つい先日、『先鋭化したメディア人らが暴走する!』の中で、毎日新聞社が虎ノ門ニュースに配達証明を送付した事件を取り上げましたが、本日はその続編として、「名誉棄損と言論の自由の関係」について考えてみたいと思います。

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    ここからが本文です。

    呆れた毎日新聞社のダブル・スタンダード

    先週、『先鋭化したメディア人らが暴走する!』という記事の中で、毎日新聞社がウェブ番組『真相深入り虎ノ門ニュース』に対し、配達証明を送りつけてきた、という話を紹介しました。

    この事件は、『虎ノ門ニュース』の11月15日(火)の放送内容が毎日新聞社に対する「根拠のない誹謗中傷」であるとして、謝罪や番組のインターネットからの削除などを求める文書を送付してきたとするもので、しかも呆れたことに、この文書を「当社に無断で引用・公表しないこと」まで要求したとか。

    そもそも「言論機関」を自称する新聞社が、「言論」という手段で批判されたことに対して、「言論」ではなく「法的手段」により脅迫するとは、誉められたものではありません。

    いわば、毎日新聞社を含めた日本のマス・メディアは、自分たちは「報道の自由」を振りかざしながら、自分たちに対する批判は絶対に許さないという、都合の良いダブル・スタンダードを国民に押し付けているのです。

    というわけで、私はこれを「毎日新聞言論弾圧事件(笑)」とでも呼ぶべきではないかと思うのです。

    ちなみに、百田尚樹氏は今週の「真相深入り虎ノ門ニュース」で、自宅ポストに毎日新聞を投函されたと明らかにされました。百田氏は「他人の家にゴミを投函するとは何事か!」(笑)とお怒りでしたが、確かに毎日新聞のような「ゴミ」を投函されると迷惑であることは間違いありません。

    ※番組の公表期間は2週間だそうです。したがって、2017年年1月4日以降はリンクの閲覧ができなくなると思いますが、ご了承ください

    また、共演した「八重山日報」編集長の仲新城誠さんによると、「琉球新報」「沖縄タイムス」は、あたかも百田氏が「権力と一緒になって報道の自由を潰そうとしている人間」であるかのように報道しているのだそうです。一民間人に過ぎない百田氏が「新聞社」という「大組織」を相手に「圧力を掛けている」のだとしたら、新聞社とはいかに脆弱な組織なのかと思わず笑ってしまいます。

    「毎日言論弾圧事件」を「深掘り」する!

    ところで、この「毎日新聞言論弾圧事件」について、その後、私もいろいろ調べ、また、じっくりと考えてみました。そもそも「言論機関に対する名誉棄損」は成立するのでしょうか?

    「名誉に対する罪」とは?

    日本国憲法第21条第1項には、いわゆる「言論の自由」の規定が置かれています。

    • 第二十一条  集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
    • 2  検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

    世の中のマス・メディアが「報道の自由は絶対だ!」と主張する法的根拠は、この憲法第21条第1項にあると見て良いと思います。

    その一方、刑法には、「名誉に対する罪」が定められています(第230条~第232条)。その内容は、次の通りです。

    第三十四章 名誉に対する罪
    • 第二百三十条  公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
    • 2  死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。
    • 第二百三十条の二  前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
    • 2  前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
    • 3  前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
    • 第二百三十一条  事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。
    • 第二百三十二条  この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
    • 2  告訴をすることができる者が天皇、皇后、太皇太后、皇太后又は皇嗣であるときは内閣総理大臣が、外国の君主又は大統領であるときはその国の代表者がそれぞれ代わって告訴を行う。

    つまり、刑法第230条第1項によれば、事実であろうがなかろうが、他人の名誉を傷つけると、3年以下の懲役・禁固か、50万円以下の罰金が適用されます。この規定は、私たちの常識に照らしても妥当です。

    つまり、刑法の規定は、おいそれと第三者の悪口を言い触らしたりすると罰せられるよ、という話であり、ある意味で常識的な規定です。ただ、「事実を報道しただけで名誉棄損罪になる」としたら、それはそれで、憲法第21条が意図する「表現の自由」の実現を図ることができません。

    例えば、公人(政治家や官僚、あるいはそれに準じた権力者ら)については、この「名誉棄損」が適用されない、というのは、私たちの社会における常識でもあります。

    そこで、刑法上も、「名誉棄損罪」の例外規定が設けられています。これが「公共の利害に関する場合の特例」(第230条の2各項)の規定です。

    同条第1項では、次の3つの要件を満たしている場合に、「名誉棄損罪」が成立しないことを規定しています。

    • 公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら交易を図ることにあったと認められること
    • 事実の真否を判断していること
    • 事実であることの証明がなされていること

    また、第2項では犯罪行為に関する事実である場合、(いわゆる「容疑者」の報道)、第3項では公務員や公選の公務員の候補者に関する事実に係るものである場合(いわゆる選挙報道など)については、「公共の利害に関する事実である」という部分についての証明は不要である、ということが規定されているのです。

    「言論の自由」と「名誉棄損」の関係

    いちおう、法的には「刑法第230条の2」のなかで、上に挙げた「三つの要件」を満たしていると「証明すれば」、名誉棄損罪は成立しない、という仕組みです。しかし、世の中の報道を見ていると、要件の3番目を欠いている、すなわち「事実であることの証明」がなされていない報道も多々あります。

    つまり、厳密にいうならば、毎日新聞社を含めたマス・メディアが政治家にまつわる「噂話」を報道し、それを政治家側が「名誉棄損だ!」と訴えれば、刑法の条文上は、名誉棄損罪が成り立つ可能性がある、ということです。

    しかし、日本のマス・メディアは、安倍晋三総理大臣をはじめとする政治家らに対し、「あることないこと」書き立てている割に、政治家がどこかの新聞社を「名誉棄損だ!」として検察に告発した、という話を聞いたことはありません。

    現・参議院議員の青山繁晴さんが選挙活動中に、週刊文春の記者らを東京地検特捜部に刑事告発したことは事実ですが、これはあくまでも、「虚偽の記事で公正な選挙を妨害した」という「公職選挙法違反」であり、刑法第230条の「名誉棄損罪」ではありません。

    つまり、刑法第230条の2の規定は、「報道の自由」(ただしくは「言論の自由」)と「名誉棄損」の折衷を図るために設けられている規定であると同時に、実際の運用上は、「言論の自由」に対して相当の配慮を行っている、と見ることができるでしょう。

    言論の自由は幅広く認められるべき

    ところで、日本国憲法については、その成り立ちがGHQによる押し付けであるとか、色々不合理なところがたくさんあるとか、そういった批判が多いことは私も承知しております。というよりも、私自身、憲法第9条第2項のような、「日本国民を守らないと宣言する条文」などのように、明らかに自然法に違反している条文もあると考えています。憲法第9条第2項は一種の「殺人条項」であり、速やかな撤廃が必要です。

    ただ、それと同時に、憲法の「理念」には、私の中で共感できる部分もあります。それが、先ほども引用した「憲法第21条第1項」です。

    第二十一条  集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

    私は、この条文について、「民主主義社会を機能させるのは、自由闊達な言論である」という、ごく当たり前のことを述べたものだと考えています。その意味で、「民主主義社会を機能させるための言論の自由」は、幅広く認められるべきでしょう。

    権力者の批判なら、相当の程度まで許される

    以上を考えるならば、「社会的な権力者」であれば、刑法の「名誉棄損」が成立する余地は極めて低くなると考えて良いでしょう。実際、下世話な週刊誌が皇室をゴシップネタで取り上げたりしていますし(信じられないことに、日本には「不敬罪」が存在しません!)、政治家も国会議員や閣僚、都道府県知事や市町村長、地方議会議員などの「選挙で選ばれる公務員」であれば、たいていの批判は許されます。

    刑法上も、相手が「犯罪者・容疑者」や「公務員」であれば、一般の民間人と比べて「名誉棄損罪」の構成要件が緩和されています。

    これに加えて、日本の場合だと、「大企業」の経営者や経団連などの準公的団体の構成員についても、ある程度の批判が許容されていると見るべきでしょう。つまり、「権力者」の批判なら、相当の程度まで許されているのが、現代の日本社会なのです。

    余談ですが、フランス・パリに本拠を置く「国境なき記者団(RSF)」が例年発表する「報道の自由度ランキング」で、日本は72位と、極めて低い水準にとどまりました(詳しくは『「報道の自由度72位」は日本社会健全化の証拠』をご参照ください)。

    しかし、日本よりも「上位」の国には、奴隷制度が現存する国や、インターネットの「匿名性」が保障されていない国などもあります。したがって、この「RSFランキング」は、明らかに公正性と客観性を欠いていると考えざるを得ません。以上、余談でした。

    マス・メディアそのものに対する批判

    ここまでの議論を踏まえたうえで、重要な論点は、「マス・メディアに対する批判は許されるのか?」という点です。

    マス・メディアは「民間企業」なのか?

    マス・メディアの多くは、見た目は「民間企業」です(中には国民から受信料をむしり取っているNHKのような組織もありますが…)。

    仮にマス・メディアが「普通の民間人と同じ」なのだとすれば、冒頭で引用した「毎日新聞社に対する名誉棄損」も成立することになります。ただ、そのような考え方は、本当に正しいのでしょうか?

    結論からいえば、現状のマス・メディア各社の「社会的影響力の大きさ」から判断する限り、マス・メディアを「単なる民間企業」ではなく、「一種の社会的な権力者」として位置付けるべきでしょう。

    もちろん、昨今のインターネットの急速な普及により、マス・メディア(とくに新聞社とテレビ局)が情報を独占するという構図は、既に崩れ去りました。ただ、それと同時に、高齢者を中心に、日常の主な情報の取得源が新聞やテレビに偏っている、という人の方が多数派ではないでしょうか?その意味で、新聞社やテレビ局は、確かに「民間企業」ではありますが、それと同時に「社会的権力者」でもあります。

    私は、日本国憲法第21条第1項に定める「表現の自由」の中には、「報道機関による報道の自由」だけでなく、「報道された内容に対する批判の自由」も含まれるべきだと考えています。

    何より、毎日新聞社ご自身が「言論機関」を標榜するのであれば、「虎ノ門ニュース」に「配達証明」付で脅迫まがいの文書を送りつけるのではなく、正々堂々と「言論で」勝負すれば良いだけの話でしょう。

    「報道の自由を委縮させる」との批判

    こうしたマス・メディア人らによる「ダブル・スタンダード」ぶりは、他にもたくさんあります。

    少し古いニュースですが、今年2月に高市早苗総務大臣は国会で、「放送局が放送法第4条に違反した場合には、法律上は停波を命じることができる」と答弁しました。これに対して、同29日に東京都内でジャーナリスト6人(青木理、大谷昭宏、金平茂紀、岸井成格、田原総一朗、鳥越俊太郎の各氏)が「私たちは怒っている」などとする垂れ幕とともに、記者会見を開きました。

    「私たちは怒ってる」高市氏発言に抗議 岸井氏降板語る(2016年2月29日19時58分付 朝日新聞デジタルより)

    私に言わせれば、「今まで散々、偏向報道ばかりして来たことについて、怒っているのは国民の方だ」と言いたい気持ちでいっぱいですが、そこはぐっとこらえて、彼らの主張を抜粋してみましょう。

    そもそも公共放送にあずかる放送局の電波は、国民のものであって、所管する省庁のものではない。

    思わず「あなたたちジャーナリストのものでもない」というツッコミが出そうになりましたが、国民の財産である電波を使って、政治的公平性に欠けるコンテンツを発信すること自体が咎められるべき行為です。

    高市大臣が、処分のよりどころとする放送法第4条の規定は、多くのメディア法学者のあいだでは、放送事業者が自らを律する「倫理規定」とするのが通説である。

    「倫理規定」だったら守らなくても良い、というものではありません。放送番組への政府の干渉はあってはなりませんが、それと同時に「批判の自由」は必要です。

    私たち(注:上記6人のジャーナリストに田勢康弘氏を加えた7人)は、テレビというメディアを通じて、日々のニュースや情報を市民に伝達し、その背景や意味について解説し、自由な議論を展開することによって、国民の「知る権利」に資することをめざしてきた。

    国民の知る権利に「資すること」を目指しているというわりに、テレビや新聞はこれまで、ずいぶんと偏向報道を続けて来たのではないでしょうか?彼らは「政治権力と戦うのがメディアの役割だ」などと勘違いしている節がありますが、国民が求めているのは「政治権力と戦うこと」ではありません。「事実を知ること」なのです。

    捏造記者・植村隆の不可解な言動

    朝日新聞を始めとする報道機関の不祥事を考えるときには、やはり、植村隆の事件を外すことはできません。

    植村隆は朝日新聞社の元記者で、自称作家の吉田清治の証言などを基に、慰安婦の強制連行があったかのような記事を捏造しました(なお、吉田清治の証言が捏造だったことは、2014年8月5日に朝日新聞社自身が認めています)。

    もちろん、これを「日本軍が朝鮮半島で少女20万人を強制連行した」という与太話にまで仕立て上げたのは、韓国国民と歴代韓国政府による合作の捏造ですが、大本となった記事を捏造した犯人は植村隆です。

    しかし、植村隆は『真実 私は「捏造記者」ではない』とする著書を2016年2月に刊行するなどしており、さらに、自分が「不当なバッシングを受けた」として、西岡力東京基督教大学教授と『週刊文春』の発行元・文藝春秋を相手に訴訟を起こす始末です。

    もし、植村隆が自分の執筆した記事が「捏造ではない」と主張するなら、裁判によらず、正々堂々と言論で勝負すれば良いのです。それを、わざわざ訴訟という「法的措置」による解決を図ろうとすることは、この植村隆という人間が、明らかに自分の言論に自信を持っていないという証拠と見るべきでしょう。

    その意味で、『虎ノ門ニュース』を配達証明の非公開文書で脅迫する毎日新聞社の卑劣さと「似たもの」を感じるのは私だけではないでしょう。

    大統領に対する名誉棄損罪が成立する国?

    言論の自由という意味では、2014年8月に朴槿恵(ぼく・きんけい)韓国大統領に関して執筆した記事を基に、産経新聞社の加藤達也編集委員(当時はソウル支局長)が韓国の検察当局によって在宅起訴された、という事件が発生しました。

    詳しい経緯は『産経新聞社に対する「言論弾圧」』にまとめていますが、この「大統領に対する名誉棄損事件」という「前代未聞の事件」に対し、主要先進国のメディアが一斉に韓国を批判したのに、日本のメディア(産経新聞以外)がこの事件を批判的に取り上げたという印象が、私にはそれほどありません。

    それはともかく、韓国の「事件」は、様々な意味で「異例」でした。というのも、

    • 起訴されたのが外国人ジャーナリストだったこと
    • 罪状が「大統領に対する名誉棄損」という、先進国では考えられないものだったこと
    • 加藤氏起訴の原因となった記事は、日本語で日本国内向けに書かれ、しかも、主に韓国国内の報道を引用しただけのものであったこと
    • 産経新聞社や加藤氏に「韓国に謝れ」といった圧力が加わっていたらしいこと

    など、まさに「韓国ならでは」の騒動だったからです。

    私は、この問題がこじれた最大の原因が、韓国政府側が「日本が相手であれば、無理難題を吹っかけても日本側から折れてくれるであろう」という甘い見通しを持っていたことにあると考えています。

    その意味で、韓国などからの不当な圧力に屈しなかった産経新聞社と加藤達也氏に、心からの賛辞を贈りたいと思います。

    言論に「法的措置」で対抗するメディア

    いずれにせよ、民主主義社会では、「名誉棄損罪」と「表現の自由」の折り合いをつける必要があるのですが、現代の日本においては、政治家などの「公人」や「権力者」であれば、「名誉棄損」が成立しないと考えて良いでしょう。つまり、当たり前の話ですが、権力者を相手とする政治批評は、自由に行っても良い、ということです。

    ただ、冒頭に紹介した八重山日報の仲新城編集長は、動画の中で、「偏向報道をすること自体も報道の自由の一環だ」と述べています。私も全く同じ意見です。そして、それと同時に新聞社やテレビ局などの「言論機関」が発信する政治批評そのものを批判することも、「言論の自由」の範囲内にあると見るべきでしょう。

    私は日本の「言論空間」を良くしていくためには、私の運営するこの「ビジネス評論サイト」自体を含め、様々な評論が出現するのが手っ取り早いと見ています。ただ、それと同時に、メディアの偏向報道に対する国民からの監視が強まれば強まるほど、メディア側の反撃が卑劣さを増してくることは間違いありません。

    ところが、毎日新聞は、自分たちの記事を批判する「自分たちと異なる意見」に対し、それを「名誉棄損」とみなして法的措置をちらつかせて脅してくる、ということです。見下げ果てたメディアというしかありません。

    いずれにせよ、この問題を巡っては、私も引き続き、興味深く追いかけていきたいと考えております。

    ※本文は以上です。

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    著者のコンタクト先:info@shinjukuacc.com

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