韓国の朴槿恵政権の迷走と日本

韓国の朴槿恵(ぼく・きんけい)大統領が先月29日に「辞意」を表明しました。ただ、辞任の時期、方法などについては国会に丸投げした格好となっており、実務的な法案作成能力に欠ける韓国の国会ですんなりと議論がまとまるとは思えません。こうした中、本日は朴政権の「産経新聞社に対する言論弾圧事件」など、いくつかの日韓外交問題を振り返り、あわせて日本がこのタイミングで韓国との通貨スワップ協定を再開させるべきかどうかについて考察してみたいと思います。

朴大統領の突然の辞意

「辞意表明」で混乱は収束しない!

長年の友人に国政機密情報を漏洩していたとして、厳しい批判に晒されてきた韓国の朴槿恵(ぼく・きんけい)大統領が、11月29日の会見で辞意を表明しました。ただ、報道された彼女の発言内容をよく読むと、「直ちに辞任する」のではなく、あくまでも「辞任する意向」を示しただけのようです。これに関連するニュースとして、産経ニュース、Bloombergの記事を紹介しましょう。

【激震・朴政権】/朴槿恵大統領、任期満了前の辞任を表明(2016.11.29 14:43付 産経ニュースより)
朴大統領の退陣時期、4月末が最も適切-韓国与党の非主流派が表明(2016年11月30日 15:56 JST付 Bloombergより)

このうち、産経ニュースの報道によれば、朴大統領は

「大統領職の任期短縮を含む進退問題を国会の決定に委ねる。与野党が国政の混乱と空白を最小化し、安定して政権を移譲できる案を作ってくれれば、その日程と法手続きに従い、大統領の職を退く。」

と述べたそうです。つまり、「自分から直ちに辞任する」(あるいは自分の進退を自分で決める)のではなく、政権移譲の手続や混乱を収拾する責任自体を、国会に押し付けた格好です。非常に無責任だという言い方もできます。

しかし、その国会では、朴大統領の弾劾手続が進行しており、即時辞任を求める野党側が12月2日にも弾劾決議案の採決を目指す姿勢を崩していません。また、弾劾決議案が仮に否決されたとしても、朴大統領の進路や憲法の改正などを韓国国会が主体的に決定できるようにも思えません。

Bloomberg側の記事では、韓国与党の「非主流派議員」が「4月末の退任が適切」としながらも、

  • 大統領の退陣時期を4月末とすることを受け入れるとし、9日以内に退陣に向けた提案を行うよう大統領に求めた
  • 「朴大統領が誠意を示すため、自らの辞任の詳細な日程を明示することが重要だ」との姿勢を示した

としており、早速、国会議員側からは「退任するなら自分で案を立てろよ」と投げ返されてしまった格好です。

これらの事情を考えるならば、「朴大統領が任期満了前に辞任する方針を表明」したからといって、韓国の政治・社会の混乱は収束せず、むしろゴタゴタが当面続く(下手をしたら2018年2月まで続く)と見るのが正しいでしょう。

社会の安定のために「権威」と「権力」を分ける工夫

ところで、日本を除くアジア諸国では、「形だけは」民主主義国家でありながら、実質的には民主主義が中途半端にしか機能していないような国もあります。たとえばシンガポールは事実上、与党がほぼ独裁する体制となっていますし、フィリピンやインドネシアでも民主主義が「根付いた」とは言い難く、タイではしばしば軍事クーデターが発生しています。

ただ、これらの国のうち、軍事クーデターが頻発するタイの場合は、政権が不安定な割に、社会は非常に安定しています。その理由は、政治が混乱した時に国王が「調停者」として登場していたからです。先日崩御したプミポン国王こそが、タイの政治・社会の混乱を収拾して来ました。つまり、王室の存在がタイ社会の安定をもたらしていたのであり、プミポン国王はタイ国民からも深く尊敬されていました。

君主制度など「時代遅れだ」などと思う人もいるかもしれませんが、現実には、「立憲君主」が君臨している国では、国王などの君主が「社会の安定装置」として機能することも事実です。

しかし、「君主が存在しない民主主義国家」の場合は、大統領・首相となる人物が、不祥事によって国民からの信頼を失ってしまった時に、「調停してくれる権威」が存在しません。

そこで、主要な民主主義国では、「絶対権力者」に権力が集中しないよう、様々な仕組みで民主主義が機能する工夫をしています。ドイツやイタリアのように「政治権限を持たない大統領」を置き、政治的「権威」は大統領が、政権の「実務」は首相が取り仕切る場合や、フランスのように大統領と首相が権限を分担する場合があります。これも民主主義国としての一種の「知恵」といえるかもしれません。そして、大統領が強大な政治権限を持つという「アメリカ型の民主主義国家」は、むしろ例外ではないかと思います。

民主主義国家では指導者は民度を超えられない

「民主主義国家の指導者はその国の民度を超えることができない」という法則があります。欧米社会のように民主主義を機能させるためには、その国の国民一人ひとりが高い政治参加への意識を持っていなければなりません。

日本の場合は野党が政権の「足を引っ張ることだけ」を目的に、国会での議事妨害を行ったり、不毛な質問を繰り返したりしています。このように、不毛な質問を繰り返す不勉強な人間が国会議員に「選ばれてしまう」ことも、実は「民主主義のコスト」です。ただ、日本のケースでいえば、最近ではインターネットが普及したことで、新聞・テレビ等のマス・メディアの報道を鵜呑みにしない国民が増えてきました。今後、「足を引っ張るだけの不毛な野党」は、「絶滅」することはないにせよ、徐々に勢力を弱めていくことが期待できます。

しかし、韓国のように国民が反日教育などで歪んでしまっている場合には、間違った考え方の人間が指導者として選ばれ続け、その国では反日教育が「拡大再生産」されてしまいます。さらに、韓国のように経済で行き詰ってくると、国民世論が「極論」に振れやすくなります。そうなると、もともと「極端な反日教育」で歪んだ社会が、正常な判断力を失い、やがては「転覆」してしまうかもしれません。

それを証拠に、現在、朴大統領が「叩かれている」理由は、長年の友人である崔順実(さい・じゅんじつ)氏に国家機密を漏らしていたからだ、ということですが、それがここまでの「騒ぎ」に発展してしまったことが、私にはどうにも理解できません。たしかに国家機密漏洩は深刻であり、崔順実氏が北朝鮮のスパイだったというのであればそれこそ「論外」です。しかし、諸外国の首脳も、長年の友人にこっそりと職務上の悩みを打ち明ける事例もあるでしょう(もちろん、「程度の問題」はあるかもしれませんが…)。

本来、韓国にとって一番重要な国は日本だが…

ついでに申し上げるなら、韓国にとって、本来の「一番重要な国」は日本です。

古今東西、国が国として存続するためには、「軍事的安全」と「経済的繁栄」が重要です。これは当たり前の話ですね。ところが、韓国の朴槿恵政権は2013年2月に発足して以来、一貫して「米中二股・反日外交」を繰り広げてきました。これは韓国の「軍事的安全」と「経済的繁栄」という国家目標にとって、正しかったのでしょうか?

結論から言えば大きな失敗でした。軍事面での米国依存を改めずに経済面での中国依存を強め過ぎ、AIIB出資問題で米国の、THAAD配備問題で中国の、それぞれ逆鱗に触れたからです。さらに行き過ぎた反日の代償として、韓国を訪問する日本人観光客は激減。日本からの直接投資(FDI)も低迷し、深刻な外貨不足が常態化しています。

いわば、今日の韓国が抱える国家的苦境の一端は、「米中二股・反日外交」による「自業自得」のようなものであり、私も日本国民の一人として、全く同情の余地は感じられません。

余談ですが、日本も「どうしようもない反日国家」に対しては、その更生を期待し続けるのも不毛な努力だと「悟る」必要があるのかもしれません。なぜなら、朴大統領の「次期以降の大統領」も反日を前面に打ち出してくる可能性は十分にあるからです。

産経新聞社に対する「言論弾圧」

ところで、韓国の朴槿恵政権と日本について議論する時には、一つの好例として、避けて通れない事件が一つあります。それが産経新聞社に対する「言論弾圧事件」です。

事件のあらまし

産経新聞のソウル支局長だった加藤達也氏(現・産経新聞社編集委員)は2014年8月3日、ウェブサイト「産経ニュース」に一本の記事を配信しました。

【追跡~ソウル発】/朴槿恵大統領が旅客船沈没当日、行方不明に…誰と会っていた?(2014.8.3 12:00付 産経ニュースより)

リンク先の記事は、フェリー船「セウォル号」沈没事件の当日(2014年4月16日)、朴槿恵大統領が「7時間にわたって所在不明となっていた」とする事実と、大統領側近に対する韓国国会での質疑、「朝鮮日報」に掲載された記者コラムの内容の紹介などで構成されています。

しかし、韓国の検察当局は、この記事自体が「大統領に対する名誉棄損」に当たるとして、まず産経新聞社に対して記事の削除を要求。これが受け入れられなかったため、加藤支局長(=当時)の韓国からの出国を禁止し、在宅起訴したものです。

この韓国検察当局の対応について、菅義偉(すが・よしひで)内閣官房長官は2014年10月9日午前の記者会見

「報道の自由、日韓関係の観点から極めて遺憾である/民主国家では報道の自由が最大限尊重されるべき/国際社会の常識から大きくかけ離れており、韓国政府に対し事実関係の詳しい確認を行い、懸念を伝達したい」

などと述べました。会見で菅長官は、こうした韓国政府の対応について、「国際社会の常識から大きくかけ離れている」と繰り返し強調しました。

また、「外国人ジャーナリストが政治家を批判する記事を配信したことで刑事告訴された」という事件の異例さから、欧米メディアの関心も高く、たとえば米国のワシントンポストも次の記事でこの問題を大きく報じました。

In South Korea, journalists fear a government clampdown on the press(2014/12/11付 ワシントンポストより)

参考までに、リンク先の記事について、冒頭部分と末尾のみ、日本語で要約しておきます。

「◆民主化以来の27年間、南朝鮮ではやかまし過ぎるくらい、主義主張が自由になされてきた、◆しかしここにきて、保守的な日本人ジャーナリストが南朝鮮当局により拘束されていることに代表される、朴槿恵政権によるメディア取り締まりが懸念され始めた、◆韓国の首都のニュー・パラダイム・インスティテュートの朝鮮問題専門家ピーター・ベック氏は『朴槿恵は彼女の父親と同じプレイブックをなぞり始めた』と指摘する、◆ハンキョレエ新聞は社説に『なんと恥知らずな大統領だ』と書いた」

(※)なお、「南朝鮮」とは、米国で一般的な表記である「South Korea」の直訳です。

自ら振り上げた拳に収拾がつかない韓国

この事件には欧米などの外国メディアも強く関心を払いましたが、その理由は、次の二つの点で極めて非常識だからです。

一つ目は、「大統領に対する名誉棄損」という罪状です。民主主義国家では、権力者を批判しても罪に問われてはなりません。言論の自由は最大限、尊重されなければならないからです。仮に私が安倍総理を誹謗中傷するビラを街中で撒いたとしても、「安倍総理に対する名誉棄損」は成立しません。なぜなら、安倍総理は「私人」ではなく、れっきとした「公人」(しかも権力者)だからです。

そして、成熟した民主主義国家では、たとえば「アベ政治を許さない」などのレベルの低いビラを撒いたところで、そのような低レベルのビラを撒いている人たちの頭のレベルが疑われるだけの話です。有権者には、これらの誹謗中傷も含めて総合的に判断する自由があるのです。

二つ目は、起訴されたのが「外国人ジャーナリストだった」、という点です。「大統領が所在不明になった」というオリジナルの記事を配信した朝鮮日報の記者に対しては「おとがめなし」で、外国人ジャーナリストである加藤達也氏が「日本国内に対して日本語で書いた記事」を問題にしたというのは、まさに「国際常識からかけ離れた行為」です。

では、なぜ韓国の検察当局は、このような「国際常識からかけ離れた行為」を行ったのでしょうか?

それは、「相手が日本だったから」、です。

戦後の日韓関係は、韓国が日本に対して「無理難題」を吹っかければ、日本の方から折れる、ということを繰り返してきました。その意味で、歴代の日本の政権や外務省の罪は極めて重いと言えます。

今回の事件についても、「外国人ジャーナリストが外国のメディアに外国語で執筆した記事の削除」を要求するという「無理難題」を吹っかけたものです。ただ、韓国にとっての誤算は、日本の安倍政権がこの問題に対して強硬だったことと、産経新聞社、加藤達也支局長ともに韓国政府の「記事削除要求」「謝罪要求」を突っぱねたことです。

いわば、韓国政府が「記事を削除しないと刑事告訴するぞ」と脅し、日本政府・産経新聞社側も「やれるものならやってみろ」、という態度に出たため、「自ら振り上げた拳に収拾がつかない」格好となり、刑事告訴に至ってしまったものだと考えると分かりやすいかもしれません。

「韓国のメンツを立ててくれ!」

つまり、韓国としては、「いつも通りに」日本側が韓国の無理筋な要求を呑んでくれることを期待していたのに、「いつもと違って」この事件では韓国の要求を突っぱねたのです。

結局、「大統領に対する名誉棄損」という、民主主義国家では例のない罪状で有罪にすることはできなかったらしく、韓国の裁判所は加藤氏に無罪判決を言い渡し、いったん事件は収束しました。

ただ、この事件から見えることは、韓国が

  • 日本が相手ならばどんな無理な要求をしても良い
  • 日本が韓国のメンツを立てることは当然である

と考えている、ということです。実際、2015年7月には、日本が明治期の産業革命関連施設をユネスコの世界遺産登録する際に、「ユネスコ大使」の佐藤地(さとう・くに)という外務省の職員が、韓国への配慮により、あたかも朝鮮人の強制連行があったかのような発言を行ったという事件も発生しています。

韓国に妙な配慮をし続けてきた、佐藤地に代表される外務省の職員は懲戒免職処分し、外務省自体も解体処分にするのが妥当ではないかと思います。

朴大統領はどう落とし前をつけるのか?

慰安婦合意の落とし前

安倍政権下では、日韓間の外交問題を巡っては、しばしば外務省と首相官邸の「綱引き」が行われているようです。

例えば、産経新聞の加藤支局長の事件では、韓国の無理筋の「記事削除要求」を産経新聞社側が突っぱねましたし、日本政府も産経新聞社の姿勢を尊重し、「韓国に配慮して問題の記事を削除してくれないか」、などとは要求しませんでした。

しかし、2015年7月のユネスコ登録問題では、ユネスコ大使の佐藤地が韓国に大幅な譲歩を行うという愚を犯しましたし、2015年12月末の「慰安婦合意」では、岸田外務大臣が、「慰安婦の強制連行が当時の軍の関与の下に行われた」かのような誤解を与える発言を行っています。

私の理解では、産経新聞の件では日本政府・産経新聞社の全面勝利、ユネスコ登録問題は完全に外務省の失態による敗北ですが、「慰安婦合意」についてはそう単純ではありません。なぜなら、これには米国からの圧力に加え、安倍政権なりの思慮もあったと考えられるからです。つまり、「慰安婦合意」により韓国の反日外交を完全に封じ込め、日米韓協力を積極的に推進するという狙いです。

ただ、昨年の「慰安婦合意」も、韓国の政権が代われば必ず蒸し返されるであろうという点までは織り込んでいたと考えられますが、朴政権がここまで早く無能化するとは、安倍政権としてもやや計算が外れたのではないでしょうか?

いずれにせよ、10億円とはいえ、日本国民の貴重な税金を自称元慰安婦らにくれてやったのですから、安倍政権は、少なくとも昨年の「慰安婦合意」について、誠実に国民に対して説明する責任があります。

日韓スワップはどうなるのか?

韓国は現在、政権が実質的に機能しておらず、かつ、空中分解の危機にあります。しかし、それと同時に韓国が深刻な外貨不足に悩んでおり、トランプ政権始動後の米国の公共投資を織り込んで、世界的に資金が新興国から引き揚げられるという懸念も強まっています。

そうなると、韓国から見ると、喉から手が出るほど、日韓通貨スワップ協定が必要です。韓国が「日本との」スワップを欲しがっている理由は『韓国から見た日韓スワップの必要性』、『専門家が見る、韓国が「日本との」通貨スワップを欲しがるわけ』で議論したとおり、おそらく次の二点です。

  • 日本が巨額の「米ドルのポジション」を保有しているため(※日本は1兆ドルを超える外貨準備を保有しており、日銀は米FRBとの無制限の通貨スワップを保持している)
  • 日本が相手であれば「踏み倒し」をしても許される(と韓国が思い込んでいる)ため

ちなみに、『専門知識解説:「日韓通貨スワップ協定」』でも触れたとおり、日韓通貨スワップは韓国にとって甚大な経済的メリットをもたらしますが、日本にとっての経済的メリットは皆無です。しかし、韓国が日本との通貨スワップ協定を欲しがっているのは事実です。

今の朴政権とスワップを結ぶのか?

実は、日韓通貨スワップ協定は、日本にとって全くメリットがないという訳ではありません。特に、日韓スワップ協定をうまく使えば韓国政府を実質的にコントロールすることができるため、確かに「政治的なメリット」は存在します。もちろん、「うまく使えば」、ですが。

では、日本は今の韓国とスワップを再開すべきなのでしょうか?

一番の懸念材料は、今後、韓国の国会が紛糾し、政治空白が長期化することで、韓国からの資金流出が本格化することです。そのようなタイミングで通貨スワップ協定を締結してしまえば、実際に韓国は日本からお金を引き出してしまうでしょう。それは避けたいところです。

ただ、通貨スワップ協定が存在していれば、事実上レームダック化した朴政権だけでなく、朴政権の「次」の政権を縛る効果が得られます(※くどいようですが、あくまでも「うまく使えれば」、という前提ですが…)。

従って、韓国との通貨スワップを再開するのであれば、少なくとも次の三点が必要でしょう。

  1. 「韓国からの要請に基づいて」再開するということを明確化すること
  2. 日本から韓国への一方的支援であることを明確にするため、日本から韓国に対する一方的な米ドル・韓国ウォンのスワップとし、一定額以上を引き出すときにはIMFリンク条項を盛り込むこと
  3. 韓国の反日外交を牽制するために、スワップの協定期間を短期化すること

私は、政府・財務省が日韓スワップの再開に際し、仮に「日韓スワップは日本側にもメリットがあるから締結する」といったウソのロジックを説明した場合には、強く抗議するつもりです。しかし、「日韓スワップは韓国側の要請に基づき、韓国を実質的に救済・支援する目的で締結する」と、実態に即した説明をするのであれば、あとはその中身を見たうえで、有権者の一人として判断したいと考えています。

予言:混乱は収束しない

ところで、民主主義国家においては、政権交代は投票の力によって実現すべきであり、三権分立もそのための仕組みです。しかし、日本のサヨク的人士の中には、韓国の毎週のデモ活動が「民主主義が成熟している証拠だ」などとトンチンカンな分析をしている人もいるようですが、これはとんでもない勘違いです。「気に入らないことがあったらデモをすれば良い」などという前例を作ってしまえば、韓国では政権はいくらでも覆ることになってしまいます。

というわけで、私の主観に基づき、朴大統領が辞意表明をしたことで韓国の政治・経済・社会の混乱が収まるかどうかについて、「予言」しておきます。

【予言】今回の朴大統領の「辞意表明」では、韓国の政治・経済・社会の混乱は収束しない。

【論拠】朴大統領がすんなり辞任するとは考えられず、辞任するまでには相当の紆余曲折が見込まれるため。

朴槿恵政権は日本側の予想をはるかに上回る速度でレームダック化してしまいましたが、韓国社会が混乱を収拾させる力を持っているようにも見えないのです。いずれにせよ、日韓スワップの安易な再開がなされないように、私も有権者の一人かつ「ビジネスマン評論家」として、この問題を監視し続けたいと考えております。

2016/12/01 15:45 追記:『揺れる韓国―北主導の統一国家も視野に?』

【同日夕刻に掲載した記事を統合】

本日2本目の記事を掲載します。朴槿恵(ぼく・きんけい)韓国大統領の「任期中の辞任観測」を巡る、韓国メディアの記事について、です。

中央日報、日本のメディアの報道を引用

ここで取り上げるのは、本日付で公表されている、次のニュースです。

日本メディア、慰安婦合意など韓日関係への悪影響を懸念(2016年12月01日09時49分付 中央日報日本語版より)

リンク先の記事は、日本経済新聞と読売新聞の報道に加え、日本の政界の反応を伝えるものです。私の文責で気になった点を抜粋・要約しておきます。

  • 日経報道:「日本側で慰安婦問題の合意履行などに対する懸念」「次期政権が中国寄りになれば日本から提供した軍事情報が中国に流出する懸念」
  • 読売報道:「外務省幹部が次期政権で(日韓慰安婦)合意が撤回される可能性があると述べた」

私は日経や読売の報道を直接、読んだわけではないのですが、この要約の通りに報じたのだとしたら、非常に「認識が甘い」と言わざるを得ません。

韓国では政権が交代するたびに国際的な約束事を反故にしてきたという歴史に、日本もそろそろ学ぶべきではないでしょうか?

病んでいる韓国社会への対処法

慰安婦合意を「韓国側が」破ると米韓同盟に亀裂?

ところで、数多く存在する日韓間の懸案のうち、「慰安婦問題」については、昨年12月の「日韓合意」に対して、韓国国民が一切納得している様子もありません。過去に何度も力説しているとおり、どうせ政権が代われば韓国側から「難癖」を付けてくるのは目に見えています。

もちろん、日本側から「慰安婦合意」を覆すべきではありません。しかし、考え様によっては、「国際合意を破る」という行動を、韓国側から仕掛けてくれば、「災い転じて福となす」、という話になるかもしれません。

なぜなら、昨年の「慰安婦合意」は米国・オバマ政権の後ろ盾があって実現したものだからです。オバマ大統領は退任しますが、米韓間の軍事同盟は継続しています。たとえ米国での政権交代が行われたとしても、米国が「仲立ち」した日韓合意を韓国側から覆すことがあれば、それこそ米国が激怒するでしょう。

つまり、慰安婦合意は「米国も担保した合意」です。韓国側から「慰安婦合意の破棄」を言い出せば、韓国は日本にとってだけでなく、米国の目から見ても信頼できない国だとなり、米韓同盟に亀裂が入りかねません。ただ、その場合には米国から見た日本の相対的な地位・価値が上昇するため、日本にとっては必ずしも悪いことだとは言い切れませんが…。

親北政権の誕生?

韓国を見ていてもう一つ気付くのは、現在の韓国社会で行われているデモが異例過ぎる、という点です。多数の市民(警察発表で数十万人、主催者発表で百万人以上)が参加するデモ隊が週末ごとに首都の広場を埋め尽くし、朴大統領の退任を要求しているのは、私には色々と理解できません。

国政の機密情報を私人に漏らしていたことは確かに大きな問題ですが、朴大統領に対する退任要求デモがここまで大きくなったことには、他にも理由があるのではないでしょうか?具体的には、朴大統領の「経済無策」や「米中二股外交」、「反日外交」が韓国に苦境をもたらし、韓国の市民の生活が困窮している可能性がある、という点です。

韓国社会が混乱(あるいは転覆)すれば、結果的に北朝鮮を利することになります。つまり、現在の韓国のデモは、北朝鮮系の工作員が主導している可能性も否定できません(韓国国内のデモには日本の中核派系の労組からも多数の者が参加しているようですし…)。

そして、最終的には朴大統領の「次の大統領」は、金大中(きん・だいちゅう)や盧武鉉(ろ・ぶげん)のような「親北系」の者が就任するかもしれません。そうなれば、米韓同盟や日韓GSOMIAなどを維持していること自体が大きなリスクとなるでしょう。

真の脅威が何かわからない国

韓国はこれまで、「自分たちにとって最も有益な国を最も苛立たせること」に熱心になり過ぎました。日本は間違っても韓国を軍事侵攻しない国です。そんな日本に対し、朝日新聞社と植村隆が捏造した「従軍慰安婦問題」に飛びつき、

「朝鮮半島で日本軍が戦時中、少女20万人(※)を強制連行した」

という与太話に発展させ、国際社会で日本を糾弾し続けたのです(※もっとも、最近だと「50万人」(!)という信じられない数値も出ていますが…)。

北主導での統一国家成立に備えよ!

いずれにせよ、南の指導者が現在、完全にコントロール不能状態となっていることは、北の指導者にとっては僥倖(ぎょうこう)です。

韓国では1987年以来、6代続けて民選大統領が就任しています。しかし、「韓国型の民主主義」は結局のところ、うまく機能しているとは言い難いのが実情です。特に、政権交代後に前任大統領の国際合意を覆したり、前大統領が刑事訴追されたりしています。

これに対して「北の首領様」はまだ若くて「健康(?)」です(※ただし、糖尿病などの疑いもあるようですが…)。そのように考えるならば、北朝鮮が主導する形での、民主主義ではない南北統一国家の出現も、可能性はゼロではありません。

また、朴大統領退任要求デモを見る限り、北朝鮮による韓国社会への浸透工作も相当進んでいるように思えてなりません。そうなれば、なにも「北主導での統一」のために、北朝鮮が韓国に軍事侵攻する必要はありません。大統領選で、北朝鮮に「忠誠を誓う」者を立候補させ、当選させれば良いだけの話です。

そのような状態になってしまえば、韓国国民にとっても不幸でしょう。ただ、韓国社会はこれまで、「慰安婦問題での日本に対する糾弾」にかまけていて、真の脅威(中国と北朝鮮)に盲目的だったことは事実です。その意味で、韓国国民の不幸は彼らの「自業自得」であり、同情の余地はありません。

しかし、北主導の統一国家が成立することは、私たち日本にとっても多大な脅威ですし、私は「北主導の統一国家」出現の可能性は、決して低くないと考えています。私たちは、そろそろ韓国が北朝鮮に取り込まれ、本当の「敵対国」になってしまう可能性に備えなければならないのではないでしょうか?

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