日本政府の対韓制裁は「まだまだ生ぬるい」

本日2本目の記事です。昨日の日本政府が打ち出した「対韓外交措置」については、日本のインターネット上や保守メディアの論調は「歓迎一色」、左派メディアの論調は「批判一色」ですが、私はいずれの意見にも与しません。というのも、私は今回の安倍政権の措置を、むしろ「生ぬるい」と考えているからです。

両極端の社説

昨年12月30日、韓国・釜山にある日本領事館前に「慰安婦像」が設置されたことを受け、日本政府は昨日、韓国に対する次の4つの項目から構成される「当面の措置」を発表しました。

  1. 在釜山総領事館職員による釜山市関連行事への参加見合せ
  2. 長嶺駐韓国大使及び森本在釜山総領事の一時帰国
  3. 日韓通貨スワップ取極の協議の中断
  4. 日韓ハイレベル経済協議の延期

(【出所】2017年1月6日付 首相官邸ウェブサイト『在釜山総領事館前の少女像設置を受けての我が国の当面の措置について』)

この措置を、どう考えるべきでしょうか?

産経系「安倍政権は激怒」

産経新聞系の「ZAKZAK」は、今回の措置が「安倍政権による激怒の証拠だ」と主張する論評を掲載しています。

安倍政権、釜山・慰安婦像に“激怒” 駐韓大使帰国命令、スワップ協議中断…韓国側は動揺も(2017.01.07付 ZAKZAKより、全3ページ)

「ZAKZAK」の主張を簡単にまとめると、

  • 日本側は慰安婦合意を誠実に履行したのに、韓国側は大使館前の慰安婦像の撤去を行っていないばかりでなく、日韓合意以降も新たな慰安婦像の設置を続けている
  • 今回の日本政府の措置は、こうした韓国側の理不尽極まる対応を受けたものであり、かつてないほどに厳しい対応といえる
  • この背景について、官邸周辺は「安倍政権の『もう許さない』という断固とした意思表示だ」と述べている
  • 日本の毅然とした対応を受け、韓国側はやや動揺しているようだが、それでも韓国側には国際社会のルールが分かっていないようだ

…といったもので、おおむね日本政府の今回の措置に好意的です。

朝日社説「冷静さを欠いている」と批判

これに対して、慰安婦問題を捏造した張本人である朝日新聞は、本日の社説で、政権の対応を「ここまで性急で広範な対抗措置に走るのは冷静さを欠いている」と批判しています。

(社説)韓国との外交 性急な対抗より熟考を(2017年1月7日05時00分)

朝日新聞社説の主張を簡単にまとめると、

  • 少女像問題の改善に向けて韓国政府は速やかに有効な対応策に着手すべきであるが、(だからといって日本政府が)ここまで性急で広範な対抗措置に走るのは冷静さを欠いている
  • 日韓政府間ではこれまでも、歴史認識問題のために関係全体が滞る事態に陥ったが、「歴史などの政治の問題と、経済や文化など他の分野の協力とは切り離して考えるべきだ」と訴えてきたのは、当の日本政府である
  • 少女像問題をきっかけに経済協議や人的交流も凍結するというのでは、自らの主張と行動が反対になる(し、)今後の対韓交渉で説得力を失うものだ
  • 韓国はいま、朴槿恵大統領の進退で揺れており、日韓の応酬が続けば、これまで慰安婦問題に関心を示さなかった候補予定者らも対日強硬姿勢をとることが予想され、少女像問題の解決はさらに遠のく恐れがある

といったものであり、事実誤認も甚だしく、ヒトコトでいえば「話にならない」レベルです。

そもそも、朝日新聞がいう「慰安婦問題に関心を示さない大統領候補者」とは、いったい誰のことでしょうか?メディアが報じる「次期韓国大統領選の有力候補者」は、潘基文(はん・きぶん)前国連事務総長を除けば、ほぼ全員が「慰安婦合意の破棄」を求めています。

つまり、朝日新聞が社説の中で主張する「慰安婦問題を巡って韓国を刺激すれば、次期大統領選の有力候補者が対日強硬姿勢を取るだろう」とする内容は、最初から前提条件が間違っているのです。

そして、朝日新聞社こそ、日韓関係を破壊した張本人であり、本来なら廃刊してでも日本国民に謝罪すべき立場にあるにも関わらず、リンク先の社説からは、そうした「反省」の色は全く見えて来ません。文章を読んで、久しぶりに心の底から怒りの感情が沸き上がる思いがしました。

いずれの社説もピント外れ

以上、安倍政権の今回の対応について、産経系メディアは好意的、朝日新聞は批判的な反応を見せています。ある意味で、これは全く「想像通り」です。

ただ、私に言わせれば、いずれの社説も「ピント外れ」です。

まず、今回の措置は、決して「広範囲」でも「かつてないほどの強硬措置」でもありません。たとえば、「大使召還」については、確かに「日本が」相手国から大使を引き上げる事例はそれほど多くありませんが、「韓国が」(あるいは「中国が」)日本から大使を引き上げた事例は、過去に何度もあるからです。ZAKZAKは

「大使召還」といえば歴史的に、両国関係が戦争寸前にまで至ったことを意味する

と主張していますが、それならば日本は中韓との間で、何度も「戦争寸前にまで至った」ということになり、理屈が通りません。「領事館の日本人職員全員を引き上げる」ならまだしも、大使と領事を引き上げるくらいなら、「戦争寸前に至る状態」とは言えないでしょう。

また、「在釜山領事館職員の釜山市公式行事への参加見合わせ」や「日韓ハイレベル経済協議の延期」も、日韓関係においてはどちらかというと象徴的な意味合いが強く、「日本大使館の職員全員があらゆる韓国の国家行事をボイコットする」、「日韓両国政府間のあらゆる経済協議を中止する」、といった措置ではありません。

唯一意味があるとすれば、「日韓通貨スワップ協定の再開交渉の中断」ですが(※これについては明日、詳細な分析記事を公表しますのでご期待ください)、これを除けば、今回の日本政府の措置が実効性ある「対韓制裁」とまでは言えないでしょう。

その意味で、日本政府の今回の措置は、いかにも「生ぬるい」ものであり、私にとっては非常に不満が残るものなのです。

「二の矢」「三の矢」に期待

朝日の社説、ZAKZAKの解説記事は、いずれも「今回の安倍政権の措置がかつてない強硬なものだ」と主張している点では共通しています。また、明日の記事でも少し触れる予定ですが、韓国側のメディアは今回の措置に強く反発しています。

しかし、実質的にはいずれも「ピント外れ」です。

逆に言えば、「もっと実効性のある対韓制裁のメニュー」は、いくらでもある、ということです。

一例を挙げれば、韓国が不法占拠する日本固有の領土・島根県竹島の領有権を巡り、国際司法裁判所(ICJ)などに付託する、という「カード」が考えられます。韓国による竹島不法占拠は、韓国による純粋な不法行為であり、日本がこれを提訴すれば、日本の勝訴はほぼ間違いないでしょう。

また、WTO違反にならない形で日本側が韓国に「てっとり早く」経済制裁するには、韓国人の「観光ビザ免除プログラム」を廃止することが考えられます。もっとも、こうした措置は、一種の「利権官庁」である「観光庁」あたりが、「韓国人観光客の急減を招きかねない」などと強硬に抵抗することが予想されるため、難しいかもしれませんが…。

いずれにせよ今回の措置は、安倍政権が韓国に対し、軽い「ジャブ」を打った程度のことだと認識するのが正しいでしょう。その意味で、安倍政権による対韓制裁メニューの「二の矢」「三の矢」に期待したいところです。

「日韓友好」を目的とするな!

ついでに、私の持論を改めて繰り返しておきます。

私は、自分自身が韓国人とのハーフであるという事情もありますし、また、学校教育でも「韓国はかけがえのない隣国」であると教わってきたため、昔は「日韓両国が共に手を携えて、未来に向けて発展していける関係になれば良いのに」と思っていた頃もありました。

しかし、今はこの考え方を、きれいさっぱり捨て去っています。

日韓関係は、「特別な関係」ではありません。あくまでも「普通の外交関係」です。そして、外交の目的は

  • 軍事的安全
  • 経済的発展

の2点であり、この2つの目的に照らして、どのようなお付き合いをするかを決定するのが鉄則です。

この点、私は現在の「安倍外交」について、対中、対米、対露関係などではほぼパーフェクトに近い成果を上げていると考えていますが、対韓関係では全く評価していません。というのも、2015年12月の「日韓慰安婦合意」は、私たち日本人の祖先が「朝鮮半島で少女を組織的に強制連行する」という「犯罪行為」を働いたという前提でなされたものであり、本日最初の記事でも指摘したとおり、国際社会からも日本は「犯罪国家だ」と見られているからです。

私は、慰安婦問題を「韓国人がウソをついて日本人の名誉を傷つけている問題」だと考えていますが、慰安婦問題を完全に解決するためには、「日本人の名誉が回復され、日本人を傷つけた犯人(=朝日新聞社、植村隆、韓国政府、韓国国民)が全員、然るべき罰を受ける」しかないと考えています。

インターネット空間では今回の安倍政権の措置を歓迎する意見が強いのですが、私は、安倍政権がきっちりと韓国に責任を取らせるのを見届ける必要があると考えています。

その意味で、「日本政府の措置はまだまだ中途半端だ」とする意見を、変えるつもりはないのです。

予告:「韓国経済、あと1年が勝負?」

明日は「日韓通貨スワップ協定」について、改めて、きちんと議論したいと思います。というのも、メディアの報道やインターネットの書き込みなどを見ていると、日韓スワップや「キャピタル・フライト(資金逃避)」などについて、やや誤解なども見られるからです。そこで、明日の記事ではできるだけ正確な統計などを用いて、韓国が近い将来(早ければ今年)、破綻の危機に瀕する、との仮説を提示する予定です。ご期待ください。

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