本日は、やや専門的な用語である「若年層失業率」について考えてみます。OECDが公表している「現実の数値」をもとに、若年層失業率が高い国や、若年層失業率の全世代失業率に対する倍率が高い国の特徴について、議論してみましょう。

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    若年層失業率とは?

    私自身は、本業では「金融規制」を専門とする公認会計士ですが、金融規制の裏側には、常に実体経済や社会が存在することを忘れてはならないと考えております。そして、私は金融分析をする大前提として、その国の「社会構造」を見ることが大事だと考えています。

    若年層失業率とは?

    ところで、ある国の社会が安定しているかどうかを手っ取り早く見る尺度として、私が注目している指標の一つが、「若年層失業率」です。

    Youth unemployment rate(OECDウェブサイトより【※英語】)

    OECDのウェブサイトによると、「若年層失業率Youth unemployment rate」の定義は次の通りです。

    The youth unemployment rate is the number of unemployed 15-24 year-olds expressed as a percentage of the youth labour force. Unemployed people are those who report that they are without work, that they are available for work and that they have taken active steps to find work in the last four weeks.

    (仮訳)若年層失業率とは15歳から24歳までの失業者の数を若年層労働力人口で割ってパーセント表示にしたものである。ここでいう「失業者」とは、働いておらず、働くことが可能で、過去4週間以内に職を探して活動したことがある者をさす。

    そして、2015年におけるOECD加盟国の若年層失業率の平均値は13.88%ですが、これを順番に並べると、日本が際立って低い半面、スペインやギリシャなどが際立って高いことがわかります(図表1)。

    図表1 2015年度の若年層失業率ランキング
    順位 国名 2015年
    1 日本 5.58%
    2 ドイツ 7.25%
    3 スイス 8.58%
    4 メキシコ 8.61%
    5 アイスランド 8.75%
    6 イスラエル 9.24%
    7 ノルウェー 9.88%
    8 韓国 10.52%
    9 オーストリア 10.58%
    10 デンマーク 10.85%
    11 オランダ 11.25%
    12 米国 11.60%
    13 チェコ 12.55%
    14 豪州 13.13%
    15 カナダ 13.18%
    16 エストニア 13.20%
    17 ニュージーランド 13.70%
    18 【OECD平均値】 13.88%
    19 英国 14.63%
    20 チリ 15.50%
    21 ラトヴィア 16.30%
    22 スロヴェニア 16.43%
    23 ハンガリー 17.30%
    24 ルクセンブルク 17.33%
    25 トルコ 18.53%
    26 スウェーデン 20.33%
    27 EU28カ国 20.35%
    28 ポーランド 20.75%
    29 アイルランド 20.88%
    30 フィンランド 22.03%
    31 ベルギー 22.10%
    32 フランス 24.68%
    33 スロヴァキア 26.45%
    34 ポルトガル 31.95%
    35 イタリア 40.33%
    36 スペイン 48.35%
    37 ギリシャ 49.80%
    38 南アフリカ 50.13%

    (【出所】OECD、以下同様。なお、南アフリカは「OECD加盟国」ではありませんが、OECDに対してデータを提供しているため、このランキングに掲載されています。)

    若年層失業率高止まりの問題点とは?

    統計上、「若年層失業率」は「社会全体の失業率」よりも高くなる傾向があります。実際に、OECDのデータから見ても、「若年層失業率」は「全世代失業率」の2倍から3倍程度です(図表2

    図表2 全世代失業率と若年層失業率の比較(2015年)
    ランク 若年層(①) 全世代(②) ①÷②
    1 日本 5.58% 3.38% 1.65
    2 韓国 10.52% 3.64% 2.89
    3 アイスランド 8.75% 3.97% 2.21
    4 ノルウェー 9.88% 4.30% 2.30
    5 メキシコ 8.61% 4.33% 1.99
    6 スイス 8.58% 4.55% 1.89
    7 ドイツ 7.25% 4.62% 1.57
    8 チェコ 12.55% 5.05% 2.49
    9 イスラエル 9.24% 5.24% 1.76
    10 米国 11.60% 5.29% 2.19
    11 英国 14.63% 5.30% 2.76
    12 ニュージーランド 13.70% 5.35% 2.56
    13 オーストリア 10.58% 5.72% 1.85
    14 豪州 13.13% 6.06% 2.17
    15 デンマーク 10.85% 6.17% 1.76
    16 エストニア 13.20% 6.19% 2.13
    17 チリ 15.50% 6.21% 2.50
    18 ルクセンブルク 17.33% 6.66% 2.60
    19 ハンガリー 17.30% 6.82% 2.54
    20 オランダ 11.25% 6.87% 1.64
    21 カナダ 13.18% 6.91% 1.91
    22 スウェーデン 20.33% 7.43% 2.73
    23 ポーランド 20.75% 7.50% 2.77
    24 ベルギー 22.10% 8.48% 2.61
    25 スロヴェニア 16.43% 8.96% 1.83
    26 フィンランド 22.03% 9.37% 2.35
    27 アイルランド 20.88% 9.40% 2.22
    28 ラトヴィア 16.30% 9.88% 1.65
    29 トルコ 18.53% 10.24% 1.81
    30 フランス 24.68% 10.36% 2.38
    31 スロヴァキア 26.45% 11.48% 2.30
    32 イタリア 40.33% 11.89% 3.39
    33 ポルトガル 31.95% 12.44% 2.57
    34 スペイン 48.35% 22.06% 2.19
    35 ギリシャ 49.80% 24.90% 2.00
    36 南アフリカ 50.13% 25.35% 1.98

    若年層失業率が高い理由としては、おそらく、次の3点ではないかと思います。

    • 若い人ほどチャンスを求めて転職・離職する確率が高い
    • 若年層であれば無職であっても親元で生活していくことができる可能性が高い
    • 若い人ほどスキルがなく、希望する職に就くことができない。

    この3つの理由は、あくまでも私の「仮説」に過ぎませんが、おそらくそれなりに説得力はあると思います。特に、日本の場合だと、「最初に就職した会社が自分に合わないと感じて、失業給付を受けながら資格の学校に通う」というケースが考えられます。実際、私が20年前に、当時の「公認会計士第二次試験」を受験していた時にも、受講生仲間にそのような人がいました(※厳密には違法だと思いますが…)。

    ただ、日本は若年層失業率、全世代失業率ともに世界と比べても際立って低く、特に若年層であれば、「選り好みさえしなければ」就職はできる、という状態です(※ただし、これはあくまでも「データ上は」、ですが)。

    欧州で際立って高い「若年層失業率」

    一方、「失業率が高い国」といえば、図表1、図表2で示されている通り、南アフリカと南欧諸国です。このうち、OECD非加盟国である南アフリカを除けば、いわゆる「周辺国」(Peripheral)の失業率は、一時期と比べてやや低下しているものの、依然として「危機的な水準」です。

    あらためて、「図表2」のうち、2008年以降の世界的な金融危機の「震源地」となった「PIIGS」諸国(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)にドイツ、フランスを加えたものを抽出してみましょう(図表3)。

    図表3 欧州諸国の失業率ランキング(2015年)
    ランク 若年層(①) 全世代(②) ①÷②
    3 アイスランド 8.75% 3.97% 2.21
    7 ドイツ 7.25% 4.62% 1.57
    27 アイルランド 20.88% 9.40% 2.22
    30 フランス 24.68% 10.36% 2.38
    32 イタリア 40.33% 11.89% 3.39
    33 ポルトガル 31.95% 12.44% 2.57
    34 スペイン 48.35% 22.06% 2.19
    35 ギリシャ 49.80% 24.90% 2.00

    この中で、2008年の金融危機により、国の金融がマヒしたアイスランドは、ちゃっかり全世代失業率が3%台と、OECD3番目に低いランクに落ちついています。しかし、アイルランドも全世代失業率は10%を割り込んだものの、若年層失業率は20%台と高止まりしており、さらにイタリア、ポルトガル、スペイン、ギリシャはいずれも高失業率に悩んでいます。

    ちなみに欧州連合(EU)の二大経済大国であるドイツとフランスを比べると、ドイツはOECD加盟国の中でも比較的、完全雇用に近い社会が実現していますが、フランスは南欧諸国とさして変わらないほど、失業率が高止まりしています。

    失業により経済的に困窮している人が増えれば、社会は不安定になります。報道によればフランスでも「極右政党」(?)が台頭して来ているとのことであり、場合によっては来年のフランス大統領選で、「国民戦線(FN)」のマリーヌ・ルペン氏が大統領選でかなり健闘するかもしれません。

    若年失業の何が問題なのか?

    では、若年失業の何が最大の問題なのでしょうか?それはずばり、「失業が固定化すること」にあります。

    私が列挙した、「なぜ若年層失業率が高くなるのか」という理由のうちの3番目、すなわち

    「若い人ほどスキルがなく、希望する職に就くことができない」

    という問題は、深刻です。なぜなら、「スキルがないから職に就けない」、「職に就けないからスキルも身に付かない」、という、「負の拡大再生産」が発生しかねないからです。そして、南欧諸国やフランスの失業率が高止まりしているのも、「若いころからきちんとした仕事に就いていない人が多く、働きたくても働くスキルが身についていないからである」、という仮説が成り立ちます。

    ここで、もう一つ、違う見方をしてみましょう。若い人がどれだけ「迫害」されているかを示す意味で、若年層失業率を全世代失業率で割ってみると、興味深いデータが浮かびます(図表4)。

    図表4 若年層・全世代失業率倍率(2015年)
    ランク 若年層(①) 全世代(②) ①÷②
    1 イタリア 40.33% 11.89% 3.39
    2 韓国 10.52% 3.64% 2.89
    3 ポーランド 20.75% 7.50% 2.77
    4 英国 14.63% 5.30% 2.76
    5 スウェーデン 20.33% 7.43% 2.73
    6 ベルギー 22.10% 8.48% 2.61
    7 ルクセンブルク 17.33% 6.66% 2.60
    8 ポルトガル 31.95% 12.44% 2.57
    9 ニュージーランド 13.70% 5.35% 2.56
    10 ハンガリー 17.30% 6.82% 2.54
    11 チリ 15.50% 6.21% 2.50
    12 チェコ 12.55% 5.05% 2.49
    13 フランス 24.68% 10.36% 2.38
    14 フィンランド 22.03% 9.37% 2.35
    15 スロヴァキア 26.45% 11.48% 2.30
    16 ノルウェー 9.88% 4.30% 2.30
    17 アイルランド 20.88% 9.40% 2.22
    18 アイスランド 8.75% 3.97% 2.21
    19 米国 11.60% 5.29% 2.19
    20 スペイン 48.35% 22.06% 2.19
    21 豪州 13.13% 6.06% 2.17
    22 エストニア 13.20% 6.19% 2.13
    23 ギリシャ 49.80% 24.90% 2.00
    24 メキシコ 8.61% 4.33% 1.99
    25 南アフリカ 50.13% 25.35% 1.98
    26 カナダ 13.18% 6.91% 1.91
    27 スイス 8.58% 4.55% 1.89
    28 オーストリア 10.58% 5.72% 1.85
    29 スロヴェニア 16.43% 8.96% 1.83
    30 トルコ 18.53% 10.24% 1.81
    31 イスラエル 9.24% 5.24% 1.76
    32 デンマーク 10.85% 6.17% 1.76
    33 日本 5.58% 3.38% 1.65
    34 ラトヴィア 16.30% 9.88% 1.65
    35 オランダ 11.25% 6.87% 1.64
    36 ドイツ 7.25% 4.62% 1.57

    このランクは、「若者の失業率が全世代の失業率の何倍か」を示すもので、いわば、若者がその社会でどれほど不平等な扱いを受けているかを数値化した指標です。先ほど列挙した「PIIGS」諸国の一つでもあるイタリアが、3.39倍で堂々の一位となりました。

    そして、2位の韓国は、全世代の失業率が3%台後半であるのに対し、若年層に限ると失業率が10.52%と、3倍近くに達しています。他にも、今年6月に「BREXIT」で注目された英国(2.76倍)、中東などから移民が殺到しているスウェーデン(2.73倍)などがランクインしています。ちなみに一番低い国はドイツ(1.57倍)で、日本も下から数えた方が早い方です。

    若年層が働けない国の不幸

    極論が台頭する?

    ところで、欧州で第二次世界大戦を引き起こした遠因は、実は第一次世界大戦にあります。ナチス・ドイツが台頭した最大の理由は、当時のドイツ国民の経済的困窮にありました。ヴェルサイユ条約に基づく賠償金負担が重すぎたため、経済的に行き詰ったドイツ国民が、国家社会主義を掲げるナチス(正しくは「国家社会主義ドイツ労働者党」Nationalsozialistische Deutsche Arbeiterpartei)に多数を与えたのです。

    1920~30年代のドイツのように、経済的に困窮すれば、社会的にも極論を唱える政党が台頭しやすくなります。もちろん、失業率だけですべてが決まるわけではありませんが、現在のドイツは失業率水準自体も低く、若年層失業率と全世帯失業率にも顕著な開きはありません。

    しかし、フランスの場合、全世代失業率が10%を超えており、さらに若年層失業率はその2.38倍に拡大しています。若年層失業率が全世代失業率の3倍近くに達していた英国が、移民問題から欧州連合(EU)離脱を決めたように、現在のフランスでも、「移民排斥」などの極論を唱える政党が大躍進しても不思議ではありません。

    さらに、朴槿恵(ぼく・きんけい)大統領に対する異常な退任要求デモが発生している韓国でも、若年層失業率の全世代失業率に対する倍率は3倍近く(2.89倍)に達しています。韓国はOECD加盟国の中で、日本と並んで失業率が低い国とされていますが(ただし、やや統計としては不自然さもありますが)、若年層の失業率が際立って高い国であるという言い方もできます。

    韓国は「国が行き詰ったら反日に逃げる」という国ですので、朴大統領の「次の大統領」に、極端な親北系・反日を掲げる人物が選ばれる可能性には十分な注意が必要でしょう。

    SEALDsはなぜ失敗したのか?

    その一方、日本では「SEALDs」(シールズ)を名乗る組織が「安倍政権打倒」を目指して活動し、マス・メディアからも大きく取り上げられました。しかし、そもそも日本では若年層失業率が世界で最も低く、また、若年層失業率は全世代失業率と比べてもせいぜい1.65倍に過ぎません。

    つまり、日本には「働けなくなって経済的に困窮している若者」の絶対数が少ないのです。また、少し古い調査ですが、今年9月に行われたFNNの調査によると、10代・20代の男性の7割以上(72.2%)、女性の6割台半ば(65.7%)が安倍内閣を支持すると答えています(※ただし、リンクは既に切れています)。

    つまり、せっかくマス・メディアが「SEALDs」を「不満を持つ若者の代表」としてプロデュースしようとしたものの、有権者には全く刺さっていないという証拠でしょう(なお、実質的に「SEALDs」は日本共産党の別働隊ではないかとの指摘もあるようですが、本日はこの論点を割愛します)。

    若年層失業率抑制こそが社会安定のカギ

    若者には体力もありますし、無限の可能性もあります。しかし、社会に不満を持ったら、その不満のはけ口を「反社会的な運動」に向ける可能性があるのも事実です。なまじっか行動力があるがために、中にはギリシャのアレクシス・ツィプラス首相(42歳、旧新生党・SYRIZAの党首)のような人物が出てくる可能性もあります。

    また、本日は「移民問題」については触れませんでしたが、若年層失業率問題は、移民問題とセットで議論されることもあります(いわば、「移民が若者の仕事を奪っている」、という論調ですね)。私は、こうした移民排斥運動が発生している国について分析するためには、若年層失業率の関係にも注目する必要があると考えています。

    ※本文は以上です。

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