突きつけてくる不当な要求を無視し、敢えて日韓関係の改善を先送りにする
    ⑤日韓断交論 韓国との関係を断ち切る
    ⑥誅韓論 韓国という国を、むしろ積極的に滅亡させる

    このうち①~③が「日韓友好に積極的な立場」、④~⑥が「日韓友好に否定的な立場」と整理できます。

    「善隣外交」の立場からすれば、①が理想的であることに、議論の余地はないでしょう。私だって、「隣り合う国同士、仲良く未来に向けて手を携えて発展していきたい」という気持ちはあります。

    もちろん、歴史的にわだかまりを抱いているのであれば、心の底からそれを解消することが難しいこともあります。ただ、日韓両国に横たわる「過去の歴史を巡る立場の違い」は、乗り越えることができないほど過酷なものではないはずです。その意味で、これまでの日本は、②のように「譲れるところは譲りつつも、長期的な友好を目指す」という姿勢を最重視して来たのです。

    しかし、残念なことに、韓国側が現在やっていることは、むしろ「過去の歴史」を強調し、歪曲し、日本に対する敵愾心(てきがいしん)を煽るような教育であり、言動であり、とうてい、日本との「善隣友好」を望んでいるようには見えません。

    そうなると、「何が何でも日韓友好」という間違った外交命題を掲げる外務省、あるいは慰安婦ン問題を捏造し、「中国共産党系の資金援助を受けているのではないか」と疑わしい朝日新聞社、さらには左翼的「知識人」などは、「日韓友好が大事だ」、「韓国がもう良いというまで謝るべきだ」、といったとんでもない主張をし始めるのです。

    冒頭に紹介したZAKZAKの記事でも、外務省側が上記「②」ないし「③」の立場に立っていることが強く示唆されています。

    安倍外交は「類型④」に舵を切る

    安倍政権の下で2015年12月28日に成立した「日韓慰安婦合意」は、上記の立場でいえば、②と③の中間、あるいはギリギリ②に踏み止まるものです。

    しかし、私の見立てでは、1月6日以降の安倍政権は、明らかに立場を変えました。私の類型に当てはめるならば、「類型④」です。そして、これは国民のマジョリティの意見とも合致しています。

    安倍総理が発したとされる、ZAKZAKが報じた、

    半年かかるか1年かかるか、こちらが悩むことじゃない。出口は韓国側が考えることだ

    とする発言は、まさに類型④にいう

    「韓国が日本に対して突きつけてくる不当な要求を無視し、敢えて日韓関係の改善を先送りにする」

    とする姿勢そのものです。つまり、遅まきながらやっと日本外交も、「韓国に無駄に配慮する」という姿勢を改めようとしているのかもしれません。

    類型④の問題点

    ただ、私に言わせれば、日韓間の懸案は、「慰安婦問題」だけではありません。

    日本固有の領土・島根県竹島を韓国が不法占拠している問題を筆頭に、日韓間の懸案の99%は、「韓国が、法秩序を守らないこと」でもたらされています。個別事件では、2011年以降に限っても、韓国政府、韓国司法当局、あるいは韓国国民による日本に対する不法行為には枚挙に暇がありません。ざっと思いつくだけでも、たとえば

    • 2011年12月の靖国神社放火を自供した中国人容疑者を「犯罪人引渡条約」に反して日本に引き渡さず、中国に送還した
    • 2012年10月に韓国人窃盗団が長崎県対馬の海神神社の「銅造如来立像」などを盗み、韓国内で逮捕されたが、その仏像がいまだに日本側に返還されていない
    • 2015年11月に韓国人が靖国神社の公衆トイレに爆発物を仕掛けた(なお、朝日新聞を始めとする日本のメディアはこれを「靖国爆発事件」と報じている)
    • 2016年12月に韓国人が福島県で墓地の仏像など100体以上を破壊した

    などの事件があります。なお、余談ですが、このうち2012年10月の「仏像窃盗事件」を巡っては昨日、ある意味で「予想通りの非常識判決」が下されています。

    韓国裁判所「対馬から持ち込まれた金銅観音菩薩座像、瑞山浮石寺に引き渡せ」2017年01月26日10時26分付 中央日報日本語版より)

    これは、日本・対馬の観音寺から盗まれて韓国に持ち込まれた金銅観音菩薩座像を「元の所有主」(?)である忠清南道瑞山(ちゅうせいなんどう・ずいさん)の浮石寺(ふせきじ)に引き渡せ、という、むちゃくちゃな判決です。もはや韓国に「法治」を期待するのは不可能でしょう。

    ここで、韓国側が主張する「慰安婦問題」に戻ります。この問題は

    「戦時中に日本軍が朝鮮半島で少女20万人を組織的に拉致し、戦場に強制連行して性的奴隷にした」

    とされるものですが、これは朝日新聞社と同社の元記者だった植村隆が文筆家の吉田清治の虚偽証言を基に捏造した事件であり、これに韓国国民と韓国政府が「尾ひれ」を付けることででっち上げられたものです。

    なぜ日本政府が、これらの諸問題に対して「本腰」を入れて対応しないのか、私には今一つ理解できません。というよりも、日本政府・国会の動きなどを含めて、韓国が日本に対して行っている「不法行為」の各論を議論している人がいることは存じ上げていますが、現在のような不健全な日韓関係の在り方そのものについて、「見直す」という議論が行われている形跡がないのです。

    日韓関係の在り方「そのもの」を見直すべき

    問題の多い「類型④」

    そして、私が示した「類型④」には、大きな問題があります。なぜなら、「日韓関係の改善を先送りし、ボールを韓国側に投げる」という姿勢では、いつまでたっても日韓関係が動かなくなってしまうからです。こうした日韓関係の「こじれた状態」を治すためには、いっそのこと日韓関係を「リセット」するしかないのではないでしょうか?

    折しも韓国側では現在、2015年12月の「日韓慰安婦合意」を破棄しようとする動きが出ています。職務停止中の朴槿恵(ぼく・きんけい)大統領が6月までに罷免されれば、8月までに次期大統領が選出されますし、彼女が罷免されなかったとしても12月には大統領選が行われます。

    私の理解ですと、「有力候補者」とされる政治家は、ことごとく、「日韓慰安婦合意の破棄」を公約に掲げているようです。そうであるならば、私は韓国側からこの合意を反故にする可能性が極めて高いとみており、日本政府・日本企業・日本国民としても、その前提で今から日韓関係を巡るシミュレーションを始めるべきです。

    私は個人的に、日本国民の一人として、この「日韓慰安婦合意」には反対でしたし、今でも反対です。ただ、国際合意は形成された以上、守らなければなりません。このため、「日本側から」合意を反故にすることは許されません。しかし、「韓国側から」合意が反故にされるとなると、話は別です。このチャンスを逃さない手はありません。日本はまず、慰安婦問題の定義から変更しなければなりません。

    慰安婦問題を「正確に定義する」

    私の主張です。改めて、慰安婦問題の正確な定義を行っておきましょう。

    慰安婦問題の正確な定義

    「文筆家の吉田清治の虚偽証言などに基づき、朝日新聞社の記者だった植村隆が朝日新聞に執筆した捏造記事をきっかけに、韓国政府が1990年代に『朝鮮半島で1941年12月8日から1945年8月15日の間に、日本軍が組織的に少女20万人を強制的に拉致し、戦場に連行して性的奴隷にした』とされる虚偽の事実をでっちあげ、韓国政府及び韓国国民が今日に至るまで日本人の名誉を世界中で傷つけている問題」

    まずはこの事実を、私たち日本人がしっかりと受け止めるべきでしょう。

    なにより我々は、この慰安婦問題を巡って「なあなあ」で済ますことはできません。「朝鮮半島で少女20万人を強制的に拉致・連行」したのが事実であれば、それは「日本人が人道に反する戦争犯罪を行った」という意味であり、心から謝罪するとともに責任者を厳罰に処さねばなりません。逆に、それが虚偽であれば、「日本人に対するヘイトクライム」と同じであり、それを捏造した植村隆と「法人としての朝日新聞社」、さらにはこの問題に尾ひれを付けて扇動し、日本人を傷つけた全ての韓国国民と韓国政府に、厳罰が下されなければならないのです。

    そして、この問題には既にシロクロの決着はついています。いうまでもなく、全ては朝日新聞社と植村隆の捏造から始まったものであり、それに戦時売春婦や米軍の慰安婦だった朝鮮人らが「慰安婦問題の被害者」だと名乗りを上げて乗っかり、韓国国民が日本人を傷つけるためにウソを世界中で吹聴しているのです。

    慰安婦問題をこのように定義し直せば、日本が「類型④」のような姿勢を取り続けることには問題があると言わざるを得ません。

    では類型⑤か類型⑥なのか?

    ただし、類型⑤(日韓断交論)、さらには類型⑥(誅韓論)となってくると、現代の日本では、いずれも「極論」とみなされているのも事実です。

    (参考)誅韓論 (晋遊舎新書 S18)


    もちろん、自由主義、民主主義を掲げる国同士が「断交」するとか、あるいは「戦争を吹っかける」とか、そういう前時代的な発想には、様々な異論も噴出することでしょう。

    しかし、私は日韓関係を巡っては、「方向性を決めること」が大事だと考えています。ここまでこじれてしまった日韓関係を、「両国民が心から和解し、共感し、友誼を感じ、ともに手を携えて未来に向けて発展する」という状態(類型①)にまで持っていくことは、おそらく不可能です。この事実は認めましょう。

    そして、類型②、類型③では、既に日本国民の理解を得ることはできません。日本は1965年の日韓基本条約以降、誠心誠意、韓国に尽くしてきたのです。その結果がこれです。日本が友好条約を締結した相手国の中で、国民感情が極度に悪化している国は、韓国以外では中国しかありません。実際、中韓を除く世界中の友好国は、日本との友情を感じ、日本人を歓迎してくれ、日本とともに発展しようとしてくれています。

    このように考えるならば、少なくとも安倍総理が1月20日の施政方針演説で述べた

    韓国は戦略的利益を共有する最も重要な隣国

    という表現が不適切であることは間違いありません。

    いずれにせよ、朝鮮半島情勢は急速に動いています。かなり近い将来に、日本人が対韓関係を巡って、「類型④」なのか、「類型⑤」なのか、あるいは「類型⑥」なのかを「決断」しなければならない局面が到来することは間違いありません。覚悟を求められるのは、安倍総理ではありません。私たち日本人一人ひとりなのです。

     

    ※本文は以上です。

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