私自身、東京都民の一人として、日曜日に投開票が行われた都知事選で選挙権を行使して来ました。選挙結果は既に公表されている通りですが、これについて、いくつかのデータを用いつつ、現在の日本が抱える選挙に関する問題点と、それに対する私なりの現状を変えるための努力を紹介したいと思います。

※【2016/08/02 7:45追記】
①本文中、参議院議員通常選挙について「3年に1回、過半数が改選される」という下りを、「3年に1回、半数が改選される」に修正しました。
図表3図表1と同一だったので、修正しました。

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    ここからが本文です。

    東京都知事選について

    私は東京都民の一人として、7月に、参議院議員通常選挙と東京都知事選挙という、二つの大きな選挙に投票して来ました。参院選は3年に1回、議員の過半数が改選されるという、定例的な国政選挙であり、執行時期の予測が立てやすい選挙の一つです。東京都知事選も、本来であれば4年の任期が満了した時点で行われるはずの選挙です。

    しかし、2012年(平成24年)12月に、当時の石原慎太郎都知事(2011年4月選出)が衆議院議員選挙に出馬することを目的に、任期を2年半あまり残して都知事を辞任。後任に猪瀬直樹氏が当選しましたが、猪瀬氏は「政治とカネ」の問題で辞任し、2014年2月には舛添要一氏が当選。しかし、この舛添氏も政治資金等の問題で辞任したため、このタイミングでの都知事選が行われた格好です。つまり、都知事は2012年12月実施分以降、実に4回連続して「任期途中で辞任」したわけであり、私も一人の都民として、東京都知事が簡単に辞職してしまうことを情けないと思います。

    ただ、東京都知事選については、じっくりと分析すると、いろいろ興味深い事実が判明します。そこで、本日は東京都選挙管理委員会のウェブサイトに公表されている過去の東京都知事選をベースに、首都での有権者の間で発生している「政治的な力学変化」について考察を加えてみたいと思います。

    投票率は改善

    前回、舛添候補が勝利した都知事選(2014年2月)の投票率は、実に46%にまで低下しましたが、これは2003年4月(45%)に次ぐ低水準です。しかし、今回(2016年7月)の選挙では、これが59.73%、つまり小数点未満を四捨五入すれば60%に回復。これは、衆議院議員総選挙と重なった2012年12月の水準に次ぐ高いものです(図表1)。

    図表1 投票率の低下には歯止め

    20160801ELECTION1

    また、前回の都知事選では23区内で13年ぶりの大雪警報が発令され、このことが投票率の低下の原因になったと見ることもできるでしょう。しかし、今回は真夏で暑いさなかに行われた選挙であることを考えるなら、投票率としては健闘した方だといえるでしょう。

    つまり、それだけ都知事選に対する東京都内の有権者の関心が高かったということでしょう。実際、立候補者は21人と「過去最多」だったそうですが、東京都選管が公表するデータで見ても、候補者数が増えれば投票率も上がる傾向があるといえるかもしれません(図表2)。

    図表2 今回の候補者数と当選者
    執行日 候補者数 当選者
    2016/07/31 21 小池 百合子
    2014/02/09 16 舛添 要一
    2012/12/16 9 猪瀬 直樹
    2011/04/10 11 石原 慎太郎
    2007/04/08 14 石原 慎太郎
    2003/04/13 5 石原 慎太郎
    1999/04/11 19 石原 慎太郎

    (当選者名は敬称略。なお、以下同様に、表中では敬称を略している)

    上位候補者への集中度合い

    一方、今回の選挙では、いくつかの「問題点」もあります。それが、「投票の集中率」です。

    今回の選挙では、小池百合子候補が獲得したのは291万票であり、これは有効投票総数(655万票)に対して44.5%にも達しています。もちろん、過去の選挙を見ても、上位3候補に9割以上の票が集まるのは今回だけに限った話ではありません(図表3、図表4)。

    図表3 「上位3候補」への票の集中率(グラフ)

    20160801ELECTION2

    図表4 「上位3候補者」への票の集中率(表)
    執行日 1位候補者 1位+2位 1位+2位+3位
    2016/07/31 44.49% 71.89% 92.45%
    2014/02/09 43.40% 63.58% 83.21%
    2012/12/16 67.35% 82.39% 92.03%
    2011/04/10 43.40% 71.46% 88.28%
    2007/04/08 51.06% 81.81% 93.25%
    2003/04/13 70.21% 88.79% 97.07%
    1999/04/11 30.47% 46.04% 61.35%

    また、過去には60~70%もの得票率で当選したケースもあります(図表5)。

    図表5 過去7回の集中率
    日付 1位 2位 3位
    2016/07/31 小池 百合子(44.49%) 増田 寛也(27.40%) 鳥越 俊太郎(20.56%)
    2014/02/09 舛添 要一 (43.40%) 宇都宮 健児(20.18%) 細川 護熙 (19.64%)
    2012/12/16 猪瀬 直樹 (67.35%) 宇都宮 健児 (15.04%) 松沢 成文(9.64%)
    2011/04/10 石原 慎太郎 (43.40%) 東国原 英夫 (28.06%) 渡邉 美樹 (16.81%)
    2007/04/08 石原 慎太郎 (51.06%) 浅野 史郎 (30.75%) 吉田 万三 (11.43%)
    2003/04/13 石原 慎太郎 (70.21%) 樋口 恵子 (18.58%) 若林 義春 (8.28%)
    1999/04/11 石原 慎太郎 (30.47%) 鳩山 邦夫 (15.58%) 舛添 要一 (15.30%)

    しかし、今回の都知事選の立候補者数は、史上最多となる21人だったことを忘れてはなりません。多数の立候補者が出馬し、しかも自民・保守が事実上の分裂選挙となる中で、これは異例の得票数です。この背景には、いったい何があるのでしょうか?

    「報道の自由」を乱用するマス・メディア

    まず、事実関係として、上位3候補への集中率を考えるうえで、今回の選挙戦では、3人の候補以外についてはメディアがほとんど取り上げていなかったことを指摘しておきます。次の報道によると、上杉隆氏ら6人の候補者が、在京テレビ局などに対し、選挙報道の公平性を求める「異例の申し入れ」を行ったそうです。

    前代未聞! 上杉隆氏ら都知事選候補6人がテレビの「偏向報道」に宣戦布告(2016年7月26日 18時49分付 Yahoo!ニュースより)

    ところで、日本では「報道の自由」は絶対視されているのが実情であり、私自身も「報道の自由」は民主主義社会の根幹で重要なものだと思います。しかし、日本の報道の問題点は、報道を担うマス・メディア(新聞・テレビなど)が、「報道の自由」の意味を勘違いしている点にあります。

    日本の法律では、選挙報道についても、最大限「報道の自由」に配慮しています。ただし、本来であれば、「報道の自由」が存在するからといって、マス・メディアがそれを乱用してはいけません。ここで、公職選挙法を見てみましょう。

    (新聞紙、雑誌の報道及び評論等の自由)
    第148条第1項 この法律に定めるところの選挙運動の制限に関する規定(第百三十八条の三の規定を除く。)は、新聞紙(これに類する通信類を含む。以下同じ。)又は雑誌が、選挙に関し、報道及び評論を掲載するの自由を妨げるものではない。但し、虚偽の事項を記載し又は事実を歪曲して記載する等表現の自由を濫用して選挙の公正を害してはならない。

    (選挙放送の番組編集の自由)
    第151条の3 この法律に定めるところの選挙運動の制限に関する規定(第百三十八条の三の規定を除く。)は、日本放送協会又は基幹放送事業者が行なう選挙に関する報道又は評論について放送法 の規定に従い放送番組を編集する自由を妨げるものではない。ただし、虚偽の事項を放送し又は事実をゆがめて放送する等表現の自由を濫用して選挙の公正を害してはならない。

    つまり、公選法で様々な「選挙運動の制限」が設けられていますが、新聞・雑誌・テレビ・ラジオなどのマス・メディアは、選挙に関する報道・評論を自由に行うことができるとされています。しかし、「但し書き」の中で、次のように「表現の自由を濫用して選挙の公正を害すること」を禁止しています。

    • 虚偽の事実を記載・放送
    • 事実を歪曲して記載・放送

    もちろん、そもそも選挙とは、有権者が自分で選挙公報を読むなり、候補者の演説を聞きに行くなりして、きちんと情報を集めることが必要です。しかし、現代社会では新聞・テレビをはじめとしたマス・メディアが選挙でも大きな役割を果たしていることから、公職選挙法でも、わざわざ「新聞・雑誌・放送局の報道・評論等の自由」が定められているのです。そうであるならば、新聞社・テレビ局などのマス・メディアは、自分たちの報道ぶりが選挙の公正を害していることを、きちんと反省しなければなりません。

    マス・メディア批判の自由が必要

    私がこの「選挙分析」を行っていて痛感したことは、マス・メディアの報道ぶりが選挙の公正を結果的に歪めてしまっている可能性が高い、ということです。ただ、得てして「既得権益」を得ている人たちには、自浄作用が働き辛いのが実情です。先ほど私は「マス・メディアは反省しろ」と記載しましたが、そんなこと彼らができっこないことなど、百も承知です。

    しかし、上杉隆さんや桜井誠さんのように、マス・メディアからほとんど無視された候補者は、マス・メディアにほぼ無視されたにもかかわらず今回の選挙では善戦。2人あわせて30万票近くの支持を得たことについては、注目しておきたいと思います(図表6)。

    図表6 「泡沫候補」2人の得票
    候補者氏名 得票数 得票率
    上杉 隆 179,631 2.74%
    桜井 誠 114,171 1.74%

    これは非常に力強い事実です。もちろん、2人あわせても、得票数は30万票に足りませんし、得票率は5%に足りません。しかし、マス・メディアが完全に無視した2人が、ここまでの票を獲得したのは、日本の民主主義が遅まきながらも少しずつ進歩している証拠でしょう。

    ただ、マス・メディアの力はまだまだ強く、そして公正な報道を行っていないことの悪影響は、日本の民主主義を後退させることにもつながりかねません。

    そこで、私はマス・メディアに代わって、インターネットを使って自分なりの意見を発表する、「ネット・メディア」を立ち上げたのです。目的はあくまでも「マス・メディアの批判」にあります。私はこれから、客観的・公正な手段だけを用いて、自分なりに意見発信を行っていきたいと考えております。

    オマケ:選挙妨害

    本日の本論とは外れますが、いちおう、「オマケ」としてこんな話を紹介しておきます。

    私は7月30日(土)に所要で新宿駅付近に出かけた際、偶然にも正午ごろから、桜井誠候補が新宿駅南口で演説するのを聞きました。桜井候補は甲州街道沿いの新宿駅南口で選挙演説を行っていたのですが、反対車線(バスタ新宿側)では、「鳥越氏を応援する団体」(?)が高性能なマイクを桜井氏陣営に向けて演説を妨害するのを、リアルタイムで体験しました(図表7)。

    写真に写っている道路は甲州街道で、その道路に面した緑色の「JR新宿駅」と書かれている建物が「新宿駅南口」、その反対側(南側)が「バスタ新宿」です(つまり、バスタ新宿は「新宿駅南口」のさらに南側にあります)。

    図表7 桜井候補と妨害団体の位置関係

    20160801ELECTION3

    左側の赤丸で囲んだ部分が桜井候補の選挙カー、右側が妨害団体です。そして、共産党系の妨害団体は、高性能なスピーカー(図表8)を用いて、道路の反対側にいる桜井氏の演説を聞きに来た人たちに向けて、大音量で妨害演説を行ったのです。

    図表8 高性能なスピーカー

    20160801ELECTION4

    ちなみにこのスピーカー付の街宣車、1000万円以上する高価なものだそうです(桜井陣営談)。そして、まことに残念なことに、この妨害演説事件をまともに取り上げた大手マス・メディアは、産経新聞以外には存在しないようです。それでも私たち夫妻をはじめ、その場にいた数百人の聴衆は、この妨害行動をしっかりと目撃しました。

    選挙妨害を行っている団体の街宣車には鳥越俊太郎候補本人が乗っているわけでもなく、共産党系の衆議院議員らがわめき散らしているだけでしたが、それでも、その場にいた人たちは、この妨害行動を見て、「少なくとも鳥越氏だけには投票しないでおこう」と思ったのかもしれません。もしそうだとしたら、彼らが行った行為は、桜井誠候補の選挙活動を妨害しただけでなく、間接的に鳥越俊太郎候補の選挙活動をも妨害したことになりかねません。皮肉なことですが…。

    これに加えて、桜井誠さんが、仮に7月30日の選挙妨害を刑事告発するということであれば、その場に大勢の一般人がいたので、証言には困らないと思います。

    せっかく、今回の参議院議員選挙で民進党や共産党が「選挙協力」で躍進するきっかけができたにも関わらず、かかる妨害演説で自分たちの首を絞めているのだとしたら、それはそれで興味深いことだといえるかもしれません。

    ※本文は以上です。

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  • 2017/02/19 00:00 : 「日露2+2会合」再開のインパクト (外交)
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  • 2017/02/14 19:45 : 国単位で信頼を失うということ (時事)
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    著者のコンタクト先:info@shinjukuacc.com

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