「トランプ政権」で米国は衰退し、日本が復活する!

日本時間の昨日、開票された米大統領選で、事前の予想を覆し、共和党のドナルド・トランプ候補が民主党のヒラリー・クリントン大統領選を下し、大統領選を制しました。私自身も含め、大方の予想が「敗れた」格好となり、昨日は「安全資産」である円が買われて日経平均が暴落。まさに6月の「Brexit」(英国のEU離脱ショック)並み、いや、それを超える「マイナス・インパクト」が発生した格好となっています。明らかに1980年代の「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の思想から抜け出していない、この時代錯誤的な大統領の出現は、もちろん世界経済にとっても大きな「マイナス材料」ではありますが、見方を変えれば一つのチャンスでもあります。この大統領に対し、日本はどのように接するべきなのか、改めて考えてみたいと思います。

Brexitの再来!?

まさに「Brexit」の再来です。

米大統領選では、大方の「下馬評」を覆し、共和党から出馬しているドナルド・トランプ候補が民主党のヒラリー・クリントン候補を破って、米大統領に就任することがほぼ確実となりました。

昨日、私は「米国のメディアの報道から判断する限り、米大統領選ではヒラリー・クリントン候補が勝つ可能性が高い」と申し上げました。しかし、事前報道だと、両候補の支持率は拮抗していたはずですが、それでも「州ごとに選挙人を総取り」する米大統領選の特質上、ヒラリー候補の方が「獲得する選挙人の数」が多く、結果的にヒラリー候補が選挙戦を制する見通しだったはずです。いったい何が発生したのでしょうか?

「トランプ支持」を公言せず?

考えられる可能性は、二つあります。

一つは、米国でも選挙戦を巡る世論調査の「精度」が落ちている可能性です。日本の場合、独占商売にアグラをかいてきたマス・メディアの取材能力の劣化が著しくなっていますが、これと似たような現象が、米国でも生じているのかもしれません。

特に、米国の有権者が「トランプ支持者」であっても、それを公言せず、メディアの取材に「ウソ」をついている可能性は、以前から指摘されてきました。実際、演説会場の動員人数で見ても、明らかにトランプ候補の方が、ヒラリー・クリントン候補の方を上回っているとの証言は、各所で聞かれます。

メディアの偏向報道?

もう一つの可能性は、メディアが「トランプ優位」を掴んでいながら、事前に操作をし、有権者に対し「ヒラリー優位」であるかのような印象付けを行っていた可能性です。もちろん、世論調査の結果を「操作」していたとしたら、それは非常に大きな問題ですが、ただ、2009年の日本の事例でもわかる通り、メディアが特定の政党・候補を勝たせようとして、大なり小なりの「偏向報道」をするという傾向は否定できないでしょう。

いずれにせよ、「大番狂わせ」が生じた格好です。

トランプ政権のマイナス・インパクト

いずれにせよ、「トランプ大統領」が実現してしまった以上、我々はそれに備えなければなりません。

最初の2年は議会運営もそつなくこなす?

同時に行われた米上下両院議会選挙では、上下両院で共和党が躍進し、(いちおうは)共和党に所属するトランプ「大統領」にとって、本来ならば、政権運営はそつなくこなせる(はず)です。

しかし、選挙戦で「パパ・ブッシュ」(小泉首相と仲が良かった方の「ブッシュ」ではなく)が「トランプ(候補)にではなくヒラリー(候補)に投票する」と公言するなど、共和党内でもトランプ「大統領」に対する批判的な視線が多いことは間違いありません。

Sources: Bush 41 says he will vote for Clinton(2016/09/21 14:55付 CNN politicsより)

何より、トランプ氏には米国大統領として、致命的ないくつかの欠陥があります。これまで、米国の「世界覇権」を支えてきたのが、圧倒的な軍事力と経済力ですが、トランプ氏は、米国を軍事・経済両面で弱らせる可能性があるからです。

経済損失は5年間で1兆ドル!

まず、経済面です。

トランプ氏が次期米国大統領に就任した場合、彼の「保護主義」的な政策により、今後5年で米国経済に1兆ドル(!)もの損失がもたらされる、との試算があります。

‘President Trump’ would cost U.S. economy $1 trillion(2016/09/15 09:43付 CNN Moneyより)

この試算を公表したのは英国のリサーチ会社「オックスフォード・エコノミクス」(Oxford Economics)で、トランプ氏の公約である経済対策・税制・移民対策などが遂行された場合には400万人の雇用が失われ、米国の消費支出を冷え込ませるなどして、今後5年間で実に1兆円ものマイナスの経済効果がもたらされるとしています。

我々日本は戦後70年余りの間、自由貿易により多大な恩恵を受けてきた国です。そして、自由貿易は同時に米国にも多大な恩恵をもたらしています。

時代錯誤的な「トランプ政権」が保護主義的な経済政策に舵を切ることはほぼ間違いありませんが、その時に環太平洋パートナーシップ協定(TPP)、環大西洋自由貿易協定(TTIP)など、オバマ政権が推進した自由主義的な政策は、その多くが見直されるはずです。

現在妥結されているTPPは、甘利大臣の活躍もあり、日本にとっては相当有利な内容ですが、これを強引に「ひっくり返す」ということが発生すれば、米国に対する対外的な信頼は急落します。

軍事面では「世界の警察官」を辞める米国

一方、軍事面ではさらに強硬です。

トランプ氏は日独などの同盟国に対し、「さらなる駐留経費負担」を求めて来ています。そして、「経費負担ができないなら米軍を撤収する」ということが、現実に発生しかねない状況です。

果たして、駐日米軍が撤収してしまうと、米国は太平洋で覇権を維持し続けることができるでしょうか?おそらく不可能でしょう。

日本の再軍備が視野に?

ただ、「トランプ大統領の出現」は、日本にとって必ずしも悪いことではありません。

軍事面のインパクト

一つは、日本が米国から軍事的に独立し、あるいは対等なパートナーとなる可能性が高まっていることです。

トランプ氏は「日本は核武装すべきだ」などと発言しましたが、「国の交戦権」を禁じた憲法第9条第2項を撤廃し、英国のように最小限の最新兵器を装備するなどして、米国の「対等なパートナー」となることは、日本にとっては決して悪いことではありません。なにより、そうすることにより、日本は領土問題を巡り、ロシアや中国との交渉力が飛躍的に高まります。

経済面のインパクト

もう一つが、米国が「自由貿易主義」を放棄することによる、経済的なインパクトです。

米国との自由貿易体制が損なわれる可能性があること自体は日本にとって懸念すべき材料ではありますが、その一方で、たとえば財務省の外為特会が管理している巨額のドル建ての外貨準備についても、売却する余地が生じてきます。

日本が米国の「属国」でなくなれば、日本政府が短期国債(TDB)を発行してまで米国債を保有しておく必要性など消滅します。100兆円を超える規模の外為特会を解消すれば、消費税率を引き上げることなく財政再建が進むため、日本経済にとっても明らかなプラスとなります。

日本が独自の指導力を発揮する余地が発生

トランプ「大統領」が時代錯誤的な経済政策を掲げていることは、もう一つ、日本にとって良い面があります。それは、「日本こそが自由・民主主義社会のリーダーになる」、ということです。

アジア太平洋地域では、「世界の覇権確立」を狙う中国の軍事的野心が挫折しかかっており、その中国では足元の経済情勢が悪化しています。アジア開発銀行(ADB)に対抗して設立した「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」には思うように出資も集まらず、「シルクロード基金」構想は事実上、頓挫しました。

こうした中、日本経済が復活し、さらに軍事面で自立を達成すれば、明らかに日本がアジアの「リーダー国」となります。

そして、「強い日本」は、実はアメリカの国益にも資するものです。なぜなら、日本はアメリカと同じ、「自由・民主主義」や「法治主義」を重んじる国であり、基本的価値を共有しているからです。そして、中国のように、「共産党一党独裁」・「人治主義」の国は、西側諸国とは価値を共有していません。

西側世界にとってどちらが良いかは言うまでもないでしょう。

トランプ政権だからこそ、改憲を急げ!

安倍政権に申し上げたいことは、ただ一つ。「何としてでも在任中に、少なくとも憲法第9条第2項の撤廃だけは実現して欲しい」、ということです。

トランプ政権により、米国は軍事・経済両面で間違いなく衰退します。そのことは日本にとって脅威であることは間違いありませんが、同時にチャンスでもあるのです。是非、日本が「自立した国」となることをためらわないようにしなければなりません。

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