米国で繰り広げられる「反トランプ・デモ」を見ていると、強い違和感を抱きます。「民主主義国」で「民主的な手続」により大統領に選出された候補を「認めない」とするデモは、日本でも国会議事堂前で繰り広げられた「反安保デモ」と似ている気がします。本日は「政治を見る視点」から、最近のニュースを眺めていきたいと思います。

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    政治を見る視点

    当ウェブサイトは、もともと、経済・金融分野に関する専門知識をベースにして、様々な話題を議論するという趣旨で設立したものです。しかし、やはり実際にウェブサイトを運営してみると、政治的な視点(とくに外交的な視点)がなければ、世の中の物事を正しく分析することができない、ということがよくわかります。

    なぜこんなことを申し上げるのかといえば、米国でドナルド・トランプ氏が大統領に当選し、フィリピンで「ナショナリスト」であるドゥテルテ氏が大統領に就任し、欧州連合(EU)では「極右政党」なる政党が次々と台頭しているからです。

    世界中で「ナショナリスト」が勢力を台頭させ、政権を握り始めている理由の一つには、やはり「行き過ぎたグローバリズム」に対する反動があるのではないかと思うのです。来年は1月にトランプ氏が米国大統領に就任し、その後はドイツ、フランスなどで選挙が相次ぎます。また、英国のEU離脱手続も進展するはずです。

    世界情勢の分析がますます「面白く」なりそうです。その意味でも、このウェブサイトを「政治経済評論」と名付けておいて良かったと思う今日この頃です。

    相次ぐ反トランプ・デモ

    米国では、ドナルド・トランプ候補が勝利を収めたことに対し、各地でデモ行進が相次いでいると報じられています。

    反トランプデモ収まらず NYでは1万人行進/ポートランドでは発砲も(2016/11/13 6:18付 日本経済新聞電子版より)
    Weekend brings more anti-Trump protests across nation(2016/11/12 23:33付 CNNより)

    CNNによると、数千人規模の抗議集団がニューヨーク、ロサンゼルス(LA)、マイアミなどの街頭を行進。さらに高速道路を群衆が占拠するなどの混乱も生じており、一部で暴徒化したデモ隊を制圧するためにLA市警が発砲し、逮捕者が出たことなどを明らかにしているとのことです。

    また、ドナルド・トランプ氏を模した人形を子供たちが棒で叩き、周囲の大人がそれを囃し立てる、という、先進国にあるまじき、非常に恥ずべき行動も行われているようです。

    韓国では「21世紀最大」の大統領退陣デモ

    韓国では、朴槿恵(ぼく・きんけい)大統領が民間人である崔順実(さい・じゅんじつ)氏に対し、国家機密を含めた国政情報を漏らしていたことが大きな問題となり、連日、韓国が揺れています。先週土曜日の夜には、韓国の首都の都心部で大規模集会が行われ、主催者発表で100万人、警察発表でも25万人以上が参加した模様です。

    ソウル都心で「朴槿恵下野」求め大規模集会…主催者側推定で100万人参加(2016年11月13日09時27分付 中央日報日本語版より)

    「主催者発表」の数値が「警察発表」の数値の4倍にも膨らんでいるのはご愛嬌ですが、韓国では週末ごとに大規模なデモが行われていて、しかも回を追うごとに参加者数が数倍に増えているというのは注目に値します。

    自分で選んだ大統領なのに…

    私がこの二つのデモ行進を見ていて思うのは、「自分たちで選んだ大統領なのに」、という強い違和感です。

    中国のような独裁国家ならいざ知らず、米国も韓国もれっきとした民主主義国家です。そして、それぞれ法律の規定に基づいて民主的に選挙が行われ、正々堂々と大統領に選出されたわけです。

    韓国の場合は、大統領に就任した後で不祥事が判明したということなので、まだ話は分かります。しかし、米国の場合は明らかに、まだ大統領に就任していないトランプ氏に対し、その結果を受け入れないとしてデモが発生しているのです。これは、明らかに民主主義の否定でしょう。

    確かに、米国が「選挙人制度」という前時代的な選挙制度を改めないことにも大きな問題があります。実際、ヒラリー・クリントン候補の得た票数は、ドナルド・トランプ候補が得た票数を少しだけ上回っていました。それなのに、獲得した選挙人はトランプ氏が290人に対し、クリントン氏が228人に留まるという結果でした。

    米国にはメディア不信か?

    さて、事前報道では、大統領選ではクリントン氏がリードしていたはずです。以前、米大統領選の直前の11月8日時点で執筆した『アメリカ大統領選と日本』で、私は、次のように述べました。

    「現時点のWSJオンライン(USエディション)によると、ヒラリー・クリントン候補が獲得する見通しの選挙人は、当選に必要な270人を超える278人に達しており、対するドナルド・トランプ候補が確実にしている選挙人は215人である、とのことです。これで見る限り、大統領選を制する可能性が高いのはヒラリー・クリントン候補であるといえます。」

    しかし、実際にふたを開けてみれば、ヒラリー・クリントン候補が獲得した選挙人の数は278人に遥かに届かない228人で、WSJオンラインの予想は完全に外れました。

    なぜここまで大きく予想が外れたのでしょうか?

    理由は二つ考えられます。一つは、米国で世論調査の「精度」が落ちている可能性です。日本の場合、独占商売にアグラをかいてきたマス・メディアの取材能力の劣化が著しくなっていますが、これと似たような現象が、米国でも生じているのかもしれません。

    特に、米国の有権者が「トランプ支持者」であっても、それを公言せず、マス・メディアの取材に「ウソ」をついている可能性は、以前から指摘されてきました。もしかすると、日本で生じているのと同じような「マス・メディア不信」が発生しているのかもしれません。

    メディアの偏向報道?

    もう一つの可能性は、メディアが「トランプ優位」を掴んでいながら、事前に操作をし、有権者に対し「ヒラリー優位」であるかのような印象付けを行っていた可能性です。私はむしろ、可能性はこちらの方が高いと思います。

    もちろん、世論調査の結果を「操作」していたら、それは「捏造」であり、「論外」でしょう。ただ、マス・メディアが特定の政党・候補を勝たせようとして、大なり小なりの「偏向報道」をするという傾向は否定できません。2009年8月の日本の事例は極端だったにせよ、日本のメディア(特に朝日新聞などの極左メディア)の偏向(あるいは捏造)体質は全く改まっていません。

    こうした「マス・メディアの偏向報道」という傾向が、米国でも出ているのかもしれません。

    弱すぎる政権は問題

    日本は長年、「1年ごとに首相が交代する」という政治的な不安定状態が続いて来ました。しかし、2012年12月に「第二次安倍政権」が成立して以降は、政権基盤が安定し、何かと問題を抱えながらも日本経済が着実に回復基調にあることは間違いないでしょう。

    日本で政権基盤が安定すると、真っ先に影響が出てくるのは外交力です。安倍晋三総理自身が「外交センス」に溢れた政治家であるという事情もあるものの、安倍政権成立以来、日本の外交的立場は間違いなく上昇しています。

    【余談ですが、一番大事な項目は「経済」であり、有効な財政政策を欠いている状態では、日本経済のさらなる浮上は困難です。せっかく日本銀行が旺盛な量的緩和を行っているのですから、財政政策(あるいは減税、特に消費税の廃止)により日本経済の爆発的な浮揚を図るチャンスが生じているのです。】

    対米関係ではTPPと安保

    さて、トランプ大統領が誕生することが確定した現在、ここ数か月の日本外交にとっての最優先課題は、対米関係をどのように構築するかに尽きます。

    環太平洋パートナーシップ協定(TPP)を巡って、トランプ氏は就任初日に「破棄する」と明言しています。私自身はTPPについて、日本にとって良い面と悪い面があると思うものの、「外交的な約束を次期政権が覆す」ということは許されません。そして、日本が仮にトランプ政権の「変心」を許したら、日本が他の国と形成した合意も覆されかねません。

    また、日本は少しずつ、軍事的自立に向けて法的整備を続けていますが、それでも今この瞬間、中国が尖閣諸島への侵略を始めた時に、防戦できません。今のところは日米安保条約を維持しなければならないことは間違いないでしょう。

    米国に対する交渉的優位を生かすチャンス

    ただ、トランプ政権の出現は、日本にとって、悪いことではありません。

    例えば、「TPP破棄」を巡って、米国に対し強硬な外交交渉をするチャンスがある、ということです。仮に日本がTPP破棄に応じたら、トランプ氏にとっては政権浮揚につながります。外交も「貸し借り」のようなものですから、安倍政権がトランプ氏に「大きな貸し」を作ることができれば、日本にとっては非常に大きなチャンスが生じます。

    そして、米国に「貸し」を作り、何か「返してもらう」とすれば、自主憲法制定、自主外交の容認、ということでしょう。

    折しもトランプ氏は「在日・在韓・在独米軍の撤収」を主張しています。日本としては、在日米軍の縮小・撤収とあわせて、憲法第9条第2項を破棄し、自主防衛体制を確立するチャンスです。

    当事者能力を失う韓国

    そして、相手国政府が弱すぎるのは大きな問題です。

    トランプ氏自身も民主主義国家・米国で大統領に選出された以上、どんな「すっとんきょうな」選挙公約を掲げたとしても、民心に反する政策を強引に遂行することはできません。

    その意味で、日本の周囲に「弱すぎる政府」、あるいは「既に当事者能力を失っている」国があります。それが韓国です。

    例えば、昨年冬に、日本は韓国と「慰安婦問題の最終的な解決」で「合意」しましたが、韓国の場合は政権が交代すると、前政権が外国と約束した内容を反故にしてしまう傾向があります。そして、朴槿恵政権が任期をあと1年少々残してコントロール不能になってしまうのも困りものです。

    通貨スワップによって韓国を「支配」する?

    誤解を防ぐためにあらかじめ申し上げておきますが、私は現在日韓両国政府が「協議している」とされる日韓通貨スワップ協定の締結については反対です。なぜなら、日韓スワップは外貨ポジションが脆弱な韓国に対する日本からの一方的な支援であり、しかも通貨スワップを提供すれば、韓国の反日がますます激しくなることは間違いありません。

    ただし、敢えて私が安倍政権の「戦略」を忖度(そんたく)するなら、日本が韓国に対してスワップを提供するとすれば、その目的は「日本が韓国を支配下に置くため」です。

    韓国は恒常的に外貨不足に陥りやすい国ですが、通貨スワップがあれば、外貨ポジションの安定に寄与します。逆に、いったん通貨スワップ協定が再開されると、韓国にとってはスワップを停止されることが一種の「牽制」として機能します。一昨日も『老獪な菅官房長官の「日韓スワップ」発言』で触れたとおり、スワップにきちんとした「特約」をつけることができれば、日本が韓国をうまく「支配」することができます。

    もちろん、「うまく使えれば」、という前提ですが…。

    日本が主体的に外交をするために…

    アメリカでトランプ政権が出現することは、確かに米国のメディアから見ても「想定外」であり、彼らにも戸惑いがみられることは間違いありません。ただ、「想定外」だからこそ、我々日本にとっては、これを自主外交のチャンスとして生かすべき局面なのです。

    少なくとも日本は「経済大国」ではありますが、軍事的には憲法第9条第2項という理不尽な条項に縛られています。確かにトランプ政権の出現は日米同盟の在り方にもどのような影響を与えるのかが懸念されますが、逆に憲法第9条第2項の撤廃に向けて議論が進むチャンスでもあります。

    私は今後1年の日米関係に強く関心を持って眺めていきたいと思います。

    ※本文は以上です。

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