マス・メディアの偏向報道は今に始まったことではありませんが、「放送法遵守を求める視聴者の会」という組織の活動が非常に興味深いです。この会の活動を見ていると、私自身も「独立系評論ウェブメディア」を立ち上げたことの意義を、今になって噛みしめています。

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    ここからが本文です。

    放送法遵守を求める視聴者の会

    昨年11月、「放送法遵守を求める視聴者の会」という組織が結成されました。この会のウェブサイトを見ると、

    「知る権利」を奪うメディアの偏向報道を見逃しません

    とあります。実際、この組織はマス・メディア(特にテレビ局)の偏向報道を問題視するだけでなく、具体的な数値により、どのような偏向報道がなされているのかを「監視」している組織です。

    私も個人的に、この組織の問題意識には全面的に同意します。ただし、活動内容について同意するわけではありません。

    本日は、この「放送法遵守を求める視聴者の会」(以下「視聴者の会」)の活動を紹介するとともに、私自身のメディアに対するスタンスを改めて述べておきたいと思います。

    「放送法遵守を求める視聴者の会」の具体的な活動内容

    討論会の実施

    「視聴者の会」が問題視しているのは、たとえば昨年の「安保関連法制」に関連し、放送局が明らかに「安保反対論」の立場に立つ意見に偏って取り上げた、とするものです。

    同会ウェブサイトでは、たとえば「安保関連法制」に関して「意見」を報道した時間数を調査。その結果、少なくとも日本テレビ、テレビ朝日、TBSのテレビ局は、「賛否両論」を放送した放送時間のうち、実に9割以上が「反対意見」に充てられた、と主張しています。

    少し古い話ですが、これに関連して、今年6月に非常に興味深い討論会が開催されました。

    2016/6/16 公開討論会を開催しました!(2016年6月17日付 「放送法遵守を求める視聴者の会」ウェブサイトより)

    これは、「放送法遵守を求める視聴者の会」が、どちらかというと彼らに反対の立場に立つ「放送メディアの自由と自律を考える研究者」有志と名乗る人々と討論を行ったものです。

    「放送法遵守を求める視聴者の会」側(敬称略)
    • ケント・ギルバート(米カルフォルニア州弁護士、タレント、視聴者の会呼びかけ人)
    • 上念司(経済評論家、視聴者の会呼びかけ人)
    • 小川榮太郎(文藝評論家、視聴者の会事務局長)
    「放送メディアの自由と自律を考える研究者」側(敬称略)
    • 砂川浩慶(立教大学教授/メディア総合研究所所長)
    • 岩崎貞明(放送レポート編集長)
    • 醍醐聰(東京大学名誉教授)

    実際の討論内容についてはリンク先のウェブサイトを視聴して頂きたいのですが、2時間弱という時間を感じさせないほど、充実した主張です。

    討論の内容

    あくまでも私自身の理解ですが、「放送法遵守を求める視聴者の会」(以下「視聴者の会」)側は、討論会の冒頭で、「テレビ局側が圧倒的に、安保反対論側に長い時間を割いている」ということを数値で示しました。しかし、これに対して醍醐名誉教授などの「放送メディアの自由と自立を考える研究者」(以下「研究者」)側は、「時間数で分析したところで偏向している証拠とは言えない」「そもそもどちらの意見を多く示しているかについて議論しても意味がない」などと反論。いまいち議論はかみ合っていないように見えました。

    「研究者」側は、

    • 「放送時間の長短で偏向報道かどうかは測定できない」
    • 「安保法制に関しては賛成論を長く放送すれば良かったのかといえば、そうとは言えない」
    • 「メディアの表現の自由は断固として守らなければならない」

    などと主張していましたが、「視聴者の会」側の主張である

    「明らかに強大な権力を握っているメディアが、明らかに『時間数』で見て不公正な報道をしていることに対する疑念」

    に正面から答えておらず、いまいちすっきりしない討論会でした。

    議論から逃げ回るジャーナリストたち

    ただ、それでも今回の公開討論は、非常に興味深いものでした。というのも、「マス・メディアを擁護する人たち」の発想を知ることができたからです。何より、この討論会は醍醐名誉教授が「視聴者の会」に対して公開討論会を持ちかけたことで実現したものだそうです。その意味で、醍醐名誉教授の姿勢には敬意を表したいと思います。

    しかし、「視聴者の会」の小川事務局長、ケント・ギルバートさん、上念司さんなどの主張内容は、極めて理路整然としており、これらの議論から逃げ回るジャーナリストら(田原総一郎氏や鳥越俊太郎氏など)の姿勢は卑劣(あるいは滑稽)としか言いようがありません。

    余談ですが、この「討論会」のあとに行われた今年7月の東京都知事選に、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏が立候補したものの、小池百合子氏(現東京都知事)にダブルスコア以上で敗北しました。「ジャーナリストである」というだけの理由で票が取れた時代は終わったのでしょうか?だとしたら、これは良い話と言えるかもしれません。

    少数独占構造のメディア

    ところで、「視聴者の会」という存在を私も知っていたのですが、この討論会を見て、改めて小川事務局長をはじめとする「視聴者の会」のメンバーの主張している内容が、いかに理路整然としているかがわかりました。ただ、私自身、「視聴者の会」とは全く違うアプローチで、マス・メディアの在り方を変えていくことができると思っていることも事実です。

    それは、私の運営するこのウェブサイトの存在自体が、やがては「少数資本が独占するマス・メディア」に対抗する一助となる、という希望です。これについて、概要を見ていきましょう。

    メディアの少数独占構造

    日本のテレビ局は、在京民放(5局)が「全国ネット」を組織しており、また、事実上の「公共放送」であるNHKが「事実上の国民からの血税」である受信料で潤っています。これらの民放は「全国紙」と密接な資本関係を持っています。新聞社と在京・在阪テレビ局の関係は次の通りです(図表)。

    図表 少数資本が独占するマス・メディア
    グループ 新聞社 在京 在阪
    朝日 朝日新聞社 テレビ朝日 朝日放送
    毎日 毎日新聞社 TBS 毎日放送
    読売 読売新聞社 日本テレビ 読売テレビ
    フジサンケイ 産経新聞社 フジテレビ 関西テレビ
    日経 日本経済新聞 テレビ東京 テレビ大阪
    NHK NHK総合、NHK教育

    新聞・テレビの権力

    先ほどの「討論会」に出てきた「研究者有志」の意見によれば、これらの新聞・テレビは「政治権力を監視する」という重大な機能を持っている、ということです。しかし、「視聴者の会」側の上念司氏などが指摘する通り、現実には新聞・テレビも「権力者そのもの」です。

    2009年8月に猛烈な偏向報道を通じて民主党(当時)への政権交代を煽ったのは、明らかにマス・メディアです。また、先ほどの「討論会」でも示されたとおり、特定秘密保護法や安保関連法制では、極めて偏った報道がなされていたことも事実です。

    そして、「権力があれば権力に対する監視が必要だ」というマス・メディア側の主張が正しければ、マス・メディアそのものも国民の「監視対象」となって然るべきでしょう。

    TBSからの「ホンネ」

    ただ、この「メディア自体が権力を持っているから、メディアも監視対象となる」という議論については、マス・メディア側から強い反発が生じているようです。

    前出の「放送法遵守を求める会」のウェブサイトによれば、同会がTBSに対して送付した「公開質問状」に対し、TBSから届いた「回答」が掲載されています。これによれば、

    弊社は、少数派を含めた多様な意見を紹介し、権力に行き過ぎがないかを チェックするという報道機関の使命を認識し、自律的に公平・公正な番組作りを行っております。放送法に違反しているとはまったく考えておりません。/今般、「放送法遵守を求める視聴者の会」が見解の相違を理由に弊社番組の スポンサーに圧力をかけるなどと公言していることは、表現の自由、ひいては民主主義に対する重大な挑戦であり、看過できない行為であると言わざるを 得ません。/弊社は、今後も放送法を尊重し、国民の知る権利に応えるとともに、愛される番組作りに、一層努力を傾けて参ります。(太字下線は引用者による加工)

    とあります。私は、ここに引用した文章のうち、太字・下線で加工した部分に、全てが集約されていると思います。意訳すれば、「マス・メディアという権力を監視することは許さない」、ということあり、まさに詭弁というほかありません。

    民主主義が健全に機能するためには「権力に対する監視」が必要であり、その「監視」を受け入れないと公言することは、北朝鮮や中国やソ連と同じ、単なる「独裁国家」です。

    TBSがマス・メディア全ての意見を代弁しているとは限りませんが、マス・メディアの一角を占めるTBSから、こうした「ホンネ」を引き出した「視聴者の会」の努力には、改めて敬意を表したいと思います。

    経済合理性は全てを支配する!

    ウェブ・メディアの役割

    ただし、実は「視聴者の会」の行動自体、少し「時代遅れ」です。というのも、もはや、「既存のマス・メディア(新聞・テレビ)の報道の自浄作用」を期待する時代ではないからです。

    私自身、新聞やテレビが著しい偏向報道をしているという事実を知ったのは、今から8年前の「リーマン・ショック」の時です。詳しくは申し上げられませんが、当時、「金融規制の専門家」として様々な規制動向を調べていた時に、どうも日本経済新聞を初めとする各種メディアの報道が、著しく誤っていると見抜きました。

    ただ、当時は某企業(会社名は明かせません)に勤務していたため、どうしても自分自身でウェブ・メディアを立ち上げるということができなかったので、やむなく「アメーバ・ブログ」「楽天ブログ」などにブログを執筆する、という形で、細々と言論活動を続けてきた次第です。

    しかし、昨年私は会社を退職してビジネスを立ち上げたこともあり、行動の自由度が飛躍的に上昇。この「独立系評論メディア」を立ち上げるに至りました。幸い、アクセス件数も少しずつですが着実に伸びて来ています。そして、私に先行する様々なウェブ・メディアの中には、社会的影響力のあるメディアもちらほら出現し始めています。

    経済合理性に反した行為の代償

    「マス・メディア」と異なり、「ウェブ・メディア」には参入障壁がありません。現に私自身も7月からこうやって情報発信を始めているくらいです。そして、ウェブ・メディアがたくさん立ち上がっている最大の理由は、マス・メディアが「経済合理性」に反しているからです。

    2009年8月の衆議院議員選挙前に、マス・メディアは一斉に偏向報道を行い、その結果、民主党が308議席を獲得して圧勝。鳩山由紀夫政権が成立しました。民主党政権が日本に残した「負の遺産」は莫大ですが、有権者はしっかりと反省し、その後4回の国政選挙では、民主党(とその後継組織である民進党)は「鳴かず飛ばず」の状況が続いています。

    しかし、有権者がしっかりと反省したのと対照的に、2009年8月に偏向報道を行った「主犯」である新聞社・テレビ局各社が、当時の偏向報道ぶりをきっちりと反省しているかと言えば、明らかにそれは「NO」です。そして、視聴者・読者も「バカ」ではありませんから、「2009年8月にマス・メディアが政権交代を煽った」という事実をしっかりと覚えています。その結果、「視聴者・読者離れ」が発生するのは当然のことでしょう。

    新聞社・テレビ局が、インターネット(私自身のこのネット・メディアも含め)などで流れている多様な意見に応えようとするならば、「視聴者・読者離れ」を食い止めることができるかもしれません。しかし、新聞社・テレビ局が、自分たちにとって都合の悪い情報から目を背け続けるならば、経済合理性の観点から、彼らに待っているのはただ一つ。それは

    「倒産」

    です。慰安婦問題を捏造した朝日新聞社は、現在、読者に見放されて部数が激減しているようです。そして、仮に朝日新聞社が倒産したとすれば、それは「正確な報道を担う」という報道機関としての使命に反したことによるものですから、ある意味で「経済合理性」の一種と見て良いかもしれません。

    新聞・テレビの健全化は「競争原理導入」しかない

    「視聴者の会」は、マス・メディアの偏向報道ぶりを調べ上げ、それについて公開質問状を作成し、放送局にぶつけてくれるような組織です。その意味で、同会の活動は日本の民主主義の健全化と活性化に寄与するものであり、私も有権者の一人として、心から感謝申し上げたいと思う次第です。

    ただ、私は「視聴者の会」の活動については、既に「周回遅れ」の感もあると思います。なぜなら、新聞・テレビに「自浄作用」を期待する局面は、既に終了しているからです。おそらく、TBSから「視聴者の会」に寄せられた回答や、そのほかのテレビ局・新聞社の対応などを見ている限り、マス・メディア側が視聴者・読者の声に耳を傾けようとしていないことは明らかでしょう。

    健全な民主主義社会に健全なジャーナリズムが必要であることは言うまでもありません。ただし、インターネット時代に「ジャーナリズム」を担う主体は、別に新聞・テレビでなくても良いはずです。それこそ、私が運営するこのウェブサイト自体を含め、個々人が運営するウェブ・メディアが「ジャーナリズム」の一翼を担っても良いのではないでしょうか?

    私がこのウェブサイトでそこそこの読者を獲得し、(最低限でも良いので)商業ベースに乗れば、その分、確実に新聞・テレビの収益源が減少するはずです(といっても、私はこのウェブサイトで「大儲け」するつもりはありませんが…)。そして、仮に私が「独立系メディア」としてうまくウェブサイトを運営していけるようになれば、他の方々も「社会人ブロガー」ないし「社会人評論家」として、同じようなメディアを立ち上げるようになるかもしれません(むしろそっちが目的です)。

    私は、あくまでも誰でも入手可能で客観的な情報を組み合わせ、金融規制の専門家としての独自の視点から議論を構築することで、新聞・テレビには提供できない付加価値を実現していくことを目指していきたいと思います。

    ※本文は以上です。

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