外交失敗事例としての韓国

本日は休日ということもあり、隣国に関する「ちょっとしたニュース」をベースに、「気軽な経済分析」を試みてみましょう。題材は時事ネタから取ってきていますが、速報性というよりはむしろ、脱力するニュースをお楽しみいただけると嬉しいです。

「これんたー」なる用語の怪

英国が欧州連合(EU)から離脱することを「Brexit」(Britain-Exitをつなげた造語)と呼びますが、最近の隣国では、「Korenter」(Korea-Enterをつなげた造語)なる言葉を呼びかけている人がいるそうです。

韓国経済副首相「ブレグジット? 韓国の生きる道はKorenter」(2016年08月18日17時24分付 中央日報日本語版より)

Korea-Enter略してKorenter…。そんな単語、初めて聞きました(笑)この単語を報道した中央日報日本語版によると、これを提唱したのは韓国の柳一鎬(りゅう・いっこう)副首相兼企画財政部長官(日本でいう財相に相当?)で、意味合いは

「どうにかして自由貿易体制を守り、入る(enter)こと」

なのだそうです。「これんたー」とでも読むのでしょうか?それにしても、どうも語感がしっくりきませんね。

報道によると、柳長官は「韓国政府は保護貿易主義と新孤立主義の克服を導いていく先導国家を目指す」と述べたのだそうですが、確かにこの国のGDP(国内総生産)に占める貿易の比率は極めて高いという特徴があります。総務省統計局が公表する「世界の統計2016『第9章 貿易』」によると、2014年における韓国の貿易依存度は主要国と比べても極めて高い水準にあります(図表1/図表2)。

図表1 各国の輸出依存度
2010年2011年2012年2013年2014年
日本1413.913.414.5
米国8.59.59.69.59.4
英国1718.518.217.816.2
ドイツ3739.439.938.939.1
フランス19.520.520.820.220
イタリア212324.224.224.6
カナダ24.6262525.126.3
韓国42.646.244.842.940.6
中国26.125.324.223.322.6

図表2 各国の輸入依存度

2010年2011年2012年2013年2014年
日本12.614.514.916.9
米国13.214.614.51413.9
英国23.424.624.724.122.5
ドイツ3133.5333231.6
フランス2324.924.923.923.5
イタリア22.924.523.622.321.9
カナダ25.726.826.226.126.9
韓国38.843.642.539.537.3
中国23.123.321.520.518.9

(出所)図表1、2ともに総務省統計局「世界の統計2016」図表9-3

これを見てみると、G7諸国と中国、韓国を足した9か国で比較してみて、韓国の貿易依存度が突出して高いことがわかります。少なくとも「輸出依存度」については、2010年以降、GDPの40%を超えていることがわかります。

余談ですが、意外なことに日本の貿易依存度は2013年において、輸出が14.5%、輸入が16.9%に過ぎず、G7諸国の中では米国の次に低い数値です。つまり、少なくとも統計上は、日本は「輸出依存経済」ではありません。日本を「輸出依存国家だ」というのであれば、ほかのG7諸国はどうなるというのでしょうか?

また、もう一つの余談です。G7諸国の中で「輸出依存大国」といえば、まさにドイツのことでしょう。そして、ユーロ圏の問題とは、ユーロという統一通貨に加盟しながら、主権国家の枠組みを維持していることにつきます。為替相場による輸出競争力の調整が働かない以上、「ユーロ圏最強の国」であるドイツが一方的に富を積み上げ、南欧諸国が貿易赤字に陥り、その赤字を国債発行等によりファイナンスする、というのがユーロ危機の本質です。しかし、この話題は本日の本筋から離れるので、また機会があれば議論したいと思います。

韓国の外国依存は深刻

それはさておき、本論に戻りましょう。

韓国は産業構造として、貿易に過度に依存しています。その韓国は、前任の李明博(り・めいはく)大統領時代に、欧州連合(EU)や米国などとの間で積極的にFTA(自由貿易協定)を締結していますが、その結果が「きわめて高い貿易依存度」という形で出ている格好です。

ところで、どの国にも「国益」というものがあります。わかりやすく言えば「軍事的安全と経済的繁栄」のことですが、考えてみれば当然です。周辺国が軍事的な野心を持っている国ばかりで、国の安全が脅かされている状況だと、人々は安心して働くこともできません。中東諸国のように、テロ組織が内戦を仕掛けてくる場合もありますし、日本やASEAN諸国のように、中国の軍拡リスクに直面している国もあります。また、軍事的安全が確保されていたとしても、国民が貧しいままだと、いつまでたっても国が安定しません。政情不安を抱える国は、多くの場合、国内に多くの貧困層が存在しています(逆に、貧困層が存在するから政情不安となるのかもしれませんが)。

韓国にとって「国益」を脅かす要因を知りたければ、「軍事的側面」と「経済的側面」から分解する必要があります(図表3)。

図表3 韓国にとっての「最大の国益阻害要因」
側面概況備考
軍事的側面「武力南侵」の意思を隠さない北朝鮮の暴発リスクと対処しなければならない在韓米軍は韓国にとっての「命綱」のようなもの
経済的側面貿易依存度が高すぎ、中国との外交関係を損ねないように注意する必要がある金融面も脆弱で、産業界は「外貨不足」状況

つまり、軍事的側面からは米国に、経済的側面からは中国に、それぞれ深く依存してしまっているのが韓国の現状です。

これに対して日本の場合だと、経済面ではもともとGDPに占める内需の比率が6割前後と高く、また、産業界も「中国一辺倒」ではなくなりつつあります。さらに軍事面でも、集団的自衛権の行使を容認する安保法制も成立しましたし(ただし法律の運用・使い勝手はまだまだ不十分ですが…)、着実に「軍事的・経済的自立」に向かっています。「国益」という観点では、日本と韓国は明らかに逆方向を向いている状況にあります。

韓国外交の致命的ミス

考えてみれば、「国益」を考えるうえで、韓国は、題材としてはちょうど良い国です。というのも、周辺国と比べて国の規模がそれなりに小さい(人口は5千万人以下、面積は北海道より少し大きいくらい)ことと、38度線を挟んで北朝鮮という「敵国」敵対していることから、「国の運営」についてシミュレートするにはちょうど良いケース・スタディなのです。

韓国に影響を与える国をリストアップし、それぞれの韓国に対する軍事的・経済的影響度をみてみましょう(図表4)。

図表4 韓国に対する周辺国の「役割」

軍事面経済面
北朝鮮38度線を挟んで睨み合う関係。核兵器やミサイルの開発を公言しており、南側に対しても、しばしば砲撃などを行っている。北朝鮮自体、経済がほぼ崩壊状態にあるため、北朝鮮を吸収統一した場合には韓国経済も崩壊の危機に直面する。
中国韓国に対して北朝鮮という「猛犬」をけしかける「宗主国」。中国が直接、韓国の軍事的脅威というわけではないにせよ、北朝鮮を通じて韓国を圧迫する立場。貿易依存度がGDPの4割以上に達する韓国にとって、もはや最も重要な経済パートナー。また、AIIBや通貨スワップを通じ、金融面でも韓国をバックアップする存在に。
米国韓国を「北朝鮮」というリスクから守ってくれる「同盟国」。過去にはベトナム戦争への派兵など、米国との軍事協力の実績も。意外なことだが韓国の対米輸出依存度は対中輸出依存度よりも低い。ただし米ドルの調達等は韓国の産業界にとって依然重要。
日本朝鮮半島有事の際、在日米軍基地の使用などを通じ、潜在的に韓国の安全保障をバックアップしてくれる重要な国。韓国企業の外債の起債、韓国に対する技術・資本の提供等を通じて、韓国産業を「世界の最貧国」から「先進国」に引き上げるのに貢献した。

このように眺めていくと、北朝鮮は「敵対国だが潜在的には統一しなければならない国」、中国は「経済的に最も重要な国だが軍事的には害をなすかのうせいがある国」、米国は「軍事的に最も重要で、経済的にも重要性の高い国」、そして日本は「軍事・経済両面から、いざとなったら韓国をバックアップしてくれる、韓国にとって全く無害な国」、と評価できるでしょう(図表5)。

図表5 韓国にとっての各国の意味
韓国にとっての役割
北朝鮮現在は軍事的には敵対しているが、現状は「世界の最貧国」であり、仮に「平和吸収統一」となった場合、韓国自体も多大な経済的負担を負う
中国一見すると経済面では重要だが、実際には北朝鮮を「けしかけ」、米軍の朝鮮半島からの追い出しを図るなど、韓国にとっては軍事的な脅威
米国軍事面では韓国にとって最も重要な相手国。ただし、経済面では「もっとも重要な国」というステータスは中国に取って代わられた
日本韓国にとって、軍事・経済・金融・文化など、あらゆる面で「もっとも脅威をもたらさない国」

ところが問題は、どうやら韓国がこの現状を正確に理解していないらしい、という点にあります(図表6)。

図表6 韓国が評価する各国
韓国から見た各国
北朝鮮軍事的脅威だが、北朝鮮を武装解除・統一する意思は韓国がはない
中国一種の「精神的宗主国」。決して逆らえない国
米国中国とともに韓国にとっては逆らえない国
日本韓国にとって唯一、「過去の歴史問題」を材料に「叩く」ことができる相手

特に、韓国は日本のことを、「過去の歴史問題」で「糾弾し、徹底的に叩くことができる相手」だと勘違いしている節があるようです。また、過去に韓国は日本に非礼・不法行為を働いて来ましたが、日本が全く韓国を制裁しなかったため、韓国は日本を糾弾することをやめませんし、これからも続けようとするでしょう。

しかし、日本が韓国の不法行為に「抗議をしない」からといって、韓国が日本に不法行為を働くことが許されるものではありません。韓国の日本に対する挑発行為の数々は、間違いなく「有事の際に助けてくれる」はずの日本を、韓国の敵に回す行為なのです。

韓国の中国化は止められない

一方、「本当に韓国に脅威をもたらす相手」といえば、直接「武力南侵」の意図を隠そうとしない北朝鮮であり、また、その北朝鮮の存続を許し、同国に経済的支援を与えている中国です。そして、その中国は今や、経済・金融面から、韓国を支配しにかかっています。これから中国は、朝鮮半島から米国の軍事的影響力を排除することを狙うでしょう。

朴槿恵(ぼく・きんけい)現政権は、2017年末までに朝鮮半島の在韓米軍にTHAAD(高高度ミサイル防衛システム)を配備することで米軍と合意しました。これにより韓国は米国の「軍事的な傘」に辛うじて踏みとどまったものの、THAAD配備は中国を激怒させています。やはり、長期的には韓国は、中国に、じっくりと(しかし確実に)取り込まれていくでしょう。おそらく、いまのペースでいけば、朴槿恵(ぼく・きんけい)現大統領の次か、その次あたりの政権が、「米国を捨て、中国に仕える」ことを決断するに違いありません。

そして、私自身、この流れは止められないと考えています。そうであるならば、日本がやらねばならないことは決まっています。韓国が中国の属国に戻ることを前提に、その準備をすることです。真っ先に行うべきは、遠くない将来に在韓米軍が撤収する可能性を踏まえ、防衛ラインの引き直しと、日本列島全体における米軍基地・自衛隊基地の配備の見直しでしょう。

また、経済面でも、韓国に対する技術漏洩の防止を図るうえで、「出国審査」の厳格化を急がねばなりません。博多港などからフェリーで韓国に出国する際のX線検査は、どうやら民主党政権時代に廃止されたままらしいのですが(このあたり、個人の方が執筆したらしいブログでも「博多港ではX線検査がない」と記載されています)、技術漏洩や窃盗品の韓国への搬送を防ぐため、早急な復活が望まれます。

いずれにせよ、「韓国はもう中国の属国になるんだ」、という呑気なものではなく、日本側に対応が求められることは意外と多そうです。日本政府・外務省の危機意識を持った対応を望みます。

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