臨時国会が始まって以来、日本国内のメディアの関心事は、完全に国会などの報道にシフトしてしまいました。しかし、実は外交に関連して重要な「フィリピン大統領の訪日」などのニュースが出てきています。そこで、本日はフィリピン、韓国という「二つの厄介な国」を取り上げるとともに、改めて日韓通貨スワップ協定に関する要点を確認しておきたいと思います。

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    ここからが本文です。

    地政学と国益の基礎

    私がこのウェブサイトを開始して以来の一つのテーマは、「地政学」です。「地政学」とは、簡単に言えば、「敵の敵は味方」、というバランス関係のことです。そして、外交上、「永遠の友人」などは存在しませんし、「永遠の敵」も存在しないはずです。

    中国は脅威だが、永遠の敵ではない

    私の理解では、現在の安倍政権は、「中国の軍事的台頭」、「中国の軍事的暴発」などのリスクに対処することを最優先目標に置いています。もしその理解が正しければ、私は安倍政権のこのスタンスを全面的に支持したいと思います。なぜなら、中国は南シナ海や東シナ海で強引な領有権主張を続けており、また、どうやら現在の習近平(しゅう・きんぺい)政権は、人民解放軍の掌握に苦慮しているようだからです。習政権が国内の不満を逸らす目的で、あるいは習政権が軍部の不満を抑えつけることに失敗し、外国との軍事衝突を発生させるリスクは日増しに高まっています。安倍政権が2012年12月に発足して以来、消費税の先送りよりも、特定秘密保護法や安全保障関連法などの成立を急いだことは、非常に正しい行動です。

    ただ、中国は現在こそ日本にとっての「仮想敵国」ですが、「永遠の敵国」ではありません。そして、外交はあくまでも「軍事的安全」と「経済的繁栄」という国益を最大化するために行われるべきものであり、別に日本は同じ価値を持たない国とでも、利害関係が一致すれば仲良くすれば良いと思います。自由を信奉するアメリカがイスラム独裁国家であるサウジアラビアと仲良くしているようなものでしょう。

    政治ニュースは内政一色だが…

    ところで、9月26日に臨時国会が始まって以来、しばらく国内のニュースは国会の議論に集中することでしょう。実際、国内メディアが外交に関する話題を取り上げなくなっています。しかし、実は外交的には重要な論点が目白押しです。

    まず、この臨時国会が閉会すると、今度はロシアのプーチン大統領の訪日など、大型の外交日程が待ち構えています。ちなみに一部のメディアによると、プーチン大統領訪日に合わせて、安倍総理が北方領土返還をテーマに衆議院解散に踏み切るのではないかとの観測も出ているようです。

    また、日韓関係を巡っては、相変わらず日韓通貨スワップ協定に関する続報がほとんど出てきていません。特に、欧州では再び金融危機のきな臭い空気が漂い始めていますが、国際的な通貨危機が発生した時には、韓国のように外貨ポジションが弱い通貨が大きく売られる傾向にあります。

    さらに、11月の米国大統領選では、やはりクリントン候補が制するのか、それとも土壇場でトランプ候補が逆転勝ちするのかは読めません。しかし、米国の新政権発足を睨み、大統領当選者の外交スタンスを見極める必要があります。特に、北朝鮮が開発中だとされる核兵器の性能次第では、アジア情勢が大きく動く可能性もありますし、米国が北朝鮮を「先制攻撃」する可能性もゼロではありません。

    このように考えていくと、外交に関して深掘りするニューズ・サイトが少ないのは不思議というほかありません。特に日本の場合は憲法の制約から交戦権がありません。そのため、外交は国の死活問題であり、本来、我々日本国民としても、外交に強い関心を持つのが当然の話です。

    外交は国益の基本

    というわけで、政治ニュースの主な話題になっていなかったとしても、当ウェブサイトとしては、引き続き外交ネタを追いかけて行こうと考えています。特に、国会の関係上、安倍総理が日本を離れることができないため、必然的に、日本は各国に対し、首脳の日本訪問を要請する機会が増えます。

    「過激派大統領」の訪日

    時事ネタからは、フィリピン大統領など訪日を取り上げてみましょう。

    比大統領が25日来日=天皇陛下と会見へ(2016/10/11-11:52付 時事通信より)

    リンク先の時事通信によると今月、各国要人が次の通り、日本を訪れます。

    • 18~20日 ブラジルのテメル大統領
    • 25~27日 フィリピンのドゥテルテ大統領
    • 26~28日 ヨルダンのアブドラ国王

    この三カ国は、いずれも日本の外交にとって重要な国です。そして、いずれも政治的には不安定な国ばかりです。ブラジルはルセフ前大統領が収賄容疑で弾劾されている最中ですし、ヨルダンは「中東の火薬庫」イスラエルや内戦が続く政情不安定なシリア、イラクなどと隣接しており、さらにフィリピンは治安の悪化に加え、「過激派」のドゥテルテ大統領が今年7月に就任したばかりです。おそらく、「安倍外交」の狙いは、これらの国に対して日本との友好関係を確認することで、「地域の安定に貢献する意思を示す」(わかりやすい言葉で言うと「日本政府として、その国の政府をバックアップする意思を示してあげる」)のが狙いでしょう。

    とくに、ドゥテルテ大統領は、就任直後に南シナ海問題で「中国には譲歩しない」などと述べている割には、中国に対してそれほど公然と批判する姿勢を示していません。そればかりか、ドゥテルテ大統領は米国のバラク・オバマ大統領を失言で激怒させ、今年9月には行われるはずだった米比首脳会談が中止に追い込まれています。そればかりではありません。今月に入ってもドゥテルテ氏はフィリピン国内の演説で、オバマ氏に激しい侮蔑語を発して物議を醸しているようです。

    比大統領、オバマ氏を侮蔑語で罵倒 米、首脳会談を中止(2016年09月06日 07:15付 AFPBBニュースより)
    ドゥテルテ比大統領、オバマ氏に「地獄へ落ちろ」と(2016年10月5日付 BBC日本版より)

    オバマ政権が末期でレームダック状態にあるとはいえ、さすがに中国が軍事的野心を強める中でのドゥテルテ氏の発言は、米比軍事協力を困難にします。少なくとも、オバマ大統領在任中に米比関係が改善することはないでしょう。そして、この「過激派大統領」の訪日と安倍総理との会談、さらには天皇陛下への拝謁は、願ったりかなったりでもあります。

    日米両国にとってのフィリピンは対中牽制の「かなめ」の一つですが、日本がその「要衝」であるフィリピンの首脳と仲良くしているという状態は、新大統領選出後の対米関係を考える上でも非常に重要であり、有効です。是非、安倍総理にはこの「過激派大統領」を手なずけて頂きたいものです。

    日韓スワップは音沙汰なし!?

    同じく、「対中牽制」という意味では、日本(と米国)にとって重要な国は韓国です。しかし、フィリピンと同じく韓国にも、本来ならば味方をすべき相手に対し暴言を吐くという困った習性があります。フィリピンが暴言を吐いている相手は米国ですが、韓国が暴言を吐いている相手は日本です。

    その韓国は現在、軍事的には北朝鮮リスクの高まりに加え、中国の「不法操業漁船」との衝突を深刻な国際問題として抱えています。

    中国漁船、韓国海警ボートを沈没させるため再衝突も(2016年10月10日07時51分付 中央日報日本語版より)

    リンク先の中央日報日本語版記事によると、10月7日に韓国・仁川の「小青島」沖合76キロの海上で違法操業中40隻以上(!)の中国漁船を取り締まろうとした韓国「海警」(日本でいう海上保安庁のような組織でしょうか?)のボートが、そのうちの100トン級の中国漁船に激突され、沈没したのだとか。幸いにも死者はいなかったとのことですが、それにしても異常事態です。

    これを日本に例えて言えば、東京ディズニーランドの沖合から南に76キロといえば千葉県・館山付近であり、まさに「目と鼻の先」の距離です。そんな海域での中国漁船団の違法操業が常態化しているというのも異例ならば、取り締まろうとした海上警察当局のボートに体当たりして沈没させるのも異例です。まさに韓国の沖合は「無法地帯」と化しています。

    つい先日も、韓国では大手海運会社「韓進(かんしん)海運」が経営破綻し、荷物と客を載せたまま世界の海上を「漂流」しているという話題を取り上げたばかりですが(詳しくは「韓国の経済危機と金融」もご参照ください)、まさに今の韓国は、国全体が「漂流」しているかのようです。

    さらに、最近、欧州では再び金融不安の空気も漂ってきました。FSB(金融安定化理事会)からG-SIBs(グローバルにシステム上重要な銀行)にも指定されている某大規模金融機関の経営不安がささやかれています。この金融機関は昨年もAT1証券(CET1以外のTier1資本証券)の「債務不履行」が噂されたのですが(※余裕があれば解説しますが、AT1証券の利払不能は「債務不履行」ではありません)、万が一この金融機関が経営破綻でもしようものなら、リーマン・ショック級の信用不安が再来するはずです。そうなれば、韓国の通貨も厳しく売り浴びせられることは間違いありません。

    日韓通貨スワップ協定の交渉状況に関し、財務省からその後、全く続報がないのは気になります。韓国側では「再開される日韓スワップの規模は500億ドル(約5兆円)になる」との報道も出ていますが(※これは以前「日韓スワップ「500億ドル」の怪」で触れたとおり、単なる飛ばし報道だと思います)、日本側ではこの報道は一切出ていません。

    しかし、ただでさえ韓進海運の経営破綻で国全体の外貨ポジションがタイト化している韓国ですが、その韓国は現在、THAAD(高高度ミサイル防衛システム)で中国を激怒させており、いざとなった時の中韓スワップ協定が発動できない可能性も強まっています。韓国としては、日本との通貨スワップが、それこそ「喉から手が出るほど欲しい」状況にあるのです。

    ※なお、日韓スワップについては次のような記事もご参照ください。

    フィリピンと韓国の共通点

    では、日本にとって(あるいは米国にとって)、フィリピンと韓国はどういう位置付けにあるのでしょうか?

    どちらの国も、日米という「海洋勢力国家」が中国と対峙するうえで、戦略上の要衝(重要な地点)を占めています。特にフィリピンは、南シナ海で中国と直接、対立する立場にあるため、本来であれば、日米両国にとっては「中国面」に落ちてしまっては困る国です。

    しかし、韓国もフィリピンも、自国の安全保障を脅かす国が中国であるにも関わらず、中国がちらつかせる「エサ」に飛びついてしまうという、非常に厄介な国です。当ウェブサイトでは「日本は外交が下手だ」と主張していますが、日本の場合は「真面目さが故の外交下手」でるのに対し、韓国やフィリピンは「戦略性のなさによる外交下手」です。つまり、韓国もフィリピンも、外交や国家運営で様々な問題を抱えていることは間違いありません。

    しかし、日本からみると、韓国とフィリピンは大きく異なる点があります。それは、「根深い反日感情」の有無です。各種調査からは、アジア諸国で強い反日感情を抱いている国は中国と韓国に限られていることが明らかになっていますが、特に韓国の場合、危機が去れば、ただちに反日を再開する国です。通貨危機の最中も、日本が助けなければ文句を言い、日本が助ければ「遅い」「金額が少ない」と文句を言います。私も日本国民の一人として、こうした図々しい韓国の態度には腹も立ちますし、「通貨危機になり勝手に困ってしまえ!」などと感じることも多々あります。

    ただ、それと同時に、現在の日本には戦争を禁じた「日本国憲法第9条第2項」が残っており、法治国家を自認するわが国が、自ら憲法違反を犯してまで自衛戦争を行うほどの覚悟もありませんし、戦争をしようにも、肝心の軍法が整備されていません。このような状態で、韓国が中国に「寝返る」状況が発生すると、きわめて厄介です。したがって、日本が再武装できるようになるまでは、少なくとも韓国が独立を維持したままで中国の同盟国になることは避けなければなりません(※極端な話、韓国が中国の自治区のような存在になり、外交権を剥奪されてしまうなら、話は別ですが…)。

    フィリピンも韓国も、日米が共同して中国に対処しようとするときに、日米両国を「後ろから刺す」ようなことをやりかねない国です。ドゥテルテ大統領を歓待するにせよ、日韓スワップを議論するにせよ、そのことを十分にわかったうえで対処してほしいものです。

    補足:日韓スワップについて

    以上で述べたとおり、安倍政権が対中牽制を外交の主目的に掲げるならば、日韓スワップの再締結は、おそらく避けられないでしょう。ただし、日韓スワップを締結するならば、せめて次の2点を政府にお願いしたいものです。

    • 金額はできるだけ少なくしてほしい(多くても30~50億ドル程度)
    • 期間はできるだけ短くしてほしい(朴槿恵=ぼく・きんけい=政権の任期満了の2018年2月頃まで、あるいは1~3か月程度)

    そして、韓国が反日を再開しようとするならば、ただちにスワップを停止することができるという「反日条項」を盛り込むのが良いと思いますが、安倍総理、いかがでしょうか?

    ※本文は以上です。

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    著者のコンタクト先:info@shinjukuacc.com

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