日本政府は昨日、釜山の慰安婦像問題に関する韓国政府の対応などを巡って、日韓スワップの再開交渉を中断し、外交官を引き上げるなどの措置を発動しました。やっと「重い腰を上げた」格好となっていますが、それにしても対応はあまりにも遅すぎました。本日は『慰安婦問題の「解決」を定義する』の続編を兼ねて、この日本政府の措置について概観するとともに、日本人の名誉回復に向けた「本当の闘い」は、実はこれから始まるのだということを、しっかりと確認しておきましょう。

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    ここからが本文です。

    日本政府、ようやく重い腰を上げる

    日本政府の4つの「対韓制裁」

    昨年12月30日に釜山の日本領事館前に慰安婦像が設置された問題を巡っては、私も当ウェブサイトで「日本人の一人として、到底許せない問題だ」と申し上げました(詳しくは『【緊急上梓】釜山の慰安婦像問題の本質』をご参照ください)。

    あれから、ほぼ1週間が経過しましたが、ここに来て、遂に日本政府も重い腰を上げました。昨日『速報』と称して紹介したとおり、日本政府は昨日、菅義偉(すが・よしひで)官房長官が、韓国に対し、次の4つの措置を取ることを発表しました(詳しくは首相官邸ウェブサイト『韓国の日本総領事館前の少女像設置に対する当面の措置について』をご参照ください)。

    1. 在釜山総領事館職員による釜山市関連行事への参加見合わせ
    2. 駐韓大使・駐釜山総領事の一時帰国
    3. 日韓通貨スワップ取極め再開協議の中断
    4. 日韓ハイレベル経済協議の延期

    これについてさっそく、韓国のメディア「中央日報」(日本語版)が昨日、「日本が超強硬な対応を取ってきた」などと大騒ぎしています。

    釜山少女像、韓日外交戦に飛び火…日本が超強硬対応(2017年01月06日13時47分付 中央日報日本語版より)

    しかし、上記4項目が「超強硬対策」だとは、私にはとても思えません。というよりも、これまで韓国が行ってきたことと比べれば、今回の日本政府の措置は、むしろ「遅くて生ぬるい」ともいえます。

    「制裁発動」直前の日本政府の反応

    以前『好事魔が多し!安倍外交の課題を考える』でも申し上げたのですが、私は現在の安倍政権による外交が、全体としては一貫した方針でうまく行っていると思うものの、局所的には「うまく行っていない」部分もあると考えています。そして、日韓関係こそが、「うまく行っていない」部分の典型的な例です。

    私の目から見て、韓国が「変なこと」をやったとしても、日本政府の対応はいつも後手に回る印象があります。今回の「釜山慰安婦像」事件についても、慰安婦像の設置が年末ぎりぎりだったということもあり、日本政府の「仕事納め」のタイミングと重なったためか、これまで日本政府は表立った反応を見せていませんでした。

    菅長官は、「仕事始め」直後の今年1月5日の記者会見で、この件について、記者の質問に答える形で見解を示しています。

    内閣官房長官記者会見 平成29年1月5日(木)午前(首相官邸ウェブサイトより)

    該当する箇所は、動画の4:09からあとです。まずは記者と菅長官のやりとりを、できるだけ原文に近い形で、文章に起こしておきましょう。

    • 記者「韓国の釜山に設置された慰安婦問題を象徴する少女像の件について、韓国政府は地元自治体に判断を委ねる姿勢を示しているが、この件について日本政府の対応は?
    • 菅長官「一昨年の日韓合意は慰安婦問題が最終的・不可逆的に解決することを確認しており、今般の少女像の設置は極めて遺憾である。本件は日韓関係に好ましくない影響を与えるとともに、領事関係に関するウィーン条約に規定する領事機関の威厳等を侵害するものであり、このウィーン条約に照らしても極めて大きな問題がある。政府としては撤去するよう、引き続き韓国政府や関係自治体に働きかけていきたい。いずれにしろ両国が合意した日韓合意を、責任を持って実施することが極めて大事である
    • 記者「韓国政府は問題解決に向けて動くことに消極姿勢を示しているが、日本政府として働きかけを強めるために何らかの対応策を講じることはあるか?
    • 菅長官「わが国としては少女像の設置は到底受け入れることはできない。様々なレベルで韓国側に強く申し入れをしていきたい。この一昨年の合意を韓国政府としても履行していく立場には変わりはないと、韓国外交部も発表しているので、しっかり対応するように強く求めていきたい

    この一連の会見を見ると、菅長官は慰安婦像の設置が「外交に関するウィーン条約」に違反していると強く示唆しているものの、その点を除けば、従来の日本政府の公式見解を繰り返すのみであり、今一つ、すっきりしません(実際には翌日に、4点の対韓「制裁」(?)が発表されていますが…)。

    ただ、菅長官は「安倍政権の一員」ですから、安倍政権が主導した一昨年の慰安婦合意については、それを自ら撤回するような発言ができるわけでもありません。その意味で、この点はやむを得ないといえます。

    むしろ私が注目したいのは、「菅長官がウィーン条約に言及した」という事実です。

    外交に関するウィーン条約を読み返す

    ところで、この「『外交に関するウィーン条約』に違反している状態」とは、いったい何のことでしょうか?

    この「外交に関するウィーン条約」(正式名称は「外交関係ウィーン条約及び紛争の義務的解決選択議定書」、英文では “Vienna Convention on Diplomatic Relations, 1961”)の「第22条」には、次のような規定が設けられています。

    第二十二条
    1. 使節団の公館は、不可侵とする。接受国の官吏は、使節団の長が同意した場合を除くほか、公館に立ち入ることができない。
    2. 接受国は、侵入又は損壊に対し使節団の公館を保護するため及び公館の安寧の妨害または公館の威厳の侵害を防止するため適当なすべての措置を執る特別の責務を有する。
    3. 使節団の公館、公館内にある用具類その他の財産及び使節団の輸送手段は、捜索、徴発、差押え又は強制執行を免除される。
    Article22
    1. The premises of the mission shall be inviolable. The agents of the receiving State may not enter them, except with the consent of the head of the mission.
    2. The receiving State is under a special duty to take all appropriate steps to protect the premises of the mission against any intrusion or damage and to prevent any disturbance of the peace of the mission or impairment of its dignity.
    3. The premises of the mission, their furnishings and other property thereon and the means of transport of the mission shall be immune from search, requisition, attachment or execution.

    そもそもこの「外交関係に関するウィーン条約」とは、いったいどのような位置付けのものなのでしょうか?

    前文によると、

    この条約の当事国は、すべての国の国民が古くから外交官の地位を承認してきたことを想起し、国の主権平等、国際の平和及び安全の維持並びに諸国間の友好関係の促進に関する国際連合憲章の目的及び原則に留意し、…(以下略)」

    などとあります。つまり、この条約は、「国の立場や制度が違っていたとしても、お互いに対等な国として相手国の外交官を尊重しましょう」という、国連憲章に基づく当然のルールを明文化しただけのものです。

    そして、ここに引用した第22条は、「大使館の不可侵」について定めた条文です。第2項で「接受国は、侵入又は損壊に対し使節団の公館を保護するため及び公館の安寧の妨害または公館の威厳の侵害を防止するため適当なすべての措置を執る特別の責務を有する。」と規定していますが、ここでいう「接受国」(the receiving State)とは、大使館や領事館などを受け入れる国(もっといえば、その国の政府)のことを意味しています。

    もちろん、外交関係ですから、A国とB国が対立関係にあり、A国がB国に宣戦布告でもすれば、B国では国民感情が爆発してしまうかもしれません。しかし、だからといって、B国の一般大衆がA国の大使館を占拠するなどということは許されません。

    この「第22条2項違反」の典型的な事例が、「イラン米大使館襲撃・人質事件」です。これは、1979年に「イラン革命」が発生した際、米国が前イラン国王の亡命を受け入れたことに激高した学生らが米国大使館を襲撃・占拠した事件で、米国の大使館員らはその後丸1年以上、軟禁されました。

    発足したばかりのイランの「革命評議会」が、米国のみならず主要国からも厳しく批判されたことは言うまでもありません。

    この「米国大使館占拠事件」は極端な事例かもしれませんが、どの国でも、大使館や領事館に対して危害を加える行為は厳しく咎められます。

    韓国政府の不作為はウィーン条約違反

    慰安婦像はソウルにある日本大使館前に、2011年12月14日に設置され、それ以来、韓国当局はこれを撤去できないままでいます。

    2015年12月28日には、日本の岸田文雄外務大臣と韓国の尹炳世(いん・へいせい)外交部長官が会談して漕ぎ着けた「日韓慰安婦合意」に基づき、日本側は既に昨年8月末で韓国側に10億円の資金を支払っています。

    それにも関わらず、韓国政府は、大使館前の慰安婦像の撤去をしないばかりか、市民団体が釜山の総領事館前に建立した新たな慰安婦像についても、結果的に放置している状況にあります。

    これら一連の行為は、立派な「ウィーン条約違反」です。ところが、韓国政府の立場は、「民間が自発的に設置したものであり、政府がどうこうできる事案ではない」(尹炳世外交部長)という責任逃れで一貫しており、こうした違法行為を、事実上、黙認している格好です。

    しかし、このような責任逃れは、国際法に照らして通用するものではありません。韓国政府が「慰安婦像を撤去しないこと」自体が、国際法違反なのです。

    放っておけば世界に広がる!

    事実を受け止めなければならない

    私はつい先日、『慰安婦問題の「解決」を定義する』の中でも主張しましたが、慰安婦問題の本当に正確な定義とは、

    文筆家の吉田清治の虚偽証言などに基づき、朝日新聞社の記者だった植村隆が朝日新聞に執筆した捏造記事をきっかけに、韓国政府が1990年代に『朝鮮半島で1941年12月8日から1945年8月15日の間に、日本軍が組織的に少女20万人を強制的に拉致し、戦場に連行して性的奴隷にした』とされる虚偽の事実をでっちあげ、韓国政府及び韓国国民が今日に至るまで日本人の名誉を世界中で傷つけている問題

    のことです。そして、この慰安婦問題は、実は私たち日本人が考えている以上に、世界中に広まりつつあるのです。

    世界に拡散される慰安婦像

    まず、「慰安婦像」を巡る現状を整理しておきましょう。実は、あの醜悪な「慰安婦像」は、現在、ソウルの日本大使館前や釜山の日本領事館前だけでなく、韓国各地に広がりつつあります。再び、「中央日報」(日本語版)の記事からです。

    慰安婦少女像、韓国内だけで40体余り…追加設置の動きも(2017年01月05日13時58分付 中央日報日本語版より)

    中央日報によると、その数は「韓国全体で40体余り」、米国、カナダ、豪州、中国など世界全体を含めれば「50体余り」が設置されているとのことです。

    私個人的には、日本の大使館や領事館の前など、「日本を外交的に侮辱する」場所でなければ、韓国国内にいくら設置されても良いと思います。しかし、これが韓国国内に留まらず、「日本軍が朝鮮人少女20万人を組織的に強制連行し、戦場で性的奴隷にした」とされる虚偽とともに世界各地に流布することは、話は変わって来ます。

    それは、まさに日本人に対する名誉棄損そのものです。

    米国人「日本は歴史を書き換えようとしている」

    それだけではありません。

    朝日新聞社と植村隆が捏造し、韓国政府と韓国国民が尾ひれを付けて問題化してきたためでしょうか、「日本は戦争犯罪国だ」という認識が、特に米国で、かなり広まっているのです。

    昨日、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の次の速報記事を紹介しました。

    Japan Pulls Diplomats From South Korea Over Comfort-Women Statue(米国時間2017/01/06(金) 00:08付=日本時間2017/01/06(金) 13:08付 WSJオンラインより)

    英語のタイトルを直訳すれば「日本、慰安婦像問題を巡って南朝鮮から外交官引き上げへ」、です(※韓国のことを英語では南朝鮮South Koreaと称しています)。

    この記事自体はAP通信の配信をそのまま掲載しただけの短いものですが、これに対する米国人と思しき読者のコメントが劣悪です。

    Bernard Morey

    This just shows how poor the standard of Japanese education is. They refuse to face up to their war crimes. The Japanese view I’ve read is that these women were prostitutes and on to a nice little earner.

    バーナード・モリー

    このことは日本の教育水準がいかに貧弱であるかを示している。彼らは自分たちの戦争犯罪に向き合うことを拒絶しているのだ。私が過去に目にした日本人の考え方とは、これらの女性が売春婦であり、高額の給与を得ていた、というものだ。

    つまり、このバーナード・モリーなる人物は、客観的な証拠もなしに、「日本軍が戦時中に朝鮮人女性を強制連行した」というウソを「事実だ」と信じ込んでしまっているのです。

    このようなコメントは他にもいくらでも見つかります。かかる状況を踏まえるならば、「慰安婦問題というウソを通じて日本人を貶めよう」とする韓国人らの悪しき試みは、部分的にかなりの成功を収めている、ということです。

    このことを、我々日本人はしっかりと認識しておかなければなりません。

    韓国国民に跳ね返る慰安婦問題

    では、この「捏造された事実」が「事実」として広まり、いったい誰が得をするのでしょうか?

    韓国国民?韓国政府?

    いずれも違います。

    昨日は、日本政府がやっと「重い腰を上げて、中途半端で生ぬるい対韓制裁に手を付けた」格好となっていますが、それでも外貨ポジションが危機的状況にある韓国にとって、「日韓スワップの交渉中断」は大きな痛手です。また、これに加えて外交の世界では、韓国がイラン革命時の米国大使館襲撃事件に比べられるような外交上の失態を犯したことが、諸外国で嘲笑の的にされています。

    民主主義国同士で「外交官の引き上げ」が行われるのは異例であり、かつ、今回の事態は明らかに韓国政府によるウィーン条約違反を契機にしたものであり、国際的には同情されません。

    つまり、今回の4つの「軽い制裁措置」のうち、「日韓スワップ交渉中断」と「外交官引き上げ」だけでも、韓国政府には非常に大きなダメージが与えられているのです。

    それだけではありません。度重なる韓国の非礼に対し、もはや日本人の圧倒的多数が、韓国国民の一人ひとりに対し、強い怒りを感じている状況にあります。それを考えるならば、韓国国民も長い目で見て、日本人からの反撃を覚悟しなければなりません。

    ここまで申し上げればわかると思いますが、「慰安婦問題」を世界に広めれば広めるほど、実は韓国と韓国国民の立場が弱くなるのです。

    なにより、日本人はいわば「サイレント・クレーマー」ですが、堪忍袋の緒が切れると、絶対に相手のことを許しません。また、なんだかんだ言って日本は民主主義国家ですから、日本政府も日本国民の意向を無視することはできません。

    私は、安倍外交が「まとも」であれば、今回の日本政府の措置は「単なる始まり」に過ぎず、これから対韓制裁の「二の手」「三の手」を繰り出してくるのは間違いないと見ています。

    陰で喜ぶ中国共産党

    日韓関係がここまで悪化して、一番喜ぶのは習近平(しゅう・きんぺい)中国国家主席でしょう。

    韓国は現在、朝鮮半島の在韓米軍への高高度ミサイル防衛システム(THAAD)配備を巡って、中国から強く批判されています。いわば、米中両国からの「挟み撃ち」状態です。

    これを中国の目から見ると、形勢を逆転し、一気にTHAAD配備中止に持ち込みたいところでした。釜山の慰安婦像騒動と日本の外交官引き上げは、こうした最中に発生した事件であり、中国がこれを活用しないはずがありません。

    おそらく、昨年7月以降、水面下ではTHAAD配備阻止を巡る中国と、THAAD配備を推進したい米国との壮絶な綱引きが行われており、今回の日本政府による措置は、間違いなく中国側に有利に働くことでしょう。

    米国の権力空白期を突く安倍外交の妙

    私はこれまで、安倍政権による一昨年の「日韓慰安婦合意」が、安倍外交の「失敗」だったと申し上げて来ましたし、その意見を変えるつもりもありません。

    しかし、韓国政府がソウルの慰安婦像の撤去を行わない状態で、さらに新たな慰安婦像の設置を許してしてしまったことは、いわば韓国政府の「オウンゴール」であり、韓国側が「慰安婦合意違反」を犯したことを、広く世界に向けて主張する絶好の機会を得たともいえます。

    もちろん、老獪な安倍総理のことですから、一昨年12月の日韓合意形成時点で、「どうせ韓国には合意を守ることなどできないだろう」と見越していた可能性は十分にあります。

    しかし、今回の日本政府の措置は、ちょうど「日韓合意の後見人」である米国で民主党から共和党への政権交代が行われる「権力空白期」を突いたものであり、まさに絶妙なタイミングでうまく決断したものだと思います。

    さらに、その措置の内容も、「日韓GSOMIA」などではなく、「日韓スワップ交渉の中断」という、実質的には害のない項目からうまく選択したものだと感心します。

    ただ、安倍外交の「真価」が問われるのは、これからです。本稿で述べたとおり、米国を始めとする欧米社会では、「慰安婦問題」が「真実」として流布されていて、私たち日本人が無実の罪を晴らそうとする行為自体が、欧米人から見たら「歴史修正主義の恥ずべき日本人」、ということにされてしまうのです。

    これは、岸田文雄外相を含めた歴代日本政府の責任でもあります。

    韓国を制裁すれば終わる、という話ではありません。

    「日本人の名誉回復に向けた本当の闘い」は、まだ始まったばかりなのです。

    ※本文は以上です。

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